初期艦と良く話せという天龍の助言を受けて現状でウチに滞在中の初期艦を集めて話をする事にした
「集まってもらったのは、アレだ、どうも私のアンテナが低すぎる様で大本営の内情を知らな過ぎると、資材を持ってきた天龍に呆れられてしまった、そこでだ、大本営の内情とやらについて話を聞きたい」
「……あの阿保何を言い出してんだ」
ボソッと文句を言ったのは漣だ
「話と云われても、何を話せば良いんですか?」
私が漣に突っ込む前に吹雪が聞いてきた
「そうだね、取り敢えずは大本営の遠征隊についてだ、天龍が統括管理してるのは聞いたが、幾つ編成出来るんだ?それと資材集積能力はどれくらいだ?ウチとの比較で言ってくれないか」
初期艦達が考え込んでしまった
ウチの集積能力は行動計画にて公表済み、各鎮守府も同様だ
この計画には大本営の遠征隊は含まれていない、計画立案段階でそれを知り様がなかったから
それに大本営を計画に含めずともなんとかなりそうな目処が計算上では付いた事もある
「先走った質問だとは思いますが、良いですか?」
相変わらず慎重な五月雨
「どうぞ」
「司令官はそれを聞いて将来的には大本営の遠征隊も計画に組み込むのですか?」
「当てに出来そうなら、そうする、しかし今の時点では大本営の遠征隊の集積能力がわからない、話次第という所かな」
「それは、将来的には大本営を指揮下に置く事も視野に入れている、そういう事ですか?」
漣から質問かも知れない発言が来た
「その辺は五十鈴秘書艦に聞いてくれ、そんな先の話は仮定にすらならない、ここで将来的に考えられる全ての可能性を列挙されても、困る」
「否定はしないんですね」
吹雪がなんとなく言った
「悪いんだけど、話は要点を絞って簡潔にしてもらいたいわ、こっちは暇じゃないのよ」
滅茶苦茶不機嫌な声を上げたのは叢雲だ
まあ、叢雲は特務艦達の研修があるし何より本人が初期艦の研修中だ
天龍が資材を持って来る度に叢雲がレポートを提出しているのは知ってる
外地研修と言ってたのはブラフでは無かった、叢雲のレポートを速読した天龍が駄目出しして再提出と言っているのは何度か聞いた
初期艦を見渡しても叢雲一人だけが疲労の色を見せている
「こっちが知りたいのは大本営の内情だ、四人で足りるのなら、退席して良いんだが、足りるか?」
「退席?冗談じゃない、私の司令官がどんな話をするのか、聞き逃すわけないでしょう」
叢雲の台詞に漣が大袈裟に溜息をつく
「叢雲ちゃん、根を詰め過ぎ、息抜きしながらやらないと息切れしちゃうよ、先は長いんだ、と言っても聞かないだろうけど」
「?聞かないとわかって、言って来るのは、忠告ということかしら」
「そのつもりだけど、叢雲ちゃんはドロップしてからそれほど間がない、わからなくても仕方ないんだけどね」
妙に達観した感じの漣、何を意図しているのやら
その二人に目を向けていたら軽く溜息を吐いた五月雨が言い出した
「司令官の質問は二つ、一つ目の幾つ編成出来るのか、遠征隊として編成可能な艦隊数は現状で六、この鎮守府の最大編成と同規模です、違いは交代要員としての駆逐艦が相応に居る事と、攻略部隊、海域制圧を主務とする艦隊の編成が出来ない事
二つ目の資材集積能力をこの鎮守府基準で評価する、こちらは六つの遠征隊をそのままで良いです、遠征隊の集積能力は単純に資材運搬用機材の装備数ですから」
「遠征隊の成功率が十割、という前提ならそうなのです」
五月雨の回答に電が条件を付けてきた
「大本営の軽巡達が遠征を失敗する?そんな事例がありましたか?」
五月雨は電の前提条件に疑問がある様子、それを見た電が続ける
「五十鈴が秘書艦としてはこちらに来ているのです、海域制圧と並行実施しなければ、成功率を維持出来ません、この鎮守府への定期便と混乱している大本営への対処と遠征隊の編成、海域制圧を主務とする艦娘の選定もしなければなりません、激務であっても駆逐艦は軽巡の指示で動けば良いですがその行動計画を立てる天龍達は休む暇もないと推定されます、大和もこちらに来ていますし、二組も事務処理から抜けたと聞いたのです」
「あ、遠征隊をサポートしてた艦娘達がごっそり抜けてたね、云われてみれば、気が付かなかった」
何その漣のヤベッて感じの言い様は
「つまり、天龍達は、かなり過酷な状態で遠征隊を率いていると、その上でこの鎮守府に資材供給してくれている?」
「その通りだけど、司令官が気にすることじゃない、天龍達は今以上に過酷な状態を乗り切って来ている、無理だったら資材供給を断って来るわ、天龍は駆逐艦を沈むまで酷使してでも司令官に資材を供給しろと命令されている訳じゃない、道理を退かせる様な真似はしないから」
叢雲はこう言うが、どうなんだろう、確認はした方が良いだろう
「天龍はこの鎮守府への資材供給は老提督の指示だと言っていたが、それでも、そう云えるのか?」
「えっ!?」
「あっ……」
単純に驚く叢雲と変な驚き方の五月雨
「あー、誤解して欲しくは無いんだけど、じーちゃん、じゃなかった、老提督の指示なら艦娘には命令と同義だと司令官は思ってますよね、それは合ってるし間違ってはいないんだけど、老提督にはその自覚が無い、妖精さんに好かれ過ぎている所為なのか、他に要因があるのかわからないけど、本人に悪気なんて皆無ですよ、ただ、妖精さんが張り切り過ぎてしまうというだけで」
答えてきたのは何故か漣だ
「妖精さんが張り切り過ぎて、それに艦娘が引き摺られ、結果として無理を押して沈んで行くと、そういう事か?」
「あー、簡潔な纏めをどうもありがとうございました」
漣がなにか言い足したそうな様子も見せたが、諦めたらしい
「それで、五十鈴と大和がこちらに来て、二組も事務処理から抜けていると、これが遠征隊のサポートになっていた、その辺の話しを聞かせてもらえるかな」
どうしたのか初期艦四人が困った様子を見せる、なんだろう
「私が聞いた話しだと五十鈴は秘書艦になるまで大本営の周辺海域の制圧行動を主務として凄い撃破数を数えていたそうよ、ただ、行動自体が非公式で記録そのものが曖昧若しくは無いから正確な所は五十鈴にしかわからない、大和は遠征隊を間接的、陸の上でフォローしていたと聞いてる
二組の事務処理というのは、まあアレよ、天龍が言ってた色々と手を回したってヤツ、大本営の士官達の目に不自然で無い様に目立たない様に事務を処理してたって事、実務が全て表に出て視察官が公認したからこの事務処理は考えなくて良いわ、二組も暇らしいからその内なにかしら手を出し始めるだろうし」
何も言い出さない四人を尻目に叢雲が言って来た
「行動が非公式?勝手に出撃してたのか?」
色々あるが、取り敢えず聞いてみる事にした
「そうせざるを得なかった、大本営では周辺海域に深海棲艦はいない事になってたから、それを理由に出撃許可は出ない、そう決められていた」
「?」
なんだって??聞いた話を頭が理解することを拒否したんだが、おかげで腹は立たなかったが訳が分からなくなった
「司令官?」
叢雲に呼びかけられてようやく訳がわからない事を自覚出来た
「済まないが、もう一度言ってくれないか、なにか聞き違えたらしい、理解できなかった」
「あー、理解できなかったのならそれで良いんじゃないかな、無理に理解する事ないし」
投げ槍な感じで漣が言って来た
「私が知りたいのは大本営の内情だ、理解出来ませんで済ませて良いことではないだろう」
「大本営司令長官名で大本営の各部署に発せられた通達が見つかっています、鎮守府が増設され、大本営は深海棲艦の脅威から解放された、と」
「ナニソレ?」
五月雨の言い分に素で返してしまった
「簡単に言うと、ここを含む鎮守府の増設で当時の司令長官は大本営には深海棲艦は到達出来なくなったと本気で考えていた、だから大本営周辺海域には深海棲艦はいない事になってしまった、観測結果も遭遇報告も全部誤報扱いになったって事」
叢雲が答えてきた
「……馬鹿か?どこに目を付けてんだよ、頭の中で花でも咲かせてんのか、そんなのが司令長官やってたのか?」
現実が机の上にしかない偉いさんの与太話は聞いた事はあるが、名目上でも自分の上役がソレだったとは、改めて聞かされると、余りの莫迦らしさに腹も立たない
「やってたから非公式でも手を回してでも色々やらなきゃならなかった、大本営に所属する艦娘達がそうやって大本営を抑えてくれたから増設された鎮守府は今日までどうにか存続出来たんだ、でなければ鎮守府の司令官は着任初日から過大なノルマを課されて全滅してるだろうね、まあ、今となってはどちらか良かったのかわからないけど」
物凄くどうでも良い、面倒臭い話をさせるな、そういった感じを隠しもせず漣が言ってきた
「どちらが良かった?」
「増設された鎮守府が全滅していれば大本営に所属する艦娘達にも海域制圧行動が課せられた筈、そうなれば建造にしろ兵装開発にしろ今よりマシな状態になっていた、分散配置ではなく集中配置の方が生産効率自体は良いんだよね」
「漣は鎮守府の増設には反対だったのか?」
反対なのに鎮守府に配置されたのなら不満も溜まっただろうと思って聞いてみた
「まさか、鎮守府は増設しなければならない、そう進言もしたし計画書も出した、けど大本営を遊ばせるつもりはなかったんだ、どこでなにを間違ったのか鎮守府を増設したら大本営が余剰組織の様な扱いになってしまった、その時に私達は増設された鎮守府に配置された後でどうにも手が出せなくなっていた
じーちゃんも退いた後で一組が頑張ってくれた様だけど、新規で入って来た官僚達と一組の初期艦ではどちらが少数派か、そして組織内の少数派の意見はどう扱われたか、結果を見れば官僚達の住処として都合良く変わり果ててしまったのは明白、鎮守府の様に憲兵や施設管理室といった外部の人が入らなかった事もあって官僚達には理想郷だったろうね、国際機関として予算も潤沢、政府や議会の承認といった手続きも無く予算執行出来たんだから」
「……なんだ、ソレ」
漣は淡々と話しているが聞いているコッチは今更ながら腹が立って来た
「全て過ぎた事、今更言っても始まらない」
漣の余りの淡白さに不快感を覚えつつ出来るだけ表に出さない様に努めた
「増設された鎮守府ではその辺りの対策として自衛隊に入ってもらったんですよ、常々自衛隊から艦娘部隊に干渉があったので、言い様はアレですけど撒き餌に丁度良かったんですね」
どういう意図かは知らないが五月雨が言ってきた
「自衛隊を鎮守府に誘き寄せて大本営では好き放題、羽根の伸ばし放題という訳か」
そうやって対策を回避した訳か、流石は官僚頭が良い
「身も蓋もないですが、その通りなのです」
なんでもない様に肯定する電
「その挙句が、鎮守府になんとかしろと無茶振りか、大本営は官僚天国に成り果てて官僚以外にも人が居る事すら忘れたらしい」
何処の平氏だよ、飛んだ時代錯誤だ
「そうでも無いですよ、今監察官達が大本営に入っていますが、何の為にだと思いますか?」
淡々としている五月雨
「艦娘部隊の予算の大部分は上部機関から割り当てられました、使用用途の追求は厳しいモノになるでしょう」
それに続く吹雪
「そうは言っても使途不明な部分が多いって聞いた、どうやって追求するの?」
最近の大本営しか知らないドロップ艦らしい質問だ、私が質問する手間が省けた
「叢雲ちゃん、予算は予算なの、組織としての経理はしてるんだよ、世の中には税務と云うモノがありまして、扱う額が大きければ大きい程、経理の質が問われる事になっているんですよ、国際機関だからといって財政面まで設置された国から分離出来る訳じゃない
艦娘部隊は治外法権では無く特例措置だから税務は設置された国の法令に準じる事になってる、使用通貨は設置される国や地域に準じる事になってるし、電子マネーの導入はその処理の自動化、為替処理の簡略化を計る為の試みの一つでもある、そんな訳で追求する実務を負うのは設置された国の税務担当部局だし、不適切な税務処理が確認されれば告発もあり得る、老提督の視察報告と今回の監査で明るみに出た数字で上部機関の方々が相当に御怒りだそうで、上の役職の人程凄い事になりそうだ」
漣はこう言うが、引っかかる所があるので聞いてみよう
「その告発は日本の警察に?」
「そうですよ、この国で艦娘部隊が何かやらかせば日本の警察が捜査権を行使してくる、艦娘部隊と日本政府は協力関係ではあっても地位協定とか無いですし、司令官と違って大本営の官僚達に免責特権は付与されていませんから」
「免責特権?司令官職にそんなモノ無いが」
そう言ったら四人に怪訝な顔をされてしまった
「付与されてますよ、司令官職に一般の民間人を登用する事になって初期艦が補佐に就く事を理由に、艦娘部隊と司令官との間に立ってスマートに事が運べる様にと色々覚えさせられた、その中に司令官職に就く人との契約書類もあったから見間違いとか勘違いとかじゃない、司令官が良く見てないとかじゃないですか」
なんか呆れ半分で言ってくる漣、そんな事云われてもなかったモノはなかったんだが
「それ、見せてくれない?司令官職の契約書類」
どうでもよさそうな気だるい感じで言ってくる叢雲
「守秘義務というモノがあって、出来ない」
「初期艦に守秘義務を行使するんですか?艦娘部隊が出した書類なのに?」
五月雨が疑問しか無いという感じに聞いてくる
「守秘義務の対象は契約当事者以外の全てだ、この場合大本営の担当官と司令官職に就く本人を除く全てが対象だと説明を受けたが、違うのか?」
「守秘義務というより秘密契約って感じだね、そんな事書いてなかったけど、ハテ?」
漣が考え込んでしまった
「もしかして、私達が見た契約書類と司令官が見た契約書類が違う、のですか?」
「もし、そうなら司令官によって契約内容が違ったりするのかな?」
電に続いて吹雪まで疑問を上げて来た
「ブッキーの言う通りなら、司令官によって鎮守府の運営方針が違う事を説明出来るか、考えてみれば増設された鎮守府の運営方針ってバラバラなんだよね、同じ研修を受けたのになんでこうもバラけるのかって疑問ではあったんだけど、司令官の個性の問題だと思ってた、けど、方針が似通ったりしない様に大本営の官僚達が契約内容を変えた?色々な運営方針を持たせて様々な運用ノウハウが集められる様に誘導したって事なのかな」
考えながらも言ってくる漣
「そんな話は聞いていないのです」
あっさりと返す電
「私だって聞いてない、鎮守府の増設は必要だった、その必要を理解したからあの人達は協力してくれたんだと思ってた、もしかしてこれって、厄介払いされただけなんじゃない?大本営の士官達に頻繁に意見してたし老提督との繋がりも濃かった私達を大本営から遠ざける為の、その後はあの有様だし、嵌められたかな」
割と真剣に言う漣
「幾ら何でも穿ち過ぎです、大本営の官僚達がそこまで先を読んで行動出来るのならやまちゃんがあんなに苦労していません」
反論する五月雨
「目先の事に逐次対応して行った結果としてそうなった、全体を見ての行動ではなかったのでは?結果から原因を探そうとすると良く陥る理想的な原因を創作してない?」
吹雪も異論がある模様
「……ここは遺憾ながらブッキーの意見に賛成するよ」
考えながらも吹雪に同意する漣
「何が遺憾なの?」
不満そうな吹雪
「それで、初期艦が見た契約書類にはどんな免責特権があったんだ?」
一区切りついた様なので戻って来てもらおう
「不逮捕特権に始まり、免税やら公共交通機関の優先権やら色々あった、大雑把に行政が出せる大抵の事項は付いてた筈、そういう項目が契約書類に無かったですか?」
電に聞かれた
「覚えが無い、そもそも不逮捕特権なんて行使する機会があるのかわからんし、免税って云われてもこっちの給料は施設管理室経由だし、公共交通なんて司令官職に就いてると殆ど使わない、書いてあろうがなかろうが大した違いは無さそうだな」
「施設管理室経由って自衛隊にお給金を任せてるんですか?」
驚いた様に聞いてくる五月雨
「司令官の給料だって鎮守府の予算から出てるんだ、その扱いを任せてるんだから、そうなるだろう、別に疑問は無いが、何かあるのか?」
「あー、司令官は鎮守府予算に関わる庶務を丸投げしたんですね、なるほど、それならわからない話では無い、なるほど、丸投げしたから却って自衛隊に信頼されたのか、情報公開は大事だなぁ」
何がナルホドなのかさっぱりだが、漣がヤケに感心していた
「丸投げ?鎮守府の予算執行権を施設管理室に預けたって事ですか?」
「人聞きの悪い事を言ってくれるな、予算執行権は私にあるし予算処理の確認は事務艦がしている、施設管理室に任せたのは予算執行に関わる管理事務作業だ、鎮守府の予算を自衛隊に横流しした様な謂れ様は心外だ」
「わかってます、ブッキーの言い様が不適切ですね、ブッキー以外は誰も誤解していないのでご安心ください」
漣の言い様はなにかの勧誘?の様な感じだ、相手を安心させようと意図しているが胡散臭さが隠し切れず裏があると疑わせる感じ、さっき言ってた遺憾な感情を引き摺ってるのか?
「ちょっと?!そこでなんで私だけ例外扱いなの?!」
吹雪には異論があるらしい
「自分の発言を省みて、己の迂闊さを反省しなさい、わからないのなら、それまでなのです」
電は相変わらずだ
「まあまあ、漣も電もそんなに言わないで、ブッキーだってちょっと気になっただけで本気で思ってた訳じゃない、確認しただけ、そう、確認しただけなんだよ、確認は大事でしょう?」
宥めに入る五月雨、世話を焼くというより火消しだな
「五月雨が纏めた所だけど、免責特権の確認は如何するの?続ける?」
相変わらず気だるそうな叢雲
「私の知る範囲ではそんなモノはないから、目的とする所の大本営の内情との関連が無い、初期艦達から見ると司令官には免責特権が付与されていると言う、それは私の目的とする所と関係してくるのか?」
「関係というか、それ自体が大本営の内情の一つですね、初期艦は艦娘部隊が作成した契約書類しか見ていない、司令官は大本営が作成したと思われる契約書類しか見ていない、両者は同一の物だと認識されていたけれど、違う物らしいという事です、確認は両者を付き合わせないと出来ませんが」
五月雨が応えてきた
「では、この話はここまでとして、遠征隊の、天龍達、大本営の資材集積を担っている遠征隊の余力はどのくらいありそうかな?」
「そっちに戻るんですか、まあ、司令官の一番の心配事なのはわかりますが」
なんか呆れ気味の漣
「五十鈴が海域制圧を受け持つだけでも、天龍達の負担は半減しますが、現状では取り得ない策です、大和を大本営に向かわせるのは大本営側の問題が有り無理筋です、となれば、二組の初期艦達に天龍達のフォローに入ってもらいたい所ではありますが……」
「何か、問題が?」
五月雨に先を促す
「二組の初期艦達は老提督を司令官と強く認識している、艦娘部隊の一員としての自覚はほぼ無い状態なんだ、ドロップ直後から置かれた状況が特殊過ぎて、他の初期艦とは性質が違ってしまっている、あの子達はもう暫く老提督との時間を過ごしてもらいたいんだ、そうしないと、又あの状態に逆戻りしかねないからね」
答えて来たのは漣だ、なにやら問題児らしい、二組の初期艦ってのは
「二組に拘る事も無いだろう、大本営には初期艦が大勢居るのだから、他の組に天龍達のフォローを依頼出来ないのか?」
「あー、無理ですね、言いたい事はわかりますが、激務で休む余裕も無い天龍達に遠征隊のフォローの仕方を知らない初期艦達まで教育する時間は無いですから、三組の初期艦でもアレはフォロー仕切れない、いない方がマシだと思う、二度手間三度手間になるのが目に見える」
漣の見立てでは無理と即断する状態なのか
「では、お前達なら?」
「それは、可能ですけど、ここはどうするんですか?司令官お一人であの数の遠征隊の集積資材を捌き切れますか?」
ご尤もな意見をありがとう、漣も毒舌とは違うが電くらいにはモノを言う
それに考えなくても無理だね、五つの鎮守府の遠征隊の集積資材を効率良く搬送する行動計画の立案は柔軟性が、状況の変化に随時適応していく臨機応変な対応が必要だ、一人では無理があり過ぎる
「大和ならそれだけの処理能力がありますが、司令官は大和を実務に就けるのには時期尚早だと思われていますよね」
確かめる様に言ってくる五月雨
「時期尚早というか、あんなに高圧的な応対ではトラブルの元だ、鎮守府に上下関係は無い、対等な協力関係だ、あの戦艦にそこの所が理解できているのか如何なのか、計りかねる、今は無用で無益なトラブル対応に時間を取られたく無い」
「そこを理解してもらう事を目的にしているとしても大和に駆逐艦達の世話をさせるというのは、贅沢な使い方だと思いますよ」
漣が何か言ってきた、嫌味か皮肉の類に聞こえたんだが
「贅沢?何が贅沢なものか、大本営でどれだけ遊ばせていたんだ、大本営の方が余程贅沢ではないか」
つい反論してしまった
「そういわれると、何も言えないんですけどね、でも、そうなると五十鈴は大本営の代理人として、大和は対応力の見直し、二組は実務復帰にもう暫くかかる、私達一号は司令官の補佐から抜けられない、手詰まり、ですな、困った事です」
漣ってもしかして駆け引きというか議論出来ないタイプか?あっさり引き過ぎだろ、その上話題を逸らしに来てる、しかし今はそこを気にする場面ではない
「……一組は?一組なら天龍達のフォローが出来ないか?」
そう言ったら四人が困った顔になってしまった、なんか変な事を言ったかな
「一組は二人欠員だから三人しかいない、大本営で天龍達のフォローをするより、この鎮守府に呼んで司令官の補佐に着けた方が良い、それなら一号を天龍達のフォローに回せる」
相変わらず気だるそうな感じではあるが、叢雲が言ってきた
「えっと、それは、そうなんだけど、如何なんだろう、大丈夫かな」
「何か問題が?」
漣のはっきりしない物言いに聞き返す
「えっとですね、一組はかなり特異な状態になっているんですよ、ってコレ話して良いのかな?」
「話してくれないことには判断しようが無いんだが」
「お話しする前に、ハッキリさせておきたいのです」
電が言い出した
「前にも少し出してしまいましたが、一組の五月雨の状態についてです、アレは本人の問題であり、司令官が気にすることでは無いのです、又一組の電はその状態を許容していますが、職務に支障があるようなら、構わずに職務を優先してください」
「つまり、一組は問題を抱えていると、現状では解決出来ていないからそこを踏まえろと」
「問題といえば問題だけど、使い様でもある、能力的には十分なんだから、司令官が上手に使えば良いだけとも云えますね」
漣のソレはアドバイスなのか、なんなのか
「上手く使えないと自分の首を絞めることになると、確認なんだが、それを実行したとして、そこの初期艦は一号に入るのか?」
「叢雲ちゃんは研修中の初期艦、一号どころかどの組にも入っていませんよ、ご心配無く」
五月雨が和かに言って来た
「私は特務艦達の研修を外地研修として実施中、これが終わらないと外地研修そのものが終わらない、そして外地研修は初期艦研修の一部でしかない、この鎮守府に着任するのはもう少し後になるわ、絶対に着任するから、司令官!」
「お、おう」
なんだ?あの気だるそうな感じはどこいった?そんなに唐突に漲られても驚くんだが
「ハハハ、まあ、二組もこんな感じですよ、司令官を強く認識している点では似た様な感じかな」
何その乾いた笑いは、漣は何か言いたげだな、言葉にはしてこないが
登場艦娘
初期艦研修中の叢雲、現在外地研修として特務艦隊を引率中、教導艦は天龍に変更されている
一号の初期艦、吹雪、漣、電、五月雨 (叢雲は鎮守府にて睡眠中)
一組の初期艦、漣、電、五月雨 (吹雪は解体、叢雲は改修素材で二名欠員)
二組の初期艦、吹雪、叢雲、漣、電、五月雨 (ドロップ直後から特異な状況に身を置いていた為、現在リハビリ中)
三組の初期艦、吹雪、叢雲、漣、電、五月雨 (大本営改称後に揃った初期艦)
老提督の秘書艦の五十鈴、艦娘部隊大本営代理人の側面を持つ
秘書艦の大和、秘書艦に任命されているが鎮守府に転属となり秘書艦は名目のみとなっている
大本営の遠征隊、天龍等が率いる遠征隊、各鎮守府を巡回していたりもする
移籍組、本編中では引き籠り達として出て来ていた高練度艦達
登場人物
老提督
・研修中の叢雲からは視察官、一期で視察官として鎮守府に来ている時が初対面だったから
・一号の初期艦からはじーちゃん、お爺さん、艦娘部隊発足前から色々あった経緯から
・稀に最初の人、艦娘の言う妖精さんを見る事が出来た最初の人
・現在監察官の一人として大本営の監察中、大本営を上部機関が統括下に置いている間の臨時司令長官
監察官
艦娘部隊上部機関より派遣された、退役軍人、国家代表、元上級官僚、という方々、大本営を監察中
老兵
・老提督に続き妖精さんを見る事が出来た二人目の人、退役軍人
・老提督と同様に艦娘部隊上部機関に席を用意されてる艦娘部隊の重鎮の一人
・監察官の一人として大本営を監察中の筈
・現在大変な厄介事を抱え込み難儀中でもある
移動指揮所の自衛隊
佐伯司令官の要請で鎮守府に駐留、自衛隊内部で扱いが割れて紛糾中、現場の自衛官は艦娘部隊に協力姿勢を示している
佐伯司令官、増設された五箇所の鎮守府の一つに着任した司令官、一期の鎮守府