初期の艦これ   作:弱箔

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03 大本営より出頭指示が届きました

 

 

 

6月11日

 

「司令官、大本営より出頭指示が届きました」

執務中に声をかけられて顔を上げたらジト目の事務艦と目があった

なにか言いたげな表情だが、構わずに差し出された書類を手に取った

「なんだろうねコレ」

内容を確認した素直な感想だ

「なにをやらかしたんですか」

ジト目のままの事務艦、酷い言われ様だし冤罪を主張したい

「初期艦の事でなにかあるみたいだねぇ」

何故被りをふるんだ、こちらの事情は全部報告してあるし疚しい所はなにもないぞ

「初期艦不在期間が長過ぎます、これで良く鎮守府運営できるものだとある意味感心してしまいますが」

「……初期艦なら居るが」

「お言葉を返す様ですが、所属して居るだけで運営に参加出来る状態ではありません、司令官であれば鎮守府運営に於ける初期艦の重要性をもっと認識していただかないと」

なんか大分言葉を選んで諭す様に言って来るんだが、コイツもアレか何十回と繰り返し言って聞かせないとダメな方面のヤツか

「解体しろと?」

「そこまでは言いませんが……」

事務艦に艦娘の解体権限は無いしな

解体拒否権なんて云われるものはあるんだが行使の実例は今の所聞いた事がないし

「兎も角、こんなものは理由を並べてお断りしとこうか」

だからそんなに不満そうに言いたい事が山程あるって顔をしてもダメものはダメ

事務艦の言い分が正論な事はわかってる、鎮守府運営は初期艦と司令官の二人が妖精さんと意思疎通出来る事が前提なのだから

それに多くの場合妖精さんと会話出来るのは初期艦だけだ、司令官は身振り手振りでどうにかしないと初期艦頼みどころか依存する事になる

この鎮守府がどうにか運営出来ているのは私が妖精さんと会話出来るから

民間登用の司令官の中で妖精さんと会話出来る者は私以外にもいるんだが、まだ順番待ちらしい、そういう意味でもこの鎮守府は珍しがられてる

「……そんなことばかりしてるからチンジュフとか散々な云われ様なんですけど」

「……」

音的には同じだったが違う漢字が充てられたのはわかった、事務艦にはストレスフルな状況な事はどこかにメモって置こう

 

6月12日

 

おかしい、昨日お断りしたのに何故か視察日程の通知が来た

そんなに問題視してるのか、大本営は

それにしては契約解除の紙切れ所か教育的指導すらしてこないんだが、どういう事なのか

「スケジュールを変更しますか」

思いっ切り事務的に聞かれた

「いや、その必要は無い、視察の相手を私がすればいいだけだしな」

実務上の課題もあってこちらはそれ以外の手は取れそうに無い事情もある

勿論こんな事は事務艦だって分かってる、分かっている事を敢えて聞く確認という工程が嫌味に聞こえたのならそれは私の性根が曲がっている所為だろう

「あ、スケジュールというのは先日合流した初期艦の事なのですが」

「?」

初期艦は大本営に研修旅行に旅立つんだろ、変更するとは何処を変更するんだ

「合流した初期艦から滞在申請がなされ、二週間の滞在許可が降りています」

「そうだったな、失念していた」

処理した書類の中にそんなのがあった気がする、すっかり忘れてた

「視察終了時に同行させられれば、交通費を大本営持ちに出来るかと」

「それで納得してくれそうか、その初期艦は」

「司令官から話せばいけると思われます」

コイツ、面倒な事態になるのを見越して押し付けに来やがった

さっき嫌味がなかったと思ったら、全く優秀な事務艦だ

確か滞在理由はまだ司令官と会ってないからだったな、会わない訳にはいかないか

「何処かで時間を作らんとな」

何故嬉しそうにしてるんだ、この事務艦は

「おまかせください!」

なんだろうねぇ、このありがたい様なそうでない様な複雑なモノは

 

夕食後にその時間を作る事に成功した訳だが、何故この初期艦は私を睨んでいるのだろう

「初めまして、この鎮守府で司令官職に就いている佐伯です」

兎に角自己紹介しないとね、睨んでる理由は追々わかるだろうし

「……特型駆逐艦五番艦の叢雲、あんたがここの司令官?」

その嘘をつくなと強力に主張する眼はどうにかしてもらいたい

「その通り、それとこの席を設けたのは貴方の滞在理由だという事は考慮してもらいたい」

「ふん、考慮、ね」

なんかめっちゃご機嫌斜めなんだけど、なにかあったのか

「司令官だと言い張るなら聞きたい事があるわ」

「なんでしょう」

言い張るとか言われてるんですけど、そこは置いとこう、突くと長くなりそうだし

「なんで起こさないの」

「?」

「貴方の初期艦、目を覚まさないまま随分放って置かれてるって聞いたわよ」

あ、それね、素でなんのことかと考えてしまった

これを聞いて来るって事は随分と動き回ったんだろうな

「それについては話すと長くなるし何より貴方は知る必要のない事だ、どうしてもというのなら私に聞くよりも大本営で資料を読むといい」

「それで答えてるつもり?」

ほう、ドロップ艦特有の眼光だね、最後に見たのはいつだったか

「?なに、冗談を言った覚えはないわよ」

懐かしさについ表情が緩んでしまった、向こうは笑ったと取ってくれた様だが

「気を悪くしたのなら謝る、知ってると思うがウチの鎮守府には建造艦が多くてね、その眼を見るのは久し振りなんだ」

「目?」

「そう、あいつにもよくその眼を向けられたよ」

自分の顔を探る様に手を当てていた叢雲はしばらくしてそれを止めた

「その話はわからないわ、って話をそらさないで」

「そらしたつもりは無いんだが、貴方はあれ以外のどんな答えを期待しているんだ?」

目の前の初期艦は大本営行きが決まってる、この鎮守府に着任する事も無いだろう

どう考えても知らなくていい事を何故わざわざ聞いて来るのか、そこがわからん

「ん、なるほど、お客さん扱いである以上あれ以外は無いと、そういうコト」

なんでそこで視線をそらすんだろ

「ならここに着任すれば違う答えが聞けるのね」

自分でも自覚できた、この時自分が間抜け面を晒したのが

 

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