初期の艦これ   作:弱箔

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61 無為に浪費する必要は無い

 

 

7月8日

 

 

待ったをかけられたからといって無為に時間を浪費する必要は無い

疲労の少ない駆逐艦を見繕って遠征を、資材回復に向けて行動を開始した

今回の遠征の要件を満たすのは駆逐艦以外になく、駆逐艦は先の所属全艦娘を動員した作戦にも参加している

 

多数の駆逐艦は疲労の蓄積が大きく休ませなければならない

そんな中でも疲労の程度が低く平然としている駆逐艦がそこそこいる

この駆逐艦達は鎮守府への帰り道に第一艦隊旗艦が経済速度でノンビリしているのをいい事に資材採掘地に寄り道して補給を済ませるという、余計な行動をするくらいには元気な駆逐艦達だ

いくら戦艦の経済速度といっても資材採掘地との往復距離を考えれば駆逐艦はそれなりの速度で航行しなければ艦隊から離れ過ぎる、あの駆逐艦達は鎮守府に帰ってきた時には艦列を整えていた

つまり、そういう事だ

 

活動停止後の遠征初回という事もありその駆逐艦の中で練度が高く作戦行動に対する理解も充分な三隻を選抜、旗艦に一番艦を指名した

今回は資材回復は次いでだ、後続の為に航路確認が重要な意味を持つ、指名した旗艦なら変に気負ったり、僚艦に無理を強いる心配も無い、何より駆逐艦に何が出来るのかを余計な行動で示して来た、資材の枯渇した鎮守府とそこに居る司令官の次の一手を見越しての行動だ、折角のアピールを無下には出来ない

この事からも私の指示には一言ある様だが私の方針は良く知ってくれている、なにせ着任順でいえば叢雲の次に着任した駆逐艦だ

 

駄目元で自衛隊側にも行動開始を伝えてはある、対深海棲艦戦に忙しい自衛隊がこちらの艦娘達を何処までフォローしてくれるのかはわからないが、兵装が乏しく艦隊規定数に満たない遠征隊にしてやれる事はこれくらいしか無い

鎮守府開設時には駆逐艦一隻から始めたんだ、ここからでも始められるだろう

 

 

 

 

 

遠征隊は予定通りに帰投した

事務艦からの報告では資材も予定量を回収出来た、さらに深海棲艦との遭遇戦も無かったそうだ

後はこの小規模の遠征隊をいくつか編成して必要な資材備蓄量に到達するまで一編成づつ遠征に出していけば良い

時間は掛かるが焦った所でいい事はないし、艦娘達にこれ以上の無理を強いても得るものは無い

司令官としては待つしか無い

 

「司令官、帰投した遠征隊旗艦から面会要請が出されています」

 

事務艦が持って来た報告書を読んでいる私にそういって来た

 

一瞬何を言っているのか、理解出来なかった、が、理解が及ぶと同時に疑問が浮かぶ

 

「遠征隊旗艦は、初春だな、あいつが面会要請を、出して来た、と言うのか?」

 

「はい」

 

事務艦の回答は簡潔だった、余りに簡潔過ぎて私の疑問を増幅させた

 

「今何処にいる」

 

「他の遠征隊と情報共有の為、工廠にいると思われます」

 

そうか、食堂は会談の為に自衛隊に押さえられたままだった、それなりの数が集まって話をする場所としては工廠という選択になるな

 

「工廠に行って来る」

 

事務艦の返事を待たずに執務室を出て工廠に向かう

 

 

 

 

 

初春は叢雲が連れ帰ったドロップ艦、この鎮守府の二人目の駆逐艦だ

その初春が私に面会要請?どういう事だ、先発隊の電が言っていた様に駆逐艦にはいつでも執務室に来る様に、来られる様にしている

それなのに面会要請を出して来るとは、どういう事だ?

私は知らずに気が付かずに何かを仕出かしたらしい、叢雲ほど押しは強く無いが初春もかなり個性的な性格の上に我も強い、何より軽巡並みに目端が効く

それに当たりの強い叢雲と私の間で干渉役を引き受けるだけの器量を持ち合わせている

要請なんて出して来たのは、何らかの思惑があっての事だろう

あれだけの器量持ちが何らかの思惑に基づいた行動に出た事、それを全く想像もしていなかった事もあり、自覚出来るくらいには、動揺してる

工廠に着くまでに平静を取り繕わなければならないな

 

 

 

 

 

「なんじゃ?工廠に用かえ?」

 

工廠に着くなり初春に見つかりこう言われた

 

「面会要請が出されている、と聞いたが?」

 

私の問いに何処から出しているのか未だにわからない扇子を拡げ、考える様な仕草を見せる

 

「ああ、そういえば出した、事務艦から返答を待てと言われて、忘れておったぞ」

 

忘れるなよ、しかし初春の様子はいつもと変わらない、様に見える

私が知らずに何かやらかしたから一言付けるのではなかったのか、もしかして早トチリしたかな

 

「忘れる様なら、大した要件では無い、のか?」

 

「……いや、そうでもない、余人を交えず話したいのじゃ」

 

おおう、この駆逐艦がこういう物言いをする時はこちらの想定していない大事を淡々と指摘して来るという、有難くも恐ろしい状況が想定される

 

「あー、しれーかーん!僕たちこれから遠征に行って来るー!」

 

遠征隊の駆逐艦に見つかった

 

「行ってこい、寄り道しないで帰ってくるんだぞー、変な所で変な奴と遊んじゃダメだぞー」

 

「わかったー、行ってきまーす」

 

駆逐艦三隻が遠征に出た、暫くそれを見送っていた

 

「心配はいらん、護衛は付くし、自衛隊からも海域情報を貰える、遭遇戦が起こる事はまずないじゃろ」

 

見送っている私の隣に来た駆逐艦、初回の遠征を終えた遠征隊旗艦が言ってきた

 

「護衛?」

 

海域情報は上手くすれば貰えると予測していた、しかし護衛とは何を指しての事だろ

 

「ほれ、叢雲と同期の初期艦等がおるじゃろ、勝手について行くから気にするな、そちらはそちらの任務を全うしてくれとな、お前さんがつまらん意地を張っておるから向こうも困っておる様じゃぞ」

 

つまらん意地って、いや云われても仕方ないのかもしれないが、ウチの艦娘達を自衛隊や大本営に都合良く使い倒されてはかなわんのだが

 

「それで、態々来たという事は、面会要請は通ったのじゃな」

 

「通るも何も、いつでも執務室に来てくれ、駆逐艦相手に扉を締めるリスクがどれ程高いか、私なりに知っているつもりだ」

 

そう言ったら、どういうわけか渋い顔をする初春、なんだろう

 

「まあ、よかろう、要請が通ったのなら、暫し時間をもらうぞ」

 

 

 

 

 

正式な面会要請を受諾した上での面談という事で小会議場(という名目の未使用部屋)で初春と向き合っている

お茶とか用意すると言ったらそんなモンより話が先だと言われてしまった、もしかして、初春はそれなりに機嫌が宜しく無かったりするのだろうか、私としては茶飲み話に出来ない話があると言われている様で落ち着かない

 

そうして始まった初春の話は広範囲な課題を含んでいた

それこそ鎮守府の運営から司令官の権限が拡大した場合の利点、終いには大本営との関わり方、こういってはなんだが、司令官が艦娘から指摘される課題としては、司令官の力量不足を痛感させられるモノばかりだ

ついでとばかりに自衛隊との関わり方、今回来ている様な指揮所組と憲兵を初めとする鎮守府駐留組、まあ、簡単にいえば、もっと上手く使えと、他の組織とはいえ協力関係にあるのだからその協力を引き出しだ方がお前さんも楽ができるぞと

 

言い分は理解するが、司令官職の規定上そうもいかない、と言ってみたら、盛大に分かり易く呆れられた、なんでだ

 

「もっと踏み込め、人見知りする様な殊勝な性格でもあるまい?」

 

扇子で口元を隠しながら正面から私を見据えた初春はそう言った

 

「そんな事をしたら問題が何処まで拡大するか、見当も付かない、私の手に余る事態になり、司令官職の立場上お前達にまで類が及ぶ事になりかねない、そのリスクは、取れないよ」

 

「なるほど、五月雨と吹雪から聞いた話は強ち的外れでは無かったようじゃの」

 

「?」

 

何の話だ?おそらく護衛についたという二人と遠征中に色々話をしたのだろう事は推定出来るが、内容までは絞り切れない

 

「お前さんにははっきりしてもらいたい、でなければこの鎮守府に所属する我等が路頭に迷う、御主、腹を括る気はあるのか?」

 

いきなり何の話だ、と困惑していたら、初春が手に持っていた扇子を閉じて真っ直ぐに私を指す

 

「今更、何の話かわからんなどと惚けた台詞を聞かせてくれるなよ、そんな台詞を聞かされたら、妾は御主を嗤わねばならない」

 

真っ直ぐにこちらに向けられた扇子を指で逸らしつつ、私から視線を逸らさない初春を視る

 

「笑ってくれ、お前の凛々しい所も良い、笑ってても良い、こうやって話をしてくれるのも良い、全部良い」

 

そう言った私を目の前の駆逐艦は反応を見せずにみつづけている

 

「はぁ、やはり妾ではダメか、叢雲でなければお前さんは動かせん様じゃな」

 

しばらくみつづけた初春はそう言って扇子を拡げいつものポーズを取った

 

「で、あの初期艦と何を話したんだ」

 

「内緒じゃ、そもそも乙女から秘事を聞き出そうなど、無粋だとは思わんか?」

 

「おっと、それは気が付きませんで、失礼を」

 

ふん、とばかりにそっぽを向かれてしまった、なんでだ

 

 

 

 

 

話をしていた部屋から出ると何人かが待ち構えていた

 

「どうした、何かあったのか」

 

「今の所なにもない、それより、人払いをしてまでなんの話をしていたんだ」

 

そう言って来たのは第三艦隊の旗艦だった軽巡だ

 

「下世話な話よ、此奴が小金を溜め込んでおる事は承知しておるからの、この機会に我等の食料調達に役立ててやろうとしたのだが、断られてしまったわい」

 

駆逐艦がお気楽に応じてる

 

「そんな話をするという事は、事態は長期化しそうなのか?」

 

第一艦隊旗艦が聞いてきた、長門の指す事態とは現状の鎮守府と大本営とのギクシャクした状態の事だろう

 

「わからん、私としては結論がどうあれ早くケリをつけたいんだがな」

 

それに予測込みで応える

 

「切迫詰まってからそんな話をしたら混乱するわ〜、今の内から話を通してカンパを募ってみた方が良いと思うなぁ〜」

 

これは第二艦隊旗艦だった軽巡、カンパなんて言ってくる辺りからして長門の指す事態から数段縮小した状態を指していることが窺える、事が大きく捉えられて騒ぎにならない様に気を使わせてしまった

この場には他の艦娘もいるのだから

 

「その場合は自衛隊から食料供給を受けるよ、自衛隊からなら市場調達よりは速いだろうし」

 

問題を縮小した返事をしてみた

 

「あらぁ〜、その気があるのなら今直ぐそういて欲しいな、なぜ躊躇っているのかしら」

 

まだ笑みを湛えたままだが、軽巡の雰囲気が少し変わった、お気に召さなかったらしい、なんでだ

 

「自己解決出来るのならその方が良い、手を尽くす前から他人頼みというのは良く無い」

 

これまで行って来た、いつもの方針を言ってみる

 

「私達に食事を用意するよりも司令官が自己解決する方が良い、そう言うのね」

 

普段と少し変わった雰囲気を保っている軽巡、まだ機嫌が治らないらしい、困った

 

「まともに食事も用意してやれない悪い司令官な事は謝る、しかし事態の決定権を、身の処し方を自己決定するには、柵は少ない方が決めるのも実行するのも確実に出来る、雇われ司令官でもお前達を対価として扱う気はない、自衛隊が艦娘部隊を便利に使おうと意図しているのは分かっているんだし」

 

「その対価で食料調達出来るのなら悪い話にはきこえないんだが」

 

こう言って来たのは第三艦隊の旗艦だった軽巡だ

 

「木曾、お前安いな、僅かな食料を得る為に軽巡のチカラを差し出すのか、差し出したモノは安く買い叩かれる、艦娘は現状では希少だ、出来るだけ高値で売ろうとは、思わないのか」

 

「高値で売り出しても買い手がつかなけりゃ意味なく無いか」

 

第三艦隊旗艦だった軽巡は私の言い分に不満がある模様

 

「希少と言っただろ、その価値を安売りしてどうする、一度安売りしてしまえば次の機会に更に安く売り出さなければ見向きもされずその上値切られる、時間が経てばタダ働きになってるだろうな」

 

「極論にしか聞こえんが……」

 

そんなに食事抜きが効いてるのか、随分と食い下がる第三艦隊旗艦だった軽巡

 

「そもそもの話として、艦娘部隊はコスパに優れるってのが成立理由だ、この理由だって国軍との相対的なモノだが、時の経過と共に艦娘だけの絶対値に置き換わるかもしれない、そうならない様に普段の言動には注意を払う必要がある」

 

「一度安く扱き使えると分かったら次はもっと安く安易に酷使してくると、でも艦娘を指揮出来る司令官は相応の研修を受けて、指揮下の艦娘を粗略に扱わない様に指導される筈でしょう」

 

こう言ってきたのは第三艦隊に配置されていた軽巡だ

 

「そうなんだが、現実は鎮守府にさえ着任してしまえば後は司令官の匙加減一つ、鎮守府内のことは司令官権限で大抵の事は押し通せる規定にはなってる、だから行き過ぎた行為を抑止する為に憲兵なんて配置してる、鎮守府の予算も施設管理室を置いて使途不明金を出さない様にしてるしな」

 

「鎮守府に着任している司令官は所属の艦娘に対し全権を行使出来るのだったか、規約上では」

 

確かめる様に言う第一艦隊旗艦

 

「艦娘の立場は艦娘部隊に所属しかつ司令官の指揮下にある事が前提だ、極論すれば司令官が安く酷使して良いと、そういう運用をする事は理屈上どこからも誰からも問題にされない、もし、これが問題視された時は司令官に対処させれば良いというのが艦娘部隊の方針だ、その為に司令官に全権を認めているんだからな、この鎮守府は試験運用的な位置付けだからそこまで干渉は受けないが、艦娘部隊の行動目的は海上航路の安全確保だ、この目的の手段としての艦娘でありその運用拠点としての鎮守府な訳だ、これらの事情を踏まえた時、艦娘を安売りしても後々厄介な事態を招くだけだ、だから安売りする事もさせる事も出来るだけ避けたい」

 

「結局、司令官の手札は私達だけって事なのね」

 

第三艦隊に配置されていた軽巡が呆れた様に言う

 

「……一般公募の司令官職が国家クラスの組織に対抗手段なんか持ってる訳ないだろ、向こうがその気になれば存在した記録毎一瞬で消えかねん」

 

「つまり、司令官は私達と一蓮托生、同舟の伴って事、よく分かったわ」

 

第二艦隊旗艦だった軽巡が雰囲気を普段の通常仕様にしつつ言ってきた

 

「悪い意味で言っているんじゃないだろうな」

 

「あらぁ〜どんな意味に聞こえたのかしらぁ〜」

 

この軽巡愉しんでやがる、なんてヤツだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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