初期の艦これ   作:弱箔

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02 ノックの音で目を覚ました

 

 

 

 

ノックの音で目を覚ました

長門は仕事に戻った、それを硬いベッドから見送った後で寝てしまった様だ

「開いてますよ」

扉を開けて顔を出したのは憲兵だ

「日報の確認なんですが、大丈夫ですかね」

鎮守府そのものは独立機関として成立していて組織上の上部は国家と国連という事になっているらしい

一介の司令官でしか無い身ではそんな雲の上の話はわからん

ただ、それぞれの国で鎮守府をどう位置付けるかは国の裁量に任されている

尤も現時点で鎮守府を開設しているのは日本と米国だけだ

米国は開設しているだけで艦娘はいないと聞いているんだが

近いうち独国と英国、もしかしたら仏国が開設すると噂されてはいる

この鎮守府の場合基本的に自衛隊駐屯地と同様の扱いになっているそうだ

違うのは駐屯地の中にいるのが、艦娘とその司令官、憲兵という名目で陸上自衛隊、施設維持の名目で海上自衛隊、技術協力の名目で航空自衛隊といったところか

司令官である私と顔を合わせる機会が多いのは陸自の方々だ

海自はあまり会わないし空自はガチの技術者なので何語を話してるのかさっぱりわからん

「大丈夫ですよ、もしかしてお待たせしてしまいましたか」

「まあ、そこは仕事ですから気になさらず、失礼しますよ」

どうぞと手近にあった丸椅子を勧める

遠慮なく座りながら手にしたバインダーをめくり司令官の承認が必要な書類を抜き出してこちらに渡してくる

因みに私に自衛官に対しての指揮権など無いし軍事教練とやらの経験も無い

司令官に求められているのは艦娘と話をする事と妖精さんの様子を観察して色々と察する事

私の場合は察するまでもなく会話が出来るので妖精さんとも話をするが

憲兵が割とお気楽に話しているのはそう言った事情からだ

渡された書類に目を通していく、いつもながら堅っ苦しい書き方だ

公式書類だから仕方ないと云われれてしまえば仕方ないね

「司令官、承認印をどうぞ」

うぉ、いきなりかけられた声に思わず声の方を向いて固まった

変な声が出そうになったのを無理矢理押し込めた、見れば憲兵もちっょとびっくりしてる様子

「?なにか」

私と憲兵の様子に不思議そうにしているのは事務艦だ

「いや、なんでもない」

「いつの間に入ってきたんです、気がつきませんでしたよ」

憲兵の言い様に首を傾げる事務艦

「普通に入室しましたけど……」

「そ、そうですか」

憲兵の引き攣った愛想笑いも気に留めた様子は見られない事務艦

こういう事はよくある、艦娘の不思議な行動というか、人が想定し辛い行動というか、こちらの死角から割り込んで来るというか

私は慣れきってしまったが憲兵は慣れてなかった様だ

艦娘自身がある程度の技量を身に付ければ人が驚かない行動ができる様にはなるのだが、この事務艦はまだその技量を身に付けていない

今回の事務艦の行動は司令官の補佐の範疇なので私から如何こう言う筋はない

憲兵がここ(医務室)に来たのだって事務艦に私の居場所を聞いて来たのだろうしな

書類に目を通し終えて承認印を所定の位置に押す

「ありがとう、公文書に私の下手な字を残さずに済んだよ」

承認印を事務艦に返しながら一応感謝の意は伝えておく

「お役に立てたのなら良かったです」

事務艦はそういって入って来た時と同じ様に退室した

「……目で追い切れないって如何いう事???」

狐につままれたか狸に莫迦された様子の憲兵

「別に超高速とか瞬間移動とかそういう類では無いので、慣れればちゃんと追えますよ」

「司令官は今出て行くのが見えたんですか」

半信半疑といった体で聞いてきた

「勿論」

「差し支えなければ、如何いう事なのか教えて頂けないか」

かなり真剣というか深刻そうに聞いて来る憲兵

それを見て随分仕事熱心な人だという印象を持った

「簡単に言えば視線誘導ですかね」

「?」

「牛の前で赤布振って身を躱す、アレです」

「闘牛ですか?」

話を掴み切れない感じの憲兵

「そうです、振られる赤布の後ろに闘牛士はいません、そういう事です」

「注視する事で却って視野を狭めてしまった、と」

「そんな感じです」

そんな今一つ実感に欠けると言いたげな表情を見せられても、困るんだが

「司令官がそこに寝ているのはアレが原因とききましたが……」

話題を変えようとしているのだろうか、単になにか思い付いたのか

「それがなにか?」

続きを促してみる

「正直なところ、どうなんです」

「どう、とは」

なにを言いたいんだろこの憲兵は

「こちらに聞こえて来るだけでも司令官はかなりの頻度で医務室に運ばれている、職務中に度々医務室送りにする部下というのは問題有り過ぎなのでは」

改めて指摘されると反論出来ない

「事務艦としては優秀ですし、問題の根本は私にあるので……」

「あの眠り姫、ですか」

その言い様に思う所はあるが、他所ではそう呼ばれているのは知ってる

「そんなに不愉快そうにしなさんな、大本営とやらも解体命令を出さないんだからなにかあるんだろう事はこちらでもわかってる、だからといって何時迄もこのままって訳にもいかない、難しい舵取りだ」

「わがままを通しているだけですよ、振り回される艦娘達には迷惑でしょうが」

憲兵には監視の役割もある、下手な取り繕いは自分の首を絞めかねない

「……まあ、わかってやってるのは、わかってはいるんですよ、どうにも見てるだけのこちらからは歯痒くて、なんとか力になれないかとヤキモキしますがね」

力になる、意外な事を聞いた

問題の多い鎮守府に配置されて不満だろうと考えていたが、早合点だったか

「貴方は憲兵歴長いのですか」

「長いかと聞かれてもね、まだ憲兵なんてモノが出来てから定期異動の時期すら迎えてない、今憲兵やってる自衛官は誰でも同じだろうよ」

「そうなの!?」

思わず出てしまったツッコミに苦笑いされたんだが

「自衛隊の場合は憲兵じゃなくて警務官な、憲兵ってのは鎮守府設立時になんだかんだと理由を付けて常駐部隊を配置したかったお偉いさんが頑張った結果出来た部署だからな」

知らなかったとか言えない、いやバレバレなんだろうけど

「民間登用の司令官なら知らなくても不思議ではないさ」

フォローしてくれるとかもしかして良い人なのかなこちらの憲兵さん

「で、長かったらなにかあるのかい」

話してみろって事だよね

 

 

 

 

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