初期の艦これ   作:弱箔

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59 再調整の為に書類と向き合っている

 

 

 

 

 

事務艦が確認作業を終えてこちらと合流、今度は私が再調整の為に書類と向き合っている

事務艦と天龍、叢雲は暫く話をしていたが、先発隊と状況の確認をしたいという事で執務室から退室、事務艦が後片付けをしている所で執務室の扉が叩かれた

 

「初期艦、電、五月雨、入ります」

 

そう聞こえてくるなりドアを開けて二人が入って来た

 

「駆逐艦はドアをノックしたら返事を待つ様に出来ないのか?」

 

取り敢えず文句は付けておこう、こういった行為を当然視されても敵わんし

 

「司令官は所属の駆逐艦にいつでも執務室に来て良いと言っていると聞きました、なら、待つ必要を感じません」

 

食堂でウチの駆逐艦とも話した様だ、随分雰囲気が柔らかくなった様に感じられる、がそれはソレ

 

「電さん、それは当鎮守府に所属する艦娘の場合です、大本営所属の駆逐艦がそうしてしまうのは御遠慮頂きたいのですが」

 

おお、珍しい事に事務艦が苦言を言ってる、しかも大本営所属艦娘に、こういう所には手も口も出して来なかったハズだったんだが、どういう心境の変化なのか、或は只の気まぐれか

 

「ほら、電、私達は大本営所属なんだから、そこは踏まえないと」

 

一応小声で電に言う五月雨、まあ、聞こえてるんですけどね

 

「そんな事だから、司令官を変に警戒させてしまうのです、あの子達と話してわかりました、司令官に隠し事だとか、本音を見せない様な素振りは警戒心を煽るだけなのです、ウチの叢雲の遣り様を考えてもそれを裏付けています、電は叢雲が司令官との関係を破綻させなかった理由はココにあると断定したのです」

 

勝手に断定すんな、ってかなんの話をしてるんだ、電は

 

「だからって司令官の前でそんな事言って、それはそれで司令官に失礼なのでは」

 

相変わらず小声で電に言う五月雨

 

「そういう遣り取りが必要なのです、司令官は艦娘に良い子の処世術を求めてはいません、何を考え、何を思うか、艦娘部隊の一員としての物言いは対外的には必要です、でも司令官は自身に艦娘が対外的態度で当たる事を良しとしていない、司令官は艦娘の側に立ってくれているのです、それがわかった以上電は変に遠慮する必要を感じなくなりました」

 

物凄い勝手な言い草だ、ウチの駆逐艦達と何を話したらそんな結論に辿り着くのやら

 

「だからって司令官が電の思惑を汲んでくれるかどうかわからないんだよ、様子を見ながら進めた方が」

 

小声でも心配してる様子がよく分かる五月雨

 

「事情は分からんが、二人とも引率は如何した?誰に引き継いだんだ」

 

「龍田さんと白雪ちゃんが暫く見てくれると言ってくれたので、司令官にご挨拶に参りました」

 

五月雨が今更ながらの答弁をする

 

「五月雨、堅いのです、そういう堅さが司令官には距離を置かれてると取られて警戒させてしまいます」

 

「電はいきなり過ぎます、距離を近付けるには相応の時間をかけた方がお互いの為です、司令官は普通の人なんですよ、一気に懐に飛び込んで行ったらそれこそ警戒どころか拒絶されかねません」

 

「……そういうものなのですか?」

 

ここに来て電が不思議そうな顔を見せる、この電、人との関係を構築するのが苦手なのかな、離れるか近付くかの二択というのは極端に過ぎると思うが

増設された鎮守府司令官の中でそこそこ連絡を取り合っていたのは桜智の所と、辛うじて佐和の所くらいだが、確か配置された初期艦は五月雨と吹雪だったという覚えが、確かな覚えではないが

どちらともそれほど突っ込んだ話はしていない、鎮守府からの発信では盗聴というか記録されるだろうからそういうデリケートな話はお互い避けていたしな

 

「電は白雪と話したのか」

 

「白雪ちゃんだけではないのです、龍田さんの周りには他の駆逐艦も沢山いたのです、だからみんなといっぱいお話ししました」

 

「楽しかったか?」

 

「はい!なのです」

 

なんだ、そういう笑顔も出来るじゃないか、駆逐艦には変に大人びた笑顔よりコッチの笑顔の方が良い

 

「電ってば、任務を忘れないでね、私達は遊びに来ているのではないでしょう」

 

「ほう、どんな任務か、聞かせてくれないか、五月雨」

 

揚げ足を取る様で悪いが、大和が率いる第一陣の帯びている任務、これがなんなのか詳細を未だに掴みきれていない

どこかで誰かを締め上げてでも喋って貰わないとこっちの対処も定められない、後手に回った挙句に下手を打つ様な事にでもなれば、その辻褄合わせに苦労するのはウチの艦娘達だ

回避方法は探さなければならない

 

「……」

 

私に問われた五月雨は黙って俯いてしまった

 

「電が答えても良いですか?」

 

とても良い笑顔で問いかけてくる電、ホントにウチの駆逐艦みたいだな

 

「んー、それでもこちらの要件を満たすには十分なんだが、電はそれで良いのか?」

 

しかし相手は現大本営所属の初期艦、元鎮守府配置の初期艦だ、ウチの駆逐艦と同様に扱ったら酷い事になるだろう、ウチの初期艦もそうだったし

 

「司令官さんならそう言うと思ったのです、電が答えて五月雨を退かせる事はこの場合最善ではないのです、それをしたら、五月雨が司令官さんとの距離を縮める機会を一つ失くしただけになってしまいます」

 

やっぱり誘導尋問だったか、あそこで電に答えさせてたら失望では済まされない事態を招いただろう、危ないアブナイ

 

「……電はこの短時間で司令官への対応をそこまで変えられるだけの、何を掴んだの?」

 

五月雨がほとんど棒読みの無感情な言葉を吐き出した、先に話した時の様な手馴れた感じは其処には無い、まあ、桜智のメッセージと聞いて仮面が剥がれた五月雨は普通の駆逐艦の様な感じだったが、今のコレはそのどれとも違う

 

「あの子達の様子を五月雨も見たでしょう、電が配置された鎮守府ではあり得なかったモノがここにはある、それがわかった、お爺さんが言っていた他の鎮守府とは違うというのは本当だった、なら、電は叢雲に倣って遠慮はしないのです」

 

お爺さん?まさか老提督の事か?ホント碌な事をしないなあのジジイは

 

「私の司令官は艦娘を粗略には扱いませんでした、扱いが分からないからこそ試行錯誤を躊躇わず色々試していました、五月雨は司令官が色々試している意図を読み切れず観察している事が多かった、司令官は観察している五月雨にどういう意図があるのか、細かく説明してくれました、その多くは初期艦からすると今更な事案でしたが、司令官の思惑を理解する助けになりました、それらは五月雨から司令官との距離を縮める大きな要因でした、でも、こちらの司令官はそうではない、何を考えているのかよくわかりません、わからないままで距離を縮めろと云われても、困ります」

 

そういう五月雨は本当に心底困った感じだ、電の変わり様に戸惑っているのが良く分かる

それに、桜智の奴初期艦とそれなりに上手い事やってたんだな、まあ、鎮守府司令官は初期艦と上手い事やらないと仕事にならんというのはあるが

 

「なるほど、五月雨という艦娘は慎重派なんだな、前に来た五月雨だけが特例的に慎重という訳ではないという事か」

 

「前に来た五月雨?」

 

ん?なんだろう五月雨の様子が少し変わった様な、気がする

 

「ウチの初期艦が目覚めなくなった時に大本営に問題解決の協力要請を出した事があってな、その時に派遣されて来たのは大本営所属の初期艦、五月雨だった、あの五月雨は自身に出来ることを可能な限り精一杯やり尽くして行ったよ、ただ、結果として問題が解決しなかったことを酷く気にしていた」

 

「……」

 

五月雨は反応を示さず、続きを待っている様な感じだ、この話しの続きを期待されるとは思ってもなかったが、話を振ったのは私なので続きを話してみよう

 

「こちらとしては艦娘に解決出来る問題だとは初めから考えいなかった、ウチの妖精さんでさえ匙を投げた問題だ、大本営ならウチの妖精さんが諦めた案件でもなんとか出来る方法を知っていると期待して、協力要請を出したんだ、だが、現実には艦娘一人が派遣されて来ただけだった、それはそんな方法など無いと回答して来たのと、私には同じ意味にしか取れなかった

派遣されて来た五月雨はその時の私の心情を察してしまったらしくてな、確かにあの時の落胆を隠しきれたか、自信は無い、だから、艦娘の気にすることでは無いと話は、したんだ、どこまでこちらの思惑が通じたのかは、分からないが、大本営に帰る時の様子からは、あまり伝わっていないとしか思えなかった

もう少し上手いやりようはあったのだろうとは思うが、こちらも初期艦の状態が快方に向かわない事が確定した状況で、鎮守府運営をどうしていくのか、こちらの方が優先事案だった、機会があるのなら、あの時の五月雨とはもう少し落ち着いて話がしたいが、所属の違う艦娘とそういった機会は滅多にない」

 

「……司令官はあの要請に艦娘が応えた時点で解決不能だと、結論を出していたのですか?」

 

五月雨が感情のカケラも無いセリフを吐くが、気にせずに続けよう

 

「妖精さんに解決出来ない問題を艦娘に解決出来る訳がない、事が深海棲艦相手なら艦娘にしか解決出来ない事案もあるかも知れないが、私が解決して欲しかった問題は艦娘自体の問題だ、どんな名医も自分の手術を執刀する事は出来ない、艦娘に限ってはそれが出来ると、五月雨はいうのか?」

 

「!……」

 

何故にそんなに驚いている?見れば電もびっくり顔なんだが、なんだろう

 

「艦娘の状態について妖精さんに隠し事は出来ない、その妖精さんが諦めた案件に艦娘が対応しても、結果は見えてますね、確かに」

 

「初期艦と雖も妖精さん以上の技量を持ち得ない事は、今更確認するまでも無いのです、それを予期出来ない艦娘の問題と言えるのです」

 

「……だからって、電ちゃんの行動を全否定するのはやり過ぎでしょう?」

 

「電のアレは只の甘やかしです、私達は艦娘で初期艦なのですよ、自律心を失った初期艦を甘やかして、どうしようというのですか」

 

「まて、なんの話をしている?」

 

突然始まった五月雨と電の遣り取り、なんか口喧嘩にも聞こえるソレは一体なんの話だ

 

「あっ、すみません、司令官には関わりの無い話です」

 

「そうなのです、司令官には艦娘部隊にとって大きな役割と職務があります、その遂行の為に電は全面的に協力するのです」

 

「……だからな、私の話を聞いてくれ、今のは、あの五月雨の話か?大本営に戻って、どうしているんだ?」

 

「……司令官には関わりの無い話です」

 

五月雨が繰り返して来た

 

「大本営の電が付いているのです、司令官が気にする事はありません」

 

電もこう言ってきた

どうやらこの二人はあの五月雨の事を話したくないらしい、しかし私はとても気になる、大いに気になる、さて、どうしたものか

 

「大本営の電というと、一組とかいうのでしたか?他にも何組かある様ですが」

 

事務艦が言ってきた、がナニソレ、一組?他にも何組かある?

大本営に初期艦が多数居る事は知ってる、この鎮守府からも相当数を送っているのだしな、大本営では幾人かに分けて組別で管理しているとそんな所かな

 

「そうです、この鎮守府に調査で派遣された五月雨は一組の五月雨です」

 

「?調査、問題解決の協力ではないのか」

 

「大本営では調査派遣となっています、問題解決は鎮守府の役割だとされています」

 

「??そういう事なら、あの五月雨は何を気にしていたんだ」

 

調査派遣というのなら、そもそも問題解決など気にする必要が無い、あの五月雨の言動は問題解決を意図していたが、どういう事だ?

 

「司令官の落胆を見て、チカラになりたいと考えたのでしょう、チカラ不足で何も解決出来ない事だけが明確になりましたが」

 

相変わらずの毒舌を発揮する電

 

「そういう言い方は、無いと思う、一組の五月雨だって調査に来た鎮守府で問題解決の協力要請が出されていることを知って戸惑っただろうし、それになんの目算も無しに行動した訳じゃない、初期艦、それも私達最初の初期艦に近い一組の初期艦なら鎮守府の妖精さんも協力的な筈だし、相応の目算は立てていたと思う」

 

「それが外れたのは本人の問題です、間違っても司令官を煩わせる根拠にはなりません」

 

「……」

 

どうやら電の毒舌に五月雨が反論しきれなくなって来た模様、薮蛇になるかも知れないが、突いてみるか

 

「あの五月雨は建造艦なのか?」

 

「?初期艦にはドロップ艦しか居ませんが」

 

何を言いだすんだと言いたげな表情を見せる五月雨

 

「そうなのか、大本営では初期艦も建造できる様になったのかと感心していたんだが、勘違いか」

 

「まさか、司令官には調査に来た五月雨が建造艦に見えたのですか」

 

あらま、何その疑惑の視線は、電を失望させてしまったかな

 

「よくわからなかった、という所だ、ドロップ艦にしてはおかしな所が視えたし、初期艦で建造艦というのも聞いた事がない、大本営の士官だか官僚達が、流石は大本営所属の艦娘だと、鎮守府にはいない謎の存在を寄越して格の違いとやらを見せ付けているのかと、勘繰りもしたのだが、当の五月雨を見ているとそんな事はあり得ないしな」

 

どうしたんだろう、五月雨と電が顔を見合わせてしまったが

 

「まさか、漣が思い付きって言ってた、アレ?」

 

五月雨が電に耳打ちしてる

 

「検証が必要だとも言っていた様なのです、ただ、私達はブッキーからの又聞きで詳細がわかりません、言い出しの漣に確認が必要なのです」

 

電が五月雨に耳打ちしてる

お前達、耳打ちするならもう少し上手くやりなさい、全部聞こえてるんだが、コレ突っ込んで良いんだろうか

少なくとも耳打ちしてるって事は私には聞かれたくないって事なんだろうし、如何しようか

 

「内緒話は後にしてもらっていいかな、こちらとしてはそちらが引率している特務艦を如何したら良いのかを聞きたいんだが」

 

取り敢えず別の話題を振ってみる

 

「あっ、はい、それに関しては引率の任務を負っているのは叢雲です、私達はその手伝いでしかありません、ただ、可能であるならば第二陣の艦隊は鎮守府に滞在できる様にお願い出来ませんか」

 

五月雨が答えて来た、しかし意外な事を言って来たな、初期艦の話では特務艦は各一隻しか建造されていないという、そんな希少な艦娘なら大和が手元に置きたいだろうに、大本営の士官やら官僚達も大和が居るから鎮守府に出したんだろうし

 

「叢雲の話では特務艦は貴重な艦娘だと言っていた様に思うが、鎮守府に滞在させて良いのか」

 

「特務艦はこの鎮守府での研修が予定されています、鎮守府に滞在させてはいけない理由はなんでしょうか?」

 

五月雨に不思議そうに聞かれてしまった

 

「研修か、予定の擦り合わせをしなきゃならないな」

 

まあ、大体は出来てるんですけど、細かい所を如何するか、だよね

 

「あの子達は本当に建造されたばかりなのです、あの子達にとっては司令官さんが初めて会う司令官になります、よろしくお願いするのです」

 

そう言って一礼してくる電

 

「それは、お願いされるまでもないが、では、第二陣の駆逐艦一、給糧艦二、工作艦一、補給艦ニ、この六隻は当鎮守府滞在で良いのだな、そちらの秘書艦にも了解を得て貰いたいのだが」

 

「やまちゃん、じゃなかった、大和なら反対しないですよ」

 

五月雨に不思議そうに言われてしまった

 

「大和は司令官さんの指揮下に配属されています、司令官さんの決定に反対する訳が無いのです」

 

電もこう言い出した

 

「大和が私の指揮下に配属?そういえばそんな事を言っていた様な、気もする」

 

大本営の秘書艦という大和の肩書きですっかり忘れていた

 

「気もするって、それはヒドイのです、移籍した艦娘だからといって粗雑に扱わないで欲しいのです」

 

電が苦情を言ってくる

 

「そういうつもりはないが、兎も角第二陣の駆逐艦が率いて来た艦隊はこちらで引き受けよう、部屋はあるしなんとかなるだろう」

 

勿論、なんとかするのは事務艦の仕事だ

 

 

 

 

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