初期の艦これ   作:弱箔

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御注意
ほぼ会話劇、老提督視点です




~幕間劇~
46-c


 

 

 

「以上が査察の中間報告になる」

 

上部機関から出向して来た幾人かの代表を前に報告を終えた

 

★「酷いものだ、艦娘部隊を運用するよりも組織内での栄達を優先、それだけでなく上部機関の方針を無視してまで利権確保とは……」

 

厳しい意見が出る、しかしそれは出て当然の意見だ

艦娘部隊上部機関は国の代表だけではない、海上航路の安全確保が死活問題となる貿易商から海運業界、保険業界、造船業界といった民間の業界代表までいる

この議場にはその内の幾人かの代表と監察官(権限の発動に寄る)が席に着いている

 

☆「我々が拠出した艦娘部隊育成資金まで用途不詳とは……日本の大本営は海上航路に余程関心がないと見える、日本は貿易が盛んな国では無かったのか、海上航路の確保は日本に取っても最重要課題だと、そう主張していたではないか」

 

●「その通り、日本に取って海上航路の確保は極めて重要だ、今回の査察報告は日本政府としても看過し得ない、故に老提督の進言に従い大本営と呼称される艦娘部隊運営組織を一旦解体し、艦娘部隊運用に最適な組織として再生する」

 

日本政府代表の発言に他の代表は冷ややかだ

 

無理もない、日本に艦娘部隊を設置する際にも強い反発を説き伏せたのだ

その結果が、艦娘部隊の拡充など完全に忘れ去った運用がなされ極めて日本的な組織の理論が罷り通ってしまった

艦娘部隊上部機関が作成した進捗予定、大本営ではこの予定を行動を以って無視したと言わざるを得ない運用が行われ、予定の半分どころか四分の一にも届いていない

一年という期間があれば精強な艦娘が多数育成され主要な海上航路、特に要衝と見做される海峡には駐留部隊が配置される予定だった

しかし大本営には遠征部隊しか居らず数の上でも全く足りない

 

列席の代表等を最も失望させたのは、大本営で国外のゲストを接待をしていた戦艦種の艦娘、この艦娘が戦力と数えられていない、そう運用した大本営の在り方だ

大本営という人の組織の中で戦艦種の艦娘は戦力としてではなく人の接待役として重宝されていた

この席に並ぶ代表の中にもその接待を受けた者はいる

戦艦種が持つ巨大な艤装と兵装は視察に訪れた代表等を満足させるのに十分な役割を果たした

戦艦種の艦娘には異論があるだろうが、この場にいる代表等にはそれが只の見せ掛けだった、そう思われても仕方無い運用を大本営が行なっていた

端的にいって、大本営が看板艦娘に仕立てた大和に騙された、そう思っている

しかし問題の本質は大本営の運営方針であり、艦娘としての大和に問題がある訳ではない事は代表等にも分かってもらえた

寧ろ、大和の運用に腹を立て大本営を非難する代表までいた

 

★「大本営は最大戦力である戦艦を上部機関に対して用いたと、つまり大本営は我等上部機関を敵と見ていたという事か」

 

☆「大本営の相手は我々艦娘部隊であって深海棲艦ではなかった、そういう事か」

 

★「過ぎた時間を嘆いても何も始まらない、ここに集まったのはこれからどうするか、このまま日本に艦娘部隊を置いても無意に時間を浪費するだけだ」

 

★「最初の鎮守府が設置された際の取り決め通りに日本から艦娘部隊を撤収、再配分する以外にどうしろというのか」

 

代表等には既に撤収と再配分は規定事項の様だ、これは阻止しなければならない

 

「艦娘の運用については未だ明らかでない部分が多く今直ぐに日本からの撤収を実施する事はこの一年という時間を浪費しただけになる、私としてはこの一年で得られた艦娘部隊運用実績を活用していきたい、と考えているが、代表の方々のご意見は如何だろう」

 

☆「運用実績?この大本営の無為無策無計画の見本でしか無いこの報告の何処が運用実績なのか」

 

代表の一人から尤もな質問が来た

 

「大本営の運用実績とは倣ってはいけない行動の宝庫である事だ、この運用実績を反面教師としてこの先の艦娘部隊運用を考えていきたい、これは日本だけでなく何処に鎮守府を設置しようとも応用出来る禁則事項として活用出来る、と考えているが如何かな」

 

★「日本的な発想だ、転んでもタダでは起きない、と言ったかな、諺というのだったか」

 

「失敗は成功の母とも言う、失敗したからといって失敗を切り捨てて行くだけでは成功に辿り着かない、そうではないかね」

 

☆「成功に辿り着く?日本に艦娘部隊の運用を成功させる見込みがあると、老提督は考えているのか、この大本営の査察報告からは全く読み取れないが」

 

こちらも尤もな疑問だ、私だって大本営の報告しかなければ完全に同意する所だ

 

「日本には大本営だけではなく、艦娘部隊運用の為に鎮守府が増設されている、その内の一つの鎮守府が成功に辿り着く方向を示している、そう私には見えている」

 

☆「それは今自衛隊と共同戦線を張っている小規模な部隊ではないか、あんな小規模な部隊では我々の需要は満たせない、大本営の規模でも足らないのだ、我々の需要を過少に見ているのではないか」

 

「そこだよ、その規模が問題になる事が大本営の実績でハッキリした、艦娘の運用には人の軍隊の様に大規模な組織を構築しての運用は不適切だと云える」

 

★「どういう事なのか、説明を」

 

「大規模な組織を構築すればそこに艦娘では無い人の思惑が入り込む、これは大本営でも見られる事象だ、だが、小規模な鎮守府として組織を構築すれば司令官が艦娘を直接指揮下に置ける、この状態こそ艦娘がその能力を十全に発揮し得る最良の状態だ、現に絶対数に置いて全く足りない状態であるにも関わらず自衛隊との共同戦線という下駄履きを勘案しても日本周辺海域にて深海棲艦の行動は活発化していない、自衛隊からの報告でも艦娘部隊の働きは目覚ましい物があると賞賛されている、だからといって現状を長期に渡って維持出来るという訳では無いが、短期間であるならここまでの無理を実行可能な能力を引き出せる、これは十分に検討すべき事象だと、私は考えるが、如何かな」

 

代表達は一様に考えを巡らせている様子だ

 

★「言い分は理解する、しかしそれでは不足だ」

 

★「艦娘部隊を以って人類全体の利益に寄与させるには何より数がいる、その数を揃えるのに艦娘なら極めてローコストで済む、国軍で深海棲艦に対抗しようとすればその予算だけで国が傾いてしまうからな、深海棲艦に十分な対抗手段になる事が実証されている艦娘を最大限活用する事が艦娘部隊の、我等上部機関に課せられた使命だ」

 

☆「老提督は知らないだろうが海上航路を行き交う船乗り達からは挨拶より先に訊かれる、艦娘部隊の護衛はいつから始まるのか、護衛額はどの位になるのか、護衛料は保険料と共に荷主が持つ様に制度を設けて欲しい、挙げればキリがない、これらの要望、嘆願書が郵便で送られて来るのだ、私を始め業界代表のオフィスが手紙で埋まる日も遠くない」

 

☆「既に彼らは一年という長過ぎる時間を待ったのだ、自身の生命の危険と隣り合わせで、老提督は彼らにまだ、待てと、我々に言わせるのか」

 

改めて聞かされると言葉が無い、書類で読むのと当事者の言葉は同じ事柄であっても実感出来る重みが比較にならない

だが、それでも言わなければならない、待って欲しい、と、艦娘部隊を十全な稼働戦力と成すにはまだ相応の時間が必要なのだから

 

「そうだ、今暫く待って欲しい、今日本はこの大本営の失態から学び最短で十全な稼働戦力として艦娘部隊を再生しようとしている、その手本となる運用法もわかっている、また、自衛隊の協力により見出された複数の司令官候補が鎮守府への着任を待っている状況でもある、彼らに手本を示し鎮守府へ着任してもらう事で艦娘の数は増えていく、示された手本を活用すれば艦娘の育成にも効果があるだろう、日本の艦娘部隊再生計画は大規模な組織を作るのではなく、小規模な組織を多数作る事を主眼としている、これを上部機関にて承認してもらえれば、この計画は二週間以内に実行に移される、あえて聞くが、上部機関にこの案より迅速な行動が可能なのか」

 

★「失敗の可能性を排除した拙速な計画、ではないのか、上手くいく事しか予定表に無い一度爪蹤いたら全てが崩れ去る危険な計画に聞こえるが、その点はどうなのか」

 

★「その再生計画の失敗は、許されない、増して上部機関の承認の上での失敗は艦娘部隊の解散に直結しかねない重要事項となる、我等を突き上げているのは船乗り達だけでは無い、莫大な利益を伴う国際海上貿易に関わる全てが、我等上部機関に干渉して来ている」

 

「わかっている、私なりに列席の皆の言い分は理解している、列席の代表等には私の目的が艦娘部隊を日本に残留させる事にあるのでは無いか、そういった懸念を拭えずに詮索している事も知っている、それは誤ってはいない、残せるのなら遺したい気持ちはある、だが、それだけで日本に艦娘部隊を残留させようとしているのでは無い事も知って欲しい」

 

☆「それだけ?日本に艦娘部隊を残す、残さなければならない理由があると、いうのか」

 

「これは時期尚早なので言うつもりはなかったのだが、未確認ながら気になる情報を得ている、大本営に居る初期艦達がこの情報の精査を行なっている最中なのだ、結果は暫く経たなければ出ないと言う事だが、今、初期艦達の行動の自由を制限すればこの情報を捨てる事になる」

 

☆「引き継げばいいだけでは無いか」

 

「いや、幾つもの複雑に絡んだ要素があり、引き継ぎは難しい、艦娘部隊を日本国外で再編となれば間違いなく失われる情報だ」

 

★「そこまで言うからにはどれ程重要な情報なのか」

 

「確定はしていない、現状では推測の域を出るものでは無いという前提で聞いて欲しい、幾つかの事象から深海棲艦が艦娘部隊に対し情報収集を行なっている、と思われる状況がある」

 

☆「なに?深海棲艦とは武装はしているが、野生動物の様な物では無いのか、情報収集とは一体なにを以ってそんな推測が出てきたのだ」

 

「一つは目覚めない初期艦、二つは艦娘部隊の拠点である鎮守府周辺海域に出没する深海棲艦の意図不詳な行動、三つは増設された鎮守府の報告にある艦隊編成に初期艦を含む場合と除いた場合とでは深海棲艦の遭遇率に有意な差が出る事、四つは妖精さんが私の自宅にまで助けを求めて来た事、妖精さんは艦娘からは離れたがらない、その妖精さんが艦娘から離れ引退していた私の自宅、鎮守府から相当の距離があるにも関わらず訪ねて来た、なにか、これまでにない事態の発生を感じた、だからこそ、上部機関の査察要請を受けたのだ」

 

★「推論というのはわかった、その推論を具体的にいってくれ」

 

「軍事行動として考えた場合、情報収集を行う目的は何か、色々あるだろうが攻勢に出る、という場合もあるのではないか」

 

☆「攻勢に、でる?」

 

☆「深海棲艦が人と積極的な戦争に突入しようとしている、というのか」

 

「推論でしかない、可能性の話だ」

 

★「確証も無しにそんな事案を論じても始まらん、今この場で決定せねばならない事はそれでは無いだろう」

 

☆「そうだな、老提督の言う様に軍事行動として考えれば、脅威を煽って予算と行動の自由を確保すると言うのはどこの軍隊でも軍政として関連企業までもやっている事だ」

 

「私が、ソレをしている、と聞こえたかね」

 

列席の中には軍隊の必要性は認めつつも出来るだけ関わりたくないという業界代表もいる

 

★「そうは言わないが、ここで論じるには時間が掛かり過ぎる、この場で判断せねばならない事案なのか、ソレは」

 

☆「列席の監察官の方々の意見は?」

 

民間の代表には判断が付きかねたのか、監察官に、ここまで話を聞いているだけだった監察官に発言が求められた

監察官は主に各国の退役軍人や引退して元が付いたが嘗ては政府中枢に籍を置いた行政官や司法官、等が指名されている

 

◆「それは継続案件として処理し、現状最も重要な決定を速やかに下す事を提案する」

 

☆「監察官は、その可能性がある、と判断しているのか」

 

信じられないというより信じたく無いのだろう、民間業界の代表達は

 

◆「何にでも可能性はある、可能性だけを論じるのは上部機関の議題としては不適切だ、だが、今回の推論の論拠の一つに妖精さんの行動が挙げられた、無視するにはリスクが高い、と私は判断する」

 

☆「老提督だけでなく、二人目の老兵までもが深海棲艦の攻勢を否定しないのか」

 

◆「現時点では可能性の話だ、何もわかってはいない」

 

☆「その様な話は艦娘部隊発足時にはなかった、話が違いますな、この件は国連に厳重に抗議します、もし可能性だけで済まないのであれば、我々は海運保険から全ての資金を引き揚げる」

 

☆「それは困る、主要国の港は無保険の船舶の往来を禁じている、あのパニックを再度起こしたいのか」

 

☆「深海棲艦が攻勢に出る、そうなれば戦争状態だ、戦争に適応される保険など扱っていない、それとも船舶に対応する戦争保険に加入しろと?掛け金の支払いだけで海運事業社は破産しますな」

 

◆「可能性だけを論じるのは上部機関の議題としては不適切だ、と申し上げたが、お分かり頂けないかな」

 

★「考えてみれば、深海棲艦が数隻の群れでは無く大群を以って動いた事例はあの戦いしか無いのだな、発見から三年以上経つにも関わらず」

 

★「だからこそ、艦娘による護衛を前提とした海上輸送保険が新設され、受け付け開始を待っている」

 

★「しかし、攻勢に出るなどと云われては穏やかではいられない、保険そのものを見直さざるを得なくなる、寧ろこの艦娘輸送保険自体に商品価値が無くなるだろう」

 

☆「そういう意味では艦娘部隊との契約開始以前にこういった情報が得られただけでも上部機関に席を確保した甲斐があったというものだ」

 

「その様な話は時期尚早だ、まだその兆候らしいと思しき事象が見えたに過ぎない、推測の域を出ないのだ」

 

☆「そうはいっても、老提督はあの小規模な鎮守府に艦娘部隊の未来を見たのだろう、それを根拠に日本に艦娘部隊を残留させようとしている、我等は老提督の見た未来と、老提督の推測、何方か片方だけを承認という訳にはいかない、なにしろ双方共に根拠は妖精さんだ、あの鎮守府の妖精さんが進化していると、その妖精さんを使役する提督と呼ばれる司令官の中の司令官、それがあの鎮守府の司令官だと、だからこそあの鎮守府を手本とすると、そう言っていたではないか」

 

「……」

 

妖精さんは謎の存在、妖精さんが見える人は限られる、妖精さんと会話の出来る人は更に限られる

局所的に根強い選民思想と変に関連付けられると話が危うい方向へ突き進みかねない

妖精さんが見える、それだけで私がこの上部機関に籍を持つ事になった事にも無関係では無いが、果たしていかなる対応が最善なのか

 

◆「それについては、私からも聞きたい事があるのだが、この場で聞いても良いか、後で個人的に聞くつもりだったのだが」

 

二人目の老兵と呼ばれた監察官、彼からの発言だ

 

★「議題と関連する事案なのか」

 

◆「提督と司令官の違いについてだ、議題と関連するかと問われれば些か外れると言えるだろう」

 

☆「どちらも艦娘を指揮下に置くことの出来る人物、ということでは無いのか?」

 

◆「そういう意味合いなのだろう、しかし大本営では呼称を司令官に統一した経緯がある、それが何故未だに提督という呼称が使われているのか、その呼称の違いは何を意味しているのか、艦娘を指揮下に置く者に対しては上部機関であっても艦娘達と同一評価を用いた方が何かと都合が良いと考えるが、如何か」

 

★「艦娘はその呼称に重要な意味を持たせていると、大本営は司令官に呼称を統一し、その意味を失わせようとしたと?」

 

◆「そこまでは知りようもない、ただ一般論としては自身に理解の無い者の意見と本人に理解者と認識された者の意見とでは、重要度が大きく変わってくる、上部機関としては艦娘の理解者としての立ち位置は重要ではないか」

 

★「上部機関は人の組織だ、それも大きな範囲からの人員で構成されている、老提督の主張を基にすれば艦娘を十全な戦力として運用する組織としては不適切、大本営の轍を踏む可能性はある、と言う事か」

 

☆「そこで艦娘の理解者としての立ち位置が重要になると、上部機関は元々艦娘部隊を直接統括する為の組織では無い、間接的な支援組織だ」

 

☆「国際機関としての支援組織である事に異論はない、問題なのは現地における実働部隊がいつまで経っても実用にならない事だ」

 

☆「大本営の失態は何れ追求させてもらう事になる」

 

「それは後日幾らでもやってもらって構わない、だが、この場で決議しなければならない事案はそれでは無い」

 

★「日本の艦娘部隊再生計画の可否、か」

 

◆「それを議決する前に私の質問の答えが欲しいのだが」

 

☆「司令官と提督の違いか、艦娘達はどう言っているのだ」

 

「艦娘達は提督の事を初期艦と同じ様に妖精さんと会話できる者と定義している様だ」

 

★「司令官は?」

 

「多くの艦娘と同じ様に妖精さんが見える者だと聞いている」

 

☆「つまり、妖精さんと会話の出来るモノが艦娘なら初期艦と人なら提督と呼称されていると」

 

「そう言う事になる」

 

☆「その定義で判別すると老提督はどうなるのだ」

 

「私は司令官になるだろう」

 

◆「私もそうなるな、私も妖精さんと会話は出来ない」

 

二人目の老兵が続けて答えた

 

☆「しかし老提督は艦娘から提督と呼ばれているではないか、これはどういう事だ」

 

「それは艦娘達に聞かなければわからない、ただ、いつだったか艦娘に問われた事がある、本当に見えているだけなのか、と」

 

★「それは、どういう?」

 

「わからない、私には心当たりがなかったから、見えているだけだと答えたのだが、それを聞いた艦娘は不思議そうにはしていた、もしかしたら艦娘達には何か私が見えているだけでは無いと判断する事象があったのかもしれない、私には心当たりが無い事だが」

 

これを聞いた列席の代表達は何やら考え込んでしまった、正直に答え過ぎただろうか

 

◆「私から提案があるのだが、聞いてもらえるかな」

 

二人目の老兵の発言だ

 

★「議題と関連するのなら、聞こう」

 

◆「日本の艦娘部隊再生計画を承認するのであれば、是非に我が合衆国の提督も参加させてもらいたい、承認しないのであれば、その計画を我が合衆国で実施さてもらいたい」

 

★「なっ、アメリカが、艦娘部隊を運用すると、いうのか」

 

代表から驚きの声が上がる、無理もないアメリカは艦娘部隊には否定的だ、最強の航空打撃部隊を多数保有するアメリカは深海棲艦を公海上から駆逐出来ると主張している、ただ、その予算を国連加盟国が負担する様にとも再三に渡り要求を出している

今になって艦娘部隊の運用に舵を切る動機がわからない、代表達にはアメリカの思惑が読み切れないのだろう

それよりも私には気になる言葉があった

 

「合衆国の提督、とは?アメリカに鎮守府は開設されているが、艦娘は所属していないだろう、現状は研究機関という位置づけだと聞いているのだが」

 

◆「公開のタイミングを計っていたのだ、この議場なら有意な公開になりそうだ」

 

★「有意な公開?」

 

◆「そう、我が合衆国は艦娘の建造に成功した、最早艦娘保有国は日本だけでは無い、そしてこの建造には今の話に出てきた提督が深く関わっている、老提督が艦娘部隊の未来を見たと評した提督だ、その提督が我が合衆国の鎮守府にもいるのだ」

 

これを聞いた代表達は一様に呆気に取られていた、余りの想定外な情報公開に思考が追い付かないらしい

 

★「まて、いきなりそんな重大事項を持ち出されても判断出来ない、それはこの様な臨時開催の上部機関の議題では無い、正式に各方面の代表を招集して慎重に議論すべき事案だ」

 

☆「それは同意するが、この議場での決議まで保留とは行かないだろう」

 

代表達の話を聞いてやっと思い当たった、二人目の老兵、私の旧い友人が力を貸してくれた事に

監察官として大本営入りした幾人かには短い時間ではあったがこちらの事情と状況を簡潔に説明した、時間が少な過ぎてどこまで理解してもらえるのか不安ではあったが、十分に理解を得られた様だ

 

☆「老提督の意見は?」

 

「私の意見は先に述べた通りだ、日本の艦娘部隊再生計画を上部機関にて承認してもらいたい」

 

★「そこにアメリカが関与する事に異論は無い、と」

 

「艦娘部隊は国際機関だ、日本が単独で運用している訳では無いし、単独で運用して良い部隊でも無い、上部機関の承認が得られるのであれば異論は無い」

 

代表達は一様に考え込んでしまった、様々な状況を想定し予測を立てているのだろうが、一人の頭で考えつく事は自身で思っている程多くは無い

 

★「取り敢えず、艦娘部隊の再生計画は承認する事になるだろう、異論をお持ちの代表はいるか」

 

代表達は沈黙を守った

 

★「では、論点はその計画を日本とアメリカ、どちらで実施するか、になる」

 

これを聞いても代表達は沈黙を守った、どうやら判断がつかないらしい

 

☆「監察官の方々の意見は?」

 

再び監察官に発言が求められた

 

◆「ここまでの話から判断すると、日本で実施した方が良い様に思う、何と言っても日本には老提督がいる、老提督は妖精さんだけでなく艦娘からも支持が厚い、こちらの老兵、監察官にもそこはお分かりの筈だ」

 

この発言をした監察官、彼も退役軍人だ、私は顔を見知っている程度でしか無いが、こちらの説明を理解してくれた様だ

 

☆「そうか、アメリカが艦娘の建造に成功したといってもその数が日本にいる艦娘の数を超えるには時間が掛かる、再生計画を日本で実施し、そのノウハウをアメリカで拡大展開する、アメリカにはその準備期間に充ててもらえれば、艦娘部隊は一気に拡充出来る」

 

◆「その発言は確と本国に伝えよう」

 

二人目の老兵、私の旧い友人は代表の言葉に些か気分を害した様子だ

それに気がついたのか民間の代表は慌てて口を噤んだ

 

★「では、老提督より提起された計画を承認する代表は挙手して頂きたい」

 

この議場で議決権を持つ代表からは反対者は出なかった、監察官は議場にはいるが、議決権は持っていない、大本営という場所に集まった為に議場に参列してはいるが、代表達とは大本営に集まった目的が異なるからだ

 

◇「その再生計画には我が国からも参加者を出したい、よろしいな」

 

◆「よろしくないな、先ずは参加理由を述べてもらいたい」

 

突然監察官の一人が発言した、それに応じる私の旧い友人

 

◇「艦娘部隊は国際機関だ、参加を拒否する理由こそ述べるべきだ」

 

◆「老提督の主張によれば大本営の失態の大半は人の組織として艦娘部隊を運用した事に起因するモノだ、艦娘部隊は艦娘を運用する為に特化すべきだと、私は理解した、それが参加理由問い、無闇な参加を拒否する理由だ」

 

★「確かに、無闇な参加は大本営の轍を踏みかねない、上部機関でさえその可能性があると指摘されているのだ、参加するのであれば相応の理由と大本営の愚行を犯さない方策を提示してからにしてもらいたい」

 

◇「アメリカは如何なのだ、示されていないでは無いか」

 

この監察官話を聞いていなかったのか、いや、計画への参加を強引にでも捥ぎ取るつもりなのだろう

 

☆「アメリカには提督がいる、艦娘の建造に深く関わった提督だと、こちらの老兵が証言している、こちらの老兵が老提督に続いて妖精さんを見る事が出来た二人目の人である事は、貴方もご承知の筈だが」

 

◇「それが何だというのか」

 

この監察官、聞く耳を持たないらしい、艦娘部隊にそこまで執着させる動機はなんだろうか

 

★「監察官、失礼だが、貴方の役割は大本営の監査であって上部機関の決議へ注文を付けることではない、その主張はこの議場では無く、本国から直接艦娘部隊に対して行って欲しいのだが」

 

◇「この議場では受けられない、と」

 

★「そもそもこの議場は老提督の提案の可否のみを決議する場だ、監察官らの情報公開やら主張やらはこの議場では扱えないのだよ」

 

◇「では、その扱える場において提起する」

 

★「そうしてもらいたい」

 

ようやく落ち着いたか、あの監察官、確か常任理事国の一つから来ている監察官の筈だが、資料でしか知らない相手だ

 

 

 

 




★、代表の発言、元軍人or元政府高官
☆、代表の発言、民間業界代表
◆、監察官の発言、退役軍人、国家代表としての側面もある
◇、監察官の発言、元上級官僚、国家代表に近い立場
●、日本政府代表の発言
無印、老提督の発言
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