初期の艦これ   作:弱箔

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ー5期ー
46 具合はどうかな


 

 

 

 

 

「具合はどうかな、叢雲ちゃん」

 

入渠場から出たら先任の漣に聞かれた

 

「悪くはないわ、それより、何があったの?」

 

言いつつ工廠を見回す、入渠前と様変わりし過ぎている工廠、色々と年季が入っている様な雰囲気はあったが、ここまで乱雑ではなかった、最早戦場跡と言って良いくらいだ

 

「はは、まあ、色々あってね、兎に角叢雲ちゃんが無事で良かった、叢雲ちゃんになんかあったらやまちゃんが……」

 

何故そこで言葉を濁すのか、先任の漣はどうしてそこで言葉を止めるのか

 

「大和が、なに?」

 

「いや、コッチの話、叢雲ちゃんは部屋に戻ってゆっくりしてて」

 

なにその気になる笑い方は、このまま引き下がらない方が良さそうだ

 

「漣はこの後どうするの?」

 

「ここの後始末がある、妖精さんを総動員したからね、工廠の機能を回復させないと遠征隊に睨まれちゃう、軽巡達も黙ってないだろうし、まあ、なんとかなるよ」

 

「他の初期艦は?入渠場から見えたけど、集まってたでしょ」

 

「あー、ははは、……」

 

なに?なにを隠してるんだ漣は、そんなに私に聞かせられない話なの

 

「手伝うわ、手数は多い方が良いでしょうから」

 

このまま退いていられない、無理にでも手出ししてやる

 

「あー、そう言ってくれるのはありがたいんだけど、取り敢えず部屋に行ってもらえないかな、多少の待ち時間はあるかもだけど、次の指示が来ると思うから」

 

「?次の指示」

 

「そう、叢雲ちゃんの入渠は漣の想定以上、有り得ない程の情報が得られた、一組とざみちゃんでその整理をやってる最中なんだ、幾つか確認したい事もあるし、ソコソコ纏まったら話があると思う、コッチの後始末は一号と三組で当たってる」

 

「大和と天龍達は?」

 

あそこまで付き合っていながらこの場に居ないとか、なんか不自然なんだけど

 

「あー、それを話し出すと長いから、其の内って事で、イイかな」

 

ヨクナイ、とてもヨクナイ、しかし話が長いといわれれば、昨晩の例がある、本当に長いのだろう

 

「結論だけ、でイイわよ」

「はぁ、結論ね、それ聞いたら部屋に行ってね」

 

溜息と共にショウガナイ感を出しながら言う先任の漣

 

「四人揃って監察官に連行された、今頃調書を取られてると思うよ」

「はぁ!?ナニソレ、連行ってどう言う事なの?!」

「いや、だから、結論だけ、さあさあ、部屋に行って大人しくしてて頂戴な」

 

話は終わったとばかりに工廠から追い出されてしまった

私が入渠してる間に一体何があったの?

 

 

 

 

 

仕方無しに部屋に戻った

部屋は普段通りで何も変わっていない、いや、違った、大和が居ない、この部屋で大和と一緒ではない時間は初めてだ

同居する時に貰った鍵も、考えてみれば初めて使った

入渠する時に持っていたとはいえ、そのまま入渠後にも持ったままなのは、どうなんだろう

確かにこの鍵は妖精さんの造りでは無い、人の作った物だけど、こういうのって異物混入とかで問題にならないのかな、今回はならなかったけど、通常の入渠だとどうなんだろうか

そこまで考えて、自分が入渠について然程の知識を持っていない事に気がついた

こんなの初歩の初歩じゃないのか?

以前、誰かに初歩にも届いていないと評された覚えはある

こういう時には妖精さんに聞けば良い、そう考えていた

 

でも、今はそれで良いのか、疑問に思う

試しに妖精さんに聞いてみた、答えは'問題無い'だった

妖精さんの答えは簡潔だ、解釈の違いなんて有り得ない

だから、そのまま受け取れば良かった

妖精さんだって普通に話をする、初期艦は妖精さんと会話が出来る艦娘の呼称だから妖精さんが普通に話をしないなんて事はない

 

鎮守府では妖精さんと良く話してた

鎮守府の艦娘達は其々に任務があり滞在しているだけの私とは時間の使い方が違ったからだ

端的に言えば私の相手をしていられる時間の都合が付けられたのが妖精さんだけだった

所属艦娘でさえ時間の都合が付かないのに更に多忙な司令官なら、他の都合を遣り繰りしなければ私と話す時間など無かっただろう

思えば無理な事を言っていたんだと今更思い当たる

 

所属の見込めない艦娘にあれだけ時間を割いてくれたのは、司令官の叢雲が関係しているからだと思う

そう思うから、司令官は自分の初期艦を大切にしているのだと、すぐにわかる

私はソレを継ぐように頼まれた、司令官の叢雲から

私はその頼まれ事を引き受けた、司令官にそう伝えた

司令官は直ぐには応えなかった、妖精さんと話してた

司令官は提督だから妖精さんと直接会話が出来る

提督は初期艦と同様に妖精さんと会話の出来る存在

艦娘なら初期艦と呼ばれ、人なら提督と呼ばれる

初期艦は公称だけど、提督は俗称だと聞いている

私は提督より司令官の方が呼び易い

私が駆逐艦だから、だろうか、その理屈なら司令官では無く司令になる筈なんだけど

 

ああ、早く司令官の許に帰りたい

でも、直ぐには駄目だ、現実は疑問だけは沢山ある状態、これでは司令官の許に帰っても何も出来ない

今も部屋で待つように云われて待っているだけ、漣は私の入渠時に得られた情報の精査をしたい様だったけど、それは漣の目的であって私の目的では無い

もちろんそれに協力するのは悪いことでは無いと思う

だけど、私の目的では無い、それが問題だ

吹雪に指摘された現状を測れるだけの知識、言い換えれば自身の行動を決める前提

この欠如が私をこの部屋に留まらせている、これが問題だ

この問題を解消しなければ私は司令官の許に帰れない、司令官の叢雲を継ぐ事は出来ない

司令官の叢雲は戦艦の短期錬成など駆逐艦の枠に囚われない行動を起こしている

こういった行動力は揺るぎない前提が有ってこそだと思う

揺るぎない前提、今の私には持ち得ないモノだ

 

そもそもそこまでの前提は必要かと疑問に思ってしまう

やはり、疑問だけは沢山ある状態、になってしまう

吹雪の指摘は知識不足、果たしてそれだけだろうか

電は経験の重要性を言っていた、これも私には不足している

なんだか、私には不足しているモノばかりだ

かといってなにも無い訳でもない

ん?私にはなにがあるんだろう、自分で自分の事までわからなくなってしまったか

こういうのを考え過ぎとか無限思考?回廊?とかいうんだっけ

 

ちょっとお茶でも淹れて気分を入れ替えよう

 

 

 

 

 

お茶を淹れてゆっくりしていたらドアフォンから呼びだしの電子音が鳴った

出てみると漣が誰かに持ち上げられているのが映っていた、多分一組の漣だと思う

 

「やあ、迎えにきたよ、お話があるから一緒に来てくれるかな」

 

相変わらずのお気楽さを見せる一組の漣

漣を持ち上げている背の高い人は誰だろう、長い金髪が映っている、服装から察するに外国の軍人さんの様な感じだけど

 

「一緒にいるのは?」

「お仲間だよ、アメリカのね」

「?」

 

アメリカのお仲間?艦娘部隊の人という事だろうか、兎も角漣達を待たせても仕方ない

早々に出掛けよう、先任の漣言う次の指示ってコレだろうし

 

 

 

 

 

「紹介しておくと、こちらはあいちゃん、アメリカで建造された艦娘、しかも戦艦だってさ」

部屋から出て漣等と歩き出したら早速紹介された、のは良いんだが、漣は今なんと言った?アメリカで建造された戦艦?

 

「あら、そんなに驚く事?」

 

思わず歩みを止めてしまった私に不思議そうに聞いてくる、外国の軍人さん

いやだって、艦娘に見えない、人にしか見えないんだけど、どう言う事なの?

まさか入渠でどこか悪くしたかな

 

「あー、わかるよ叢雲ちゃん、あいちゃんが艦娘に見えないんでしょ、でもあいちゃんは間違い無く艦娘だ、そこは漣達がシッカリ確認したから間違いない、それにやまちゃんを力尽くで押さえられる人はいないからね」

 

漣まで立ち止まって説明を入れて来た

ちょっと待って、大和を力尽くで押さえたって、何の事?

 

「その辺の話は長くなるし、取り敢えず部屋に行こう、叢雲ちゃん」

「えっと」

 

どうしようかと思ったらあいちゃんが手を出してきた、もしかして大和言う所の曳航ってヤツかな

 

「私はアメリカの鎮守府で建造された戦艦のアイオワ、よろしくね、叢雲」

 

違った、ただの握手だった

 

「私は叢雲、艦種は駆逐艦で初期艦、ってアイオワ?アイオワ級戦艦のネームシップ?」

「そのアイオワだけど、何故そんなに疑問形なの?」

 

握手しながら物凄く怪訝な表情をされてしまった

 

「えっと、アイオワって保存艦だと聞いてるんだけど」

「まーまー、色々聞きたい事も疑問な事もあるだろうけど、ここで立ち話するより、向こうでゆっくりと話そうよ」

 

漣が私達の背中を押すようにして部屋に向かった

 

 

 

 

 

二人について行き、入った部屋には漣と五月雨と電がいた

先任の漣は一組とざみちゃんと言っていたから、この五月雨と電は一組の二人か

 

「おかえりー、ちぃ姉様、食事は済ませて来ました?」

 

こちらを見つけた桃色兎から相変わらずなお気楽な声がかかる

 

「軽くだけどね、あんまり叢雲ちゃんを待たせても仕方ないし」

「間食を摘んだくらいだわ、ここには買い置きとかないの?」

 

あいちゃんの指摘に一組の漣がスナック菓子で一山作った

 

「こっちも食事に出てきます、ちぃ姉様、後よろしく」

 

いつでもどこまでもマイペースな桃色兎

 

「食事?そういえばお腹が空きました、話が長くなるだろうから今の内に食堂に行こう、電」

 

思い出した様に、独り言の様に零したのは五月雨だ

 

「はい、行きましょう」

 

五月雨の誘いに応じる電、ちょっと待って、二人共私とは初対面なんだ挨拶ぐらいさせて欲しい

 

「二人共ちょっと待って」

 

そう思って声を掛けたんだが、聞こえなかったのか五月雨と電は私達と入れ替わる様に部屋を出て行ってしまった

 

「……」

 

聞こえなかったのか、敢えて無視したのか、予想していなかった二人の対応に戸惑ってしまった

 

「あー、気を悪くしないでね叢雲ちゃん、ウチの五月雨が鎮守府の調査以来変わったって話はしたでしょ、今のウチの五月雨は電以外の声が入らなくなってる、当初は誰の声も入れなかったけど、電がどうにかこじ開けたんだ、おかげで一緒に居ただけの漣の声も幾らかは入るんだけど」

 

私を迎えに来た一組の漣が申し訳なさそうに言ってくる

 

「先任の電は一組の電と違って、その程度の基準しか持ち合わせて居ないのならそれまでなのです、ってね、それで一組の電と見解の相違ってヤツでさ、プラズマ状態になるまで縺れちゃってるんだよ、お陰で一組の電まで他の初期艦とは一線を引いた感じになっちゃった」

 

桃色兎が続けて言って来た

なんだろう、一組の漣が漣とは思えない表情をしてるんだけど、同居を始める前の大和が見せた様な顔なんだけど

 

「天龍が珍しいと言ってたのは、漣も普段はあの二人と行動しているから、という事?」

 

何時迄も戸惑ってもいられないから話を振ってみる

 

「まあ、そういう事」

 

アッサリと返されてしまった

 

「ちぃ姉様のおかげで漣は一組のさみちゃんとも仲良く成れました、後は天龍が二組を連れて来れば二組のさみちゃんとも仲良しさんになってコンプリートです」

 

桃色兎のそれは、一体なんだ?

 

「コンプリートって、そういう場合にも使うの?」

 

あいちゃんが不思議そうにしている

 

「漣の言語は日本語とは別と考えた方が良いわよ」

 

思わず声に出てしまった

 

「それはどういう意味で言ってるん?叢雲ちゃん?」

 

しまった、ダブル漣の追求が始まりそうになってる、コレはいけない

 

「漣の独特な個性は容易に理解できないって事、それ以外にどう思ったの?」

「……そういわれては、仕方無い」

 

危なかった、漣にステレオで捲し立てられたら反論どころでは無くなってしまう

 

「??」

 

あいちゃんには理解できなかった様だ、世の中には理解しなくていい事も沢山あるんだよ

 

「で、話と言うのは?」

 

変に揺り戻しが来ない内に本題に入って貰おう

 

「そうだね、どれから聞きたい?」

 

一組の漣はそう言うが、そんなこと聞かれてもどんな話があるのかさえ知らないんだけど

 

「順を追っていけば良いんじゃない?アレコレ話す事は多いいんだし」

 

あいちゃんから助け船かな

 

「叢雲ちゃんは、それで良い?」

 

一組の漣が聞いてくる

 

「良いわ、そもそも何の話が出てくるのかわからないし」

「漣は食堂へ行って来ます」

 

言うが早いか桃色兎は五月雨と電の後を追って行った

 

 

 

 

 

 




登場艦娘

研修中の叢雲
教導艦の大和、老提督の秘書艦も兼務してるハズ、やまちゃん呼びされてる

先任の漣、最初の初期艦の一人、桃色兎からは御姉様呼びされてる
先任の電、最初の初期艦の一人

三組の漣(桃色兎)、ざみちゃん呼びされてる

一組の漣、桃色兎からはちぃ姉様呼びされてる
一組の五月雨、改修済み、鎮守府の調査以降変わってしまった、41話参照
一組の電、一組の五月雨の理解者、行動を共にしている、先任の電とは考え方の相違が表面化している

二組の五月雨、二組の初期艦は諸般の事情により別行動中、43話参照

天龍達、大本営には三隻の天龍がいる、遠征隊統括艦娘

アイオワ、アメリカの鎮守府で建造された戦艦種の艦娘、あいちゃん呼びされてる



登場人物

老提督
・研修中の叢雲からは視察官、一期で視察官として鎮守府に来ている時が初対面だったから
・最初の初期艦からはじーちゃん、お爺さん、艦娘部隊発足前から色々あった経緯から
・稀に最初の人、艦娘の言う妖精さんを見る事が出来た最初の人
・一組の漣からは提督呼びされてる

監察官
老提督の決断により上部機関より派遣された、退役軍人、国家代表、元上級官僚、という方々
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