「ご馳走様でした」×6
美味しかった、昼食で民間運営されているという食堂で食べた食事よりずっとおいしかった
食材は同じく民間運営されているという食料品店で揃えたのだから質の上で劣る事はあっても勝る事も無いだろう
それでも大和の作った食事の方が美味しかった、五月雨と電も手を貸したといってるし、もうこの三人で食堂を開いてもらいたいくらいだ
「あ、忘れないうちに、コレ」
言いつつムラムラがなにかの記録紙?の様な紙を出した
「確かに」
最初に受け取った五月雨が隣の電にその紙を回した
「?」
なんの紙だろ、回って来た紙を見ると何処かに寄付した事が記載されていた、ますますわからない、ナニコレ
「あんたは知らないわね、これは戦没者基金への寄付記録よ」
私がなんだかわからなくてその紙を凝視した為か、ムラムラが説明してくれた、戦没者基金?ナニソレ
取り敢えず説明があったのでその紙をムラムラに渡した
「別に強制とかじゃ無いわよ、なにかの機会があればココへ寄付しましょうって話があるだけだから」
「?えっと、寄付??何でそれをみんなで確認するの???」
寄付という行為はわかる、戦没者基金ってのも言葉としてはわかる、でもなんでそれをここで確認する必要があるんだ、ん、戦没者?
「艦娘は人から見れば製造物なのです、使い捨てるというのも使い方の一つ、それに人はまだ艦娘の運用を習得してはいません、だから、沈めてしまうのです」
淡々と話す電
「それ自体は避けられない事、でも私達は弔うという概念を知っています、人が沈んだ艦娘を弔ってくれないのであれば、残った私達でそれを行う事にしましょう、となりました」
同様の五月雨
「?」
言ってる事はわかる、が理解できない、それは人の営みの一つだ、艦娘の行為では無い、艦娘は人に似せて造られてはいるが、人のマネをする必要は無い、自己満足とかそういうヤツだろうか
「あんたには難しい概念だろうから、今すぐに理解しようとしなくても大丈夫よ」
ムラムラよ、それはどういうつもりで言っているのか
「いや、言葉としては理解出来るわ、でもそんな人のマネをする必要がわからない」
思った所をいってみる
「……人のマネ、確かにそうですね、でも私は沈んだ艦娘達を弔う必要があると思っています」
なんだろう、もっとなにか別の事を言いたそうな五月雨
「弔うという概念を行為として表すのはとても難しいのです、電は始めからそれを理解出来た訳では無いですし、わからないから結論を出すまでに長い時間が必要でした」
「叢雲ちゃんもいずれわかる様になるよ」
最後にはブッキーにまで言われてしまった、が、まったくわからない、放っておいてもいいかな、私の目的とは関連が薄そうだし
「人のマネとして見るとわからないかも知れませんね、では別の方向からの必要を考えて見てはどうでしょうか」
はい?ますますわからない、なによ大和の言う別の方向とは
「取り敢えずこの寄付は強制じゃないわ、でもそれなりに集まるのよ、誰かが沈んだりするとね、その艦隊に編成されてた子たちが所持金全部とか、珍しい話じゃ無いしね」
「えっ、」
そういうムラムラは今寄付した、って事は、エッ!?
「誤解しないで、私が僚艦が沈むのを許すと思うの?今のはここの食材費よ」
はい?ナニソレ、意味がまったくわからないんだけど
「機会があれば寄付するって言ったでしょ、単にその機会だったってだけよ」
「えっと、さっぱりわからないんだけど、その基金は沈む艦娘がいると額が増えるって事?」
だったって言われてもわからないものはわからないよね
「そういう面もありますね」
五月雨が簡潔に応じた
「そもそも艦娘に残る家族なんていないんだから、基金ってのをどうにかしたらいいんじゃ無いかといつも思うわ」
感想?だと思うものを言うムラムラ
「人の社会制度に沿って運用しようとなると基金というのが適切だと、判断されています」
「それは、わかるんだけどね」
五月雨とムラムラの会話は聞き流した、私としては関連が薄い話しだし、そういえばムラムラは食材費だと言っていた
「食材費が寄付って、そういう事なら私も寄付した方がいいのかな」
「いえ、叢雲さんは食材費を出されているので必要はないですよ、寄付したいというのなら別ですが」
ん、出してる?大和はそう言うが払った覚えはないんだけど、あの時の会計は大和と五月雨がやってたし
「ここに来られた翌日のショッピングで大本営内の支払いや配送手続きなどについてはご説明しましたが、覚えてませんか」
え、あの買い出しの時にそういう説明があったのは覚えてる、なんか電子マネーとかいうので硬貨や紙幣ではなく只の板?プレート?でそういう事が出来る様になっていると
大本営内は殆ど電子マネー化されているから使用法を覚える様にと散々買い物させられた
「カード決済なので決済機の周辺にいればそれで支払いに加われるんですよ、これをするには事前にグループ登録して決裁権を設定する必要がありますが」
大和の説明が続く
「グループ登録?何それ聞いてないんだけど」
「あれ、その説明と登録は本日致しましたが、覚えていませんか」
エッ、今日のあの窓口巡りの中にそんなのがあったの!?ヤバイ覚えてない
「あー、この顔は右から左へ通り抜けて覚えてないって顔だ、あんた研修は真面目に受けた方がいいわよ」
ムラムラに突っ込まれた、そんなこと言ったって窓口幾つ回ったと思ってるのよ!一階から四階までの窓口の殆どで手続きがあったのよ!!
覚えきれないわよ!!!
と言いたかった、言えないけど
「やまちゃん、もしかして、新人さんに必要な手続きを今日だけで終わらせたのですか?」
電から質問が来た
「はい、叢雲さんは書類のテンプレートを理解されるのが早くてサクサク記載されるので今日中かかる予定が午前で終わってしまいました、午後は急遽予定を入れたんですよ」
電の問い掛けに大和がスラスラ答えたが、それを聞いた三人は其々に呆れた顔をしていた
「……やまちゃん、それはちょっと詰め過ぎかな」
呆れ気味の五月雨
「やまちゃんは時々、物凄くスパルタさんになるのです」
電のは感想かな
「あれを、午前だけで全部、そりゃ覚えてないわ、書類書くだけで二日かかったもの、私は」
ムラムラまでダメ出し、どういう事なの
「え、あれ、ダメなんですか?」
大戦艦よ、それを研修生としてはどう聞けばいいのか
「ダメっていうか、何の書類で如何して必要か、そこを解説しながら書いたらどうやっても一日では終わらなくない?それとも、私の理解が遅かったのかな」
「ムラムラの教導艦は誰でしたか?」
五月雨だ、それを聞いてどうするんだろ
「天龍よ、尤も向こうは際限無くやってる任務だから凄く手慣れてたけどね」
えっと、つまり、どういうことだ
「やまちゃんは初期艦の教導艦に着いたのは何件目ですか?」
質問を続ける五月雨、なにか思う所でもあるのかな
「今回が初めてです」
エッ、そうなの、知らなかった、でも教導艦は此方から選んだり指名したりは出来ないし、教導艦やるにも無資格とか無基準という事もあるまい、必要な資格なり技量は持ち合わせていると認定されている筈だ、問題無いと思うけど、どうなんだろう
「うーん、余計なお世話かも知れませんが、教導方針について経験豊富な先達と意見交換をされてはどうでしょうか、五月雨にはやまちゃんの教導方針は詰め過ぎに思えます」
「理解度の判定も無く課題を提出させるだけの教導では電は賛同できません」
「ま、こう言ってる事だし、取り敢えず天龍にでも相談したらいいんじゃない、あれはどうしようもなく御節介で世話焼き気質だから、イヤな顔なんてしないわよ」
五月雨、電、ムラムラはこう言うが、どうなんだろう、判断材料が足りない、でもなんかあったら頼って来いと言ってたよね、今朝会った天龍は
「……そうですね、今朝もなんかあったら頼って来いと叢雲さんに仰ていましたし、その線で相談してみます」
大和ってこういう時も素直よね、感心する
「?今朝なんかあったの」
あ、何故そこを突くんだこのムラムラは
「ええ、少し」
あ、大和が言葉を濁した、気を使ってくれてるのは嬉しいが、この場合逆効果だ
「なに?」
ああ、ムラムラの好奇心を刺激してしまった、ふと見れば電と五月雨も同様だ、コレはイケナイ
「夕べお風呂に入ったのよ、妖精さんがケアしてるなんて知らずにね、それで天龍が大和に苦情を言いに来た、それだけよ」
観念して自分で吐いた、大和が言うまで待っていても仕方ないし
「お風呂?」
「妖精さん?」
「ケア?」
何の事かわからなかったのか、電、五月雨、ムラムラが疑問の声を上げた
「叢雲ちゃんは二週間ほど鎮守府にいた、その間お風呂に入ってなかったって事でしょ」
ブッキーよ、そんなにハッキリいってくれるな、泣きたくなる
「そこからなのですか」
「初歩にも到達していませんね」
「あー、人の事言えない、私もそうだったし、鎮守府だと遠巻きにされるのよね、お互いの距離を測りかねているうちに大本営行きだし、詳しい話とかはなくて当然、なんか鹵獲された気分だったわアレは」
三人はブッキーの指摘で納得したらしい、嬉しくないが
「……そうなんですか」
なんか大和が理解が追いつかないって感じだけど、こっちは恥ずかしくてそれ所じゃない
「でも、その様子だとやまちゃん、叢雲ちゃんと一緒に入ったみたいね、お風呂」
そのツッコミいる!?なんでブッキーは蒸し返す様な事を
「ええ、お一人では対処に困るだろうと思いましたので」
「なんか、やまちゃんってこう、なんていうのか、偏ってるよね」
「偏る?」
「そう、気のつくところはトコトン気を使ってくれるけど、そうでない所はマルっと放置、知識?見識?教養?っていうのかな、その範囲がね」
「……」
なんだ、なにが言いたいんだ、ブッキーは
「偏りのない艦娘がいるのですか、まさかブッキーがそうだなんて、寝言は聞かせてくれるなよ」
あ、なんかプラズマ化してる
「そんな自惚れが出来るほど自信家じゃないつもりなんだけど、プラズマからはそう見えるの」
「プラズマじゃないのです、いなずまなのです!!」
「まあまあ、そんな事は置いてですね、叢雲ちゃんの教導方針を……」
「五月雨はいつもそうなのです、狡いのです!」
「えっ」
「そうだよね、こっちはブッキーとかいわれてるのに、五月雨はそういうのないもんね、立ち回りが上手いのかな」
「えっ」
「なんか、始まったし、私なんで呼ばれたんだろ」
先任三人が漫才を始めた所でポツリと呟くムラムラ、そういえばなんでだろ
「大和の料理目当てで来たんじゃないの」
「それは間違いじゃない、けど、呼び出された理由ではないわね」
ふと見れば大和が食器を片づけ始めていた、漫才はしばらく続きそうだし、手伝うか