初期の艦これ   作:弱箔

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54 こちらの鎮守府に配属となりました

 

 

 

 

 

 

 

 

7月2日

 

 

「本日付けでこちらの鎮守府に配属となりました戦艦、大和と申します、以降よろしくお願いします」

 

例の船団が鎮守府に到着した、その一行を率いて来た、戦艦の大和

到着後無線でのやり取りがあった様だが事務艦に任せっきりで私は関与していない

どんな遣り取りがあったのかは兎も角、船団の行動を見る限りあまり友好的ではなさそうだ

まあ、大本営から来た船団な訳で期待もしていないが、向こうは私(司令官)との面会要請を出して来た

通知は来てる事だし断る訳にもいかない、何より状況の説明をしてもらわないとこちらも困る

 

そんな訳で執務室での面談が始まった、この戦艦どういうつもりか配属になったと言いつつも辞令を持っていない様子、辞令もそうだが正規の行動計画書すら持って来ず手ぶらなんだが、それらを提示して来ないと話が始まらない、挙句に船団は鎮守府沖に投錨、駆逐艦はその周囲に配置されたままだ

 

「当鎮守府へようこそ、最初から無礼で申し訳ないが、こちらの都合で歓待式やら所属艦娘総出での出迎えが出来なかった事をお詫びする」

 

儀礼的に頭を下げる、面談に先立って事務艦が調べた資料によるとこの戦艦種、大本営では相応の所属期間がありVIPへの応対を一手に引き受けて来た交渉の本職だそうだ

変に揚げ足を取られて主導権を持っていかれては堪らない

 

「お気遣い感謝いたします、ですが、当船団はこの鎮守府に遊びに来た訳ではありません、どうかお気になさらないようお願いします」

 

当たり障りのない応答だ、しかしこのままでは時間の無駄使い、少し踏み込んで見ることにしよう

 

「そう言っていただけるのなら話は早い、率直に言って当鎮守府は現在所属艦娘のほぼ全てを動員した作戦行動中だ、そこに機能移転とはどういう意図なのか、簡潔に説明願いたい」

 

「機能移転は最終的な目標であり、その前段階を一段づつ超えていかなければなりません、差し当たっては工廠を増設する必要があります、この工廠は国外の鎮守府にて改装された工廠を参考に再設計された新式の工廠となります」

 

「?そんなたいそうな工廠を何故ウチに作る、大本営に作っておけば何かと役立つだろう」

 

「大本営での増設は既に成されています、この増設は所属艦娘が増えるこちらの鎮守府の運営を見越してのものです」

 

「?ならば、新式の工廠である必要がないな、非常に言いにくい事だが、こちらには何処かと違い永遠に腹の探り合いをする様な暇はない、先に述べた様に所属艦娘総出での作戦行動中なのだ、ここで話をしている時間そのものがどういう時間なのか、考慮して頂きたい」

 

時間稼ぎは沢山だ、早く本題に入ってもらいたい

 

「……全てを話すとなると、とても長いものになります、簡潔にとのご要望でしたので掻い摘んだ説明になってしまいました」

 

なるほど、こちらは聞いている時間が無い、向こうは出来る限り情報を出したくない、或いはこの話をする相手は私では無いという事なのかも知れない

つまり、黙って言う通りにしろと、そういう事か、大本営のクソ官僚共にそういう入れ知恵をされて来たのか

 

「お茶を、どうぞ」

 

どこにいたのか、事務艦が茶と茶受けを持って来た、ただ私と戦艦の雰囲気に戸惑っている様子だが

 

「ちょうどいい所に来た、紹介しておこう、こちらはあの船団を率いて来た戦艦の大和、今お茶を持って来てくれたのがウチの事務艦だ、私は艦隊の指揮に戻らねばならない、事務艦に詳細を説明してもらえないだろうか」

 

え?と戦艦と事務艦が私を見る

 

「問い合わせの回答は得たのだな」

 

こちらを向いた艦娘の内、事務艦向かい聞く

 

「それはモチロンです」

 

言いながら書類を出して来た、仕事は優秀なんだよな事務艦は

 

「ありがとう、これには目を通しておく、それと沖に停泊中の船団を気にかけてくれ」

 

大本営の意図がどうあれ艦娘達を無下に扱う事は出来るだけしたくない

 

「わかりました」

 

事務艦の返答を聞いて執務室を出た

 

 

 

 

 

渡された書類を読みながら自衛隊の方々が詰めている指揮所に向かう

事務艦が聞き出した話を要約すると、大本営が機能停止しているからその肩代わりをしろと、その為の増員として艦娘を送って来たらしい、それが移籍組

あの旅客船には資材も相当量積み込まれているとの話で使用目的に制限が付いておらず、こちらの裁量であるだけ使っていいと来た

なんだろうねぇ、嫌な感じしかしない、少なくとも司令官職に就いた時に聞いた話とはかけ離れた事態になって来ている事だけは間違いない

 

「司令官!」

 

呼ばれて顔を上げると鎮守府に残留している駆逐艦がこちらに走って来た

 

「どうした?」

 

「外に船が来たみたいだけど、応援?」

 

「だと、いいんだが、どうも違う様で扱いに困ってる」

 

「違うの?」

 

「違うというか、私の思っている様な応援では無いという事で、艦娘部隊としては応援という事になるんだと思うが」

 

「むー、わかんない、そうだ、僕が行って聞いてくるよ、向こうも駆逐艦がいるみたいだし駆逐艦同士話してもいいでしょ」

 

「そうだね、それもいいかもしれない、でも勝手に行ってはいけない、事務艦に予定を立てさせるからそれまでは待ってくれないか」

 

「ぶー、事務艦が予定を立てるのを待ってたら来週になっちゃうよ」

 

明から様に文句が出てくるのはなんでだろう

 

「それよりも他の皆はどうしてる?ちゃんと休んでいるか」

 

そう、今残留している駆逐艦達は補給部隊の交代要員、数の上で全く足りていないがいないよりマシだ

 

「うん、休んでる、なかなかハードスケジュールだよね、今回の周回補給作戦は」

 

駆逐艦とはいえ、艦娘からハードスケジュールなんて評される程に過酷な行動計画を実行している事を改めて実感させられる

補給隊でさえこうなのだ、戦闘隊ならこの上を行く、矢張り行動限界が近いと見做して相応の対応を取らなければならないだろう、それも早急に

 

「もうじき補給隊が帰って来る、必要なら交代も、皆に休める時に休む様に伝えてくれないか」

 

「大丈夫だよ、艦娘は司令官が思うよりもずっと頑丈に出来てるんだ、心配しないで、ね」

 

そういう駆逐艦の頭を撫でて謝意を伝える、気持ち良さそうにしている駆逐艦

 

「私は自衛隊の方々と話があるから、もう行くが、くれぐれもムリをしない様に皆に伝えておいてくれ」

 

「わかったー」

 

駆逐艦とはその場で別れた

 

 

 

 

 

「少しは状況が好転したのか?」

 

指揮所に入るなり聞かれた

 

「どうなんでしょう、あの船団の目的は大本営の機能移転、当鎮守府の行動とは無関係にその作業を進める様です」

 

「……つまり、共同歩調は取らない、そういう事か」

 

「その様です、しかも、どういう訳か機能移転後の指揮をこの鎮守府に執らせるつもりの様で、何がやりたいのやら、測りかねます」

 

「この鎮守府に指揮を執らせるのなら司令官が指揮を執ると?」

 

「そこが不明です、ご承知の通り私は民間上がり、公募で選出された司令官に過ぎません、大本営の一部とはいえその機能を十分に発揮させるのなら専門職を配置するのが、妥当では無いかと」

 

「……こんな状況で司令官の交代があると?」

 

疑わしげな指揮所責任者

 

「私としては大本営が何を考えているのかさっぱりわかりません、この上は部下の身の上を心配する事にしました」

 

私の言い分に大きく溜め息をつく指揮所責任者

 

「こちらでも状況を問い合わせた、防衛省に艦娘部隊から正式回答として当鎮守府の司令官の指揮を高く評価し、より職務に精励出来る様優秀な艦娘を麾下に配属させる、とあったんだが」

 

呆気に取られた、回答があった?防衛省に?艦娘部隊から正式に?

ふざけやがって、ウチからの問い合わせは完全無視した挙句に外ヅラだけ良く見せてるのか

 

「?どうした」

 

私の様子を見て指揮所責任者が聞いてくる

 

「いえ、なんでもありません」

 

その後は海域情報の確認、各艦娘部隊との交信、航路指示、行動計画の伝達とルーチンワークとなりつつある業務を行い、指揮所を後にした

 

 

 

 

 

「クソッタレが!」

 

執務室に戻った、中は誰もいなかった、此れ幸いと癇癪を起こした

司令官職に就いていても聖人君子では無い、不満は溜まるしストレス発散の機会は多くない

執務室というのは割と一人になれる所で誰もいない時に色々八つ当たりしてる

なにしろ防音仕様だし、机も壁も頑丈で私が少しくらい八つ当たった所で凹み所か傷も付かない、本来の目的はそれでは無いのだろうが、そこに気がついて以来八つ当たらせてもらってる

そう言えば、初期艦にはバレてたな、大人気ないと冷ややかな視線を頂戴したっけ

 

防衛省には回答が来た、これは相手が官僚だからだ、民間上がりの私の問い合わせは完全無視、こうも明から様に対応が違う

あのクソ官僚共霞ヶ関村では良い子にしてる様だ、村民では無い私はただの余所者でしか無いと、ついでに勘繰るのなら鎮守府の拡大に伴い専門職の司令官が着任する事まで決定されているのではないか?

そう考えればもう直ぐ居ないなる余所者の問い合わせなど相手にするだけ無意味、村内の立場にもこの先の出世にも何の影響も無い、関わるだけ余計な仕事が増えるだけだし放置対応になるのは自明というものだ

自分でもかなり偏った考えをしているのは自覚できるが、あそこまで無視される理由が他に思い付かない、どうにか平静を保とうとは試みるが上手くいかずに癇癪を起こしてる

なんつーか、短気だな自分、そう思うも感情を完全に制御する術など私は知らない

 

そこにノックの音が聞こえた

全くタイミングの悪い事だ、とはいえこのタイミングでノックして来るのは事務艦だろうし無視するわけにもいかない

 

「どうぞ」

 

まだ八つ当たったままだが、構うものか、もうやってられん

 

「失礼します、司令官、秘書艦と話したのですが……」

 

「が、なんだ?」

 

変な所で言い淀む事務艦に先を促す、事務艦が気を取り直して続ける

 

「あの船団は大本営の機能移転の作業を優先するそうです、こちらへの協力は期待できないかと思われます」

 

「それはわかっている、問題なのはその作業にこちらの協力を強いるかどうかだ、なにせこちらには出せる手数など無いからな」

 

「その点は先方も承知していました、ただ……」

 

だから何故言い淀む?スラスラ言ってくれ

 

「工廠の妖精さんを借りたいと申し出がありました」

 

「工廠の妖精さんを?工廠を増設だか新設だかするとは言っていたが、まさかウチの妖精さんを持って行くつもりか?」

 

「いえ、一時的に借り受けたいとの事でした、工廠の妖精さんは大本営から連れて来る手筈になっているとか」

 

「?連れて来る、大本営には他に配って回れる程妖精さんが大挙しているのか」

 

「どうやら、そういう事の様です」

 

アッサリ肯定されてしまった、妖精さんは未知の生物、確かに勝手に増えるし所属総数は把握出来ない

だからと言って他に配って回れる程所属しているのかと、問われれば否と言わざるを得ないんだが、どうなっているんだ

 

「なにかありましたか、司令官」

 

心配そうにというか、腫れ物に触るように聞いてくる事務艦

これは八つ当たったのがバレてるな、まあ、今更どうでもいいが

 

「先ほど自衛隊から防衛省に艦娘部隊から正式に回答があったと聞いた、なんでも私を煽てて木に登らせて高みの見物を決め込む様だ、大本営のクソ官僚共は」

 

「……司令官にあの船団の指揮も委ねられる、と?」

 

「どこまで本気なのか見当もつかん、或いは機能移転の目処が付いた時点で首を挿げ替えるのかも知れん、なんにせよこちらの手札は別の所で使い切っている、対処しようがない」

 

私の言い分に多少考えるような素振りをした後に事務艦が言い出した

 

「私見で申し訳ないのですが、秘書艦と話した限りでは司令官の評価は極めてを付けられる程に高いものでした、大本営は本気なのではないでしょうか」

 

「もしそうなら、過大評価だと、抗議しなけりゃならんな」

 

嗜虐気味に吐く私を見て事務艦は何を思ったのかは、知りようもない

 

「そういえば、駆逐艦の子に沖に停泊中の駆逐艦達の所へ話をしに行きたいと言われましたが、何かそういった要請がありましたか」

 

話題転換なんだろうが、急角度どころか別の話だな

 

「所属の違う駆逐艦と話がしたいのだろう、あの戦艦が向こうに戻る時にでも随行させられないか、聞いておいてもらえないか、先方が了承するのなら話を付けて良い」

 

「それは構いませんが、何の話を?」

 

「そこは駆逐艦の興味に任せる」

 

「ああ、わかりました」

 

あらま、話しに行くのが私の発案では無く、駆逐艦の興味だと早々に勘付かれてしまった

 

 

 

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