初期の艦これ   作:弱箔

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42 語り明かしてやる

 

 

 

 

 

語り明かしてやると言ったからか、先任の漣が口火を切った

 

「艦娘の構成要素は大雑把に四つに分けられる、船体となる人型、船としての機能を発現させる艤装、そこに装備される兵装、それらを扱う妖精さん、これらが一体となって艦娘となっている、兵装は換装可能だけど船体や艤装はそうはいかない、妖精さんも入渠設備が無ければ殆ど入れ替えも交代も出来ない、叢雲ちゃんがやって見せた様に受け入れる事は出来てもそれだけで妖精さんを活用出来るわけじゃない」

 

「ちょっと待て、コイツは活用してるだろ、でなきゃ新規兵装を初装備で限界値まで使える筈ない」

 

口の悪い天龍が異論を唱えた

 

「それはその通り、本来は出来ないんだ、けど叢雲ちゃんはやって見せた、ウチの叢雲がそう仕組んだからね、叢雲ちゃんはウチの叢雲の性質を強く持ってる、持たされてると言った方が正確かな、眠りから覚めないのだから工廠にすら行けない筈なのにどうやって換装したのかわからなかったけど、妖精さんが話してくれた」

 

「換装?艤装をか?」

 

最初の天龍だ

 

「艤装もそうだけど船体の方かな、重要なのは」

 

「なんだそりゃ、体を入れ替えたとでも言いたいのか」

 

いい人の天龍も疑問がある様だ

 

「入渠というか、工廠の設備無しで単体での船体やら艤装の換装、俗に云う所の共喰い整備、アイツラの補給、修復手法だろ、俺等から観測出来る範囲ではコレしかわかっていないが、他にも手段はあるんだろうな」

 

最初の天龍がいい人の天龍の疑問に答えた

 

「あー、知ってましたか、伊達に長老と呼ばれてませんね」

 

困った様な乾いた笑いをする先任の漣

 

「御託はいい、どういう事だ」

「結論から言うと、妖精さんはあいつらにも着いているって事です、それも元は艦娘に着いていた筈の妖精さんが、です」

「待て、途中を端折り過ぎだ、如何やったらその結論になるんだよ」

 

「現在深海棲艦と呼称されているアイツラですが、発見された当初は兵装を積んでいなかった、攻撃と言っても帆船時代の様に衝角や船体そのものを使った体当たりが殆どだった、だから哨戒機と艦上レーダー、それに軍事衛星からの広範囲な探索による早期発見で遭遇さえ回避出来れば被害も無かった、それが初期艦を始めとするドロップ艦と人が接触する様になってから兵装を乗せ出した、確認する方法は無いけど、ドロップ艦の全てが人と接触出来た訳じゃないんだと思う、で、人と接触出来なかったドロップ艦は如何なったと思う?」

 

「陸が見つかれば良いが、そうでなければ漂流する事になるだろうな」

 

いい人の天龍が答えた

 

「ドロップ艦は燃料も弾薬も潤沢って訳じゃない、初期艦はドロップ艦なんだからその辺りは知ってるでしょ、私の場合は長門達と合流した時に真っ先に燃料を分けてもらった、弾薬は必要ないって分けてくれなかったけどね」

 

同じ様に思ったから、自分の時の話を足してみた

 

「……分けてもらった?どうやって?」

 

何故か疑問形で聞いてくる口の悪い天龍、どこに疑問があるのかわからないが

 

「どうって、長門が艤装から燃料を資材化して渡してくれた、それを私の妖精さんが受け取って燃料に、普通の補給と同じでしょ」

「おい待て、一度艤装に積まれた燃料の再資材化だって!?そんな事出来んのかよ?!」

「えっ、出来ないの?」

 

「出来なくはないよ、ただ、艦娘だけでは出来ない、工廠の妖精さんの手を借りないと」

 

先任の漣が言ってくる

 

「えっと、どういう事なの?」

 

「遠征隊の資材収集は兵装の代わりに資材運搬用の機材を乗せるんだ、この機材は資材を資材のままで運ぶ事しか出来ない代物だ、容積的には妖精さん印の素敵仕様だけどな、艦娘の艤装に資材を積むと資材はそれぞれに活用できる状態に艦娘に着いている妖精さんが変化させてしまうから量的に機材ほどは積載出来ないんだ、艤装から取り出すにも手間がかかるしな」

「資材として貯めて置く事が分かってるのに、艤装に積んだら変化しちまうから資材化の手間を工廠の妖精さんが取らなくちゃならない、その手間を省く為の収集用機材だ、妖精さん自慢の装備品だそうだぜ」

 

最初の天龍といい人の天龍が説明してくれた

 

「あの鎮守府の所属艦は工廠の妖精さんを載せてるのか、それとも艦娘の妖精さんが本来持ち得ない技量を獲得したか」

 

先任の漣が考えられる可能性?を言う

 

「工廠があれば妖精さんは工廠の妖精さんだったり艦娘の妖精さんだったりするんでしょ、なら両方の技量を持ち合わせてる妖精さんが居ても良いんじゃないの?」

 

どちらも妖精さんが持ち得る技量だ、なんで不可解という事になってるんだろ

 

「理屈ではそうなんだけど、大本営で観察出来る範囲ではそういう妖精さんは見つかっていないんだよ、何故かは分かっていない、工廠の妖精さんと艦娘の妖精さんは交流会もしてるし交代したり入れ替わったりする事もあるけど両方の技量を同時に習得出来ない、或いは同時に発現する事が出来ないのかも、推測の域を出ないけど元来妖精さんにはそういう種別があるのかも知れない」

 

「漣さん、私にはそれがどう言う事なのかわからないのだが、詳しく話してくれないか」

 

視察官からだ

天龍達は深刻そうな顔で黙ってしまった

 

「その前に叢雲ちゃん、今貴方に着いているウチの叢雲から移譲された妖精さんがどれだけいるか、把握出来る?」

 

先任の漣にいきなり話を振られた、どうしてそんな事を聞くのかわからないが

 

「いっぱい」

 

いきなりすぎて答えが簡潔になってしまった

 

「……なんと言うアバウトさ、いや、良いんだけどさ、少数ではないって事だよね、元々着いてる妖精さんとの比率的にもそうなってるって事、ここまで明から様に移譲された妖精さんが着いている艦娘に認識されてる、活動できてるって事なんだ、類似の事例は一組の五月雨くらいかな」

 

「どう言う事だよ、改修を受けた艦娘並みに移譲された妖精さんが活動できてるって、コイツが改修を受けたって事か?」

 

口の悪い天龍だ、先任の漣の言い分に深刻な顔などどこかに行ってしまった様子

 

「本人から否定されてなければ、観察結果だけを見て判断するならその結論になる、ウチの叢雲は如何やったのか知らないけど工廠以外の場所で改修を実行したらしいんだ、そこでさっき叢雲ちゃんが言ってた司令官の話と、無理にでも繋げで考えてみると、ウチの叢雲を維持してるっていう工廠の妖精さんなら、それを実行出来るかもしれない」

 

「工廠では無い場所で改修?工廠の妖精さんが工廠そのものになってるという事か?工廠という場所に着いてる妖精さんが工廠の妖精さんに成るのでは無く?」

 

いい人の天龍が不思議そうに聞いてくる

 

「大本営では有り得ない事だけど、そう考えると、辻褄は合ってくる」

 

「……あの鎮守府の妖精さんが、変質している、そう言いたいのか」

 

深刻な顔で考え込んだままの最初の天龍だ

 

「変質というか変化というか、進化とか適応でも良いと思うよ」

 

こちらはいつも通りの先任の漣

 

「大本営の妖精さんだって居場所の確保に追われてる所に初期艦の妖精さんが大挙して入って来た結果、特異な妖精さんが出現してる、人と合流出来ず沈むしか無かったドロップ艦に着いていた妖精さんがあいつらと接触してそこに居場所を確保した様に、なんらかのキッカケさえあれば妖精さんが変化なり適応するのは間違いないんだ」

 

一組の漣が先任の漣の言葉を補完してる

 

「あの鎮守府でも、そういうキッカケがあったと、それはなんだ?」

 

最初の天龍は表情を崩してない

 

「実際の所は行って聞いて見ないと分からない、でも、さっきの叢雲ちゃんの話がキッカケになった事かも知れない」

 

先任の漣からだ

 

「大本営で辞令を取って来いってヤツか、如何繋がるんだよ」

 

口の悪い天龍が聞いてくる

 

「そっちじゃ無いよ、叢雲ちゃんの話だと、佐伯司令官はウチの叢雲を保護した事を我が儘だと言ってたって、そういう事なら、鎮守府の工廠の妖精さんにもその我が儘を通した筈だよ、司令官に云われたら妖精さんだって無視出来ない、妖精さんは自身が着いてる艦娘の頼みなら可也の無茶振りを聞いてくれる事は艦娘なら皆んな知ってる」

 

「それは、そうだが、司令官の我が儘を聞くか?あの妖精さんが?」

 

いい人の天龍は先任の漣の言い分に疑問な様子

 

「佐伯司令官は提督だ、今の所俗称でしか無いけど、提督が鎮守府に着任した初めての事例なんだよね、考えてみると、その点をもっと考慮する必要があったのかも知れない、民間出身の素人司令官という視点を忘れて、真剣に熟考すべき事案だったのかも知れない」

 

先任の漣、なんだろう少し真剣な顔つきになってる

 

「そう言えば、ウチの叢雲は佐伯司令官が妖精さんと話せる司令官だと聞いて真っ先に志願してましたね、私はそこに意義を見つけられませんでしたが」

 

先任の五月雨が言っているのは鎮守府が増設された時の話、でいいのかな

 

「司令官に初期艦はどれを選んでも同じだと説明されていた様に、初期艦にも司令官なのだから誰でも同じだと、説明がありました、言われてみれば、あの説明を鵜呑みにしてしまったのです、説明したのは大本営の士官達なのに」

 

先任の電も思う所はある様子

 

「あー、思い出した、そうだ、そうだったよね、私を初期艦に選びなさいって、いつもの調子で言い出して冷や汗モノだっだ、司令官に叱責されるんじゃ無いかって」

 

ブッキーのは、思い出話?かな

 

「それを聞いてアッサリとよろしくって握手を求めて来ましたから、驚いたというか呆気に取られたというか、その後私達の司令官も決まっていきましたけど、双方に拍子抜けした感がありましたね、こんな簡単で良いのかって」

 

先任の五月雨が思い出を楽し気に話してる

 

「で、話を戻すけど、あの鎮守府の工廠の妖精さんが提督の我が儘がキッカケとなり変わった性質を獲得したかも知れないんだ、この辺りは実際に行ってみれば確定出来るし、明日の叢雲ちゃんの入渠を診る事でも高い角度で判明する」

 

先任の漣が随分と真面目な顔で話題を戻した、思い出話はお気に召さなかった様だ

 

「……つまり、叢雲さんは既に先任の叢雲さんを改修素材にして改修されていると、そういう事ですか?」

 

大和が聞いてきた

 

「そこが分からない、そう確定して良い条件は確かに揃ってる、でもウチの叢雲は鎮守府で今も保護されてる、現状を改修済みとするなら、艦娘の改修は妖精さんだけで出来る事になってしまう、一組の五月雨が改修された時に収集された資料と矛盾してしまうんだ」

 

「そう言えば、先任の叢雲は自分を使って叢雲ちゃんを改修する様に言ったんだよね、それで技量も継げると言って」

 

先任の漣の言い分に思い出した様に続ける桃色兎

 

「ええ、そうだけど」

「その改修ってもしかして、大本営の資料との矛盾を解消する為?」

「えっ?」

 

桃色兎の台詞は予想外すぎた、そんな事の為に改修する様に言ってたのか?まさか、だよね

 

「そういう側面もあるのかも、でも漣としては叢雲ちゃんに仕掛けた支援が上手く機能する様に仕上げ的な意味だと思うんだよね」

 

漣が別の可能性を言い出した

 

「叢雲ちゃんに仕掛けられたモノと移譲された妖精さんと艦娘としての叢雲ちゃん、現状でも整合性は取れてるし原因不明な不安定部分があるにせよ大きな問題にはなってない、けど、不安定なままで放置という訳にもいかない、やっぱり入渠してもらってしっかり診て確定させないと、ダメだよね」

 

一組の漣は入渠が必須と考えているのか

 

「それにこっちの予測というか想像通りなら、あの眠り姫を起こせるかも知れないしね」

「はいっ?」

 

思わず疑問形で声が出てしまった、先任の漣は何を言ってるんだ、そんなの無理に決まってるじゃないか

 

「ああ、起こすって言ってもそのまま起こすんじゃなくて、別の方法でね、この方法はまだ試行もしてない、理屈の上では可能ってヤツ、でも、ウチの叢雲が工廠という場所に拘らず改修を実施していたとなれば、あの鎮守府の特異性が確定する、そうなれば、実現の可能性が見えてくるって事」

 

先任の漣がなんの話をしているのかさっぱりだ

 

「それは明日の入渠と関係ないですよね、叢雲さんの艤装に仕掛けられているという先任の叢雲さんの支援、でしたか?それについてもっと詳しい説明を」

 

大和がいつになく厳し目に言ってる

 

「簡単に言えば改修されているって事、ただ私達の知らない方法で実行されたらしくて検証が必須って事なんだけど、やまちゃんが気にしてるのはそこじゃないでしょ?」

 

答えた先任の漣はいつも通りだ

 

「叢雲さんは大本営に来られた初日に演習を行ない、その後格技場で近接戦の演舞を行ないました、大和が気にしているのはあの時格技場で叢雲さんが陥った状態がなんだったのか、未だに判明していない事です、もし明日の入渠であの状態を誘発する可能性が僅かでもあるのなら、今回の入渠は中止、原因を特定してその可能性を排除しなければなりません」

 

大和は厳し目のままだ

 

「なんだ、演習の後に演舞って、駆逐艦は元気だなオイ」

 

口の悪い天龍が揶揄う様に言ってきた、多分だけど気を逸らそうとしたのかも

 

「冗談事ではありません、あの時の叢雲さんは行動に整合性を欠いていました、無理と分かっている事を力尽くで押し通そうとしたんですよ、駆逐艦が戦艦を相手に力尽くなんて、実戦であの状態に陥れば叢雲さんは間違いなく沈む事になるでしょう、大和は叢雲さんにそうなって欲しくない」

 

「さっきコイツが言ってた三組の叢雲の話ってそれか?」

 

良くそこに繋げられた、と思わず感心してしまった、いい人の天龍はホントにいい人だ

 

「何故漣がコイツ扱いなのか?」

 

桃色兎からクレームが出た

 

「日頃の行ないじゃねーかな」

 

最初の天龍がアッサリ切り捨てた、桃色兎は不満そうだが

 

「やまちゃんの言い分は分かる、けど肝心のブッキーの説明がさっぱりわからなくて漣としてはなんともしようが無いんですよ」

「ちょっと!あんなに説明させといてさっぱりわからないって、私が説明下手みたいじゃない!!」

「……そういってるんだけど」

 

ブッキーの主張に小さく返す先任の漣

 

「ブッキーが一生懸命説明しようとしてくれたのは、わかるんですけどね、内容が伴ったかというと、残念ながら……」

「ムラムラから説明を受けた方が良かったのです」

 

先任の五月雨と電も同意して来た

 

「……」

 

あ、なんかブッキーが凹んでる

 

「お前等、またなんか悪企みでもしたのか」

 

最初の天龍が呆れ気味に言った

 

「下手な搦め手でも使って余計に事態をややこしくしたんだろ、その様子からすると」

 

いい人の天龍にまで言われてる

 

「あの兵装試験に引っ張り出したのは聞いてるが、そっちの悪企みは聞いてねーぞ、何をやらかしやがったんだ、ん?」

 

口の悪い天龍だ

 

「先任の叢雲の頼みごとを叢雲ちゃんが聞いたのが気に入らなかった様ですよ、ブッキーってば大マジだったし」

 

桃色兎が口の悪い天龍に答えてる

 

「全然わからん、わかる様に話せよ」

「只の兵装試験だったんですけどね、途中から一号の初期艦が参戦しましてブッキーが叢雲ちゃんに絡んだんですよ」

「おいおい、兵装試験なのに連戦させたのかよ、あのダメージは大和が計測したんだろ、って事はだ、その時兵装はタダの錘に成り果ててた筈だよな、そんな状態の新人に連戦させるってのは最初の初期艦で高練度なお前等として、どうなのよ」

 

「あ、いや、反対はしたんですよ、ブッキーと電に押し切られたというかなんというか」

 

口の悪い天龍の皮肉に先任の漣がなんか言ってる

 

「みんなに会えたのでお茶会をしようと準備していたらいつの間にかそういう事になっていました、決まった事は決まった事なので、事後対処に切り替えました」

 

先任の五月雨はこう言ってる

 

「ウチの叢雲の進退に直結する事柄なのです、早急に結論を出す必要がありました」

 

先任の電の言い分だ

 

「私達の叢雲に替わりなんていない、私達の叢雲は鎮守府で保護されてる叢雲だけ、でも艦娘部隊として、実戦部隊としての替わりは居なくちゃいけない、それに指名されたというのなら、相応のモノを持ち合わせている筈、それを確かめたかった」

 

ブッキーにも言い分はあるんだ

 

「まったく、揃いも揃って頭デッカチというか、只のアホというか、そんな事はお前等が気にする事じゃないだろ、人と合流したばかりの頃はお前等だけが艦娘だったかもしれんが、今は違うだろ、駆逐艦が艦娘の全てを背負える道理は無いんだ、素直に天龍さまを頼って来い、わかったかチビ供」

 

口の悪い天龍が説教?してる

前から疑問なんだけど天龍ってなんでこんなに自信満々に頼って来いって言えるんだろう

言われた側としては頼りやすくはなるけど実際に頼るのは別の話だよね

チビ供と言われた初期艦達はそれぞれが其々な顔をしていたが

 

「それで、悪企みの結論は出たのかよ」

 

最初の天龍だ

 

「結論といわれましても、現状を追認する以外に無いワケでして、ウチの叢雲がここまで準備を整えて支援してるんです、同期の初期艦としては叢雲の思惑通りに事が運ばれる様に、祈りでも捧げましょう」

 

「おい、なんだその他人事で他力本願な言い様は、そこまで他人事なら初めから放っておけよ」

 

いい人の天龍が呆れてる

 

「いや、初めからこうだったんじゃないんですよ、叢雲ちゃんの研修をこっちで引き受けられないかと探りを入れたら、やまちゃんが教導艦に収まってまして、手が空いたというかなんというか、そんな感じでして」

「え、そうなの?」

 

先任の漣の台詞になんでブッキーが驚いてるんだ

 

「ブッキーと電は頭に血が上り過ぎてたから、落ち着いてから、と思ってたら必要なくなったんだよ」

 

驚いているブッキーに先任の漣が言ってる

 

「やまちゃんと同居ですし、こちらの出る幕が無くなりましたよね、完全に」

 

何故か苦笑いの先任の五月雨

 

「???」

 

なんか大和が頭の上に疑問符を浮かべてる様な顔をしてるんだけど、先任の初期艦達の言い分に合点がいかないって事かな

 

「叢雲さんの事を大和に頼んだのは私だが、何か不都合があったのかな」

 

それを見た視察官が聞いてきた、コレに関しては前から気になっていた事がある、丁度いい機会だし聞いてみよう

 

「不都合といえば、視察官は大丈夫なの?」

「?そう聞かれる様な事が何かあったかな」

 

視察官には思い当たる事がない様だ

 

「大和は視察官の、老提督の秘書艦でしょう、私の教導艦に指名されてかかり切ってもらってしまっているけど、秘書艦の役割は初期艦のそれと同じなのでしょう、大丈夫なの?」

 

私の言い分に何故か考え込む視察官

 

「そこは叢雲さんの気にする所では無いですよ、叢雲さんは研修に専念してください、今はそれが一番なのだから」

「……」

 

人の心配より自分の心配をしろって事だよね、余計な事を言ってしまったか

 

「秘書艦を蔑ろにすんなって言ってんだよ、お前も何を遠慮してんだよ、ハッキリ言ってやれ」

 

いい人の天龍が不満有り気に言い出した、そういうつもりで言ったんじゃ無いんだけど、勘違いさせてしまったみたいだけど、でも、天龍達はあの愚痴を聞かされたからね、仕方無いね

 

「蔑ろにしているつもりはないが……」

 

困った顔を見せる視察官

 

「ダメだろ、コレじゃ」

 

最初の天龍だ、かなり呆れた様子を見せてる

 

「なんていうか、老提督は妖精さんの事は良く見えてるが、艦娘の事はわからないみたいだな、ここまでの話から察すると」

 

口の悪い天龍まで言い出した

 

「そういう根拠は?」

 

視察官が聞いてる

 

「根拠って、老提督自身がなんて言ったよ、ついさっきの事だぞ」

 

最初の天龍が呆れ気味にそう言った

 

「?」

 

今度は視察官の頭に疑問符が浮かんだ様だ

 

「これは珍しいですな、老提督とその秘書艦が揃って疑問しか浮かばないって顔を並べてますぞ」

 

桃色兎だ、いい根性と言えばいいのか、なんなのか

 

「ざみちゃん?じーちゃんを揶揄うな」

「そんな事を言われてもですね、漣としては老提督との接点は薄いですし、御姉様方の様に共に難儀な時期を過ごした事も無いですし、正直な所書類で読んだ事しか無い人ですし、妖精さんに滅茶苦茶懐かれてるのは知ってますけど、それだけで御姉様方の様にするのはチョットちがうかなって」

 

「……そうか、三組の初期艦くらいの時期だともう大本営に改称された後だもんね、提督の事を良く知らなくても仕方ないのか」

 

一組の漣が納得した様に言った

 

「それを言うなら俺等だってそうだ、天龍としては最先任の俺でもあの戦いには参戦して無い、建造されて直ぐだったからな」

 

最初の天龍だ、あの戦いの時期に建造されたという事は老提督が対外的な対応に追われていたと言ってた頃にしか大本営、当時は最初の鎮守府だっけ?での着任時期が合わないのか

 

「最初の鎮守府を立ち上げた時に幾度か建造は行った、報告では建造出来たのは軽巡と駆逐艦と重巡がそれぞれ二隻、となっていたが、あの時の軽巡の一人なのか」

 

視察官が感心した様子を見せた

 

「建造で出て来たのはいいが、司令官は顔を見せないし放置されるしで、散々だったけどな」

 

最初の天龍がどうでも良さそうに投げやりな感じで言った

 

「重巡?今は所属してないわよね」

 

現状所属していない艦種が出てきたので聞いてみる

 

「ああ、あの重巡な、放置されて不貞腐れてな、解体しろって騒いでた、初めのうちは宥めていたんだが、それも出来なくなって解体しようとしたら士官に止められてな、そんで一組の初期艦が状況作りに動いたんだ、さっき話しただろ」

 

「私が命じた建造でそんな事が?」

 

視察官が驚いている

 

「敢えて指摘するが、大本営所属の艦娘はこの話を知ってる、老提督はその辺を踏まえる事を勧めるぜ」

「……」

 

最初の天龍の指摘に黙ってしまった視察官

 

「当時の事情を知ってる私達はそれも仕方ないと思えます、けれど建造やドロップの時期によっては同じ案件でも考え方に違いが出るという事ですか」

 

困った様な感心した様な感じで先任の五月雨が言った

 

「数が増えると分裂し始めるのは艦娘でも同じって事ですかね、そんな所で人のマネとかしなくていいのに」

 

呆れ気味の先任の漣

 

「艦娘は入渠する事である程度は状況の共有は出来る、けど完全な情報共有じゃない、共有媒体となっているのが妖精さんだからね、妖精さんとの関わり方の違いが媒体からの量とか質の差異に直結してしまう、そこを補完する役割は司令官以外には託せない、なのに大本営には司令官が居ない、どうにも出来ないよね」

 

ブッキーの解説が入った、前に三組の吹雪からあった説明とかなりのズレがある

司令官不在の弊害が出ているという事だろうか

 

「現状の大本営を再構築した程度では話にならない、という事か」

 

視察官がそう零した

口の悪い天龍は視察官の大本営再構築策を的外れと評していたし否定的だったのは他の天龍も同様だ

視察官はどうするつもりなのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




登場艦娘

研修中の叢雲
教導艦の大和、老提督の秘書艦も兼務してるハズ

先任の漣、最初の初期艦の一人、桃色兎からは御姉様呼びされてる
先任の五月雨、最初の初期艦の一人、桃色兎からは五月雨御姉様呼びされる事も
先任の電、最初の初期艦の一人、今回もプラズマ成分無し
先任の吹雪、最初の初期艦の一人、大勢からブッキー呼びされてる
先任の叢雲、最初の初期艦の一人、ウチのor司令官の叢雲呼びされてる、鎮守府にて睡眠中

最初の天龍、32話オープンカフェで最初に声をかけて来た天龍
いい人の天龍、27話大和に苦情を言いに来たが、事情を知り頼って来いと言った天龍
口の悪い天龍、32話オープンカフェで可愛げが足りないと言って来た天龍

演習組(三組)の漣(桃色兎)、ざみちゃん呼びされてる

一組の漣、桃色兎からはちぃ姉様呼びされる事も
一組の叢雲、改修素材
一組の五月雨、改修済み

長門
・鎮守府工廠での建造艦
・一期の鎮守府の第一艦隊旗艦
・戦艦種で建造からの戦力化は希な事例 (大本営ですら大和を戦力化出来ていない)




登場人物

老提督
・研修中の叢雲からは視察官、一期で視察官として鎮守府に来ている時が初対面だったから
・最初の初期艦からはじーちゃん、お爺さん、艦娘部隊発足前から色々あった経緯から
・稀に最初の人、艦娘の言う妖精さんを見る事が出来た最初の人
・本編中では艦娘部隊上部機関からの要請で大本営を査察中、大変難儀中

佐伯司令官
・増設された鎮守府の司令官の一人
・先任の叢雲を保護している
・一期の鎮守府の司令官




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