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6月23日
「なんだこれは?!」
大本営からの通知を読んで思わず声を上げてしまった
「どうされました?」
事務艦が手を止めて聞いてきた
「初期艦を鎮守府から取り上げるそうだ、大本営は何を考えているんだ」
言いながら通知を事務艦にも見せた、それを一読してこう言った
「正式な命令である以上従う他無いと思いますが」
正論としてはそうだ、だがすんなり聞いてやるわけにはいかない
「抗議するからそれらしい文面を作成してくれ」
「……その手の抗議文は司令官が作成された方が宜しいかと」
この事務艦、どこまでいっても事務艦だな
そんな訳で感情的な部分はかなり抑えたつもりの抗議文を作成、事務艦には作成した抗議文を大本営に送る様指示、仕事はしてもらう
まったく、初期艦を大本営に送った当日にこんな通知を寄越してくるとは、意趣返しとしか思えん
通知の来た時間からしてもあの初期艦が大本営で何かしでかしたとも思えんから、私に対する嫌がらせか何かだろう
「司令官、今各所の鎮守府に問い合わせたのですが、全ての鎮守府に同様の通知が届いているようです」
この事務艦こっちが抗議文を作成している間にそんな事してたのか、良いのかどうなのか
「そこから何か分かるのか?」
「いえ、お知らせしただけです」
おい、なんだそれ、何の役にも立ってないぞ、やっぱり事務艦は事務艦だ
6月24日
翌朝、執務室に行くと事務艦は既にそこに居た、良いんだけど、なんだかなぁ
「おはようございます、大本営から昨日の返信が届いています」
そういってプリントアウトした紙を渡された
「こちらの抗議の正当性を認め、主張を了承する、だと、なんだ薄気味の悪い」
対応策も無くタダで鵜呑みにしたとか、大本営の考えがさっぱり分からない
「現状維持という事ですね」
「そうなるが、他の鎮守府はどうなっているか分かるか?」
この通知は全ての鎮守府に出ていると事務艦は言っていた、他も抗議なり反論なりした筈だ
「通知を受け取って直ぐに初期艦を大本営に向かわせたそうです」
「えっ」
直ぐに返答が来たことにも驚いたが、返答そのものにはもっと驚いた
「向かわせた?替わりの初期艦が来てるのか?」
「いえ、ただ向かわせたそうです、命令通りに」
呆気にとられた、それでは鎮守府をどうやって運営するんだ、それとも他の鎮守府の司令官は妖精さんとの意思疎通に画期的な方法でも見つけてるのか、私が知らないだけで
「おかげで鎮守府の運営に支障が出ている様です」
なんでも無い事の様にいう事務艦、大問題なんですけど
「……今残っている面子で出来る限り実戦可能な艦隊を編成するとして何個艦隊出来る?」
「二個艦隊、がいい所です、無理すればもう一つぐらい出来ますが、三個艦隊にしますか?」
「編成してくれ、それと、遠征隊は今どうなってる」
「二個艦隊が帰投中です」
「遠征隊はその帰投を以って行動計画を凍結し待機、それで所属全艦が揃う、編成した三艦隊と帰投した二個艦隊の旗艦を執務室に集める様に、私は憲兵に話がある」
そう言って執務室を出ようとしたら事務艦から声がかかった
「現在第一艦隊が出撃準備中ですが、そちらはどうしますか?」
ん、第一艦隊?三艦隊の中に入ってないのか
「旗艦にここまでの状況を伝えて出撃の可否を判断させろ、出来るだけ早く戻る」
今度こそ執務室を後にした
「遅かったな、こちらの予想だと昨日の内に来ると踏んでいたんだが」
憲兵隊の詰所に入るなり隊長から声がかかった
「そう言うのなら、私が来た理由もご承知なのかな」
「凡そはな、初期艦の撤収命令とかその辺りの大本営の事情を聞きに来たんだろ?」
ど真ん中では無いにしても的外れでも無い
「なんでもいい、聞かせて欲しい」
「まあ、こっちに来て座ったらどうだ」
「生憎と長居する気は無い、艦娘達を待たせているのでね」
お、なんだ、呑気な顔から真顔になったが、変な事は言っていないつもりだが
「待たせてるとは、どう言う意味だ」
何を聞きたいんだ隊長は、そのままの意味以外なにを思いついているんだ
「その初期艦の撤収命令で他の鎮守府では運営に支障が出ていると聞いている、対応事案の全ては拾いきれないが出来る限りは拾いたい、その為には大本営の事情を知る必要がある、同時に自衛隊の協力も必要になるだろう、事態がどう転ぶにしても無駄話をしている余裕は無いと考えるが、隊長の考えは如何なのだ」
「自衛隊の協力?」
なにを不思議がっている、鎮守府の司令官には対深海棲艦戦においては協力要請が出せる事になっている、勿論要請であって強制は出来ないが
「この鎮守府の手数だけではどうにもならない、隊長も自衛官なら公務員としての細やかな義務を果たしたくはないのか」
なにを驚いている、これは隊長自身が言った事だぞ
「参ったね、先手を取られたよ、協力要請があれば受ける様に依頼されてる、それも最大限協力する様にな、で、取り敢えずどうすれば良いんだ」
それはさっき言っただろ、と言いそうになったがなんとか堪えた
「大本営はどうなっているんだ」
「大本営は今老提督が上部機関の了解を取り付けて大鉈振るってる真っ最中だ、近日中には上部機関から何人か大本営入りするだろう、その間艦娘を指揮する鎮守府が機能停止すると予測されるから海自と空自は厳戒体制が下令されている」
と言う事はこちらの出る幕は無いって事で良いのかな
「そこでだ、もし司令官が自衛隊と歩調を合わせて動いてくれるのであれば、自衛隊としてはかなり助かるんだが」
これ、戦力的にっていうより予算的にって意味だよね、どうしようか、自衛隊の予算の為に艦娘を酷使するのは避けたいし、かといってこの状況で通常営業って訳にもいかない
自衛隊側の状況が分からないと判断しようが無い、今海に出ているのは海自で艦娘ではない、鎮守府に居ながらにしてリアルタイムで海上の状況を掴むにはどうすればいいんだ
「ここに鎮守府内にいる海自と空自の士長を呼べますか?」
「ここ?詰所にか?」
「他の所で良いんですか?」
集合場所をここ(憲兵隊詰所)にしないと陸自は話に関われなくなると思うんだけど
こちらが聞き返した事で隊長もそれに気がついたらしい、早速内線をかけ始めている
隊長が呼び出し終えたのを見てから
「こちらも内線を借りて良いですか」
「ああ、どうぞ」
「どうも」
執務室にかけて事務艦に状況を確認すると第一艦隊は出撃したそうだ、遠征隊は一つは帰投したがもう一つがまだという事だ、執務室に集まった旗艦達に茶と茶受けを出す様にいってから内線を切った
丁度いいタイミングで海自と空自の士長が憲兵隊詰所に来た
「手短かに頼むよ」
「こっちも上から移動指示が出てる、なにをやるにしても協力しかねる状況なんだが」
何処も忙しい様だ、厳戒体制なんだからそうなるのは当然か
「お呼び立てして申し訳ない、話というのは現在の状況に於いて当鎮守府が自衛隊に対しどの様な協力が出来るのか、そこをお聞きかせ願いたい」
思いっきり困惑されたんだが、想定外なのは分からなくないが、喜ぶまでは無理でももうちょっとなんとかならないのか
「そう言われても、自分の権限ではどうにも」
「移動指示を無視する訳にもいかない、申し出を上に伝えるぐらいしか手を貸せそうにない」
ああ、陸自は憲兵隊って事で独自の指揮系統だけど海自と空自はただ出向してるだけだから指揮権上位者にお伺いを立てないと行動出来ないって事か、聞く相手を間違えたな
「そうしてくれないか、ここにも電話くらいはある」
隊長がそういって二人の横に電話を持って来させた、見れば隊長まで何処かに連絡入れてるんだが
何処にかけたのか知らないが二、三の言葉を交わしただけでごく短い通話は終わった
「当方はこれで失礼します」
「こちらも移動時間が迫っている、申し訳ないがこれで失礼するよ」
それだけ言い残して海自と空自の士長は退出していった
「私も失礼します、これ以上居ても意味がない様だ」
二人に続いて退出しようと思った
「まあまて、折り返し連絡がある筈だ、帰るのはそれを聞いてからでもいいだろう」
何故か隊長に止められた
「何時迄もは待てませんよ」
「そう時間はかからない、っと来たか」
隊長が言ってる途中で電話が呼び出しの電子音を鳴らした、早速隊長が受話器を取る
少しの会話の後こちらに受話器を向けて来た、なんだろ
「憲兵総監が話したいそうだ」
なんで?私は話したくないんだが、そうも言ってられないか
「代わりました、鎮守府司令官の佐伯です」
「憲兵総監の佐久間です、そちらの憲兵隊長より艦娘部隊司令官から協力要請があったと報告を受けました、どの様な協力を希望されていますか?」
「現在各所の鎮守府にて運営に支障が出ており、満足な海域情報が得られません、海域情報の提供をお願いしたい」
「わかりました、直ぐに手配します、他には?」
「可能であれば海域情報だけでなく、自衛隊の哨戒情報と深海棲艦の分布状況をリアルタイムでもらいたい」
お、流石に即答はして来ないな、拒否られるかな
「可能ですが、それを何処で受け取るのですか、鎮守府にはその設備がないでしょう」
おおう、痛い所を突く
「その設備ごと貸し出しては頂けないですか」
もうヤケだね、無理って言われるだろうけど
「憲兵隊長に代わってもらえませんか」
お、埒が明かないと踏まれたかな、仕方ないけど、ここは大人しく代わろう
なんか、隊長がニヤニヤしながら話してんだけど、なんの話をしてるのか
暫くの話の後受話器が戻された、なんか隊長が喜んでいる、様にみえるが
「いや、お見事、ああも大胆に要求するとは中々如何して、やるじゃないか」
「結論を聞いても?」
「おお、そうだな、設備が運用人員ごとここに来る、今から受け入れ準備に入る」
準備?設備ってそれ用のパソコン一台じゃ無いの?
「分かってないって顔してる司令官に噛み砕いていうと、移動式の指揮機能を持つ装備を以って統合指揮所を編成する、それが運用人員込みでここに来る、能力的には首都防衛発令所に並ぶ強い指揮系統を構築可能だ、面白くなって来たじゃ無いか」
なんでそんな大袈裟な事になる、こっちは自衛隊の情報をもらえればそれで良いんだが
「司令官には大袈裟に見えるだろうが、自衛隊のリアルタイム情報を受け取るのならこれくらいの状況が必要になるんだ、上手く活用してくれよ」
マジですか、こっちの困惑を他所に隊長がすごく嬉しそうなのがとても気に障った