初期の艦これ   作:弱箔

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52 お話中失礼します

 

 

 

「お話中失礼します」

 

いきなり聞き覚えのない声がかかった、見れば自衛官らしい人と視察官が居た

 

「じーちゃん!どうしたの?こんな所に随伴引き連れて」

 

先任の漣が真っ先に応答した、が、視察官と漣の間に自衛官が割り込んでいる

 

「護衛など要らんよ……」

「そうはいきません、艦娘が人に砲撃を加えんとした、事実は事実として受け入れねばならないのですから」

 

ウンザリ気味の視察官は兎も角、護衛の自衛官はなんか漲ってる、なんだろうねぇ

 

「お互い忙しい身の上なんだから、手短にいきましょう、それでいいわね」

 

護衛の自衛官に宣告する、異論は認めない

 

「はぁ、叢雲さん、彼等を刺激しないで貰いたいのだが」

 

なにを言ってる、刺激してるのは護衛の自衛官達だ、なんで自衛官が拳銃なんて携帯してるのか、これみよがしに腰に似合いもしないホルスターをぶら下げてるし

 

「自衛官って警察官じゃないから銃は携帯しないんじゃなかったっけ?」

 

ブッキーよ、その言い分は先任の漣の言い分を肯定してるぞ、自覚してないのか

 

「任務次第では自衛官も銃を携帯することもあるんですよ、艦娘さん」

「やめないか」

 

視察官が割り込んで止めた、のはわかるが、自衛官が不満そうだ

 

なるほど、無関心か排除関係にしかならないと言っていた視察官の主張はこういう事か

こんな関係を散々見せられたら、艦娘と自衛隊で共同戦線を張るなんて絵空事、それを成している司令官に期待してしまうのも心情としては分かる、でも現実は心情など汲んではくれない

 

「手短に、という事ですが、御用の向きは何でしょうか」

 

あっ、五月雨の機嫌がとても悪い、ここまで明から様に機嫌を損ねてる五月雨は初めて見た

 

「幾つか報告しておこうと思ってね、それとここの進捗状況の報告も貰いたい」

 

あー、視察官が諦めた、仕事モードで要件だけ済ませる気だ、そう誘導したとはいえ、なんか納得いかない

 

「それだけなら秘書艦を使いに出せば済むんじゃないの?」

 

取り敢えず探りを入れてみる

 

「直に報告を受けると、老提督のお考えだ、艦娘が口を挟むことではない」

「護衛は要らんと言っているのが分からんのか!」

 

おおう、視察官も色々溜まってる様子、余計な口を出してきた護衛の自衛官を一括したよ、いいのかな

 

「老提督、我等は監察官より護衛の任務を受けております、拒否はお互いに得策ではない」

 

なんだろうね、この人達本当に自衛官?司令官の鎮守府で会った人達と全然印象が違うんだけど

 

「大和の対テロ行動でアメリカが引いてしまった影響ですか、他の国が監察官達を護衛の名目で監視下に置きに来ていると」

 

電が感情のカケラも乗っていない言葉を吐き出す、なんかマズイ流れになってない?

 

「艦娘なら海で戦え、陸で遊ぶ余裕など持ち合わせてどうする気だ」

 

なに、この人達、艦娘に敵意を向けて来るんだけど、どういう事なの?

 

途惑いを持て余していたら誰かがこちらに呼びかけて来た

 

「貴官等こそ、そこでなにをしている、それに監察官より任務を受けている?その監察官の名を言え、監察官である私は承知していない」

 

「アメリカのじーさま!」

 

真っ先にに応答したのは桃色兎だ、そういえばさっき食堂で一緒だったと言ってたっけ

それにしても護衛の自衛官達はどうしたのか、老兵と呼ばれてる監察官が姿を見せたら急に大人しくなってしまった

こちらに歩みを進めながら老兵が問う

 

「貴官等の官位姓名を聞いておこう」

 

応答しない護衛の自衛官達

 

「無いよ、彼等は自衛官であっても自衛隊員では無い、政府もどこまで関わっているのか、判断しかねる様な所属なのでね」

 

老提督から説明が入る

 

「タカ派の実働部か、この件は上部機関を通じ日本政府に厳重に抗議する、また、政府間情報共有協定に基づき抗議内容は艦娘部隊に協力する国家と共有される、異議があるなら聞くが?」

 

こちらの間近にまで距離を詰め護衛の自衛官達と対峙する老兵、監察官の登場から一言も発する事なく護衛の自衛官達は老提督を置いて去ってしまった

到底自衛官としてはあり得ない行動であるし、なにより自衛官でも自衛隊員では無いとは、どういう事なんだろう、人の組織の都合ではあるのだろうけど

護衛の自衛官達の姿が見えなくなってから老兵が口を開いた

 

「電といったな、アメリカは引いてなどいない、今は少し混乱しているだけだ、だからそんな恐い顔するな」

 

言いながら電に近づきその頭を撫でる老兵と呼ばれてる監察官

驚くのはあのプラズマが大人しく撫でられている事だ、視察官の時程ではないけれど、とても柔らかい表情を見せている

 

「そちらは済んだのかね、本国から連絡があった様だが」

 

老提督が老兵に聞いてる

 

「司令官に来た話で私に来た訳では無いよ」

 

気軽に答える老兵、この二人の老人は艦娘が人と共生関係を構築する際に尽力してくれたと聞いてる、その事は妖精さんを通して多くの艦娘が知っている、知らないのはドロップ直後の新兵だけだ、それも入渠で情報共有されるまでの話だけど

 

「視察官の報告というのは?」

 

兎も角話を聞いてみない事にはなにも判断出来ない

 

「秘書艦が良く働いてくれるお陰で、こちらは予定通りに事が運べる、そちらの予定は順調かね」

 

秘書艦という事は五十鈴か、大和は拘束されてるって言ってたし、大和が拗ねたりしないか気になるが、あの大戦艦なら大丈夫だろう

 

「予定より早く妖精さんを引き上げられて滞ってる、それで叢雲ちゃんに協力を仰いでる所」

 

先任の漣が答える

 

「?失礼だが、こちらの初期艦はドロップ直後だと聞いている、何故協力を求める」

 

老兵が聞いて来た、まあ、事情を知らない人から見れば当然の疑問ではあるんだけど

 

「叢雲ちゃんはウチの叢雲を継ぐ存在、今は補佐くらいだけど、いずれ補佐ではなくなる」

 

ブッキーが答えた

 

「あの眠り姫を継ぐ存在?」

 

いまひとつ意味を掴みかねている様な老兵

 

「そう、本人から頼まれたんだって、今朝の入渠でもそれが事実である事は確認された」

 

一組の漣が応えた

 

「よくわからないが、新設している工廠を稼働させるのに叢雲さんの協力が必要だと」

 

視察官から聞いて来た

 

「厳密には叢雲ちゃんがウチの叢雲から受け継いだ妖精さんの協力が必要、アメリカの鎮守府と大本営とでは色々違いがあって、そこの差異を吸収なり整合させられる可能性を持つ妖精さんは、あの特異な鎮守府を作り上げた妖精さんだけ、残念ながら、私達を含めて大本営にいる妖精さんには出来ない」

 

先任の漣から説明が入る

 

「違いとは?」

 

老兵が聞いてくる

 

「一番の問題となっているのは資材と資源、厄介な事に工廠で使う素材が違うんだ、こっちの妖精さんは資源を扱えない、大量の資源と多くの時間をかければどうにかなるんだろうけど、そんな悠長な事をしてる時間はない」

「叢雲ちゃんの話だとあの鎮守府では艦娘だけで再資材化が出来るって事だし、現状でもあの鎮守府から出張ってる艦隊は鎮守府に戻らず特定海域で継戦してる、なんらかの手段で洋上補給を受けているのは間違いない、そうでなければこんな長期間特定海域に張り付いてられないし、何らかの手段を有してるんだと思う」

 

先任の漣に続いて一組の漣から説明が入った

 

「つまり、資材の活用についてあの鎮守府の妖精さんは大本営の妖精さんより長けていると」

 

こちらはイマイチわかってない感じの老提督

 

「そういう事、資材と資源、似ている様で全く違うからね、資材の解析は自衛隊では匙を投げてるし、あいちゃんの話でもそこは確認されてる、こっちは資源を使う機会があるとは思ってもなかったからその辺りは全くフォローしてないんだ、もういっその事あの鎮守府にこの工廠を新設したいくらいだよ」

 

そう言う先任の漣の言葉になにを思ったのか視察官と老兵が顔を見合わせた

 

「長期間に及ぶ継戦、確かにそうだな、あの鎮守府の備蓄資材はどのくらい残ってる」

「正確にはわからないが、多くはないだろう」

 

老兵と老提督でなにやら始まった

 

「大本営は遠征による資材備蓄を再開したのだったな」

「上部機関による大本営の制圧行動が完了した時点で再開させた、どう動くにしろ資材は必要になる」

 

老兵がなにやら考え込んでるんだけど、なにを考えてる

 

「私に考えがある、上部機関に提案して来よう、了承を得られるのなら実行できる様に準備してくれ」

「上部機関の了承は簡単には得られない、どうするのだ」

 

「先のアイオワの建造公開の件で上部機関の本会議が開催される、その準備段階として幾つかの作業部会が開かれる予定だ、そこで提案して了承を取り付ける」

「あの艦娘さんは司令官と共に本会議に出席する予定だったな、急遽帰国してしまったが、そこは良いのか」

 

「そんな事はアメリカの事情だ、老提督が気にする事では無い、が、お人好しのお前さんの気苦労を減らす為に言っておくと、司令官候補がチームを組んでアイオワの資料を抱えて準備してる、なにも心配する事はない」

 

「確か、アメリカの司令官候補って全員士官学校を卒業してなかった?」

 

先任の漣から突っ込みが入った、士官学校?という事はあいちゃんだけでなく全員軍人なのか

 

「物知りだな漣は、その通りだ、アメリカでは士官学校で司令官候補を探した関係でそうなった、日本の様に一般公募しなければ見つけられない程人材不足では無い」

 

あ、視察官が若干苦い顔をした

 

「アメリカの豊富で優秀な司令官の話は分かったから、この新設する工廠をどうするの」

 

話が長くなりそうな気配を感じたので戻って来てもらおう

 

「当座は続けてくれ、但し上部機関の了承が取れ次第場所を移す、お前さん等の言う引き籠もり達と一緒にな」

「では、私は彼と連絡を取り受け入れを要請しよう」

 

そう答える視察官、なんかとても御気軽に言ってる様に聞こえるんだけど、司令官の現状を忘れてない?

 

「聞いた限りではあの司令官、提督は相応に対処した方がいい、民間上がりの素人などと思わない事だ」

 

老兵の言葉に苦笑いの老提督

 

「知っている、直接会っているからな」

「……視察に行ったんだったか、余計な事を言った、忘れてくれ」

 

そう言うと老兵は足早に立ち去った、それを見送る形になった初期艦達と老提督

 

「アメリカのじーちゃんはあの鎮守府を移設先にする気だけど、じーちゃんはどう思う」

 

先任の漣が聞く

 

「何か異論があるのかね」

 

なんでも無い様に聞き返す視察官

 

「あの鎮守府の司令官、佐伯司令官は少し研修を受けただけの素人だよ、鎮守府での運営資料を集めるのなら失敗も資料的価値がある、でも実働隊はそういう訳にはいかない、指揮を任せていいの」

 

不安な様子を見せる先任の漣

 

「実働隊の指揮なら既に取っている、人員増加に伴う問題は優秀な秘書艦を配置しようと考えている、それでも不安かな」

「……やまちゃんをあの鎮守府へ、移籍させるの?」

「拘束された四人の内、大和だけが未だに解放されない、多少の強引さはあるが、大和を監察官の取り巻きのオモチャにされたくない、それに彼ならば大和を有効に活用してくれるだろう」

 

オモチャって、取り巻きって、今の大和はどんな状況にいるんだ、厳格な手続きに基く調書作成に協力してるんじゃないのか

 

「叢雲さん、大和は貴方の教導艦だが、事情により変更しなければならなくなる、今後は天龍さんを教導艦として貰いたい」

 

視察官から教導艦の変更を告げられた、それをこの場で言ったのは、私が余程何か言いたげな顔をしていたからだろう

大和をオモチャにとか、言ったのが視察官でなければ、詳細を問い詰めている所だ

相手が視察官だから無理矢理に抑えこんだのを見つかってしまった

 

「それなら叢雲ちゃんをあの鎮守府の初期艦として正式に配属するのは?そうしたらやまちゃんも教導艦を続けられるし、引き籠もり達を引率するのが秘書艦の役割なんでしょ」

 

「……言いたい事はわかるつもりだ、しかしそこまで露骨な贔屓は誰も喜ばない、無用で無益な言動を誘発しかねない、現在の状況で余計な手間を増やす事は避けたい」

 

「天龍を教導艦にって話だけど、それって天龍達は了承してるの?」

 

相変わらず私の知らない所で勝手に話が進んでいる様だ、大人しくしてたら流されるだけ、ムリにでも自力で進まないと、司令官の叢雲を継ぐ事は出来ない、と思う

 

「天龍さんなら拒否はしないだろう、何かそうなる根拠があるのかい」

 

私の意図するところがわからない様子の視察官

 

「根拠って、人に仕事を振るならちゃんと話しを通しなさいよ、視察官は元海自の偉いさんなんでしょう?根回しの重要性を忘れたの」

 

「?彼、佐伯司令官にはこれから話す、今出て来た話なのだから根回しと言われても、困る」

 

「天龍に教導艦変更の話をしたのかって聞いてるのよ、なんでこの話の流れで司令官が出てくるの」

 

「天龍さんが了承してくれる事はわかっている、了承を取り付けるのが難しい彼との交渉に時間を要する、そちらから話を通していくから順番的に彼から了承を得てから天龍さんに話をする事になるからだが、なにか不審な点があるのかな」

 

私の言い分に答えてくる視察官、どうやらお互い事の運び方にズレがある様だ

 

「ああ、優先順位なんてそれぞれの頭の中にしかないからね、こういうちょっとした齟齬が積み重なっていくと、どうにもならなくなるんだ」

 

漣がなんか言ってきた

 

「だから、鎮守府司令官は艦娘と話をする様に研修では勿論、書面でも通知されますからね、佐伯司令官の場合は妖精さんともよく話す様に通知されてると思いますよ」

 

五月雨が続いた

 

「それをするには、普段から司令官が艦娘に話しかけていないと、司令官という立場に変に拘ってしまうとお互いに話辛い雰囲気が出来上がってしまうよね」

 

ブッキーよ、おまえもか

 

「大本営の士官達はソコを気にし過ぎました、それだけでなく組織人としての在り方にも、結果、艦娘には話では無く命令しか出来なくなってしまった」

 

プラズマもなんか言いだした

 

「ウチの叢雲は佐伯司令官とは初対面の時からアレでしたし、大人しくしてるなんて事はなかったんでしょうね」

 

五月雨はなにを楽しそうに話してるんだ

 

「そりゃね、戦艦が建造出来たって教導を買って出て戦力化してしまうくらいだから、遠慮なんて概念は施設に置いて来てたよね」

 

ブッキーのそれは、なんだ?

 

「遠慮もないままに行動してもウチの叢雲は司令官との関係を破綻させなかった、現に佐伯司令官は未だにウチの叢雲を保護してる、漣は破綻が見え隠れしてたから、あんまり強く出れなかったかな」

 

「うーん、そういう意味では五月雨も遠慮せずに行動出来たのか、司令官の考えが良く分からずに様子を見ている事が多かったと思います」

 

「電はこの姿の所為で御飾りでした、何を言っても真剣に取り合ってもらえず、戦果を持って意見しようと艦隊行動を取ったらアイツラに目を付けられて出撃禁止を言い渡されて、どうにも出来ませんでした」

 

「皆んな色々あるんだね、私なんて司令官の指示を熟すだけで精一杯だったよ、正直周りを見てる余裕とかなかったかな」

 

なんだそれ、熟練の駆逐艦が熟すだけで精一杯?ブッキーの司令官はどんな指示を出してたんだろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







登場艦娘

研修中の叢雲
教導艦の大和、老提督の秘書艦も兼務してるハズ、やまちゃん呼びされてる

先任(一号)の漣、最初の初期艦の一人、桃色兎からは御姉様呼びされてる
先任(一号)の電、最初の初期艦の一人、稀に良くプラズマ呼びされてる
先任(一号)の吹雪、最初の初期艦の一人、大勢からブッキー呼びされてる
先任(一号)の五月雨、最初の初期艦の一人、桃色兎からは五月雨御姉様と呼ばれることも
先任(一号)の叢雲、最初の初期艦の一人、目覚めない事から眠り姫とも呼ばれてる

三組の漣(桃色兎)、ざみちゃん呼びされてる

一組の漣、桃色兎からはちぃ姉様呼びされてる

天龍達、大本営には三隻の天龍がいる、遠征隊統括艦娘

アイオワ、アメリカの鎮守府で建造された戦艦種の艦娘、あいちゃん呼びされてる




登場人物

老提督
・研修中の叢雲からは視察官、一期で視察官として鎮守府に来ている時が初対面だったから
・最初の初期艦からはじーちゃん、お爺さん、艦娘部隊発足前から色々あった経緯から
・稀に最初の人、艦娘の言う妖精さんを見る事が出来た最初の人
・一組の漣からは提督呼びされてる

監察官
老提督の決断により上部機関より派遣された、退役軍人、国家代表、元上級官僚、という方々

老兵
・老提督に続き妖精さんを見る事が出来た二人目の人、退役軍人
・老提督と同様に艦娘部隊上部機関に席を用意されてる
・桃色兎からはアメリカのじーちゃん呼びされてる
・現在監察官として大本営を監察中

護衛の自衛官達
老提督が言うには自衛官だけど、自衛隊員ではない、変わった所属の方々

アメリカの提督
アメリカの鎮守府に着任している司令官、但し扱いは研究施設で実態としての鎮守府とは異なる

佐伯司令官
・増設された鎮守府に着任している司令官の一人
・先任の叢雲を保護している
・現在日本周辺海域の深海棲艦対応に追われてる
・研修中の叢雲が司令官と呼んでる人



その他
・増設された鎮守府は最初の初期艦の数と同数の五箇所
・現在四箇所が機能不全を起こして艦娘の運用を取り止めている
・大本営は上部機関の直接統括下に置かれ機能停止させられている



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