初期の艦これ   作:弱箔

21 / 96
登場人物(艦娘)

先任の初期艦

吹雪:ブッキー、吹雪
叢雲:一期の鎮守府で睡眠中
漣:御姉様、大抵は漣
電:大抵は電、偶にプラズマ
五月雨:大抵は五月雨

演習組の初期艦

吹雪:大抵は吹雪、偶にブッキー
叢雲:ムラムラ、偶に叢雲
漣:ざみ、桃色兎、大抵は漣
電:いなずま、偶に電
五月雨:さみ、大抵は五月雨

研修に来た叢雲
叢雲の教導をする事になった大和


20 血の気が多過ぎです

 

 

 

「まったく、血の気が多過ぎです」

「さっきまで電もそうだったんですよ、もう忘れてしまいましたか」

無線から呑気な会話が聞こえてくる、それとは真逆の敵意しかない眼を向けられている私としては相応に相手をせねばならないだろう

弾薬は殆どない、接近戦に持ち込めなければ一方的に撃ち込まれる、何処まで回避出来るか、どれだけ早く近付けるか

同型艦だからスペック的にはほぼ互角、単純に技量の差が勝敗を決める

待っていても仕方ない、打って出るか

「あっ、叢雲ちゃん!」

動いたのを見ていなずまが声を上げる、同時に吹雪から発砲炎

「分からず屋の先任はなんとかするって言ったでしょ」

援護のつもりなんだろうけど正直邪魔だった、正面の吹雪もこっちに発砲してるんだから砲撃音を被せないで欲しい

「叢雲ちゃんは弾薬使い切ってるんでしょ、援護しないと!」

「「邪魔!!」」

「えっ、」

「えっと……」

先任の吹雪と私の怒号に吹雪といなずまが戸惑って棒立ちしてる、そのまま引っ込んでいて欲しい

「邪魔だって、あんた達もゆっくり見物したら良いんじゃない」

ムラムラにいわれて渋々といった風に距離を取り始めた二人、障害物は消えた、後は、私の正面に立ち塞がる愚か者を沈める!

「ウチの吹雪は兎も角なんであの新入りの叢雲ちゃんはあんなにヤる気一杯なのですか」

こいつら演習中に雑談を無線に乗せんな、大和との演習中にも感じてたけど、この演習の目的って技量向上とかそういうものじゃないのかも知れない

相手をしている吹雪だって技量と砲撃の精度と密度が合ってない、大破で我慢してやるといってたからとも考えたが、それにしたってこの距離で直撃弾が無いのはおかしい

この状況で自身の回避で吹雪の砲撃を躱してる等という自惚れを持てる程、私は自信家ではない

「早く研修を終わらせて、司令官の所へ戻る、と」

「!……」

「へぇ、戻るんだ、司令官の元へ、ふーん」

無線に乗ってきた大和と電の会話を聞いた先任の吹雪が不愉快だとその感情を声に乗せて無線で届けてくれた、そういうのいらないんだけど

「!」

吹雪の砲撃精度とその密度が急上昇した、さすがに回避し切れず魚雷発射管に直撃、それが飛んでいった、打ち切って空だからどうということもないが

「ちょっと吹雪!なに本気出してんの!叢雲ちゃん沈める気!!」

それを見ていた漣が無線で叫んできた

なんだそれは、つまり遊ばれていたと、そういうことか、ヘェ~~~

「艤装及び兵装の準備は出来てます、出ましょうか、あの二人止めないと」

ん、さっきのは先任の漣か、五月雨も出てくる様だし、さっさとケリを着ける!

「はい、そこまでー」

無線からムラムラの声と同時に三方向から上がる照明弾、え、なに、なんだっけ照明弾?

「おっと、無情にも演習終了時間が来てしまいました、折角これから盛り上がりを見せるか、ってとこでしたが残念です、時間切れとあっては仕方ない、ほらほらさっさと演習場を開けて、使用予定が詰まってんだから延長なんか出来ないんだよ、ハリー、ハリー!!」

昼戦の時に実況と称していたモノが聞こえた

 

結局演習海域に出て来た先任の漣と五月雨に私達は連行される様に帰港した

「この不完全燃焼のモヤモヤはどうしたら良いのよ……」

思わずボヤいてしまった

「それについては同感、後二分あればこうはならなかったのに」

隣りに居たブッキーが応えてきた

「二分?あの距離なら一分でケリがつけられたわ、あんたホントに先任なの?」

あ、ムッとしてる、なんか気に障った様だ

「はいはい、積もる話は場所を変えてからにしてねー、ここも空けなきゃいけないんだから、さみちゃん、お二人様ご案内よろしくー」

はーい、と五月雨の柔らかい声、ムラムラ達は飛んでいった魚雷発射管を回収に向かった、演習海域に登場した二人は何処に行ったんだろ、大和入渠補助かな、電一人では無理があるし

それに私達の艤装と兵装も預かっていった事だしね

 

五月雨に案内されて来た先はちょっとしたゲストルームになっていた

いつの間に室内を整えたのか、と思って逆な事に気がついた

元々演習の後に話す場が設定されていたんだ、大和は知らされていなかった様だけど

座って待っていてくださいね、と私から見てもお持ち帰りして良いですかと聞きたくなる仕草でそう言い残し、五月雨は他の出席者を呼びに行った

「言っとくけど、二分必要なのは大破で済ませようとしたからだからね、変な勘違いしないで」

お、なんだ、根に持たれたか、吹雪って根に持つタイプだったっけ

「砲撃に拘るからでしょ、接近戦に持ち込めば良かったのよ」

「……私、接近戦苦手だもん、ってなによ!」

いけない、思いっきり吹き出しそうになった、慌てて押さえ込んだがバレバレだ

肩で笑いを堪えつつ、だめだ、堪えきれない

「アッハハ、なにそれ、駆逐艦が接近戦苦手って、吹雪って特型のネームシップでしょ、笑わせないでよ」

いけない、笑いが止まらない

「お、楽しそうですな、ブッキーってば叢雲ちゃんともう仲良しさんですか、さすが一番艦、頼れる姉艦、さすふぶ!」

「ブッキーいうな」

吹雪はムスッとした顔を隠そうともせず言い放つ、漣に続いて演習に関わった面子が入って来た

自然と演習組と先任組に別れる、何故か先任組になっている私、まあ吹雪の隣に座ってたからだろう、それに連れて来られただけで事情が飲み込めない様子の大和

「さて、堅苦しいことは何にもない席を設けました、いるのは気心知れた艦娘だけですし、日頃言えない事をぶっちゃけましょー!!」

突然なにを言いだすんだ、この桃色兎は

「いや、それも良いんだけど、先ずは叢雲ちゃんにお話を聞かないと」

演習組の吹雪が演習組の漣(桃色兎)に待ったをかける

「そうなのです、叢雲ちゃんには聞きたい事が一杯あるのです」

先任の電だ

「叢雲さんの事情なら私からお話ししますが?」

大和は私への助け船のつもりなんだろうが、逆効果だよね、この場合

「初期艦の事情に嘴突っ込むな、です」

先任の電に思いっきり睨まれたらしい新造艦はかわいそうなくらいその大きな身体をちいさくしていた、なるほどプラズマ、ね

「なにを聞きたいの、えっと、この同型同名艦がいる場合はどう呼べば良いのかしら」

「好きに呼んでいいよ、間違えた所で害はないし、話す切っ掛けにもなるし、ここで先任だの後任だのを言い出したらキリがないからね」

桃色兎だ

「……あんた、演習中にも無くなる勢いで食べてたんじゃないの」

この桃色兎のお気楽さはちょっと羨ましい、だから少しだけトゲを付けた

「いいじゃないですか、一杯作って来たんですよ、叢雲ちゃんもどうぞ」

先任の五月雨が焼き菓子を勧めてきた、どうやらこの程度のトゲなど誰も気にも留めない様だ

「……ありがとう」

「鎮守府にいた時はどうしてたの」

ムラムラだ、こいつも桃色兎並みに食べてるんだが、気にしてもしょうがない

「鎮守府では、って言われても、あそこ同型同名艦は私だけだったし、私お客さんだったし、どうもなにもなかったわよ」

「?お客さんってどういう事」

今度はブッキーか

「滞在許可が出てるだけの未所属艦、鎮守府の内情には関わらせてもらえなかったって事」

なんで、一斉にこっちを見る、そんなに変な事言ったかな

「初期艦やってたんじゃないの?!」

ブッキーうるさい

「あの司令官ってば意地っ張りにも程があるでしょ、まったく」

おい、漣、なんだそのヤレヤレ感は

「あの司令官さんらしいですね」

「そうですね、叢雲が目覚めないって聞いた時には直ぐに解体して初期艦を要求してくると思いましたが、保護しましたからね、あの司令官さん」

「初期艦抜きで鎮守府運営とか、正気の沙汰じゃないわよね実際」

ツイン五月雨にムラムラが言いたい放題なんだけど

「その辺りはわからないんだけれど、そんなに、なの」

正気の沙汰じゃないとか言われたら気になるからムラムラに聞いてみる

「そうね、例えるなら海の上を走れるからって兵装も持たずにあいつらの大群に突っ込んで行くくらいには無謀だわ」

大群に突っ込ん行く時点で無謀なのでは、という突っ込みはしない方がいいのかな

「鎮守府運営は問題しかないのです、今の所試行錯誤を繰り返して最善を見つけている最中なのですから」

電からだ、ええと、つまり、大群に突っ込んで行くのは既定路線って事かな

「今の鎮守府運営に求められているのは凡ゆる分野での試行錯誤と検証です、なにしろ、私達艦娘という存在が人にとっては不可思議なものなのですから」

何でもない様にいう先任の五月雨

「司令官は艦娘の運用と妖精さんとの意思疎通を如何に正確に効率良く迅速に行えるかを問われています」

続けて演習組の五月雨

「その助けとなるのが、初期艦、あの司令官はその助けを放棄してまで私達の叢雲を保護した、なのに、なんで今頃になって、あんたなんかを初期艦に迎えようとしてるのよ!」

ブッキーになんかって言われてんだけど、コレ怒っていいトコだよね

「ブッキーってば八つ当たりは美しくないぞー、いくら叢雲と仲良しだったからって司令官の判断とこっちの叢雲ちゃんに失礼だと、漣は思うワケですよ」

桃色兎はお気楽なのに先任の漣はそれ程でもないのかな、ここまでの言い様を聞いてると

「司令官の判断は尊重します、けれど、私達は最初の初期艦なのです、人との関わりも長いのです、それをドロップ直後の初期艦と同列に並べられるのは経験の否定になるのです」

「?経験の否定って」

電の主張が今一わからないから聞いてみる

「艦娘は資材さえあれば無限に建造出来ます、同型同名艦も大型艦も資材が無限にあるのなら幾らでも建造出来るのです、でもそうなった時、私達は、艦娘は使い捨てにされます」

「飛躍し過ぎじゃない?いや、理屈はわかるけど、大量生産大量消費って事でしょ、人の経済活動の基本的な行為の一つだっけ」

電の主張はやっぱり分からない

「それを皮肉ると塵を作って塵に埋まる大衆と上澄みを掬って埋もれなかった一部にわけられる、とかになるんだったっけかな」

桃色兎が茶々をいれてきた、この際置いておこう、食べるのに忙しそうだし

「その一部になれなくなるって事?」

「それはあり得ないのです、その理屈で言うなら艦娘は生産物なのですから、消費されるだけになってしまいます」

「だから、使い捨て?」

「今はそれでもなんとかなります、でもこの先はそんな事をしている余裕も猶予も無くなるのです」

なに、この先って、電の主張は何処を向いているんだろ

「人には艦娘の運用を習得してもらわねばなりません、でなければやつらを押し返す事すら出来なくなってしまうのです」

なにをいってるんだ、話が飛び過ぎてないか

「叢雲ちゃんはドロップしてから二週間ぐらいだったかな」

「え、ええ、そうだけど」

私の困惑を見て取ったのか先任の五月雨が話を引き取りに来た

「じゃあまだ、知らない事が一杯だね、研修で一杯お勉強しないと、だよ」

なぜ、今それが出てくる

「そこは私にお任せください、完璧に履修させて見せます」

おい、新造艦、桃色兎とお菓子を取り合いながらそんなこと言っても真実味がないぞ

「まあ、あれよ、電の言いたい事は、人というか司令官には艦娘の付加価値ってのを理解してもらわないと私達は無駄に消費されるだけになりかねないって事よ」

ムラムラがなんかいってきた

「付加価値?」

「そう、電は経験って言ったけど、そこを理解出来ない人は新造艦も初期艦も一括りだからね、まして技量差なんて分かりっこない」

呆れ半分な感じのムラムラ

「その話と、私が司令官の所に戻る話は繋がるのかしら」

お、なんだ、一斉に静まったぞ、変なこと言ったつもりはないんだけど

「司令官の中でもあの鎮守府の司令官はその事を一番理解している、というのが私達の彼に対する評価です」

先任の五月雨はそう言うが、それがなんだというのか、話が見えてこない

「今回、貴方を初期艦にと要望した事でこの評価が揺れています」

「それって、私が司令官の評価を落としてるって事かしら」

「そうとも言えますし、そうでは無いとも言えます」

五月雨ってばどっちなのよ、ハッキリしなさいよ

「漣としては、評価を上げてもいいと思うけど」

おお、ブッキーが凄い目で漣を睨んでる

「ブッキーってば、カッカしなさんな、さっき叢雲ちゃんの艤装を整備するのに工廠に持っていったんだけどさ、あの子達が居たんだよね」

「あの子達?」

不思議そうに首を傾げる電、仕草だけ見てるとプラズマとは結び付かない

「叢雲の妖精さん、叢雲ちゃんに着いてるんだよ」

漣が言った瞬間ブッキーが私に腕を伸ばしてきた、が私に届く前に五月雨が止めた

「五月雨……」

「ダメです」

なに、なんなの、いきなりの状況変化について行けない

「吹雪、落ち着くのです」

なんだ、この、なに、司令官の所の長門でも逃げ出しそうな空気は、そこの新造艦は怯えて震えてるし、それを創り出してるのがこの初期艦、プラズマ、いや違った、電!

「電は見ていませんが、本当なのです?」

「こんな嘘ついてどうするの、艤装を見ればわかる事なんだし」

「……そうなのですか」

そういうと両手で持ったコップを口元に持っていく、仕草だけならとても可愛らしいのだけれど

「吹雪、落ち着いて考えて、叢雲の妖精さんが叢雲ちゃんの艤装にいた、どういう事か分かるでしょ」

「わからないよ、そんな事あるはずないよ……」

吹雪が五月雨の胸で泣いている様だ、この吹雪余程先任の叢雲と仲が良かったのか、というか人の頭の上でなにやってる

「あのー、妖精さんが他の艦娘に移る事ってあるんですか?」

あ、この新造艦さっきまで震えてたのに立ち直りが早い、挙句に天然だ

「ありますよ、実例の報告は少ないようですけど」

天然には天然という事か、大和に答えている演習組の五月雨

「私は聞いた事ないです」

「まあ、大本営では条件が揃わないでしょうから」

「条件?」

「そうですね、人に例えると寿命、でしょうか」

ああ、寿命ね、そう言われるとそんな感じだ

「えっ、艦娘の寿命ってそんなに短かったでしたっけ」

「おーい、そこの大戦艦、少しでいいからそっちで弔ってるのに気を使ってくれや」

あんまりな天然振りに桃色兎が釘を刺しに来た、それで漸く事態に気付いた新造艦が口を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。