初期の艦これ   作:弱箔

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38 話したい事は話せた

 

 

 

取り敢えず話したい事は話せたので桃色兎の所に戻って来た

戻る間ずっと漣がグチグチと不満を垂れ流していたが、こういうのは放置に限る、変に関わるとドロ沼だし

 

「ちょっとざみちゃん、きいてくれる?」

 

到着するなり先任の漣がなんか言い出した

 

「聞きませんよ、漣一人にこんな厄介事押し付けて叢雲ちゃんと楽しくデートに行った惚気話なんて聞きたくないです」

 

おう、桃色兎はこちらに顔も向けない、相当だねこれは

 

「五月雨達ってばこの前の時大事な話もすっ飛ばしてやまちゃんの美味しい手料理を楽しんでたんだって、もう、そういう事なら漣だって行ったのになー」

 

桃色兎の事など御構い無しに続けるとは流石にいい根性してる、先任の漣の話が聞こえたのだろう桃色兎が何故か手を止めた

 

「なんですとー、やまちゃんの手料理!漣も頂きたいです!!こんな事してられねぇ、早速やまちゃんを探さねば」

「お待ち、どこ行くの?」

 

何かやっていた作業を放り出した桃色兎を漣が捕まえた

 

「どこって、やまちゃん探しに……」

「そんな時間は無い!!予定がせまってるんだ、サッサとする、ってか、五月雨達はどうしたの?」

 

そう言われてみれば周辺に姿が見えない

 

「昼食に行きましたよ、もうそろそろ戻ると思います」

 

捕まえられたままでも普通な桃色兎、こういう所は初期艦というより漣という艦娘の個性なんだろうな、お気楽というかマイペースというか、変に流されずにその場に居続けられるってのはある意味才能だと思うわ

 

「?」

 

なんだ、桃色兎と先任の漣がこっちを見てる、どうしたんだろ

 

「叢雲ちゃん?今、スッゴイ失礼な事考えてなかった?」

「え、そんな事ないわよ」

「そうなの、その割には珍獣か何かを見るような目をしてたけど?」

「珍獣って、珍しいってだけなら私だって大して変わらないでしょ、ただ、二人とも仲良しさんだなと、思ってただけよ」

 

何故か顔を見合わせてしまったダブル漣、あれ、変なこと言ったかな

 

「聞きましたか御姉様、漣達仲良しさんだそうですよ」

「あれ、ざみちゃんには異論があるの?」

「まさか、滅相も無い、仲良しさんですよねー」

 

なんだろう、この二人は複雑な関係なのだろうか、お互い嫌いって訳でも無いんだろうけど、微妙な何かがありそう

 

「ざみちゃん!!きいて、聞いて!!」

 

突然大声で呼ぶ声、そちらを見れば五月雨が走って来ている、その後ろを先任の五月雨達が歩いてる

 

「どしたの?慌てて」

 

聞いてと言われた桃色兎が不思議そうにしてる

 

「今食堂に行ったんだけど……」

 

息切れして続かないとか、どんだけ慌ててるのよ

 

「さみちゃんってば、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ、当番だそうですから」

 

後ろにいた先任の五月雨達が追いついて来た

 

「当番?食堂の?」

「ええ、行って驚きました、今日の当番は大和なんだそうです、珍しいですよね」

 

「えっ?」

 

なんだ当番って、聞いてないんだけど

 

「今日は叢雲ちゃんの方で予定の変更を申し込まれたから丁度良かったって言ってたのですが、違うのですか」

 

先任の電がこう言ってるが、違う、そうじゃない

 

「当番ってなに?、予定の変更はしてもらったけど、当番がどうのって聞いてないんだけど」

 

唐突にパンといい音がした、何を思ったのか先任の漣が手を叩いた音の様だ

 

「よしわかった、これから漣達がメシ休だし、叢雲ちゃんも一緒に行こう」

「御姉様、叢雲ちゃんとデートの続きなら漣は遠慮しますが」

 

桃色兎はまだそれを言うのか

 

「だって、叢雲ちゃん、ざみちゃん誘って頂戴」

 

はい?誘えって、昼食に?どういう事なの

 

「ほら、叢雲ちゃんがデートの邪魔だって」

「なにを言ってるのよ、邪魔な訳ないでしょ、一緒に行きましょう」

 

反射的に言ってしまった

 

「そういう事なら仕方ない、叢雲ちゃんに両手に花の趣味があったとは意外ではあるが、わからないでは無い、三人でデートと行きますか」

 

え、なんて言ったこの桃色兎、私の思考はここで止まってしまった

 

 

 

 

 

そのまま手を引かれて食堂に到着した、らしい

今の今まで頭が真っ白だった、何でだったかな

気がついた時には食堂の椅子に座ってた、いつの間にか定食らしきプレートがテーブルに鎮座している

これは一体、思考が追いつかない

 

「どしたの?食べないの?」

 

不思議そうに桃色兎に聞かれた

 

「えっと、ちょっとごめん、状況に理解が追いつかなくなってる」

 

なにを言ってるんだ、自分の発言が白分で意味不明だ

 

「……ここに来るまでもなんか反応薄かったけど、どうしたの?」

 

先任の漣にも不思議そうに聞かれてしまった、これは下手に辻褄合わせようとするよりぶっちゃけた方が後腐れしなさそうと思い直した

 

「いや、なんか、ここに来る迄の記憶が飛んでるんだけど、なんでだろ?」

 

テーブル越しに顔を見合わせるダブル漣

 

「記憶が飛んでる?どこから飛んでるの」

 

なにやら見合わせた二人でアイコタクトの末、先任の漣から聞いて来た

 

「漣が誘って頂戴って言った辺りからかな?」

 

思い出しながら何とか記憶を引き出す

 

「その後漣も誘われて三人でデートって事になったんだよ、覚えてない?」

 

なんで桃色兎は悲しそうにしてるんだ

 

「そうだっけ、食堂に昼食に行きましょうって話じゃなかったかな、覚えが曖昧だけど」

「ひどい!漣をデートに誘っておきながらそれを忘れるなんて!!」

 

おおう、驚いた、えっとこれどうすればいいんだろ

 

「うーん、ざみちゃん、これはもしかすると叢雲ちゃんはこっちが思ってるほど適応してないのかもしれないよ」

「ふぇ、そうなんです?」

 

さっきの激昂ぶりから一転、素に戻ってる、立ち直りというか切り替えというのか、頭の回りだけは速いよね漣達は、ってそんな事より気になる事を言ってた

 

「適応ってなに?」

「うん、ドロップ艦の傾向として言えば社会性は元からかなり高いんだよ、でも、叢雲ちゃんはざみちゃんの冗句、まあ質が悪い分を割り引いたとしても受け流せてない、真に受けるか、割り切るかの二択なんだよね、この傾向は建造艦に多いんだけど、なんで叢雲ちゃんがそっちの傾向なのか、興味深いですな」

 

漣の言い分がイマイチ分からない

 

「ほほう、それは興味深いですな」

 

なに、なんか漣二人が意見を一致させた様だけど、この妙な悪寒は何?

 

「まあ、取り敢えず食べちゃいましょう、冷めちゃいますし」

「そうですね、叢雲ちゃんも遠慮なくどうぞ」

 

先任の漣と桃色兎に食事を勧められた

 

「え、ええ」

 

なんだかわからない悪寒を感じつつプレートに乗った定食を口に運ぶ

 

「!」

「?こんどはどうしたの」

 

先任の漣に聞かれた、そんなに言う程顔に出たかな?

 

「これ、大和の料理でしょ」

 

思った事をそのまま口にした

 

「そうだよ、今日はやまちゃんが当番だって、さっきさみちゃんが言ってたでしょ」

 

桃色兎はそう言うが、えーと、そんな事言ってたかな、覚えがない、いや待って、言われてみれば先任の電がなんか言ってた覚えがある

 

「そうだ、電が言ってた、なんか丁度良かったとか」

 

「ああ、そう言えばやまちゃんが当番とか聞いてないって言ってたね叢雲ちゃん」

 

食事を進めながら言う先任の漣

 

「その当番っていうのは昼食の当番だって事?」

「やまちゃんの場合あんまりこっちに入らないからね、当番の時は二食分入る様にしてるみたいだから今回もそうなんじゃないかな」

 

続けて先任の漣だ、食堂の当番にあんまり入らない?確か大和は予定が決まらないからこちらは使って無いと言ってた

 

「二食分?朝食と昼食って事?」

「今回は昼食と夕食って当番表には書いてあったよ」

 

こちらも食事を進めながらの桃色兎

なら夕食分はこれからな訳だ、まったくこういう事は一言欲しいんだけど、っていうのは我儘か、昨日のアレでは大和の性格からして言ってこないよね

 

「じゃあ、さっさと食べて大和に手を貸しに行くわ」

「「えっ」」

 

何故驚く、変な事は言ってないと思うけど、それに毎回キッチンから追い出す大和は絶対に私を見誤ってる、そこは色々と改めさせなければなるまい

 

「叢雲ちゃん、それは……」

 

なぜ困った顔をするんだ先任の漣は

 

「良いじゃないですか、本人がやると言っているんです、やってもらいましょう」

 

先任の漣は何か言いたげにして言葉を濁したが、桃色兎はいつもの調子だった

 

 

 

 

 

食べ終わって食器を返しながら大和を捕まえて手を貸すと言ったら、何故か困った顔をされた

問い詰めようとしたら漣達が割り込んで来て、準備はこっちで済ませとくから後ヨロシク、そう大和に言い残して両脇を抱えられて食堂の裏手?に連行され着替える様にいわれた

そういえば大和もいつもの艦娘制服?ではなかった気がする

それから渡された制服?衛生服?に着替えた、ただ本来は個人に合わせて作られるらしく私の場合共用の物で済ませるしかなかったが

お陰で服のサイズがイマイチ合わない、服は上から重ね着だ、ついでにヘアキャップまで被らされたから思いの外暑い

そこまでしたら漣達があの扉を通っていけば厨房に出るから、途中の指示に従って行く様に言って来た

 

漣達とはそこで別れ、一人でその扉を通ると、そこで止まれだの、そこで足踏みだの、幾度も音声ガイドが流れて来た

それでこの食堂が人の基準で運用されてる事に漸く思い当たった、所謂衛生管理ってヤツだ

なるほど、それなら唐突に手を貸すと言っても諸般の手続きがあるだろうから大和としては困る訳だ、何しろ私はこの食堂の利用方法すら知らないのだから

今回はその辺りを漣達がやってくれたのだろう、初期艦だし、なんとかなるのだろうと思う事にした

それに何より毎回キッチンから追い出す大和の認識を改めさせる好機だと思っていた、実際に手を貸すまでは

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?叢雲さん」

 

食堂の営業時間が終わった、だが、まだ、後片付けが残っている

流石に大本営、所属艦が多い、昼食時はこれを一人で捌き切った大和は一体どんな魔術を使ったのか

これが艦種の違いというヤツなのだろうか、大和と私とでは作業上の処理能力にかなりの差がある事が分かった

体格的には確かに大和に劣るが実作業に於いてこんなに差が出るとは思ってもみなかった

 

「……兎に角終わりが見えて来たわ、さっさと片付けてしまいましょう」

 

手を貸すと言って強引に乗り込んで来たんだ、途中リタイアなどしてやる気は無い

厨房に入って最初に教わった食洗機から自動裁断機に数々の器具、ぶっつけ本番で使いながら使い方を覚えていったものばかりだけど、すっかり体が覚えるくらいには使い熟した

その分こっちも酷使された訳だが、承知で来たのだからこれに文句は付けられない

例えこちらの見込みが大外れだったとしても、それは外した私の所為なのだから

 

「そうですね、取り敢えず片付けてしまいましょう」

 

そう言う大和には疲れの色がまったく見えなかった

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?叢雲さん」

 

片付けが終わり食堂の閉鎖処理を終えた大和が聞いてきた

 

「大丈夫よ、これくらいなんともないわ」

 

言っていて自分でも無理があると感じた、多分今の私は傍目にもひどい状態だと思う、自分でもそう思えるくらいには消耗してる

 

「では、部屋に帰って夕食にしましょう、ちょっと遅いですけど」

 

そう言いつつ手を伸ばして来た、繋げという事だろうか

 

「歩けますか?無理そうなら背負っていきますが」

「歩けるわよ、大丈夫」

 

精一杯強がって見せたが、大和に手を取られた

 

「曳行ぐらいはいいでしょう」

 

曳行って、そういうものなのか

疑問ではあったがそのまま手を引かれて部屋に戻った

 

 

 

 

 

「お疲れ様でした、居間で休んでいてください、直ぐに食事にしますから」

「悪いけど、そうさせてもらうわ」

 

ダメだった、部屋に辿り着く頃には限界だった、立っていられない、繋がれた大和の手にしがみ付いてなんとか倒れずに済ませている様な状態だった

居間のソファーに倒れ込みながら食堂での事を思い返す

確かに数は相応にいたけど、駆逐艦と軽巡洋艦ばかり目に付いた、空母は見なかったし、重巡洋艦も戦艦も見なかった、どういう事だろうか

全員作戦に参加中で食堂に来なかったとか、いや、幾ら何でもそこまで大規模な作戦行動ならなんらかの話が聞こえてくると思う、軽巡洋艦の天龍は近頃休日が増えたと言っていた

辻褄が合わない、そういえば編成表には水上機母艦と潜水艦はいたが、それも見なかった

やはりなんらかの作戦行動中で食堂に来れなかったのだろうか

 

「今日は簡単な物にしました、食べられそうですか?」

「ありがとう、大丈夫よ」

 

食事の用意が出来たらしい、本当に重い腰をどうにか持ち上げて食べに向かう

 

「「いただきます」」

 

どうにかテーブルに着いて食事にありつけた、昼食時から数えれば結構な時間が経っている

しかし、消耗し過ぎて食欲が湧かない、でも、食べておかないと身が持たない、回復する為にも食べておかないと

資材があれば艤装を出して妖精さんに回復させてくれる様に頼んでも良いんだけど、なにしろ妖精さんに回復を頼めば瞬きしてる間に回復し終える、でも大和の作ってくれた食事と回復に使える時間が確保されているのなら資材より食事の方を選ぶ、敢えて資材を選択する変わり者もいないだろう

 

「どうでしたか?」

 

食べていると大和から聞いて来た、えっと何が?

 

「漣さんとお話し出来ましたか?」

 

あっ、忘れてたけど、今日の予定を変更してまで漣の所に話をしに行ったんだ、教導艦としては結果を聞くのは当然過ぎる、というより私が報告しなければいけない事だ、何をやっているんだ私は

 

「それはもちろん、漣に言われたわ、司令官の何処を見てるんだって、もう、言われてみれば当たり前の事過ぎて、自分の事ながら呆れてしまったわ」

 

「えっと、ご自身で納得出来たのですか?」

 

「納得というか、そもそも悩む様な事ではなかった、という事、今朝大和が言っていた通りに何処にも悩む所なんか無かったのよ、私が変に考え違いをしただけで」

 

「考え違い?」

 

「私は全部話して司令官に了承を得た、司令官は私を大本営に研修に送り出した、司令官は私に鎮守府への着任命令を取り付ける様に言ったわ、それを補強する様に要望書まで持たせてくれた、なら、私のやる事は決まっている、何も悩む事なんて無かったのよ」

 

聞いた大和が何やら考え込んでしまった

 

「考え違いの内容を聞いてもいいですか?」

 

あれ、予想外に大和が食いついて来た、なんだろう

 

「妖精さんがいなくなるって話があったでしょ、アレでちょっとね」

 

「先任の叢雲さんから移譲された妖精さんの事ですか」

 

「そう、その妖精さんがいなくなるって所を大袈裟に考えてしまった、司令官は先刻承知な事も思い当たらないとか、何処を見ているんだって言われても仕方ないわね」

 

「その妖精さんがいなくなるのは大した問題では無いと」

「そこは教導艦を頼りにしてますから」

 

なんだろう、大和がとてもいい笑顔になったんだけど

 

「お任せください!」

 

おおう、なんだ?!いきなりそんな気合い入りまくった事を言われて吃驚したじゃないか

 

「そういえば、私の入渠の予約って何時なの?」

 

吃驚した拍子に先任の漣が言ってた事を思い出したので、聞いてみる

 

「入渠、ですか、予約通りなら明後日ですが、それがなにか」

 

話題転換が唐突過ぎたのか大和が不思議そうにしてる

 

「なんか、漣達が一緒について来る様な事を言ってたから、なにかあるのかと思ってね」

 

大和は少し考える素振りの後に何か思い出した様子

 

「そういえば漣さんがお昼の時に言ってました、もし妖精さんの事で叢雲さんが不安を言う様ならコッチに話を振って欲しいと、なにかあったんですか?」

 

「詳しくは聞いてない、ほら、この前艤装の整備が終わって引き取りに行った時になんか言ってたでしょ、あの話みたいだけど」

 

「お互い理解不足と言われた、あの時ですか」

 

「そう、あの時の本題だったそうよ」

 

なんだ、大和が考え込んでしまった

 

「なに、なにか思い当たる事があるの?」

「いえ、確証がある訳では無いので……」

 

大和が言葉を濁すなんて、何かあるのだろうとは思った、しかしこの時の私はそれよりも眠気が勝ってしまった

 

 

 

 

 

 




登場艦娘

研修中の叢雲
教導艦の大和、老提督の秘書艦も兼務してるハズ

先任の漣、最初の初期艦の一人、桃色兎からは御姉様呼びされてる
先任の五月雨、最初の初期艦の一人、桃色兎からは五月雨御姉様呼びされる事も
先任の電、最初の初期艦の一人、今回プラズマ成分無し
先任の吹雪、最初の初期艦の一人、今回セリフなし

演習組(三組)の漣(桃色兎)、ざみちゃん呼びされてる
演習組(三組)の五月雨、さみちゃん呼びされてる


食堂を利用している多数の駆逐艦、それなりにいる軽巡
居る事だけは話に出て来る少数の水上機母艦と潜水艦
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