初期の艦これ   作:弱箔

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08 解放された時には日付けが変わっていた

 

 

 

6月18日

 

なんだかんだで解放された時には日付けが変わっていた

調書の作成と内容について多少の確認があったくらいで殆ど放置されていた

憲兵さん達が慌ただしく動き回るのと、どう見ても憲兵ではない普通科の方々が鎮守府に押し寄せてきたのは良く見えた

隊長の言い分では視察官の随伴達は移動中に中止命令が出て引き返したそうだ

命令が出るって事はそういう事なんだろうけど、大本営も何をしているのやら

私が解放されたのは体制が整ったから、らしい

なんの体制なんだか、念のため執務室に行ったらやっぱり事務艦がいた

全く何をしてるんだか、早く休むように言ったら、書類を差し出された

見れば正式な命令書で全ての行動を中止、別命あるまで待機との事だ

そういえば予定の遅延を取り戻す為にスケジュールの組み直しをしようと視察日の翌日から予定を白紙にしていたっけ、第一艦隊がこっちの手伝いに入った段階で遠征も出してないしな

おかげでこの時点で所属艦娘全員が鎮守府にいる事にはなった、良いんだか、どうなんだか

正式な命令なら余程の事がないと拒否も出来ないし、この際渡に船とでも思っておこう

後は命令書をコピーして食堂にでも張り出しておけばいいだろう

兎も角無駄に疲れた、続きは一眠りしてからだ

 

なんだこの妙に臨場感のあるガヤガヤは、夢にしてはやけに現実感があるな

「あ、起きたみたいだよ」

今の駆逐艦の声だったな、あれっ、夢、じゃない!

慌てて辺りを見回す、状況から食堂のテーブルに突っ伏して寝ていたらしいが、食堂に来た覚えがない

「全く、こちらには休むように言って御自身がお休みにならないなんて」

「良くいうよ、司令官を見つけて真正面に陣取って嬉しそうにしてたのは、誰だっけ」

「な、そ、そんな事はありません、私は……」

「まあ、そう騒ぐな、朝食は食べられそうか」

「……食べるけどね、えっと、なんだっけ、どうして私はここで寝てたんだ」

おい、アホの子を見る眼を向けるんじゃない

「そんな事、知るわけないだろう、それより待機命令が出てるんだ、ゆっくりしたらどうだ」

と言い残して去っていく第一艦隊旗艦

「今、朝食をお持ちしま……」

「しーれーかーん、持って来たから一緒に食べよ!」

「あー、ズルっ子、抜け駆けだー」

「ふふん、こういうのは早い者勝ち、だろ」

ああ、喧しい、駆逐艦が元気なのはいい事だが、私の周りではしゃぐのはどうにかならんのか

「ありがとう、いただくよ」

取り敢えず駆逐が持ってきたのを受け取って座り直す

「もう食べ終わってるんでしょ、席を譲ってくれないかな」

おお、駆逐艦が大胆にも事務艦に退けって迫ってるよ

「ええと、ですね……」

こっちを見てきてもどうにもしてやれんが

「……どうぞ」

食堂の混雑時にそう言われては仕方ないね、なんでそんなに悲しそうにしてるんだ、この事務艦は

「ありがとう」

満面の笑みの駆逐艦と余りにも対照的で少し同情した

「では、いただきます」

「いただきまーす!」

ここは幼稚園かな、と思ったのは内緒だ

 

朝食後、執務室に寄って真面目な事務艦に新規の指示や命令が来ていないのを確認してから風呂に入って色々整えてから憲兵隊詰所に行く

「どうした、なにかあったか」

こちらの顔を見るなり隊長にいわれた

「おはようございます、現在こちらには待機命令が出ております、状況を出来るだけ教えて頂きたい」

「おはよう、というにはチト遅いが、こんにちは、って時間でもないか」

そういう隊長は昨日の呼び出しから指揮を執り続けているようだ

「状況といってもな、教えるような事は……そう睨んでくれるな」

あれだけ協力させられて蚊帳の外に放り出されては堪らない

「それは、もう少し待ってもらえないか」

ん、いたのか爺さん

「どのくらいでしょうか」

爺様が大物なのはわかった、だが、それはそれ、これはこれだ

「そうだな、そういえば叢雲さんと話は出来たのかい」

そういえばそんな事を言っていた気はするが、現状で優先度が高いとも思えないが

「それが終わる頃にはこちらも終わっているだろう、それでどうだろう」

いや、どうだろうって、何がだよ

「叢雲さんの話は司令官にはとても重要な話になる、もしかしたら、もっと広範な重要事項になるかも知れない、話してみてはもらえないか」

「重要、ですか」

「そう、とても重要な事だ」

なんで妖精さんが大挙して湧いてくるんだよ、なんでそんな眼をむける、言いたい事があるなら言って来ればいいだろ

あれっ、今気がついたけど、ここ暫く妖精さんと話してなくね、いつからだっけか

「……取り敢えず話をしてきましょう」

どう見ても妖精さんはこんな所にいないで叢雲と話をしろ、そういう感じだった

 

 

「ここにいたのか」

叢雲と話そうと探したら一苦労あったんだが、この際問題にする事ではない

「司令官……」

なんだこの大人しい駆逐艦は、爺様の影響が強すぎるんじゃないかと心配になる

「まあ、同型同名艦だ、鏡を見るようなものなのかな」

「司令官には同じに見えるの??」

不思議そうにされてしまった、ボケのわからん奴だ、ここはツッコミ所だぞ

「いや、まったく」

なんで困った顔してるんだ、高等な冗句を理解しない輩の緊張はどうやって解せばいいんだろ

「ふふっ」

なんだ、なにか面白かったか

「ダメね、また司令官を困らせてしまった」

そういう顔は儚げというより消えそうだった

「どうせ消えるのなら……」

なにか言ったようだが、聞き取れなかった

「司令官、貴方の初期艦を起こす方法を教えあげる」

はっ、なんて言った、この駆逐艦

「私を使って貴方の初期艦を改修すれば、目を覚ますわ」

それ自体は手続きが必要だが可能だ、それで初期艦が目覚めてくれれば本来の鎮守府運営態勢に戻れる、だが、なんだ、なにかが引っ掛かる

「?貴方の初期艦を起こさないの」

考え込んでしまった私を不安そうに見て来る、それで確信した、これ、やっちゃダメなパターンだ、やれば絶対に間違いなく間違いだと思い知らされるヤツだ

「折角の提案なんだが、それは出来ない」

「……どうして」

そんな泣きそうな顔して消えそうな声になるなよ

「貴方はこの鎮守府の所属では無い、司令官の権限は所属艦娘にのみ有効だ、私にそれを実行する権限はない、それに「じゃあどうしたらいいの!私はなにをすればいいの!!」……」

えっと、なんだコレ、何かをしたいのに上手くいかないで癇癪起こした、んな訳ないか、形は小さくとも艦娘だし

そうだ、爺様との話の中で何かを伝えようとして上手く行かなかったとか言ってたな

「そうだな、なにか私に伝える事があるのでは」

ハッとしてこちらを見るが、直ぐに俯いてしまった、どうすればいいのはこちらのセリフだよな、どう考えても

「えっと、それは、その、あるんだけど、どうしよう」

なんでそうなる、おまえホントに叢雲か、知ってる叢雲と真逆だぞ

ん、ああ、そうか、ウチの叢雲じゃあないんだ、普通に駆逐艦として扱わないと

「おちついて、一つ、一つ、ゆっくり話してごらん」

「う、うん」

 

 

 

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