初期の艦これ   作:弱箔

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68 定期便

 

 

 

 

 

7月16日

 

 

定期便になっている大本営からの資材搬入、それを持って来た天龍は定期便ということもあり執務室まで顔を出さない事も多々ある

お互い忙しい身の上な訳で省ける時間は省く方向で意見の一致は見ているが、今回ばかりは省かれては困るので資材庫まで出向き天龍を捕まえた

 

「お、態々どうした?」

 

私を見つけるなり言って来た

 

「話があるんだが、どのくらいなら時間が取れるかな」

 

「なんだよ、改まって、そんなに長い話なのか」

 

「大本営で一号の初期艦達がなんかやってるそうだな、それにお前達も随分と難儀している様に聞いている、こちらのアンテナが低くてな、その辺りの話が聞こえて来ていない、詳しい所を聞きたいんだが、時間は取れそうか」

 

「……作るよ、時間の方は、その間連れて来たチビ供を預かってくれるのならな」

 

「それは問題ない、今の所攻略隊の方が手漉きでな、遠征隊の補佐に入ってもらっている」

 

「チビ供をそっちに預けて執務室に行くわ、話は執務室でいいだろ」

 

「わかった、五十鈴も呼んでおこう」

 

そう言ったら天龍が軽く溜息を吐いた

 

「……厄介事だな、それは」

 

どういう意味だ?

 

 

 

 

 

そんな訳で話を詰めなきゃならん状況での協議が始まった

執務室に集まっているのは私と天龍と事務艦と五十鈴、それに何処からか話を聞きつけた初期艦、更にどういう風の吹き回しか初春が初参加して来た、初期艦が捕まえて来た様にも見えるが、それは置いておく

 

「天龍達には途切れる事なく資材を供給してもらい、非常に助かっている、先ずは礼を言わせて欲しい」

 

「そんな社交辞令は良いから、本題に入ろうぜ、お互い時間に余裕はないんだし」

 

時間がないと言いつつ茶受けのお代わりは要求して来る天龍、随分と余裕そうに見えるのは気の所為か

 

「では、本題に入らせてもらうが、大本営には妖精さんはそんなに余ってるのか?」

 

「は?」

 

事務艦から茶受けを受け取りつつ天龍が間の抜けた声を上げた

見れば五十鈴が訳知り顔で茶を啜ってる、この秘書艦、情報の小出しが過ぎるんだよ、知ってるなら話を通してくれないかな

 

「ウチの工廠の妖精さんの数が此処の所増えてる、それこそ工廠から妖精さんが溢れる程に、大本営は多数の妖精さんをウチに連れてこれる程に妖精さんを抱えてたのか?」

 

これには五十鈴が答えてきた

 

「大本営ではないわ、今天龍が連れて来ている妖精さんは増設した鎮守府の妖精さんよ、向こうに居ても工廠を運用する訳でもなく余剰になっているからこの鎮守府に集めてもらっている、序でに資材も持ってこれるし、他の鎮守府の様子も見て回れる、流石に大本営からの命令を正面から拒否する司令官はいなかった」

 

「あの引き籠もり達の修復というか再就役にも必要になるしな」

 

五十鈴に続いて天龍も言って来た

 

「艦娘の修復に妖精さんの数がいると?」

 

修復に妖精さんの数が問題になるなんて聞いたことが無いんだが

 

「修復にというより再艤装にという事、艤装となる妖精さんが相応数必要になるの、他の四箇所の妖精さんの総数がどのくらいなのかわからないけど、移籍組全員を再艤装するにはもっと多くの妖精さんが必要になる」

 

総数が不明なのに足らないと断言出来るって、初期艦にはある程度の見込みがあるのかな

 

「他の鎮守府は放棄するのか?」

 

妖精さんを引き上げているのならそういう事になると思うが

 

「大本営で漣達が試行中と言ったでしょう、他の鎮守府にはその妖精さんを配置する予定、大増設する鎮守府での運用試験を兼ねて、司令官達がどういう反応を見せるか、それによっても対応も変わって来る」

 

そういう話は、こっちにも通して欲しいんだが、五十鈴に云わせれば余計な気を使わせたく無いという事なんだろうが、蚊帳の外に置かれている様で面白く無い

 

「その話、当の司令官達は知っているのか?」

 

「勘付いてはいるでしょうね、大本営の命令が効いてるから何も言ってこないけど、文句を言って来たところで実績の無い司令官の発言は無視して良いでしょう」

 

酷い言い様だ、五十鈴の言っている事は分からないでは無いがそれを実行される側としては反論したい所だね

 

「では、私からその辺りの話を司令官達に通してみる、詳しく聞かせてもらいたい」

 

そう言ったら五十鈴が驚いた顔を見せた

 

「そんな面倒事を引き受けるの?大本営の命令で押し切った方が楽よ?」

 

「所属している艦娘達まで向こうに回すつもりか?司令官の頭越しにそんな事案を通したらその指揮下にいる艦娘達の反感を買いかねない、自身の司令官を軽んじられて大人しくしている艦娘ばかりでは無いんだ、大本営所属艦、というより五十鈴は自身の司令官を蔑ろにする上官が居たらどういう感情を持つ?」

 

「……」

 

「なるほど、そりゃ正論だな、でもあんたは上官じゃないだろ」

 

黙ってしまった五十鈴に変わり天龍が言って来た

 

「勿論上官ではない、だが同僚として横の繋がりがある、知り得た情報を共有するだけだ、それをどう活用するかは情報を得た司令官次第だ」

 

「……あんた、そういう考えは早死にするって、分かってるか?」

 

天龍に呆れられてしまった

 

「長生きすれば良いってモノでもあるまい、早死にするならそれまでの事だ」

 

「そんな事させない!!」

 

おう、ビックリした、なに?

 

「落ち着け、モノの例えだ、大人しく座ってろ」

 

天龍に言われて渋々といった感じで初期艦が座る

 

「……なるほどね、云われてみれば二組もこんな感じだし、鎮守府所属艦にもこんな感じの艦娘が居てもおかしくない、対応を誤ると大きな厄介事になる確率が高いと、でも、大本営にはそこまでの対応能力はない、何かあれば纏めて解体処分で済ませるしかない、けれど、司令官の指揮下にいる艦娘が結束して大本営に反抗する可能性は否定しきれないと」

 

五十鈴の台詞に顔を顰める天龍

 

「なんだか、大本営の士官達の位置に立たされた感じだな、艦娘独自の自立は有り得ないが司令官が居ればその鎮守府単位で自立しかねないって事か、味方の艦娘達を警戒しなきゃならない状況に置かれるなんて、考えもしなかった」

 

「指揮下の艦娘に命令しか出来なくなる、一号の初期艦はそんな状況を嘆いていた様だけど、このまま事態を推し進めると、私達がそうなってしまう、これは再考しなければならない事案ね」

 

五十鈴も天龍の言う感じには同意の様子

 

「その私達の中にこの鎮守府は入って無いだろうな」

 

念の為に聞いておこう

 

「なに?今更他人の振りが出来るとか思ってる?この鎮守府はとっくに私達の側に居るわよ?」

 

正にお前は何を言っているんだと云わんばかりの五十鈴

 

「……マジですか」

 

これはいけない、早急に他の鎮守府に話を通さなければ、この鎮守府にまで火の粉が飛んで来そうだ

 

「そうとも言い切れまい、他の鎮守府所属艦とは休憩がてらよく話すが何処もウチの事情を良く知っておる、鎮守府に初期艦を戻す様に再三要請している事も、大本営が却下している事も知っておった、当然あの高練度艦と称する移籍組の無茶苦茶な修復計画と輪を掛けて無謀な鎮守府大増設計画、その推進と監視役に大本営秘書艦が居座っておる事も詳しく聞かせてもらった、妾はこの手の話が司令官から聞こえてこなかったのが、残念でならん」

 

あれ?もしかしなくても初春怒ってる?この計画については長門等に話しているし鎮守府内で秘匿した事はないんだが

しかし云われてみれば全員に対し詳しく話した事はなかったかな

 

「長門から聞いていないのか、他にも龍田や大和は詳細を知っているが」

 

「……司令官から聞こえてこなかった、そう言っておるのだ、よもや遠征隊を扱き使うのに戦艦からの伝達で済まされるとは、妾達も軽んじられたモノよのう」

 

間違いなく御機嫌斜めの初春、どうしようか

 

「あなたが古参の駆逐艦だというのは聞いてる、司令官の信頼が厚い事も、でも、あなたは司令官を補佐しようとしない、それなのにその言い分は身勝手ではないの?」

 

五十鈴が口を挟んで来た

 

「ほう、大本営秘書艦はこの初春が司令官を補佐していないと、判断したのか、して、司令官は?この大本営秘書艦様に同意なのかえ?」

 

おおう、そんなに睨むなよ、しかし困ったな、初春の機嫌がとても悪い、どうやって機嫌を直してもらおうか

 

「初春、今は秘書艦と協調し計画を進めなければならない状況にある、そこは理解して欲しい、だからといって、秘書艦の判断を全て追認してはいない、正直な所仕事が多過ぎて彼方此方手が回ってないのは確かだ、その不手際で駆逐艦達に不利益なり不当な扱いなりがあるのなら、言ってもらいたい」

 

先ずは不機嫌の元を探さないといけない、それがわからないと対策も取りようが無いしな

 

「そういう事を言っておるのではない、御主は妾達の司令官であって大本営の官吏ではない、そうではないのか?それとも妾の知らぬ間に大本営の官吏に衣替えしおったのか?」

 

なんだか物凄い誤解があるんだが、初春にこんな誤解をされる程、遠征隊に気をかけていないと思われてたのか、反省しないといけない案件だな

 

「えーと、どう言えばいいんだろ、先ず私はこの鎮守府の司令官だ、それは変わっていない、但し鎮守府司令官の職は大本営の発行する紙切れ一枚で失職する、それを発行出来る権限を持つのがここに居る秘書艦、協調しなければならない事はわかってもらいたい

更に言えばこの計画全体は大本営の司令長官からの内示で実行している、司令長官は艦娘部隊の全権を行使出来る役職でもある、鎮守府司令官としての職務の優先順位としてこれ等の計画推進は後回しに出来ない、この計画はウチの鎮守府だけでなく現在開設されている鎮守府の全てが参加している合同計画でもあるんだ、この点からも優先順位は高くなる

私の身体は一つしか無いし出来る事には限りがある、結果として行動計画の伝達は間接的に行われる事が多くなる、初春の言う戦艦からの伝達で済ませてもらわないと私が困る」

 

なんにしても誤解だけは解いておかないとならない

 

「つまり、妾達の司令官である為には大本営秘書艦に嫌でも尻尾を振らねばならんと?制裁与奪の権限なぞこれまでも再三無視して来たではないか」

 

えっと、初春には私の言動はどう映ってるんだ?

 

「その制裁与奪の権限の範囲が、お前達にまで掛かって来ている、私一人の問題では無くなっているんだ、現状に不満があるのなら言って欲しい、対処可能な事案であればなんとかしよう」

 

「妾達に?どう言う事じゃ?」

 

取り敢えず誤解は解けただろうか、不機嫌な様子は影を潜めたが

 

「大和からその辺りの話はなかったのか?」

 

天龍が初春に聞いてきた

 

「大和は他の鎮守府所属艦の相手が忙しいからの、あまり妾達とは話しておらん」

 

それに普通に答える初春、まあ大本営所属の軽巡だからって気にする様な駆逐艦ではない事はわかっているが

 

「ああ、そう言う事、長門は言い出し辛かったのね、変に気負わせたくなかっただろうし」

 

遠征隊に編成されていない長門は、と五十鈴は言っているのだろうが、寧ろ遠征中に龍田が駆逐艦達に話していない事の方を気にする状況だよね

 

「まあ、気負わせた所でどうにかなるもんでもないからな、何も知らずに文句垂れてれば済むと思ってくれてた方が気は楽だな、確かに」

 

ふーん、天龍の言い分は誰も言い出さない状況を説明してる、遠征隊統括艦娘という肩書きは飾りでは無いという事か

 

「だから、どう言う事じゃ?」

 

初春が質問を繰り返す、軽巡二人の台詞は回答になっていないから、仕方ないね

 

「司令官、話難いなら私から話しても良いけど」

 

あー、そうね、この話は私がしなくちゃいけないのね、わかった、御指摘ありがとう初期艦

 

「その発言であれば、初期艦見習いは承知しておるのだな、妾達の進退に関わる大事を」

 

確認する様に聞いてくる初春、この駆逐艦二人はあまり話していないのかな、それにしては初期艦が初春を連れて来た様に見えたんだけどな

 

「初春のいう初期艦見習いは大本営所属艦だ、ウチの所属艦では無い、立ち位置は秘書艦の方に近いからな、それを知っているからこそ、特務艦の研修にかかり切っているでは無いか、やる事はやっているよ初期艦は」

 

「……相変わらず叢雲には甘いのう、お主叢雲なら何でも良いのか??」

 

なにその強調された疑問形は、なんなの?

 

「どう言う意味だ?」

 

取り敢えず聞いてみる

 

「そう言う意味ぞ?」

 

即答で返ってきた、そんなこと言われても特別扱いしてるつもりはないんだが、初春にはどう映っているのだろうか

 

「して、妾達にも制裁与奪の範囲がかかっておるとは、何が起こっておるのだ」

 

話を戻しに来る初春

ここで変に突っ込んでも仕方ない、そちらに話を戻そう

 

「この計画の成否は勿論だが進捗までもがこの国に艦娘部隊を残置するか撤収するかの指標にされてる、老提督がそういう条件で上部機関と取り引きしたんだそうだ」

 

「あら、取り引きしたのは司令官も、でしょ、老提督だけの取り引きでは無い、事実は正確に伝えないと、判断を誤るわ」

 

五十鈴に突っ込まれた、アレは取り引きじゃ無くて要求なんだけど

 

「老提督の取り引きに乗じてお主まで取り引きしたのか、それでか、ヤケに身を入れて仕事に励んでいると感心していたら、そういうことかえ」

 

初春が何処からか扇子を出していつものポーズを取る、あれ何その目、何も疚しい事などないぞ

 

「司令官、随分と指揮下の駆逐艦に懐かれているようだが、普段何してんだ?」

 

初春の様子に天龍が面白そうに聞いて来た

 

「真面目に仕事してるさ、なにか疑問が?」

 

「アッハッハ、だいたいわかった、あんたの指揮下に居れば退屈しなさそうだな」

 

何がおかしいのかな、何がわかったのかな、色々問い詰めて欲しいのかな天龍は

 

「司令官の我儘に散々振り回されておる、その覚悟があるのならいつでもだれでも歓迎するぞ」

 

えっ?!なにを言っているんだ初春は、大本営所属艦に言う台詞じゃないだろう

 

「覚悟、ね、その覚悟のある駆逐艦は司令官から直接指示を受けられないのが不満だと?」

 

こう言って来たのは五十鈴だ

 

「長門は攻略隊の旗艦ではあるが遠征隊の首班は定まっておらず実質的に龍田がソレを担っておる、ウチの遠征隊の旗艦を務める軽巡は数が足りておらん、他の鎮守府の手前真っ先に根を上げる事も集積量を減らす事も出来ず、意地と根性で立っている様な有様じゃ、何とかせい」

 

おう、初春が怒ってたのはコレか、軽巡達の酷使振りに文句を言いに来たのか

 

「龍田もそうなってるのか?そんな風には見えなかったが」

 

天龍が感想?を言う

 

「龍田の意地と見栄の張り様が視えぬとは、使いモノにならんな」

 

初春の台詞にムッとした顔を見せる天龍だが口は出さなかった

 

「建造艦に無理を言わないで、そこまで余裕が無いのなら五十鈴が加わってもいいけど?」

 

「……大本営の秘書艦になど借りを作るとなにをされるかわからん、此度は遠慮してもらおうかの」

 

初春は五十鈴を警戒してるのかな、警戒というより関わりたくないとかかな、桜智のヤツが言っていた様に

 

「あら、残念」

 

何処から聞いても残念そうに聞こえない台詞を吐く五十鈴

 

「もし、大本営所属では無い艦娘、遠征隊を率いるのに適した艦娘が居たら、司令官は受け入れてくれるのかしら」

 

ん?なにを言い出したんだ五十鈴は

 

「おい、それって……」

 

天龍が言いかけたのを五十鈴が止めた

 

「どうかしら、司令官」

 

「どう、と聞かれても、そもそも大本営所属艦ではない艦娘というのは?そんな艦娘を何故五十鈴、大本営の秘書艦が?」

 

聞いたら五十鈴に困った顔をされてしまった、ハイソウデスカと聞ける話ではないだろうに

 

「ほう、話を始めてしまったからには、最後まで言ってしまえ、ここで止めても続けても大差あるまい」

 

どういうつもりか初春が五十鈴に話す様に促してる、それもオモチャを見つけた様な嬉しげな顔で

 

「あの移籍組と違って、未帰還者となっている艦娘、先の海戦で自衛隊に回収されず自力帰還した艦娘が公になっている外にもいるのよ、大本営への到達時期が大分後だった事もあって、受け入れ体制が無かったから仮住いしているうちに司令長官が代替わりしてしまって話を通せなくなってしまった、その艦娘達が艦娘部隊への帰属を求めてる、なんとか仮住いのままやって来たけど、この機会を逃すと話を持ち込めるのがいつになるかわからない、司令官にはこの艦娘達を受け入れて欲しい」

 

なんだろ、五十鈴の言い分に不自然さを感じる

 

「よくわからないが、秘書艦権限で大本営から辞令を交付させれば、いいんじゃないかな、正式に辞令を持ってこられたらこちらは拒否できないんだし」

 

「尤もじゃな、最後まで話せないのなら、その話はこれで終わりじゃ」

 

完全拒否で五十鈴の話を打ち切りにかかる初春

 

「あの海戦での未帰還者の扱いはとてもデリケートなの、これだけの期間が開いたのに未だ未帰還者として記録され、戦没扱いに出来ない事自体が問題の深さ、存在が公になるだけでも国際問題になりかねない、あの海戦は色々と問題があって上部機関でも意見が分かれてる、自衛隊の回収行動も国際法上の懸念が払拭されていない事も関連して来る、今この問題を再燃させる訳には行かない、司令官がドロップ艦として受け入れてくれればこれ等の問題を再燃させる事なく、公に艦娘部隊への帰属が出来る、司令官は労せずに高練度の艦娘を指揮下に加えられる、悪い話ではない筈よ」

 

何処がだよ、大問題抱えろって話じゃないか、そこを誤魔化して話を通そうとする辺りがとても気に入らない、この秘書艦は私をなんだと思ってるのか

 

「大本営で未帰還者として登録されている艦娘をドロップ艦としてこの鎮守府で受け入れろと?二重登録するのに加担しろと、そんなリスクを私に負えというのか、随分な要求だな、不利益しか聞こえてこないとは」

 

「その中に五十鈴の姉妹艦もいるんだ、なんとかならないか」

 

天龍が口を挟んで来た

 

「それはそちらの事情じゃな、所属艦娘の虚偽登録を司令官に要求するなど、呆れてモノが言えん、それこそ司令官の処罰材料にしかならんではないか、それを大本営秘書艦が知っておるだけでも司令官のクビを断頭台に乗せるが如きじゃ、ただでさえ制裁与奪の権限を持つ秘書艦は司令官のクビを断頭台に乗せなければ気が済まんか、業の深い事よのう」

 

扇子を広げて口元を隠す何時もの仕草に加え眼を細めて五十鈴を見つめる初春

 

「そういうつもりはない、そう聞こえたのなら五十鈴の言い様が悪い、五十鈴はあの大本営に姉妹艦達を戻したくなかった、折角生き延びたのに、帰ってこれたのに、誰からも除け者扱いされる様な大本営を見せたくなかった、だから仮住いの場所を提供して大本営に近づかない様に、いつか艦娘部隊への帰属ができる様に、大本営に残って時期を計っていた、結果として大本営への帰属よりもこの鎮守府に所属した方が良いとの判断に至った、だから司令官に話してる」

 

真剣な顔だ、これで嘘八百並べているのなら、艦娘辞めて役者に転職を勧めるくらいには

 

「初期艦はどう思う?」

 

ここまでヤケに大人しい初期艦に振ってみる

 

「えっと、何か方法があるのなら、受け入れても良いと思う、司令官に類が及ばない方法はないの?」

 

ほう、初期艦は受け入れ賛成か、まあ、大本営所属艦だしな、仕方ない

 

「方法っていってもな、未帰還者である事が判明すれば大事になる、そこを伏せてこの鎮守府で所属艦の登録をすると二重登録、大本営の体制次第では隠し切れなくなる、というか隠し通せる体制しか出来ないのなら、老提督のいう再構築は失敗だ、秘書艦権限で辞令を交付させるってのが、司令官に類が及ばない方法だろうな」

 

初期艦の質問に答える天龍

 

「秘書艦権限で辞令を交付させるのに問題となるのは、なに?」

 

「所謂背信行為ってヤツになるのかな、細かい条文は調べて見ないとわからんが、それを認めないと交付しようがないが、認めた段階で秘書艦を降ろされ、交付どころか拘束されるな」

 

初期艦と天龍の質疑応答が続く

 

「現状でも五十鈴はそのリスクを負っている?」

 

「そうだ、まあ、俺等もそうなんだが」

 

「俺等?」

 

不思議そうに聞く初期艦

 

「何の為に遠征隊統括なんて面倒を引き受けたと思ってんだよ、伊達や酔狂で色々手を回して来たんじゃないんだ、事情も色々あるんだ」

 

「なんじゃ、大本営は面従腹背が基本なのかえ?」

 

初春が口を挟んだ

 

「これまではそうだった、老提督はそれをなんとかしようと、してるんだ」

 

「まあ、大和を見ていれば想像はつくが、熟大本営って所は関わりたくない所だな」

 

取り敢えず感想を言ってみる

 

「そう思うのなら、五十鈴が姉妹艦達を大本営に戻したくなかったのもわかるでしょう」

 

五十鈴に突っ込まれた

 

「それはソレ、これはコレ、一絡げにされては敵わんぞ」

 

そこに初春が一言付けてしまった

 

「あなた、なにか五十鈴に思うところでもあるの?」

 

厳しめの意見が続く初春に五十鈴が言い出した

 

「五十鈴にというか、此奴の意志薄弱というか、不愉快じゃな」

 

「???」

 

なんの話をしてるんだろ初春は

 

「初期艦見習いはどうじゃ?不愉快ではないのか?」

 

「えっ、私?なにが?」

 

初春に話を振られて慌ててる初期艦

 

「まったく、これだから見習いなのじゃ、観察眼が無さ過ぎる、嘆かわしい」

 

「えっ?えっ!?」

 

初期艦が混乱してるんだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








登場艦娘

初期艦研修中の叢雲、現在外地研修として特務艦隊を引率中、教導艦は天龍に変更されている
単に初期艦との表記であればこの叢雲を指す、筈

一号の初期艦、吹雪、漣、電、五月雨 (叢雲は鎮守府にて睡眠中)、大本営で色々と試行錯誤中

一組の初期艦、漣、電、五月雨 (吹雪は解体、叢雲は改修素材で二名欠員)、佐伯司令官の補佐担当

老提督(大本営司令長官)秘書艦の五十鈴、艦娘部隊大本営代理人の側面を持つ

秘書艦の大和、秘書艦に任命されているが鎮守府に転属となり秘書艦は名目のみとなっている

大本営の遠征隊、天龍等が率いる遠征隊、各鎮守府を巡回していたりもする

初春、舞台となっている鎮守府所属艦、古参艦でもあり司令官からの信認は厚い

移籍組、本編中では引き籠り達として出て来ていた高練度艦達





登場人物

老提督
・研修中の叢雲からは視察官、一期で視察官として鎮守府に来ている時が初対面だったから
・一号の初期艦からはじーちゃん、お爺さん、艦娘部隊発足前から色々あった経緯から
・稀に最初の人、艦娘の言う妖精さんを見る事が出来た最初の人
・現在監察官の一人として大本営の監察中、大本営を上部機関が統括下に置いている間の臨時司令長官

監察官
艦娘部隊上部機関より派遣された、退役軍人、国家代表、元上級官僚、という方々、大本営を監察中

老兵
・老提督に続き妖精さんを見る事が出来た二人目の人、退役軍人
・老提督と同様に艦娘部隊上部機関に席を用意されてる艦娘部隊の重鎮の一人
・監察官の一人として大本営を監察中の筈
・現在大変な厄介事を抱え込み難儀中でもある

移動指揮所の自衛隊
佐伯司令官の要請で舞台となっている鎮守府に駐留、自衛隊内部で扱いが割れて紛糾中、現場の自衛官は艦娘部隊に協力姿勢を示している

佐伯司令官、増設された五箇所の鎮守府の一つに着任した司令官、舞台となっている鎮守府の司令官




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