初期の艦これ   作:弱箔

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11 溜まってる執務を片付けた方がマシ

 

 

 

 

爺様に突かれてささくれた気分で休む気にもなれず、溜まってる執務を片付けた方がマシなので執務机に向かっている

部屋に入った時に事務艦が驚いた顔を見せたが、何も言ってこなかったからそのまま執務中だ

そこに扉をノックしてくる何者かが来た

事務艦が立ち対応に出てくれた、こちらは執務を続行

「司令官、面会を求められています、御通ししてもよろしいですか」

まあ、そうだよね、あのまま引き下がるわけない、押し込みに来るよね

これまでに前例のない事態が起こって、それらを検証する又と無い好機なんだから

謎の多い艦娘と妖精さん、解明する機会があれば逃すなんてあり得ない

理屈は分かるんだ、理屈は

だけどな、そんな実験めいた事を何故あいつでやらなきゃならんのだ

挙句にその執行を私にやれといいやがる

わかってる、このまま駄々っ子みたいな事をしていても上の命令一つで全て取り上げられ、他の誰かがやるだけだ

私はどうすればいいんだ

「司令官?」

「……あ、面会か、通して」

考えがまとまらない、相手は艦娘の言う妖精さんを見る事が出来た最初の人物

元幕僚と聞いているが、艦娘部隊を国際機関として立ち上げた爺様だ

現役では無いがオブザーバーとしてそこに席を用意されるだけの実績のある爺様だ

詰んでねーか、コレ

そんな爺様を相手に我儘を押し通すとか、なんでこんな事態になったんだか

あ、自分の我儘の所為か、こういうのを墓穴を掘るっていうんだっけ、策士策に溺れるかな、自業自得な事は間違い無いが、もしかして無限ループになってないか、この状況

「仕事中に失礼するよ、今日で視察が終了するのでね」

はっ、なぬ、何をいった

「元の予定では四時間だった視察が四日もかかってしまった、司令官には特段の協力を頂き感謝している、この事はしっかりと報告し、司令官に対してなんらかの褒賞を与える様に進言しよう、お邪魔した、失礼するよ」

扉の閉まる音で我に返った

「えっ、なに、どういうこと」

「?視察終了の挨拶に来られたのでは」

エッと事務艦を見れば不思議な物体を見た感じの顔をしていた

理解が追いつかない、このまま爺様が帰るのを黙っても置けない

「少し出てくる」

なにか考えが浮かんだ訳じゃないが、追いかけないと、放置だけはしてはいけない、放置は無関心と取られ後に足元を崩す材料にされる

「おかえりをお待ちしています」

 

「視察官!」

幸いな事に爺様は歩くのが早くなかった様だ、階を一つ降りたところで追いつけた

「どうした、なにか用かな」

「なにかって、改修の件は?」

なに弩ストレートにきいてんだ、動揺し過ぎてるぞ、頭冷やせ自分

「?それを視察官に聞いてどうするんだ、所属艦娘に対する指揮権は司令官に一任されている事は知っているだろう」

えっと、そうなんだけど、そうじゃないんだが

「まさか私がそれを強要するとでも思っていたのかい」

違うのか、あんたらにしたら艦娘の謎の解明に繋がる絶好の機会の筈だけど

おい、そのクソ長い溜息はなんだよ

「言っただろう、私は司令官の味方をしに来たんだ、尤も隊長を始め自衛隊の方が熱心だったがね」

「???」

「司令官には自覚がないようだが、自衛隊の評価ではお前さんが最優秀となっているぞ、この鎮守府での勤務が一番遣り甲斐があるそうだ、他の鎮守府では大本営に出向してきた官僚達が幅を利かせていたからな」

「??」

「直通電話で話しただろう、大本営の官僚はどうだった」

「……クソ官僚でしたが」

ハッハッハッと大笑いな爺様、いいのかコレ

「まあ、そういう事だ」

どういう事だよ、さっぱりわからんが

「もう一度言っておこう、私はお前さんの味方をしに来たんだ、妖精さんだけでは艦娘部隊は成り立たない、艦娘は時間をかければ揃ってくるが、優秀な司令官はなかなか見つからない、お前さんはなかなか見つからない司令官の一人だ、間違いなく」

「……」

なにをいってるんだこの爺様は、私が優秀な司令官な訳ないだろ、煽てて木にでも登らせたいのか

「実感なんてものは後からくるんだ、それまでは何の事やら分からないがな、私の場合はそうだったよ」

「?私の場合」

「私の経験上の話だよ」

あ、最初で一人目だから難儀した様な逸話は聞いた事あるが、都市伝説の類いじゃないのか

「では、失礼するよ、電車に遅れてしまう」

そういって背中越しに手を振りつつ歩きだした爺様を見送る、その背中を見ていて気が付いた、それはマズイな、引き止めた私の所為だし

「必要なら送りますが?」

付いて歩きつつ聞いてみた

「その心配はいらないよ」

どういうこと、遅れるといいつつ、心配ないとは

「おや、司令官も見送りに来てくれたのか」

えっ、隊長、見送りって、と声のした方を見て心配いらない理由は分かった、が電車じゃないぞそれは

「待たせたね」

「いえいえ、お気になさらず、どうぞ」

正面玄関に横付けされた車に乗り込む爺様、なんで自衛官の方々が整列しているのかについては、触れない方が身の為だ

「駅まで頼むよ」

えっ、それで大本営まで行くんじゃないの

「……一人旅がそんなにお気に召しましたか」

「ああ、想定外だったけど、良いものだ、気軽で身軽で言うことなしだ」

「護衛の事も考えてくださいよ」

「そんなものいらんよ、ただの年寄りに大袈裟な事だ」

あー、あの人がそうなんだろう、遠慮なくウンザリしてるよ、可哀想に

「整列!」

アッ、号令が掛かってしまった、逃げ遅れた

「視察官殿に敬礼!」

仕方なしにそうした、自衛官の方々を見た時に逃げておくべきだった

 

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