初期の艦これ   作:弱箔

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57 総員整列

 

 

 

7月5日

 

 

 

「総員整列!!」

 

予定通りに出張っていた六個艦隊が帰投した、第一艦隊旗艦の号令で整然と隊列を作る

 

「皆、少し時間をもらう、先ずは状況を説明する、現在当鎮守府は資材枯渇により活動不能だ、よって補給及び修復は資材集積行動を再開し、備蓄がある程度成された後になる、幸いな事に現状では全ての鎮守府が活動を停止しているからウチだけが悪目立ちする事もない、現状では入渠は出来ないが、資材回復後の入渠の順番を決めるに当たり全員の状態を詳細に把握する必要がある、総員工廠にて予備検査を受け、結果を執務室まで提出してもらいたい、全員が工廠に詰めかけても待ち時間が長いだけなので第一から第三艦隊が工廠へ、第四から第六艦隊は風呂へ行ってサッパリした後に予備検査を受ける様に、第一から第三艦隊も予備検査を受けたら風呂へ行ってゆっくりしてくれ、その後は自由行動とする、何か質問は?」

 

真っ先に手を挙げたのは第三艦隊旗艦の軽巡だ

 

「なにか?」

 

「資材枯渇が活動停止の理由というが、大本営から資材供給はなかったのか?外に停泊中のアレは大本営からの支援艦隊ではないのか?」

 

「活動停止の判断をしたのは私だ、大本営からの指示でも命令でもない事はこの場にて明言する、不満があるのなら、事務艦に司令官職の職務怠慢を大本営に告発する書類を作成させて然るべき部署に提出を依頼しろ」

 

私の発言に何故か艦娘達が溜息混じりの沈黙をしてしまった、中にはどういうつもりか呆れた顔をしてるヤツまでいる

 

「予想はしていたが、もう少し大本営と上手くやれないのか」

 

「そうねぇ、詳しい事情はお風呂の後にしようかしら」

 

「また我儘を押し通したのか……」

 

「まあ、いつもの事だな、今更だな」

 

「お話終わった?お風呂行って良い?」

 

「お腹すいたー」

 

各艦隊旗艦がなにか言いだしたんだが、それをきっかけに解散の雰囲気になってしまった

 

「他になければ行動開始、解散」

 

言ったそばから第五、第六艦隊のメンバーが風呂場の方へ走っていった、その後を第四艦隊の面子が歩いていく

それらを見送っていたら、私に近付いてくる影が三つ

 

「なんだ?」

 

「なんだ、じゃない、少し話したがあの船団はこの鎮守府への支援艦隊だと言っていたぞ、何故断った?それに接岸させない理由は?」

 

第一艦隊旗艦の追求かな

 

「鎮守府への支援艦隊というのは本当だ、但しウチの活動を支援しに来たんじゃない、それと接岸させないのではなく、接岸して来ないんだ、未だに接岸要請を出して来ない、周辺警戒してる駆逐艦には要請があれば許可を出すと伝えたんだがね」

 

「?すまん、ちょっと理解が追いつかん、どういう事だ?」

 

「長門、今は皆んな疲れてる、考えも上手く纏まらないくらいには疲労の蓄積があるの、ここは司令官の言う通りに休養を優先しましょう、補給資材がない以上時間がかかるんだから、その辺りはその時で良いと思うなぁ」

 

「司令官、大丈夫ですか?何かあれば私がチカラになりますよ?」

 

よって来た影の内、第一艦隊旗艦と第二艦隊旗艦は追求する気満々だ、後の一人、第三艦隊に編成されていた軽巡は私を心配してくれてるらしい

 

「大丈夫だよ、ありがとう」

 

言いつつ頭を撫でる、撫でからアッと思った、今私が撫でているのは軽巡だった、駆逐艦じゃなかった

 

「頭撫でないでよ、前髪が崩れちゃう」

 

「悪い」

 

そう言いつつもこちらの手を払ったりしない所から、この軽巡もホンキでイヤがってるワケではない様子

 

「旗艦はどうした?」

 

「木曾?なんかブツブツ言いながら工廠に行ったよ」

 

「……では我らも工廠へ行くか」

 

「そうね、こっちが時間かけちゃうと交代にも影響するし、あんまり早くても食堂の準備が間に合わないだろうけど」

 

この軽巡、こっちの動きを把握してやがる、こういう目端の効きが凄いのは艦隊旗艦としては長所だが、同僚としては油断出来ない厄介な相手となる

 

「なぁに?」

 

おう、マズイ、軽巡がとてもイイ笑顔になった、これは笑みが消えるより不味い

 

「なんもない、今はゆっくり休んでくれ」

 

そう言い残して足早に立ち去った、逃げたんじゃないんだ、執務が滞ってるんだ

 

 

 

 

 

執務室に入ると事務艦が書類を手に待ち受けていた

 

「司令官、秘書艦より面会要請がありました、随伴者二名の同席も求められています」

 

「他には?」

 

手にしてる書類からして、他にもあるだろうと予測、先を促した

 

「大本営より、通達がありました……」

 

何故か言い難そうな素振りを見せる事務艦、気にした所で言わないという選択は無いのだからスラスラ言って欲しいんだが

 

「機能移転の第二陣が来るそうです」

 

「?はい??」

 

第二陣って今来てる船団は沖に停泊していて実質的には何もしていない、こんな状況で第二陣?あの船団は第一陣でこの第二陣を待っていたという事か?

 

「第二陣を率いている艦娘は叢雲、という事です」

 

「……まさか、私が着任要請を出した、あの叢雲か?」

 

「おそらく、そうだと思われます、大本営所属艦となっていますが、仮状態ですし、この仮状態の所属艦というのは研修中の初期艦にしか付かない表記です」

 

「大本営は何を考えている?私に対する当て付けにしては外連味が過ぎると思うが」

 

「そこはわかりかねますが、本人に聞いてみるのが一番かと」

 

それをするには第二陣を受け入れなければならない、そこのリスクを図りかねるが、通達が正式なものである以上、こちらに拒否権はない

 

「すまないが、少し頼まれてくれないか?」

 

事務艦に多少の要件を言い付けて、秘書艦の面会要請を了承した

 

 

 

 

 

移動指揮所の扉を叩いた

 

「誰か」

 

扉が開かれることもなく中から問われた

 

「鎮守府司令官です、こちらの司令官と話がしたいのだが、取り次いでもらいたい」

 

こちらが活動を停止した為に指揮所への立ち入りは禁止されてしまった、仕方ないね

しばらくして、指揮所司令官が顔を出した、そのまま外に出て来る

 

「丁度良い所へ来てくれた、再びこちらに向かって来る艦娘艦隊を補足した、何か聞いているか?」

 

「通達がありました、大本営機能移転の為の第二陣が来るそうです、艦娘艦隊の構成を教えてもらえませんか」

 

「……教えたいのは山々なんだが、現在この鎮守府は活動を停止している、自衛隊が艦娘部隊に協力するのは相互支援を期待しての事だ、一方的に使われる為ではない、わかってもらいたい」

 

つまり、教えられないと

 

「そんな顔をしないでくれ、こちらとしても独断での行動は出来ないのだ、この鎮守府が活動を停止した事により海自の稼働率を引き上げねばならず、その支援に空自と陸自も駆り出されている状況だ、直ぐにでも指揮所を閉鎖してここに詰めている人員を原隊に戻せと駐屯地司令から矢の催促だ、対応を協議している最中なのだ」

 

「態々そんな事を聞きに来るって事は、その第二陣とやらは、厄介事を持ち込んで来るとでも予測が立ったのか」

 

居たのか隊長、外で話してればこういった感じで第三者が割り込んで来るよね、指揮所司令官は嫌な顔を見せる、文句を言う訳にも行かず不満そうだが、構わず続けよう

 

「確認は取れていないが、第二陣を率いているのは駆逐艦、それも私がこの鎮守府へ着任要請を出した初期艦らしい、規定の研修を終えていない初期艦が何故か第二陣を率いている、事実なら大本営の遣り様は常軌を逸脱している、可能性がある、この可能性を否定する根拠が欲しい」

 

「それは、単純に交信して確認すれば済む事ではないのか」

 

「それでは第三者に状況を秘匿する事になる、こちらの司令官が大本営にどんな印象を持ってるか、説明が必要ですか」

 

指揮所司令官に隊長が言ってくれた、変に気を遣ってくれるのは、どう解釈すればいいのやら

 

「自衛隊に何をさせたいのだ」

 

指揮所司令官が憲兵隊長にそう言った、あんたらどちらも自衛官の筈だが、何か外からはわからない違いでもあるのか

 

「自衛隊だからこそ、国防を視野に入れた行動をしなければ、艦娘部隊は深海棲艦しか相手にしない、その原則があるからこそ国際機関として承認された経緯を知らない訳ではないでしょう、如何なる国であれ軍事力として艦娘部隊を活用する事は国際問題になる、只でさえ大本営には監査が入っている最中です、幕僚なら、これだけの指揮系統を鎮守府で構築した理由も聞かされているんじゃないですか」

 

「我々は、艦娘部隊に足元を見られたくはないのだがね、憲兵殿」

 

「勘違いしている様だから、指摘しておきましょう、我々自衛隊の足元を見ているのはここにいる司令官ではない、大本営の監査に入っている監察官達だ、艦娘部隊上部機関に属する監察官達は様々な方面の代表だ、彼等のやっている事は国際政治そのものだ、一介の公務員としては他所でやって貰いたい所だが、招致したのが老提督とあっては無下にも出来ない、自衛隊の取り得る手段を確保する為にも鎮守府司令官とは協力関係を維持する事をお勧めする」

 

「……それは、憲兵隊隊長としての発言として、聞いていいのか?」

 

「足りないのなら、総監に電話しましょうか?」

 

「憲兵総監、か、そもそもあいつが主導した事か、この指揮所の設置は」

 

「そう言う事です」

 

どう言う事なんだろうか、指揮所司令官と憲兵隊長とで何やらやり取りが行われているが、いつの間にか蚊帳の外に放り出されてしまった

 

 

 

 

秘書艦より申請のあった面会の為、執務室に七名が集まっている

内訳は、船団から秘書艦の大和と初期艦の漣と吹雪、鎮守府から私と第一艦隊旗艦の長門と軽巡の龍田、それに同席を要請して来た憲兵隊長

但し憲兵隊長は同席するだけで発言権は無い、この条件で同席を認めなければレコーダーの設置とそのデータの供出を要請して来たので、仕方なしに同席を認める事になった

 

「前置きは省かせて貰うが、よろしいな」

 

反論も無かったので要件に移る

 

「先ずはそちらからどうぞ」

 

秘書艦に振ると嫌そうに憲兵に視線を一度向けてから話し出した

 

「こちらの鎮守府が活動を停止したのは資材の枯渇が原因と聞きました、こちらから資材を供給するので直ちに活動を再開して頂きたい、寧ろ、何故資材供給を要請してこなかったのか、事態が落ち着いた後に問題となる事を覚悟してください」

 

ふーん、それだけか?大した事では無いな、もしかしてこの秘書艦は事態を把握出来ていないのか

 

「こちらの鎮守府には大本営の機能を一部とはいえ移設する計画になっています、現状では自衛隊がその用地を使用しておりこちらの移設作業が出来ません、直ちに自衛隊を撤収させなさい、これ以上大本営の計画を遅延させるのなら、命令不服従となり即時罷免要件です、司令官で在りたいのなら選択の余地は無い筈です」

 

何を言い出すのかと思えば、この秘書艦本気で事態がわかっていない、話すだけ時間の無駄だ

しばらく待って見たが秘書艦からの話は終わった様だ

 

「こちらの回答をする前に、秘書艦に随伴して来た初期艦に話を聞いてもいいか」

 

「……どうぞ」

 

秘書艦が了承したので初期艦に話を振る

 

「さて、其方を率いている戦艦はこう言っているが、初期艦の意見は?」

 

「「……」」

 

二人の初期艦は直ぐには声を出さず、考える振りをしていたが、諦めたらしく吹雪が口を開いた

 

「司令官は初期艦にどんな意見を求めていますか?」

 

「どんな意見?初期艦なら状況分析も目的を見据えた言動も出来るだろう、思う所を有り体に言ってくれれば良い」

 

「では、僭越ながら漣から意見を、まず、佐伯司令官には状況の説明が不足している事をお詫びします、こちらで把握している限りの伝達情報では佐伯司令官は判断材料が乏しく事態を正確に理解し得ないと分かっています、やまちゃん、じゃなかった、大和がその様にしたのは情報不足の状況に置く事で佐伯司令官から交渉を持ち掛けさせる事が目的でした、まさか情報不足のまま此処まで事態を拗れさせるとは考えていなかった、この点は私達初期艦も佐伯司令官の性格を読み違えた事もあり、拗れさせる要因になってしまいました、本当に申し訳ありませんでした」

 

なんだろうね、正直芝居臭い、私が聞きたい意見はそういう方向では無いんだが

向こうの三人を観察していたら一瞬秘書艦が視線を憲兵に向けた、それで気が付いた

ああ、この芝居は憲兵向けか、発言権は無いとはいえ同席している相手だ、居ない者として話を進める訳には行かんという事か

 

「過ぎた事を言っても始まらない、というか私にそんな詫びをしてくるという事は大本営ではこの鎮守府の司令官に誰を据えるかで揉めているのか?」

 

「「「???」」」

 

あれ?何故に向こうの三人は揃って疑問の顔をしてるんだ、首の挿げ替えは既定路線だろうに

 

「あの、誰を据えるか、とは?どういう意味でしょうか」

 

思いっきり疑問の顔をしたままで聞いてくる吹雪

 

「大本営の機能移転に伴い権限の拡大も視野に入る、その鎮守府司令官が民間上がりの素人では大本営の官僚も不満だろう、どこの派閥がこのイスを取るかで揉めているんじゃ無いのか」

 

「そんな話は無い!!」

 

おう、ビックリした、あんたに発言権はないんだ、突然大声を出さんでくれ

 

「憲兵の発言権はありません、お静かに」

 

ほら、秘書艦に突っ込まれた、この件は擁護出来無いぞ

ムッと不快感を露わにしたが兎に角口を噤んだ憲兵

 

「司令官はその話をどこのだれから聞いたのですか?」

 

憲兵と秘書艦の遣り取りなど御構い無しに聞いてくる吹雪、もしかして吹雪っていい根性してんのかな

 

「大本営の官僚の遣り様は知っている、それに加えて秘書艦の行動から推測すれば、派閥争いに勤しむ大本営の内情が透けて見えるというものだ」

 

「あー、変に誘導しようとしたのが変な方向へ跳んで行ってしまいましたか、ハッキリ言ってそれは誤解です、大本営では機能移転に伴い権限の拡大が有っても佐伯司令官がこの鎮守府の司令官職に就いている前提で計画が進められています、万が一にも佐伯司令官が居ないという事態が生じたら、それこそ計画全体に影響が出ます」

 

漣はこう言うが、全く当てに出来ない、そんなに言う程の大前提なら秘書艦の行動が説明出来ない、秘書艦の言動は明から様に私に情報を出さず、盲目的な協力を強いるモノだった

 

「漣、ダメそうだよ」

 

「そうみたい、もうぶっちゃけて良いですかね、この話し方も疲れるし」

 

「……なにをぶっちゃけるんだ?これまで話してきた事は、ただの儀式か?」

 

これまで黙って大人しく聞いていた長門が口を開いた

途端に向こうの三人が顔色を変えた、特に大和の驚愕の表情が豊かだ、豊かという表現もオカシイが

 

「……凄い、建造艦なのに、ウチの叢雲が教導した戦艦はこんなになるんだ……」

 

感嘆の声を漏らしているのは漣だ、吹雪も見とれている様にウットリ気味の顔をしてるんだが、当の長門はそんな事は一切気に掛けていなかった

 

「其方には其方の言い分があるだろう、だが、同様に我等にも言い分はある、大本営が我等の言い分を無視するというのなら、提督を説得するに当たって我等は一切協力しない、寧ろ提督の判断を支持する」

 

「そうねぇ、そちらの秘書艦は事態を把握出来ていない様だし、初期艦は叢雲ちゃんの同期だというから期待していたのだけれど、期待ハズレだしねぇ、大本営に染まってしまった初期艦がこうも違う存在になるなんて、意外だわ〜」

 

なんだろう、龍田の発言を耳にした初期艦達が過剰に反応している様だが

 

「ちょっと?!龍田さんドロップ艦じゃん、建造艦じゃないじゃん、聞いてないんだけど!?」

 

過剰反応気味の漣が慌てた様な声を上げた

 

「あら〜、私が建造艦だなんて何処の誰から聞いたのかしら〜」

 

あ、イカン、龍田がイイ笑顔を見せてる、ヤバイんだけど

 

「申し訳ありませんでした!自分達の勘違いです!!」

 

唐突に駆逐艦二隻が立ち上がり、初期艦が揃って直立不動の姿勢をとって宣言でもするかの様に声を張り上げた

 

「素直なのは良い事よ、でも、状況を正確に認識する事はもっと良い事、誤った認識は自分だけでなく僚艦まで危険に巻き込んでしまう、そう、今の貴方達の様に、ね」

 

イイ笑顔のままの龍田が駆逐艦二隻にその笑みを湛えたまま、とても優しげな声をかけた

 

「申し訳ありません!!!」

 

その声を向けられた初期艦達が声を張り上げる、なんだろうねぇ

 

「そこまでにしてください、そもそもそれは本題ではありません、こちらの要請に対する返答を頂きたい」

 

秘書艦がなんか言ってきた、度胸が良いのか、単に怖いもの知らずなのか、何も考えていないのか

 

「提督に返答を求める前に、秘書艦には事態を正確に認識して貰いたい、でなければ秘書艦の言動は只の暴挙だ」

 

長門が割り込んできた

 

「私の言動は大本営の行動計画を根拠としています、それを暴挙と言うのなら、大本営の指示が暴挙だと言うのと同義です、そう理解して宜しいか」

 

相手を私から長門に変えて大和が厳しめの表情を作りながら言ってきた

 

「そう言っている、その暴挙を暴挙と認識出来ないと言うのなら、私と大和の間には超えられない何かがあるのだろうな」

 

珍しい事に長門が寂しそうな顔を見せた、この見栄っ張りな戦艦が人前でこんな表情をするとは、目前の戦艦との認識が違い過ぎる事が余程堪えている様だ

 

「大変身勝手だとは承知していますが、本日の交渉を打ち切らせて下さい、次回の交渉は大本営からの第二陣到着後にお願いします」

 

突然漣から交渉打ち切りを言い出してきた

 

「ブッキー、やまちゃんのそっちを引っ張って、仕切り直しだよ、このまま話してたら致命的な事態を誘発しかねない」

 

「そうだね、前提が全部ひっくり返っちゃったしね、第二陣にいる二人に頼るしかないよね」

 

「ブッキーってばコッチの手の内晒さんでも、兎も角撤収しよう、皆さん失礼しましたー」

 

初期艦二人に引っ張っられて訳が分からないという顔をした秘書艦が退出して行った

 

「……なんだ、アレは」

 

「向こうも色々あるんだろう」

 

三人が退室して行った扉を見ながらいう長門

 

「お粗末な事よね、大本営からの使いが、アレだなんて」

 

背凭れに上体を預けて寛いでいる風の龍田

 

「あー、喋っても良いか」

 

隊長が聞いてきた

 

「どうぞ、先方が退出してるから通常通りで良いですよ」

 

律儀な人だと思いながら応える

 

「先に言っておけば良かったんだが、司令官が考えている様な派閥争いだとか椅子取りゲーム的な事態は今回の件では有り得ない、前に話したと思うが今の大本営は老提督が大鉈振るって改革してる最中だ、監察官もその絡みで大本営に召致された、大本営の機能移転もその改革に予想外に時間がかかる事が判明した為の暫定的な対応だと聞いている」

 

「?それが、先程の面談とどういう関わりが?」

 

隊長の言いたい事が読めなかったから聞いてみる

 

「暫定的な対応だから通常の手続きとは色々違う事になっているらしくてな、そこを現場対応しろって無茶振りだそうだ、向こうの秘書艦も対応に苦慮してると思うぞ、出来れば話を聞いてやってくれないか」

 

なんだ?隊長はあの秘書艦を擁護したいのか?

 

「話を聞くのは構わないし、話してくれない事には知りようが無い、あの秘書艦は何故かこちらに話をするのでは無く指示して来る、もしかしたら命令のつもりなのかも知れない、だからこちらが言う通りにしないと如何にかして押し通そうとする、さっきの面談も秘書艦がそういう趣旨だったのは聞いていたから分かると思うが」

 

「……はあ、突かなきゃならないのは鎮守府ではなく、大本営か、厄介な事になりそうだ」

 

心底困ったという感じの隊長

 

「それはそうと、秘書艦は自衛隊の撤収を要請して来た訳ですが、自衛隊は?協議中と聞きましたが」

 

「幕僚会議では鎮守府司令官の要請で出した支援なのだから居座れというのと、活動を停止した鎮守府など放って実働部隊を拡充させよという意見に二分されて紛糾中だ、結論は出そうに無い、司令官の意見があれば、なんらかの方向性が出るかも知れんが、意見はあるか?」

 

「私に自衛隊に対する指揮権は無い、自衛隊の対応は自衛隊で決めて貰わねばこちらも困る、私に出せる現時点での情報は今後の予定くらいだ、但し再開するといっても一部の駆逐艦による資材集積の開始であって鎮守府としての活動再開は資材の集積具合に依存する、それが何時になるかはまだわからない」

 

「そういえば、あれだけ長期間の出撃だったのに入渠とやらが出来ないんだったか、詳しくは知らんが入渠は整備の様なものだと聞いている、無整備での再出撃は、司令官としては避けたいワケだ」

 

「まあ、そんな所だ」

 

厳密には入渠と整備は違うのだが、細かい所を指摘した所であまり意味は無い

 

「……もし、可能なら教えて欲しいのだが」

 

なんか遠慮がちに聞いて来る隊長、なにを遠慮してるんだろ

 

「今こちらに向かっているという第二陣、アレはなんなのだ?」

 

「?なんなのだ、とは?」

 

こちらに聞かれても艦隊編成すら知らされておらず、自衛隊からも情報提供を断られて何も知らないんだが

 

「あっ、そうか、指揮所からの情報提供がなかったのか、聞いていたのに忘れてた」

 

おい、忘れるなよ

 

「その情報を隊長が提供してくれても、こちらは困らないが、隊長は困るのか?」

 

「……止められてはいないんだが、それをすると憲兵隊が自衛隊から摘み出されかねん、只でさえ憲兵隊は艦娘部隊の手先に成り果てたなんて揶揄われてるくらいだからな」

 

あちらはあちらで色々ある様子

 

「そうねぇ、憲兵隊そのものが艦娘部隊の為に創設された様な部局だし、他の自衛官にはそう思われるのも仕方ないのかも、事実誤認であるという主張をしていくしか無いと思うけど、地道な努力が必要になるわね」

 

意図する所はわからないが、龍田がなんか言い出した

 

「……気楽に言ってくれる、だが、正論でもある、さて、こちらは仕事に戻るとしよう」

 

そう言って席を立つとそのまま退出して行く隊長

 

「あの言い様ではここで話を聞いていたのは仕事ではなかった様に聞こえるな」

 

「そうではないのか」

 

こっちの軽口を長門が肯定して来た

 

「なに?」

 

「憲兵隊の職務は鎮守府の保全であって艦娘部隊間の交渉に干渉する事は、本来ならしないだろう、今回の立会いは提督が過干渉を理由に拒否すれば憲兵であっても強くは出られなかった案件だ、そういう事だと私は考えるが」

 

なるほど、憲兵の同席があったからこそ秘書艦は余計な手が打てずに正面突破を計ってああいう物言いになったと、そういう見方も出来るか

思えば退出する際にも初期艦二人に引っ張られるままにされていたな、戦艦が抵抗すれば駆逐艦の二隻くらい如何とでも出来るだろうに、そうしなかったのは主張を本気で押し通す意図がなかったから、しかしそう仮定するのなら他の疑問が湧いて来る、全く厄介な事になって来たな

 

 

 

 

 

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