初期の艦これ   作:弱箔

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51 ノックも無しにドアが開いた

 

 

 

 

 

ノックも無しにドアが開いた

 

「漣、只今もどりました!」

 

元気な桃色兎の声に私の長考は中断された、二人を見れば桃色兎の方に顔を向けていた

 

「おかえり、思ったより早かったね」

「あら?漣一人?」

 

一組の漣が迎えて、あいちゃんが聞く

 

「ああ、あの二人ならお腹がいっぱいになって眠くなったってさ、部屋で寝てくるって」

 

なんでもない様にいう桃色兎

 

「はー、まったく」

 

溜息交じりに諦めとも取れる感じの言葉を吐き出す一組の漣

 

「さっきまで熱心に協力してくれたんだし、少しくらいいじゃない」

 

あいちゃんはさして気にしていない様だ

 

「そういうアイオワに伝言がある」

「?」

 

桃色兎の台詞に心当たりがないらしいあいちゃん

 

「アメリカの司令官が呼び出しかけてる、直ぐに行った方が良いよ」

「司令官の呼び出し?私を?」

「そう、本国でなんかあったみたいだよ」

「そういわれても、ここでの要件が済んでないんだけど」

 

困った様子を見せるアイオワ

 

「ここにも内線はある、確認してくれないかな、伝言を伝えたって先方に伝わらないと漣の立場が悪くなるし」

 

思わず桃色兎に驚きの視線を向けてしまった、この常にお気楽な桃色兎が立場なんて気にするのか

 

「なに?叢雲ちゃん?」

 

あからさま過ぎる視線を桃色兎が気付かない筈もなく聞いてきた

 

「!なんでもない」

「まあ、それは後で聞かせてもらうとして、あいちゃん?確認した方がいいんじゃない」

 

一組の漣まで桃色兎と同じ疑惑を持った様だ、どうやって逃げようか

 

「はあ、携帯端末くらい持ってる、緊急の呼び出しならこっちにくる筈なんだけど」

 

言いつつポケットから手のひらサイズの端末を出して見せるあいちゃん

 

「あっ、ソレ使っちゃ駄目、盗聴の可能性があるって言ってた」

「誰が?」

「老兵のじーさま」

 

この桃色兎の一言でアイオワの表情が変わった

 

「漣に伝言を頼んだのって、あの老兵?」

「そうだよ、三人で食べてたら相席してもいいかって来たから、一緒に食べて来た」

 

「ざみちゃんは初対面だっけ、アメリカのじーさまは」

「まあね、あっちの二人はよく知ってる様子だったけど」

 

「ちょっと行ってくる、話が途中で悪いけど」

 

あいちゃんが席を立つ

 

「またね、アイオワ」

 

「戻ったら話の続きをしましょう、叢雲」

 

そう言い残してアイオワは部屋を出た

 

「フラグっぽいね、今の」

「あっ、ちぃ姉様もそう思いました?」

「フラグ?」

 

なんの話をしてるんだ漣達は

 

 

 

 

 

アイオワが部屋を出てしばらくした頃、ダブル漣に追求され逃げるのが苦しくなっている所へ内線で呼び出しがかかった

これ幸いと先任の漣の呼び出しに応じたものの、それはそれで厄介事である事に工廠に向かう途中で気がついた

 

「話もそこそこに工廠に連れてこられても……何をしようっていうの?」

 

「あー、来た来た、話の途中だろうけど、あいちゃんに妖精さんを連れていかれちゃて、工廠の新設が止まっちゃたんだ、悪いんだけど手を、というか妖精さんを貸して欲しい」

 

一組の漣と桃色兎に先導され工廠に着いた途端に先任の漣にこう言われた

 

「連れていかれたって、元々アイオワの妖精さんでしょ」

 

ん?妖精さんを回収しているという事は、帰り支度をし始めたという事で、大本営というか日本をを去る事になるのかな、随分と急な話だ

 

「そうなんだけどね、予定ではもう二日くらい借りられる筈だったからノンビリし過ぎた、引き継ぎを大急ぎでやったんだけどね、イマイチ情報の混乱があるし、何より全部の情報を引き出せなかった」

 

そんなの先任の漣の手落ちじゃないか、その埋め合わせを私にやれと?

 

「叢雲ちゃんが受け継いだウチの叢雲の妖精さんの協力がいるんだ、入渠で叢雲ちゃんの妖精さんになってるから叢雲ちゃんの協力が無いと妖精さんが協力してくれないんだよね」

 

なんだそれは、ここでも必要なのは先任の叢雲であって私では無い、コレ怒っていいかな

 

「漣、言い様が露骨過ぎます……」

「回り諄く云われるよりはマシよ、変に気を使わなくていいわ五月雨」

 

先任の五月雨がフォローしようとしたが、こっちで断った

 

「……随分と強気なのは、何か訳が?」

 

どういうつもりなのか、先任の漣が面白いモノを見つけたといった感じで聞いてくる

 

「ワケ?漣が言ったでしょ、話が途中なのよ、説明が足りなさ過ぎるし、そっちの都合だけに振り回される義理も無いんだけど?」

「義理は無くとも義務はある、この新設してる工廠は所属未確定艦の現役復帰の為の工廠だ、上手く事が運べば高練度の艦娘が多数運用可能になる、それは現状で艦娘部隊の表舞台を一人で支えてる佐伯司令官に最大の援護となる、叢雲ちゃんだって無関係じゃない」

 

ほう、先任の漣は司令官を出せば私が無条件に従属すると見做しているのか

勘違いも甚だしい、これってドロップ艦でも新規建造艦並みに格下に見てるって事だよね

そう言えばあの演習でも吹雪がそうだったっけ、先任の初期艦達は他のドロップ艦を下に見ているのか、あの時天龍が言ってた最初の初期艦だから特別扱いだと思ってるのかというのはこういう事か

 

「漣、口が過ぎます、私達は叢雲ちゃんに協力をお願いしたいのです」

「漣が急ぎたいのもわかるんだ、けどそういう言い方は無しだと思う」

 

プラズマにブッキーまで先任の漣に苦言を言い始める

 

「おや、初対面の時にアレだけあった血の気は何処に?」

 

先任の漣はどうしたというのか、三人に止められてるのに方針転換すら、する素振りを見せない

 

「そう言われると、アレなんだけど、あの時と今とでは事情が変わってる、もう叢雲ちゃんはドロップ直後の新兵じゃない、ウチの叢雲を継ぐ存在としての器を有してる、練度だって私達には届いてないけど、駆逐艦としては高練度だ、相応に対処した方が無難に事が運ぶと思うけど、漣はそう思わないの?」

 

ブッキーがなんか言ってる

 

「叢雲ちゃんの事情は何も変わってない、変わったのはブッキーの見方だ、そんなブッキーの事情に漣は付き合ってられない」

 

ブッキーの言い分に耳を貸す気はない様子の漣

 

「漣、何を焦っているのです、強引過ぎます、それでは得られる協力までも損ないかねません、どうしたというのですか」

 

プラズマ成分を見せつつ言う電に若干押される漣

 

「……アイオワが妖精さんを連れて行く時に、少し聞こえたんだ、本国で誰かが勝手に建造したって、アメリカの建造は人が必要な筈だ、勝手にってどういう事なのか、気にならない?」

 

少しトーンを落としてはいるが先任の漣は話の方向を変える気は無いらしい

 

「人というか、不可分な妖精さんの替わりに人が必要って事でしょ、替わりになるのなら人でなくてもいい筈よね」

 

何と無く先任の漣が焦っている心境が読めてきたので突いてみる

 

「そう、替わりになるのなら、元艦娘妖精を不可分な妖精さんとして艦娘を建造できるって事、艦娘かどうかは結果を見て見ないと何ともだけど」

 

先任の漣の言い分から察するに、どうやら私の読みはニアミス程度には近くに当たった様だ

 

「艦娘の特徴を持つ深海棲艦が建造されたと、漣は考えているの?」

 

疑わしげに五月雨が聞く

 

「可能性は、残念だけど無視出来るほど低くは無い、これまでは烏合の集だったアイツラが指揮統率され、まともな戦術まで使い出したら、艦娘部隊なんて時間稼ぎすら出来なくなるだろうね、只でさえ数の暴力に辛うじて抵抗している状況なんだ、艦娘の数が増えればもう少しマシな状況になるとは言え、それはアイツラが今まで通りの烏合の集であることが大前提、もしアメリカの鎮守府で勝手に建造されたとされるナニモノかがそういった類の存在なら、手段なんか選んでる余裕は無い、数の暴力に対抗するには数を揃えるのが定石だけど、それには時間がかかるのにその時間が無くなったかもしれないんだ」

 

先任の漣は随分と悲観的な事を捲し立てた、それこそ漣の事情になんて付き合ってられないんだけど、ブッキーの事情には付き合わないのに自分の事情には無理にでも付き合わせるという事かな

 

「漣ってば何時から破滅願望なんて持ち合わせてるの?」

 

そう言ったら先任の漣がエライ顔で睨んできた、あまり気にせずに続ける

 

「そもそもの話として、アイツラが艦娘部隊との全面対決なんて事態を意図するというのは、何処の誰が吹聴してるのよ」

「は?アイツラが艦娘部隊と戦わないというのなら、それこそ何処の誰が言ってるんです?じーちゃんだって深海棲艦が攻勢に出る可能性を視てるんだよ」

 

先任の漣ってば、こんな時に百面相しないでよ、笑いを堪えるのも一苦労なんだから

 

「視察官が言っているのは攻勢に出るって話で全面対決ではないんだけど、漣も元艦娘妖精と話はしたんでしょう?もしかして資料として纏めたモノしか見てないの?」

 

私の言い分に百面相からエライ顔に戻りつつ二人並んだ漣達の方を向く先任の漣

 

「ざみちゃん、叢雲ちゃんの言ってる事、わかる?」

 

なんだろう、矛先が桃色兎に向かったんだが

 

「あー、えー、その件については、ちぃ姉様にお任せしておりますです、ハイ」

「えっ!?アタシなの?!」

 

桃色兎の言い分に驚きの声を上げる一組の漣

 

「どういうこと?」

 

先任の漣が多分だけどエライ顔で一組の漣を睨んでる、こっちからは背中というか後頭部と引き攣った笑みが見える、話が長引きそうな気配なので口出ししてみる

 

「あいちゃんがいってた、元艦娘妖精は居場所が確保出来ればそれでいいんだって、居場所が艦娘だろうと深海棲艦だろうと気にしないってね」

「?それが、どうなると艦娘と戦わないって事になるの?」

 

助け舟のつもりだったんだけど、一組の漣はこの船に乗ってくれない様だ、一組の漣より先に先任の漣が聞いてきた

尤も先任の漣の所為で一組の漣は乗りたくても乗れないのかも知れないが

 

「元艦娘妖精は居場所が欲しいだけなのよ、好き好んで居場所を失くすかも知れない行動を起こしたりしないでしょ」

「……つまり、元艦娘妖精が深海棲艦に取り込まれる事でアイツラが戦いを回避する様になると?」

 

疑わし気に聞いてくる先任の漣

 

「そうでなければ今の段階でも艦娘はアイツラに対抗出来ないと思うけど、絶対数が違い過ぎる事は知ってるでしょう」

 

取り敢えず応答はしておく

 

「今の段階って、そんなに、なの?」

 

なんだ?何故そんなに呆気に取られてる?変な事は言ってないんだけど、ドロップ艦なら知っている事でしかないんだけど、ってまさかドロップ時期の違いでアイツラに対しての認識にズレが生じてたりするのかな

 

「叢雲ちゃん、今の段階で深海棲艦はどのくらいなんですか?」

 

固まってしまった漣の代わりに五月雨が聞いてきた

 

「アイツラは基本的に眠っているから正確な数はわからない、けど、全部起きてくればそれだけで海上航路は封鎖されるでしょうね」

「攻撃するまでもなく数だけで封鎖出来るほどに増えているんですか」

 

感心も諦めも感じさせない、時々見せる感情の抜けた無機質な顔、プラズマとは違う方向で色々無理だと思わせる表情を見せる五月雨

 

「あー、私達がドロップした頃はそこまでではなかったんだけど、人との共生に手間取ってるうちにそんなになってしまいましたか」

 

なんだろう、ブッキーは漣の様に悲観的になってない、五月雨の様に感情を抜いた様子もなくいつも通りだ

 

「あの戦いの結果から予測はしていました、いくら統制が不十分だったとはいえ高練度艦をあれだけ集中運用したのに損失が多過ぎました、私達の知る範囲なら多数が無傷で帰って来れる筈だったのですから」

 

プラズマもいつも通りの様子だが、その台詞は聞き捨てられない

 

「それ、視察官にも言ったの?」

 

思わず突っ込みを入れてしまった

 

「勿論です、それを受けて出撃命令が出たのですから」

 

なんだろうね、あの戦いって何処が何をしたかったのか、色んな所が夫々の思惑で夫々の望む結果を求め、何処もソレを手に出来なかった、こうなってくると色々考えるだけ無意味かな

 

「だから、本来は私達も参戦する予定だったんだ、でも直前になって初期艦は新規建造艦と合流して間もないドロップ艦の世話役として残留が命じられた、駆逐艦とはいえ一組も居たから十隻も出撃数を減らしたんだよ、高練度艦を十隻だよ、出撃総数からすれば少ないかも知れないけど、戦況を変えられたかも知れないのに」

「危険な考え方をするんだね、ブッキーは」

 

戦場にタラレバは無い、少数で変えられる戦況なんてフィクションの中にしか無い、私達の戦場は海の上なのにどんな想像を働かせればブッキーの様に考えられるんだろう

 

「危険?ああ、脳天気って方か、なるほど、ブッキーらしいといえばらしいのか」

 

固まっていた先任の漣がようやく帰って来た

 

「なによ脳天気って、それじゃまるでアタシの頭は危険を感知出来ない御花畑みたいじゃないか」

「……そう言ってる」

 

先任の漣が囁いた

 

「えっ!?」

 

聞こえたのか、ブッキーが驚いた声を上げた

 








登場艦娘

研修中の叢雲
教導艦の大和、老提督の秘書艦も兼務してるハズ、やまちゃん呼びされてる

先任(一号)の漣、最初の初期艦の一人、桃色兎からは御姉様呼びされてる
先任(一号)の電、最初の初期艦の一人、稀に良くプラズマ呼びされてる
先任(一号)の吹雪、最初の初期艦の一人、大勢からブッキー呼びされてる
先任(一号)の五月雨、最初の初期艦の一人、桃色兎からは五月雨御姉様と呼ばれることも
先任(一号)の叢雲、最初の初期艦の一人、目覚めない事から眠り姫とも呼ばれてる

三組の漣(桃色兎)、ざみちゃん呼びされてる

一組の漣、桃色兎からはちぃ姉様呼びされてる

アイオワ、アメリカの鎮守府で建造された戦艦種の艦娘、あいちゃん呼びされてる




登場人物

老提督
・研修中の叢雲からは視察官、一期で視察官として鎮守府に来ている時が初対面だったから
・最初の初期艦からはじーちゃん、お爺さん、艦娘部隊発足前から色々あった経緯から
・稀に最初の人、艦娘の言う妖精さんを見る事が出来た最初の人
・一組の漣からは提督呼びされてる

監察官
老提督の決断により上部機関より派遣された、退役軍人、国家代表、元上級官僚、という方々

老兵
・老提督に続き妖精さんを見る事が出来た二人目の人、退役軍人
・老提督と同様に艦娘部隊上部機関に席を用意されてる
・桃色兎からはアメリカのじーちゃん呼びされてる
・現在監察官として大本営を監察中

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