四人の退出を見送ってから皆の方に向き直る
「さて、ブッキーが誘導してくれたお陰でダブル叢雲ちゃんが退席しましたが、ここからは漣が叢雲の妖精さんから聞いた話の続きをしましょうか」
「えっ、叢雲ちゃんに聞かれるといけない話なんですか」
そんなに不安そうな顔をしてくれるなよ吹雪ちゃん、あたしだって言いたかないんだから
「叢雲が目を覚まさなかった原因が分かったのですか」
電がお茶を飲む合間に聞いてくる
「ま、そんな所です、叢雲ってば自分が動けないからって妖精さんをだいぶ酷使してたみたいだよ、お陰で退艦命令が陸の上でもアッサリ通る運びになりましたとさ」
「……あんまりに酷使し過ぎて妖精さんが逃げ出した、そういう事ですか」
なんでもない風に言いつつカップを口にする五月雨、この子時々冷静を通り越して来るんだよね
「それであの鎮守府に拾われた初期艦達が驚いちゃって逃げ出したもんだから事態が長期化したんだよ」
「となると、あの叢雲ちゃんは相当性根が据わっているのですか?」
そういう事になるんだろうけど、電はもう少し言葉を選べないのか
「それは今ブッキーが確認中、漣の話は原因の方ね、で、確認するけど、修復中に眠るのは予定された工程、ここまでは良い」
列席者を見回して異論がない事を待ってから続ける
「修復が終われば自然に目を覚ますのが予定された工程なんだけど、叢雲の場合この工程まで来ていないんだ、妖精さんの話によると」
「?そこに割り込むような工程がなにかありましたか、覚えがないのですが、電は修復自体は終了していた、と聞いていますが」
両手でコップを持ちながら電が先を促してくる
「割り込んだというか、分岐したみたいだね、実際の所は現地での検証待ちになるだろうけど」
「?分岐、そんな工程ありましたっけ」
五月雨の首を傾げる仕草がカワイイ、って見惚れてる場合では無い
「あ、五月雨ってば忘れてる、最初の鎮守府、つまり今大本営になってるここを設立した時は状況がどう転ぶか読めなさ過ぎたから、色々仕掛けを作ったでしょ、増設した鎮守府はそれをそのまま模倣して設立してるから仕掛けも丸ごと移設されてる上にその仕掛けが機能する事がハッキリした」
「えっと、そのお話しいなずま達も聞いていて良いのですか?」
なにを言い出す、あんたも初期艦だ、聞きたくないは通さないよ
「いなずま、その質問の意図は何処にあるのですか」
おっと、プラズマ登場か
「特に意図はないかなー、単に知らなくても良い話では無いという確認って所」
助け舟を出すとか、ざみちゃんも結構世話焼きだよね
「……そうなのですか」
黙って頷くいなずま、まあ、コレを追及しても良い事ないしここは流そう
「仕掛け、ですか、いっぱいあり過ぎてどれの事か分かりません」
五月雨も話を戻すし、良いけどさ
「叢雲が入ってた入渠場のカウンターがオールナインになってた、これは聞いてるかな」
「ええ、きいています、ですがあのカウンターは時刻と連動しているわけではないです、只の目安に過ぎません、時刻とは誤差といえる範囲ではありますが、前後するのは仕様の内では」
五月雨の指摘が正に原因の特定を遅らせた主因だ
「だから誰も気にしなかった、私達でさえ、そこを追及する必要を感じなかった、けど叢雲は違った、そこを追及したんだよ、それに酷使されてた叢雲の妖精さんに話を聞いている内に、仕掛けの事が思い当たったし、妖精さんはそこを指摘して来た」
「えっ、でもあの時は司令官から協力要請があって大本営にいる初期艦も調査していますよね」
「その通り、よく覚えてるね吹雪ちゃん、ではその結果はどうだったかな」
「たしか、原因不明、と聞きましたけど」
「それもその通り、つまり、あの時調査に入った初期艦と妖精さんはこの仕掛けが分からなかったって事になる、あれは最初の初期艦でなければ見つけられなくなってしまっている、最初の鎮守府を作った妖精さんが着いている私達、最初の初期艦にしかわからなくなっているんですよ、困った事に」
「妖精さんの作った鎮守府に妖精さんの分からない仕掛けがあるのですか?」
「そういう事になるんだよ、いなずまちゃん、それで困ってるんだ、漣は」
「漣の話を真に受けるなら、あの仕掛けのトリガーを叢雲が引いた事になりますが、私達もトリガーを引く事になるのですか」
あら、プラズマが抜けきってないのかな、いなずまちゃんの話を端折るなんて
「再発の可能性はゼロではない、けど気にしてもしょうがないくらいには小さいね、妖精さんの話だと、叢雲は外でトリガーロックの解除キーを持たされて知らずに使った、というか眠ってる内に勝手に作用してしまったんだろうね、たぶんだけど」
「……こちらを探っているのでしょうか」
五月雨が聞いてくる
「可能性はある、ここで最初の初期艦が欠ければやつらに攻勢の糸口にされかねない、その意味でも叢雲は自身の存在を継ぐ初期艦をあんなに呼んでいたんだと思う」
「?話がわからないですけど……」
おっと、吹雪ちゃんから尤も過ぎる質問、今のは飛び過ぎた、いくら知っている事でもココに繋げてこれるのは私達、最初の初期艦ぐらいだろう
「わからない吹雪ちゃんの為に解説していきましょう、よろしいですかな、お三方」