「お呼びですか」
「おお、来てくれたか」
視察官が迎えを頼んだというからそれ待っていた、が来たのが想定外過ぎた
「……大和、なの?」
「はい、大和ですよ、艦娘の」
てっきり案内してくれる職員が来るものと思っていたら、何故にこんな大物がくるのか
「呼び立てて済まないね、こちらの叢雲さんが困っているそうなので力になってはくれんか」
「?困る、どうされたのですか」
本当に心配そうに聞いてくる、ここで戸惑っていても始まらないと考え事情を説明する
「?おかしいですね、確かに担当者はこれから決めるというお話でしたが、必要書類はお持ちですか」
鎮守府を出るときにまとめてもらったファイルをケースごと差し出した
「……あの、確認の為にお聞きしますけど、この書類を提出する様に迎えの者たちは言いませんでしたか」
「全く、書類を持ってる事さえ聞かれなかったけど?」
「……ここまで重症なのか……」
「えっ、なに」
「確認させていただいてもよろしいですか」
視察官がなにか言った様だけど、大和の台詞に被って聞き取れなかった
「どうぞ」
差し出したケースを受け取った大和が中身を手慣れた様子で見ていく
「揃っていますね、後は、司令官からの要望書ですか」
「要望書?」
「ええ、貴方を初期艦として迎えたいそうですが……」
言葉濁す大和、濁した理由に気が付いた
「初期艦の追加着任は認められないって事かしら」
「ご存知でしたか、記録上では貴方を送り出した鎮守府には初期艦が配属済みです、ですのでこの要望は却下されると思われます」
「で、それの許可はどうすれば降りるのかしら」
この要望書が司令官が出来る最大限の支援である事は直ぐに分かった、なら行動は迅速かつ大胆に相手に流される様な真似をされてはならない
「ちょっ、叢雲さん、落ち着いて、迫られても困ります」
ん、大和ってこんなに脆かったっけ、司令官の長門と全然違う
「落ち着いてください叢雲さん、それでは満足に話も出来ませんよ」
見かねたのか視察官から待ったがかかった
「……そう見たいね、長門には全然足りなかったけど、この子には効き過ぎた様だし」
「こ、この子!?」
大和にはなにか異論があるらしい
「貴方建造艦ね、それにほとんど鍛錬もしてない、戦艦を遊ばせておくなんて、大本営はどうなってるの?」
「叢雲さんのその疑問は私も同意する所だ、だから聞いたのだがね……」
「?視察官」
なにを言い淀んでいるのかわからない
「聞いて呆れたよ、大本営の無為無策無計画さにね、こんな筈ではなかったんだが」
「いや、わからんし」
「つまり、ですね、私が艦娘として動くと資材を大量に消費するワケですよ」
「?戦艦を動かすのなら当たり前の事でしょう」
「その当たり前がわからんのだよ、大本営は」
「えっ、なにそれ……」
なにそれコワイ、とか思ってる場合じゃない、もしかして大本営って話が通じない輩しかいないって事なの
「この国に開設するのだからこの国の人材で運営すべきと主張したのが裏目に出てしまった、日本人の外交下手は知っているが、外国人贔屓がここまでとは予想していなかった」
「?外国人贔屓」
「国際機関という都合上国外のゲストは拒否出来ない、それはわかる、だからと言って彼らに要求されるままに建造で艦娘を作って見せ、解体して資材にして見せる必要が何処にあるのか、その為に資材は浪費され艦娘の数は増えず、遠征隊に負担をかけてしまっている、大和が建造されたのは偶々ゲストが少なかった時に資材が溜まり妖精さんから大型建造の提案があったからだそうだ」
「大型建造?」
「初期艦から聞いた所によると大量の資材を投入する事で大型艦を建造し易くなるらしい」
「……私はその辺り良く知らないけど、建造って必ず成功する訳でも希望する艦娘が出て来る訳でもない、ハズよね」
視察官は苦り切った顔をした
「その通り、最初に大和が建造出来て気を良くしたのか、以来資材に余裕が出来ると大型建造を繰り返している、それで遠征隊には過度の負担がかかり、大和の教導も先送りにしてしまっている、いや、逆だな、大型建造が目的になってしまっているんだ、当初の目的である艦娘の数を増やす事すら忘れている様でな」
「?数を増やす事が目的なの」
「目的というより、第一段階ですね、その為に鎮守府を複数開設したのですから」
「なんで貴方がそんな所を詳しく知ってるのよ」
新造艦が大本営の運営に関わるとも思えない、ならそこを詳しく知る要因は何処にあるのか推定しかねる
「今、大和には私の秘書艦に着いてもらっているんだよ」
「秘書艦?」
「まだ試行中ではあるんだが、初期艦以外の艦娘に初期艦と同等の権限を付与し司令官を補佐する役職に着けられないかとね」
なにを言ってる、初期艦は妖精さんと会話が出来る、それで鎮守府運営に必要不可欠な協力を引き出す、妖精さんと会話出来ない艦娘がそれに代わる?代われるのか疑問なんだけど
「艦娘なら妖精さんは見えるのだから、多くの司令官と条件は同じだ、司令官が妖精さんと意思疎通が出来るのなら、艦娘が妖精さんと意思疎通出来ない道理はない、この秘書艦が活用出来れば、司令官は妖精さんが見えなくとも鎮守府の運営は可能という事になる」
聞いて呆れた、そんな事したらその秘書艦になった艦娘に負担が集まり過ぎる、とても実現出来るとは考えられない
「呆れられている様ですよ」
「そ、そんなに的外れな事を言ったかな?」
しまった、思いっきり顔に出た、新造艦と視察官がヒソヒソ話を始めてしまった
「良い話には聞こえないけど、実例でもあるの、それとも単に思いついただけかしら」
お、コッチに向き直った、って何で不思議そう見られてるの
「実例って、貴方を送り出した鎮守府が実例ですよ」
は、なにを言ってるんだこの新造艦は
「事務艦が補佐に着いているとはいえ妖精さんと意思疎通出来るのは司令官だけの筈だが」
あ、言われてみれば、外から見るとそうなる、だけどアレは特異事例で参考にならない、これは言っておいた方が良いのか、どうしようか、視察官は妖精さんのお気に入りだし
「取り敢えず場所を変えましょう、こんな所で長話も何ですし」
「それもそうだな、いや、つい話し込んでしまった、叢雲さんは研修の手続きがあるのだったな」
話し損ねてしまった