初期の艦これ   作:弱箔

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10 おはよう………ございます

 

 

 

6月19日

 

「おはよう………ございます」

「ああ、おはよう」

なんだが最近事務艦が朝からいるんだが、なんだろう

「あの、司令官?」

「ん、なんだ」

「大丈夫、ですか」

「?」

「その、顔色が」

ああ、寝てないからな、顔に出てしまったか

片言なのは仕方ない、それでも話せないわけじゃない

だからといって、叢雲と妖精さんと連続したのは流石に堪えた

「溜まった執務をどうにかしないと、な」

「それは、その通り、なのですが……」

「心配しなくても、今日は午後から休ませてもらうよ、午後はスケジュールの素案を頼む、出来次第上がっていいから」

「わかりました、半休の手続きをしておきます」

とても真面目な事務艦だ

しかし、あの待機命令いつまで続くんだ、別命あるまでとなっていたが

艦娘が海に出てないのなら、哨戒は海自と空自でやってるんだろうが、予算足りるのかね

 

眠い、がもう一仕事ある

昼飯の後は特に眠い、だが、もう一仕事ある

これを終わらせないと安心して寝られない、安眠の時までもう少しだ

「こちらに視察官はおられますか」

やっと到着した憲兵隊詰所、あの爺様はなんでか知らんがここにいる事が多い

「いるよ、……どうした、具合が悪いのなら医務室へ運ぶが」

やっぱりいやがった、鎮守府の視察に来てるのに憲兵隊詰所に入り浸る視察官ってどうなのよ

「叢雲と話はしてきました、それについてですが」

「ほう、話は構わないが、場所を変えるかい」

「いえ、ここの方がいいでしょう、艦娘達に聞かれなくて済みますし」

お、爺様の目付きが変わったな

「聞こうか」

座るように椅子を勧めてくれるんだが、今回は寝る危険がある、大いにあるので遠慮しよう

「このままで、良いです」

じいさん、そんなににらむなよ

 

「大凡察した通りだ、妖精さんにも確認してくれたのは有り難い」

「現在待機命令が出ており全ての行動を中止しています、具体的な行動は別命の内容を確認し、検討した後になります」

「そうなるな、では、明後日には命令を出す様にしよう、それに合わせて行動を開始してもらいたい」

あー、この爺様、公の立場を忘れてんな、これって指摘しても大丈夫なのかな

「視察官殿、今の発言は些か不適切だと、憲兵隊長としては警告しておきます」

やっと出てきたか、散々聞き耳立ててたが、記録なんて腐るほど録ってるだろうに

まあ、録らせる為にここで話してんだけど、何度も聞かれるより録られた方が幾らかマシだ

「……確かに不適切だな、ここに視察に来ているというのに、何を言い出すのか、自分でも驚いたよ」

年寄りの戯言だとかなんか言い訳してる、今の記録は編集だって出来ないだろうからな

兎に角、終わった

これで安眠出来る

 

激しく戸を叩く音が聞こえた、おかげで目が覚めてしまった

誰だよ、まだ宵の口じゃないか、人の安眠を妨害する奴にマトモなヤツはいない

まだ、叩いてやがる、出ないとこのままか、鬱陶しい

「誰だ」

戸を開けずにきいてみる

「お休みのところ申し訳ありません、大本営より命令書が届きました」

は、えっ、明後日って言ってなかった、あの爺様

寝惚けた頭を急いでまわしつつ戸を開けると、事務艦から命令書、正式で公式なヤツを渡された

内容を確認して、確信した、あの記録が戯言になる様に予定を早めやがった

やられた、まあ、何らかの手を打つ事は少し考えれば当然過ぎるな、寝不足に祟られ過ぎだ

元々、日付だけ空欄な命令書は作っていたんだろうが、明日から通常営業かよ

日付が変わるまで後数時間、それまでにスケジュールを確定させないといけない

「あの、司令官?」

おっと、余計な事を考え過ぎたか

「確認した、スケジュールの素案は執務室に置いてあるか」

「えっ、ええ、それは勿論です」

なにを驚いてるんだ

「それを使わせてもらおう、時間もないしな」

とりあえず寝汗を流して着替えないとな、そのまま通常営業に突入になるし

これからの行動予定を考えながら身支度を整えて自室から出たら事務艦がいた

「……なにかな」

なんでここにいる、と、素で思った、忘れてたとか言えない

「司令官を補佐するのは事務艦の本分です」

あ、これはバレてる、忘れてたのバレバレなんですけど、どうフォローすれば良いんだコレ

「時間も迫っています、執務室へ急ぎましょう」

お、嫌味の一つもないとか、どうしたんだ

時間が無いのも確かだ、これは触れないでおこう

 

6月20日

 

「やっとひと息つけるな」

「お疲れさまでした、少し休まれてはいいがですか」

なんとか日付が変わるまでに艦娘の運用計画をまとめて、資材帳簿と運用実績の辻褄を合わせ終えた頃には食堂の開業時間になっていた

切りも良かったのでそのまま朝飯にきた所だ

「気持ちは有り難いが、今からだと時間が半端過ぎる、運用計画の説明もしないと、第一艦隊の出港を見送ってからにするよ」

運用計画は既に貼り出してあるから、食堂に来た時に確認出来るだろう

とっても無難に作成された素案を少しアレンジして作ってからそれなりにムラがある計画になってしまったが、仕方ない

ここは素案の出来が良かった事を喜んでおこう

食堂の終了時間の後、所属の全艦娘を集めて運用計画の説明、質疑応答、続けて第一艦隊の出港を見送った

やっと休める、そう思った、本当に微塵の疑いも無くそう思っていた、爺様が港に姿を現わすまでは

「順調の様だね」

嫌な予感しかしなかった、なにしに来たんだ

「ありがとうございます」

意味は無い、返答に困って適当に言ってるだけだから

「それで、改修の予定はいつになりそうかな」

なに、改修、何の話だっけ

「初期艦の改修をするのではなかったかな」

うっ、ヤバイ、忘れてた、いや、正直な所をぶっちゃけると、こちらにメリットがないんだよね、この話

ゼロではない、のはわかる、有益な程のプラスになるか、ならないか、というとおそらくならない

有益なプラスを得るのは大本営とかその上だ、ただ搾取される為だけに睡眠時間まで削って労苦を買わなきゃならない話にしかきこえないんだ、私には

「迷っているのか」

そういう事じゃないんだが、爺様と私では立ち位置が違う、違い過ぎてそこを話しても平行線にしかならないだろう、どうしたものか

「なにか、要望でも」

まあ、そこが落し所だとは思う、思うんだけど、なんだろうな、こういうのを腹に据えかねるっていうのかな、腑に落ちないの方かな

「それは、当鎮守府に於いは優先度が高くありません、どうしてもと言われるのであれば、大本営より命令を」

「……」

爺様が偉い人なのはわかった、歴史の教科書に載るくらいの実績を現在も積み上げ続けてるんだから当然だ

けどな、この鎮守府の司令官は私だ、文句があるなら降ろせばいい、簡単な事だ

って、なんだよその呆れた様な溜息は

「あのな、この年寄りはお前さんの味方をしにきたんだ、仇を見る様に睨まんでくれ」

睨んだつもりはないんだが、兎に角、爺様は去っていった

やらかしたかな、ヤバイかも、しれない

 

「その様子だと、視察期間の再延長ですか」

「そうなりそうだ、しかし自分で話した事を実行するだけなのにどうしてなんだろう」

「それじゃあ再延長になるでしょうよ、聞いてるだけの私だって嫌味の一つも言いたくなる」

「?何故」

「司令官の話した事ではありますが、司令官の考えではないからですよ」

「……アレは単に報告だったと」

「自分にはそう聞こえましたが、老提督には違って聞こえましたか」

「……」

「ではもう一つ、司令官は何故憲兵隊詰所でその報告をしたのか、お分かりになりませんか」

「艦娘達に聞かれないからだと、言っていたが」

「それもあるんでしょう、ですが司令官の本命はそれではないと自分は断言出来ます」

「本命?目的があって敢えてここで話した、というのかね、単に私がここにいたから、では無く」

「老提督、司令官の報告がここでなされた結果、その報告は確実な記録媒体に残り、現在それらは複製され多数の場所で解析されています、もし、この記録媒体がなかったら、どうなっていたか、分かりませんか」

「!なるほど、そういうことか……まて、あの司令官はそこまで分かって行動していたと、いうのか」

「自分はそう確信しておりますが、老提督は、いかがですか」

「……そういえば、修復で眠ったまま目を覚まさない初期艦を、解体するのではなく保護したのだったな、あの司令官は」

「そうですよ、ただでさえ手探り状態の鎮守府運営なのに、老提督は妖精さんの味方でいらっしゃる」

「ああ、そういうことか、確かに、これでは睨まれて嫌味を言われても仕方ないな」

「睨まれたんですか?」

「ンッウーン、ここは反省する事にしよう」

 

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