初期の艦これ   作:弱箔

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アメリカの鎮守府は大本営とは相応に異なる事が伺える

それにしても艦娘の種別も艦種だけではなく、出自も豊富になったものだ

ドロップ艦と建造艦と準建造艦ともいえる混在艦、それに建造方法は不明ながら深海棲艦、コイツラの発生方法は未だ解明できていない

あいちゃんの予測では深海棲艦に着いた元艦娘妖精が直接建造している、らしい

司令官の叢雲が工廠の設備に頼らず改修をやって見せた様に、アイオワも工廠の設備に頼らずに建造された事が根拠となっている

 

ここから分かる事は司令官の叢雲に着いている妖精さんは相当の変わり種だという事

そして漣の言い分では私から離れた妖精さんの中に元艦娘妖精が居たという事

 

ドロップ艦である私に元艦娘妖精が着いているなんて事は本来あり得ない

司令官の叢雲から譲られた妖精さんの中に紛れていた、という事になる、と思う

元艦娘妖精と言ってはいるけれど、状況次第では深海棲艦に着くことを躊躇わない妖精だ

あいちゃんはこの点を問題視している、まあ、気持ちはわからないではないけど

私が問題視しなければならないのは、司令官の叢雲はどこで元艦娘妖精と接触したのかだ、初期艦である以上ドロップ艦、条件は私と同じだから元から着いていたという事はあり得ない

 

それに何故元艦娘妖精を他の妖精さんと一緒に私に譲ったのか

元艦娘妖精の説得を期待しての事ではないだろう、私にはその元艦娘妖精がいる事さえ知らされていないし、漣は不活性化されていたと言っていた

さらに言えば入渠場の妖精さんの話としてなんらかの手段が用意されていた筈だと指摘されている、これは間違いなく司令官の叢雲の発案による改修の事だろう

もし、司令官の叢雲の発案を司令官が躊躇うことなく実行していたら、どうなっていたのだろう

 

そう言えばムラムラが言っていた、同じ叢雲なんだから卑怯とは無縁だと

この場合の卑怯とはなんだろう、考えるだけ無駄だろうか

だって、それが成立するのなら、司令官の叢雲は既に叢雲ではなくなっている事になるのだから

私に存在を継ぐ様に話をしたのは間違いなく司令官の叢雲だ、厳密にはその妖精さんだけど、艦娘と妖精さんは不可分な存在、同一視して良い筈だ

 

ん?

 

待って、不可分な存在であるハズの妖精さんと会ってる、あの妖精さんは司令官の叢雲から離れてた

 

どういうことだ?

 

今、司令官の叢雲は工廠の妖精さんによって維持されてる

そうしなければ身体の維持さえ困難な事は私が司令官に司令官の叢雲を起こす方法を教えるに当たって実施の可否を妖精さんに確かめてもらったから間違いない

あの時司令官の叢雲に残っていた妖精さんは極僅かだった、それを確かめた元から私に着いている妖精さんも事情は知っていたからそれ自体は予想の範囲内で意外性は無い、しかしこれ程僅かな妖精さんで容姿を保っていられる事を不思議がっていた

 

工廠の妖精さんは維持しているだけで、人の形を保っているのは残った妖精さんの技量によるハズ

艦娘の姿や形を作るのは建造だ、艦娘と不可分な妖精さんが居なければ艦娘は人の形を保てない、それを意図的に行う行為が解体と呼ばれる艦娘の使い方の一つ

艦娘と別れて存在する工廠の妖精さんが艦娘を維持している、成る程、今にして思えば漣が変な事を言ったと指摘したのは当たり前だ

不可分な存在である妖精さんは身体から離れ、私の妖精さんの見立てでは人の形を保つ事さえ困難な状況にある司令官の叢雲

鎮守府にいた時には自分の事情で手一杯でそこまで気が付かなかった、けれど考えれば考える程司令官の叢雲の現状は説明が付かない

 

私の知らない事情がある、という事だろう、それが何かは、わかりたくない

 

だって、漣が言ってた、あの鎮守府から来た初期艦達は解体を申請したと、あの子達は戦意を喪失していたと

 

艦娘の存在は押し寄せる深海棲艦を押し戻す実行手段、アイツラを全滅なんて数の上で不可能だし発生方法すら不明な大群を人から遠ざけるのが艦娘に出来る現実的な対応策

アイツラを押し戻す為の兵装であり、押し戻す場所に移動する為の艤装であり、それらを具体化する為の妖精さんだ

兵装だけでは移動出来ない、艤装だけでは押し戻せない、妖精さんだけでは作れるけど使えない

艦娘はそれらのプラットホームであり、人との共生の為のインターフェイスでもある

その艦娘が戦意を喪失していた、実行手段と成る事さえ拒否した、少なくとも解体を申請した初期艦達はそう判断したという事になる

 

その判断の根拠が司令官の叢雲だと、漣は言っていた、いや、言っていたのは解体を申請した初期艦達で漣はそう聞いたと伝聞を言っただけだが

ここから推定される結論は、既に手遅れ、解体を申請した初期艦達がそういう判断したという事

手遅れとは端的に言えば「勝敗は決した」「無駄な足掻きにすらならない」という事

 

その判断は大本営での研修でも覆る事はなかった

もし、覆る事があったなら、申請した初期艦が解体済みになっていない

 

私の研修では大本営の問題として士官達の話が度々出て来たけれど、本当に問題なのは解体申請をした初期艦達にその判断は誤りだと十分な根拠を示せなかった教導艦であり、艦娘部隊と解体申請をした初期艦達との認識の相違に誰も有効な対策を取れなかった事だろう

天龍は人と艦娘の認識の違いは指摘していたけれど、自身の認識不足はどこまで自覚出来ていたのか

 

建造艦とドロップ艦とでは元から持っている知識、或いは前提となる記憶や認識に違いがある

顕著な例はアメリカで建造されたという混在艦のアイオワだ、聞いている限りでは、艦娘としての前提の認識が不足している、アレでは人の認識と変わらない

この辺りは建造艦の限界もあるだろうし、建造艦だと言っている大和にもその限界はあるだろう

 

大本営にいるドロップ艦は何故こんな事態を放置している?

 

まさか、司令官がいない、そう言っていた吹雪の言い分がソレなのか、どうしようもないと

そこまで考えて思い当たった、私には司令官がいる

私の前にあの鎮守府から大本営に送られた初期艦達は、司令官の叢雲には会ったけれど、司令官には会って話をしていないのか、私がした様に司令官に会っていない事を理由に滞在申請をしたり、無理を承知で面会希望を通したりしなかったのか

だから手遅れとの判断に迷いも疑問の余地も無く、教導艦の話にも判断を変えられるだけの根拠を見つけられなかった

 

その根拠と成れるのは司令官だけ、あの鎮守府から大本営に来た初期艦の例はそれを示している

 

艦娘部隊の拡充に必須なのは鎮守府司令官としての条件を満たしている司令官だ

司令官がいなければ大本営の工廠で艦娘だけを量産した所で運用に問題が起こる上に解決出来ない

艦娘部隊の目的は海上航路の安全確保でありその為には数が必要、艦娘の建造と解体をゲストへのショウサービスにしている大本営の士官達では人の都合を優先し過ぎて艦娘の数を増やす事が先送りされて来た

だから目的の達成が何時になるのか、見込みすら立ちようがない

それが分かっているから、将来の艦娘部隊運用を見越して艦娘の凡ゆる情報の蓄積を優先させたのか

だから大本営所属の艦娘達は士官達の遣り様にも積極的に反対しなかったのか

 

これは電も言っていた、鎮守府司令官に求められているのは、艦娘と話す事、妖精さんと意思疎通を図る事だと、それを通して運用ノウハウを蓄積すると

ただ、漣の言い分では大本営の官僚達が優秀過ぎて成果はイマイチになってしまったらしいが

 

今更言っても仕方無い事だけど、先任の艦娘達は呑気過ぎる

只でさえ数の上で極めてを付けなければならない程に劣勢なのにこんな悠長に構えられては途中参加のドロップ艦としては戦線参加に二の足を踏みたくなる

この辺りは天龍が言っていた人の理解を待つという事なのだろうが、これでは理解を得られても時間が足りない、艦娘を増やし、十分な練度を持つ艦隊を多数運用出来る様になるまでには相応の時間が必要なのに

 

私の様なドロップ艦にまで元艦娘妖精が着いて来るくらいに深海棲艦は身近な存在になっているのに

タイムリミットは既に過ぎているかも知れないのに

 

海を眺めるだけの人にはその実感が湧かないのだろうか

陸に拠点を持つ人には海の事は解らないのだろうか

 

司令官もそうなのだろうか

 

漣が言っていた、司令官は普通の人だと

普通の人なら陸に拠点を持つ人の括りに含まれるハズ

司令官、提督であっても初期艦とどのくらい認識を等しくしているのか、それはわからない

最初の初期艦達は司令官が司令官の叢雲を保護した事を意外だと言っていた

直ぐに解体して新しい初期艦を要求しなかった司令官の行動は予想外だったという事

でも、そこから現状を打開出来る様な筋道は私には視えない

 

司令官

司令官の叢雲

鎮守府の艦娘達

大本営で会った初期艦達

引きこもり達と総称されてる高練度ドロップ艦

司令官の我が儘で進化するらしい妖精さん

鎮守府の初期艦にまで着き出している元艦娘妖精

元艦娘妖精の居場所となっている深海棲艦

 

妖精さんと元艦娘妖精は存在としては同一のモノ、姿の違いはあっても能力的には同様だ

 

ん?

 

それなら司令官は元艦娘妖精と話してるかもしれない

提督なのだから妖精さんと話が出来る

元艦娘妖精だからと言って初期艦と話が出来ない訳ではないし、 それは司令官だって同じ筈だ

 

それなら、何故司令官は普通にしていられる?

 

絶対数の違いから艦娘が深海棲艦に対抗しきれない事は元艦娘妖精と話せばわかる事だ

なのに、司令官として艦娘達を率いてる

深海棲艦と戦ってる

何故?

どうにもならない数の暴力が目前に迫っている、それなのに、普通だった

投げ槍な指揮を執るでもなく、悲観的な考えに囚われるでもなく、悲壮感など何処にも見えなかった

司令官なら何とかしてくれると、楽観的な考えは出来ない

数の暴力に対抗するには数で諍うしかない事を知っているから

 

んん?

 

ちょっと待って、数を問題にするのなら、妖精さんは?

元艦娘妖精まで含めるのなら、最大数は妖精さんでは?

 

その妖精さんは人との共生を望んでる、そうでなければ私達の様な艦娘という存在を造ったりしない

だからこそ、最初に妖精さんが見えて尽力してくれた視察官に妖精さんはとても懐いてるのではないか

漣の話では本来艦娘の間でしか使えない筈の妖精さんを媒介にした伝言ゲーム (通称テレパシー) に参加出来る程に視察官は優遇されている

尤も視察官自身その事に気が付いていない様子だけど

 

もしかして、若しかしたら、だけど、元艦娘妖精は艦娘と敵対する気が無い?

 

あいちゃんの話では元艦娘妖精の行動原則は自身の生存だ

生き延びる為に必要となれば、誰でも何処でも居場所にしてしまう

アイツラまでもその対象にしてしまう程にその行動原則は徹底している、らしい

ならば、敢えてその居場所を失う可能性の有る艦娘との戦いに参加する動機は無い、のではないだろうか

勿論、偶発的な遭遇戦はあるだろう

その時は居場所を確保する為にアイツラを支援し、本気を出す事は必然となってしまうが

 

元艦娘妖精に艦娘や人と積極的に敵対する理由はないのではないか?

 

私があいちゃんの様に元艦娘妖精の行動を問題視しないのは、その行動が生存を賭けての行動だから

生存への賭けは誰も拒否出来ない、してはいけない

それをしたら拒否された側は拒否した側を例外なく排除しなければならなくなる

そうなればお互いの排除力と再生力、言い換えれば破壊と生産

それをどれだけ大量且つ短時間で実行可能なのか、そこを競わねばならなくなる

今の段階では何方もアイツラの方が上回っている、結果は見えている、論じるまでも無い

アイオワが問題視するのもそれが現実と成った時どうなるのか、その結果が視えているから

 

人が深海棲艦に対し存在を拒否する事は自滅行為にしかならない

幸いな事に人は対深海棲艦戦を艦娘部隊に任せ、人の軍隊による全面対決という事態を避けている

偶然そうなったと思われるが、そう成るのには視察官を始め幾人かの司令官と提督の尽力があった

 

その艦娘部隊の行動原則は海上航路の安全確保だ

上部機関でも深海棲艦に対し全面対決などという事態を引き起こす様な行動は予定されていない

いつかは、そう言った行動予定も示される、かもしれない

そうなる前に人には現状を正確に理解してもらわなくてはいけない

 

 

 

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