初期の艦これ   作:弱箔

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36 残った高練度艦

 

 

「残った高練度艦って、見た事ないんだけど」

 

そんな大群を撃滅出来るだけの艦娘がいるのなら、今まで会わなかったのはなんでだろ

 

「あの人達、大本営に未だ抗議中でね、官舎から殆んど出てこないんだ」

「大本営の士官達はもう諦めてしまっているのです、交渉の余地なしと、抗議中の艦娘達もそれを感じ取って上部機関への転属を申し込んでいます」

 

ナニソレ、そんな事やってる場合じゃ無いでしょうに

 

「その申し出を受けて幾つかの国で鎮守府の開設を検討してるんだって、その結論が出るまでは現状維持って事、お互い関わりたく無いってさ、駄々っ子だよね、聞いてるだけなら」

 

吹雪の言い様が引っかかる、なんかあるのかな

 

「吹雪はその時には何処にいたの?」

「何処にもいないよ、私がドロップする前の話だもの」

「いなずまもそうなのです、初期艦の中であの時に居た先任は一号と一組だけなのです」

「一号?一組?」

 

ムラムラが三組とか聞いた気がする

 

「それも説明されてないの?いくら実地主義でも端折り過ぎだよ、何は無くとも座学をやんないと、一事が万事ぶっつけ本番、事前の知識なしでローカルルール満載の大本営を渡って行くのは無理、叢雲ちゃんに必要なのは兎に角座学、現状を測れるだけの知識を習得しないと研修がいつまで経っても終わらないし、研修が終わらない限り叢雲ちゃんは大本営所属艦だよ」

 

吹雪に言われて思い出した、そういえば大和の教導が時間稼ぎでしか無いって結論付けなかったっけ私

直後に桃色兎に演習に引っ張り出されてそのまま流されてないか

いや、ここは時間をかける所だと思う、例え流されているだけだとしても、今の流れに抗おうとしても、何処へ向かえば良いのかすら見当も付けられない

 

吹雪の言葉を借りれば、現状を測れるだけの知識、これが私には決定的に欠けている

 

思い返せば大本営に到着して放置された時、自力では何もできなかった、偶々視察官に会えたから如何にかなっただけだ、これも現状を測れるだけの知識を持ち合わせなかった事が原因だ

今更あの徒労を繰り返そうとは思わない、しかしそうなると疑問もある

なぜ大和は実地研修に拘っている?私はドロップ艦で鎮守府にそれなりの期間いたとはいえ研修に来ている身だ、知識より実践という方針は何を根拠にしているのだろう

大和は先任の叢雲を超える技量を習得させるって意気込んで無かったっけ

 

「叢雲ちゃん?どうしたのです?」

 

おっと、長考してしまった様だ、いなずまが心配そうにこちらの顔を覗き込んでいた

 

「なんでもないわ、ムラムラが三組だって聞いたなと思って、何処で聞いたか思い出してただけ」

「あ、そこは聞いたんだ、ムラムラとあの時演習場の準備をしていた私達が三組の初期艦、あの演習に割り込んで来たのが一号の最初の初期艦、一組は二名欠員で三隻体制、二組は大本営の維持管理業務に忙殺されてる」

 

一気に説明してくる吹雪、だけど私は疑問だらけだ、欠員って何、忙殺ってどういう事、なんで最初の初期艦だけ組じゃなくて号なのよ

 

「そんなにイッペンに言ったら叢雲ちゃんの疑問が積み上がってどれから質問していいのか困ってしまうのです」

 

いなずま、良いこと言ってくれた、正にその通りだ、思わず何度も頷いてしまった

 

「……そうみたいだね」

 

苦笑いの吹雪

 

「お待たせしました、用意が整いましたから、どうぞ」

 

キッチンから大和が顔を出した

 

 

 

 

 

「ではいただきましょうか」

 

大和の作る食事はとても美味しい、この食事をしながら小難しい話をするのは野暮とかナンセンスというものだ、そもそもの話として小難しい話と美味しい食事、何方を優先させるかなどと不毛な議論をしたがる変わり者はこの場にはいない

そんな訳で大和が協力して欲しいと言った事案は食後に回された、食後に振る舞われたスイーツを楽しみつつ事が進められる

 

「叢雲ちゃんと話してみた感じとしては、見聞きする全てが初耳って感じだね」

 

満面の笑みというのを浮かべてる吹雪

 

「大和はそれを知っているのですよね」

 

いなずま、おまえもか、絵面的には締まらない、締める所でもないかと思い直す

 

「大和としては叢雲さんが何処までご承知なのかを測りかねましたので、実践してもらいながら分からない所を補完していこうと考えていたのですが、お二人のお話からすると方針を間違えたようですね」

 

なんてあっさり、それで良いのか教導艦として

 

「そうなのですか、いなずまはてっきり入渠を見越してのスパルタ教練かと思いましたが」

「入渠を見越して?」

 

どういう意味だ、そういえばいなずまはさっき入渠するのが一番早いとか言ってた

疑問を口にしている所から、大和も意味が掴めていないようだけど

 

「入渠すれば工廠の妖精さんと出来るでしょ、意見交換」

 

言ったそばからスイーツを頬張る吹雪

あ、そうか入渠中に行われる妖精さん同士の交流会、入渠の機会があれば少なくとも私に着いている妖精さんは色々知る事が出来る、後はその都度私が聞けば良い、新規兵装の時と同じ要領だ

いなずまが言っていたのはコレか、成る程、確かに入渠した方が早いな

 

「それも一つの方法だとは思いますが、その場合艦娘自身が習得したとは言えません、大和は叢雲さんに習得して頂く為に教導しているつもりです」

 

ん、前にも同じ様な事を聞いた気がする、どこでだっけ

 

「でも叢雲ちゃんの入渠予約はしてるんだよね、どうしたってその時には意見交換はされる事になるし、何より叢雲ちゃんは先任の叢雲の妖精さんが着いているんだから、入渠すればその辺りも整理されるんじゃない?」

「整理ってなに?」

 

話の結論なり少なくとも方向性が見えるまでは大人しくしていようと思っていたけれど、吹雪の台詞に思わず聞いてしまった

 

「あれ、叢雲ちゃんは入渠で妖精さんが何をしてるかって妖精さんから聞いてないの?」

 

吹雪は不思議そうに聞いてくるけど、修復するとは聞いているが妖精さんがどうこうというのは知らないんだが

 

「艤装や兵装の修復と補給、艦娘本体も同様、じゃないの?」

 

取り敢えず聞いた事を言ってみる

 

「聞いているじゃないですか、艦娘と妖精さんは不可分な存在なのです、艦娘が修復されるのなら妖精さんも修復されるのです」

 

ん、分からん、いなずまの言ってる意味が掴めない、妖精さんを修復するとは一体

 

「えっと、今叢雲ちゃんには叢雲ちゃんと不可分な妖精さんと先任の叢雲から移譲された妖精さんがいるでしょ」

 

吹雪が説明してくれるらしい、ここまではその通りなので頷く

 

「本来の定員からすると多い事になる、今の叢雲ちゃんに着いている妖精さんの中には持ち場が無く溢れてる妖精さんがいるのよ、そういった妖精さんが入渠の際に艦娘から離れて工廠の妖精さんになったりするの、この逆で工廠の妖精さんが艦娘の妖精さんになったりする事もある、入渠は艦娘にも妖精さんにも重要で大事で欠かせない事なんだよ」

 

えっ、何それ聞いてない、エッどうしたらいいんだコレ

先任の叢雲から譲られた妖精さんが居ないなる?ドロップ艦だから建造艦よりはマシとはいえ今の私の技量は譲られた妖精さんに拠る所が多い、それは自覚してる、それが無くなる?

研修でその技量を取り戻す所までいけるのか、それ以前に司令官の叢雲から譲られた妖精さんがいなくなった私を司令官はどう見るのだろうか

 

「叢雲さん?」

「どうしたの、叢雲ちゃん?」

「叢雲ちゃん、どうしたのです?」

 

なんか呼ばれてる気がするが、私はそれどころでは無かった、司令官が私の話に乗ったのは司令官の叢雲の妖精さんを譲られているからだと思う、どう考えても私を必要としているからでは無いだろう、これは漣も指摘していた、あの鎮守府の司令官は提督だと、初期艦にハイレベルな技量を求める必要は無い、極端にいえば初期艦は必要ですら無いと、只のドロップ艦でしか無くなった私を司令官はどう見る?

 

「ごめんなさい、今日はもう休ませてもらうわ」

 

如何にかそれだけは言葉に出来た、もう頭の中が如何にかなりそうだった

 

 

 

 

 

 

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