初期の艦これ   作:弱箔

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御注意

・大幅に書き方が変わっています
・苦行用です
・長いです

ご承知頂きたく存じます


ー8期ー
76 艦娘が海の上で向かい合っている


 

 

 

 

鎮守府-近海(鎮守府至近)

鎮守府所属艦:最初の初期艦叢雲/新任の初期艦叢雲

 

 

二人の艦娘が海の上で向かい合っている

姿はよく似た二人、ただ、装備している艤装の違いが二人を同型同名艦とは見做せなくしていた

 

「さて、私には時間が無い、だから貴方がどれだけ拾えるか、取りこぼす方が多い事は分かってる、始めから全力で掛なさい、いいわね?」

 

「……大丈夫なの?貴方には殆ど妖精さんが着いていない、それに艤装だって吹雪から借りているのでしょう?無理に演習しなくても」

 

「私の心配より今はこの演習でどれだけ拾えるかを考えなさい、これも貴方が素直に私を改修素材に使わなかった結果なのだから、今のままでは貴方は少し練度の高いだけの駆逐艦でしか無い、初期艦として司令官に仕えるには色々足りない、この演習で少しでも何かを拾えれば、少しはマシになる」

 

「でも貴方はいなくなるわけじゃない、人化処置で艦娘から人になる、二人で司令官を支えるのではいけないの?司令官はそれを望んでいるのだと思うのだけれど」

 

「人の身では司令官を支え切れない、艦娘の、初期艦の支えが必要となればそれが出来るのは、貴方だけ、人化処置を受けたら私は司令官の側にいる事しか出来ない、私は司令官が望むだけ側にいる、けど、それは支えると言う事ではないし仕えると言う事でもない、いつか、司令官も私を側に置く必要がない事に気付く、私はその時に備えなければならない」

 

「はぁ、人化処置を受けたら、解体って訳にはいかないのは分かるけど」

 

乗り気ではない新たな初期艦をどうにか演習に引っ張り出し、何とかその気に持っていけた様子だ

ここから、この演習が最初の初期艦叢雲の艦娘としての最後の刻、この新任の初期艦叢雲にどれだけ託せるか、やってみるしかない

 

 

 

 

鎮守府-港

鎮守府所属艦:長門/龍田/初春/大和

 

 

鎮守府至近で行われる演習、それを見守る鎮守府所属艦娘

 

「始まったか」

 

「ええ、それにしても演習海域にすら行かずにこんな至近で演習なんて、司令官は何故許可したのでしょうか?これでは鎮守府にまで砲火が及んでしまいます」

 

「その心配は要らんじゃろ、双方共に高練度の初期艦、鎮守府に砲弾を打ち込む様な事にはなるまいて、大和こそ、この演習の見届け役を依頼されておるのじゃろ」

 

「見届け役というか判定役ですね」

 

「ならば良く見ておれ、ウチの初期艦に新任の初期艦が如何に沈められるのかを」

 

「……本気で撃沈しに行く、と?」

 

演習の目的を聞いて耳を疑ったのはつい先程の大和、それでも判定役を引き受けてしまう辺りが大和らしい

 

「明石が何やら新しい妖精さんの特性を纏めたとか言っていたな、何でも一度限りだが轟沈から完全復帰させられる妖精さんに仕上げたそうだが」

 

「今回が初実装だそうじゃ、向こうで大本営の初期艦達が揃って記録を取っておる」

 

「長良さん達に着いていた妖精さんですか、大和はあまり良い感じはしないのですが」

 

「あら~、やまとちゃんもそう感じるんだ~、カンは鈍っていない様で少し安心したわ~」

 

「……どういう意味です?」

 

「鍛え甲斐がある、かも知れんという事じゃろ、ところで、演習は確と視えているのかえ?」

 

「この至近でアレだけ派手に動いていたらイヤでも見えます」

 

「そうなんだ~、じゃあ演習が終わって落ち着いたら皆んなで反省会しましょう、やまとちゃんが進行役ね」

 

「構いませんけど、龍田さん?何が狙いですか?」

 

「この演習は鎮守府の至近で実施されているから鎮守府の皆んなが観ている、戦艦種なら戦艦種也の反省会進行が出来るでしょう?長門の進行と比較する事でやまとちゃんの事が色々わかるんじゃないかな~」

 

「……」

 

龍田の言い分に釈然としないモノを感じている事をその表情で顕にしている大和

 

それを見かねたらしい初春が口を開く

 

「誤解せぬとは思うが、念の為に言っておくぞ、龍田は意地悪で言っておるのでは無い、大和の練度と知識というか見識のズレに皆戸惑っておる、そのズレを確定させつつ皆で認識を一致させる機会としたいのじゃ、それが成れば幾分かマシな状況になるであろう?」

 

初春の言い分に少しだけ表情を戻し、別の話を振る

 

「……それにしても、お二人共撃ちませんね」

 

「互いの位置取りが気に入らんのじゃろ、撃っても当たらんのが解りきっておるし」

 

「ウチの叢雲は撃てるか分からないしね、砲撃の位置取りよりも近接戦に持ち込みたいのでしょう、距離を詰めようとしてるし」

 

「新任の初期艦はそれを嫌って距離を置いて砲撃位置を確保しようと回避行動に徹しておる、長引けば叢雲が不利というか、時間切れになりかねんな」

 

「ウチの叢雲がそんなドジを踏むとは思わないけど?」

 

龍田と初春の話に疑問を感じた大和がそれを口に乗せる

 

「あの、叢雲さんが撃てるか分からない、というのは?」

 

「ああ、彼奴には殆ど妖精さんが着いておらん、兵装を扱う妖精さんもな、おらんのじゃ、アレで艤装を扱えるだけでも驚きなのじゃが、借り物の艤装と兵装を何処まで扱えるのかは、妾には分からん」

 

「吹雪さんから妖精さんごと借り受けたのでは無いのですか?」

 

「例えばじゃ、大和の兵装を長門に装備させたとする、それで長門が大和の様に兵装を扱い切れるのか?という話じゃ」

 

「?兵装を変えても撃てなくなるという事はないのでは?」

 

「艤装に装備されるからね、兵装は、でも、ウチの叢雲はその艤装も借り物だから妖精さんが何処まで協力してくれるかは実際にやってみないと分からない」

 

龍田の解説で合点が行った様子を見せる大和

 

「あ!そうでしたね、ん?そんな不利な状態なのに何故叢雲さんはあんなに動けるのですか?大和が長門さんと艤装を全交換したら水面に立てるかどうかも分からないですよ?」

 

「そこは練度の違い、経験の差、妖精さんへの影響力、単純に習得技量が比較にならん、大和が真似できることでは無い」

 

初春の言葉に僅かに顔を翳らせる大和、それを見た龍田が続ける

 

「気にすることはないわ、あんな無茶は実戦ではやりようがないから、あそこ迄の無茶が出来るのなら戦域から逃げ出す方が現実的だしね」

 

「むっ、詰めたな」

 

「あら~、一気に寄られた様だけど、どうしたのかしら」

 

「同じ吹雪型とはいえ借り物の艤装ぞ、調子を掴み損ねていたのやも知れん」

 

演習は最初の初期艦叢雲が新任の初期艦叢雲の周辺を回り込みつつ、急接近、白兵戦の距離にまで迫っていた

 

 

 

鎮守府-工廠

大本営所属艦:一号の初期艦四/一組の初期艦二/三組の初期艦一

鎮守府所属艦:明石

 

鎮守府至近で行われる演習、それを見守る大本営属艦娘、初期艦七隻、それと初実装装備の稼働結果を待つ明石

 

「んー?なんか納得いかない、ブッキーの艤装を扱ってるにしては動きが良過ぎる、なんか仕掛けた?」

 

「そんな時間はなかったでしょ、この演習だってやるって聞いたら直ぐに艤装を貸してくれって来たんだし、何だって私の艤装を持ち出したんだか」

 

「吹雪型だし、一番近いからじゃないの?綾波型や暁型、まして白露型じゃあね」

 

「でも雪級と雲級で見た目は随分違うのです」

 

「擬似腕式の兵装接続方式だよね、吹雪型でも雲級は」

 

「吹雪型と綾波型の主砲は手持ち式なのに」

 

「他の型も主砲は手持ち式が多いよ?」

 

「雲級は魚雷も足には装備しないし、アレで吹雪型なんだからどうなってんのって感じだよね」

 

「艦娘七不思議の一つなのです」

 

「七つで済むの?」

 

「型ごとに七つならどうにかなるのです」

 

「因みに白露型の七不思議は?五月雨?」

 

先程から上の空というかこちらの話を聞いていなさげな五月雨に呼びかける漣

 

「……えっ、あっなんですか?」

 

「そんなに心配しなさんな、お互い撃沈狙いだから心配なんだろうけど、明石の製作能力は妖精さんに並ぶ、予備検査でそういう結果が出てるし妖精さんもそれをわかってる、だから最初の内は異形物?擬似妖精?みたいな感じで拒否反応を示した、この鎮守府の妖精さんから見れば大本営で発生した変異なんて知りようがないからね、そこを叢雲ちゃんの入渠で知る事になったから拒否反応が無くなった、正体が分かったからね、元々排他的な行動ってのは殆んどしないから、妖精さんは」

 

漣の説明にもあまり表情を変えない五月雨

 

「……白露型の七不思議ですか、何があるんでしょう?」

 

五月雨のあんまりな態度に三組の漣が痺れを切らした

 

「……五月雨ってば、そんなにあの二人が心配なん?」

 

「心配もしますよ、演習でお互いに撃沈狙いなんて、そんな演習を司令官はどうして許可したのかが分かりません、万一の事態が起こったらどうするんですか?」

 

「そう言う割には止めなかったよね」

 

吹雪から冷静に突っ込みが入る

 

「……止められないでしょう、叢雲の艦娘としての最後の刻、五月雨の我が儘を通して良い訳がない」

 

「まあ、その刻を私等とじゃなくて叢雲ちゃんと演習しながら迎えたいってのは、如何なのとは思わなくはないけどね」

 

「それが司令官に対して遺せる初期艦としての最後の務め、なんだかんだ言っても叢雲は司令官を認めてる、色んな意味で」

 

吹雪の感想は感情を感じられない程、冷静な口調だった

 

「民間上がりの素人司令官のハズだった、いつの間にかこうなってしまった、先の事は読み切れないって事なのです」

 

「あっ、詰んだね、しっかり記録を取りますか」

 

距離を詰めた二人を見た一組の漣の感想

 

「何故に寄られただけなのに詰んだ事になるん?」

 

それに納得行かない様子の三組の漣

 

「そっちの吹雪ちゃんやムラムラもウチのブッキーに散々言われてるでしょ、そういう事」

 

「納得いかないですね、私達三組の初期艦は一号の初期艦にはどうやっても届かないとでも?」

 

「叢雲ちゃんは三組の初期艦じゃないでしょ、まあ、視ていれば分かるよ」

 

先任達の言い分に納得いかない様子の三組の漣、視ていれば結論はすぐに出るだろうと思い直した様に演習中の二人に視線を向けた

 

 

 

鎮守府-防波堤

鎮守府所属艦:木曾/阿武隈/筑摩

 

 

鎮守府至近で行われる演習、それを見守る鎮守府所属艦娘、何ヶ所かに別れて思い想いにこの演習を見守っている

 

「うわっ、長門の教練以来じゃないか?あそこ迄相手の艤装を破砕したのは」

 

急接近した最初の初期艦叢雲の攻撃に思わず声を上げてしまう木曾

 

「長門は戦艦、今相手にしているのは駆逐艦、あんな無茶したら沈んでしまうけど、良いのかしら?」

 

同じ光景を見ながらも阿武隈からは淡々と感想の様なモノが出てくる

 

「何でも明石がなんか作ったとかでその検証も兼ねているんだそうだ」

 

「その検証には演習相手を沈める必要があるって事?」

 

「そう聞いた、二人共それを装備して、検証すると言っていた」

 

「……じゃあ、次はウチの初期艦が沈む番?」

 

現実感を何処にも感じない、感想の様な言葉が出てくる

 

「どうだろうな、あの力量差じゃ、新任の初期艦にそれが出来るとは思えないが」

 

「あっ、艤装が治った、アレが明石がなんか作ったってヤツ?」

 

見ていた光景に少し驚いた様な言葉が聞こえてくる

 

「そうみたいだな、勝手に艤装が修復されるとか、どんな仕掛けだよ」

 

「どんな仕掛けでも装備するだけで戦闘海域でも艤装が修復出来るのなら、沈まなくても済みますよ?」

 

落ち着いたよく通る声が掛けられた

 

「……そうかもしれないけどさ、なんか、こう、スッキリしないって言うか」

 

その声を発した艦娘に木曾が言葉を選び切れずに曖昧な表現になっている

 

「お邪魔してしまいましたか?」

 

驚かせてしまったと思ったのか、声をかけた筑摩が気遣う

 

「いいや、丁度良い所に来てくれた、第一艦隊の重巡としては、如何なんだ?遠征隊の方が多い軽巡から見ると、今一なんだかんだと思う所があるんだが」

 

その気遣いを受けていつもの調子を取り戻した様子の木曾

 

「んー、装備ですからね、攻略隊は火力と引き換え、遠征隊は資材回収量と引き換えになります、状況を見極め、何方を優先するか、そこを旗艦が決めるのか司令官が指示するのかはっきりさせておいた方が良いとは思いますけど」

 

「火力不足に回収量不足か、その後の影響が大きいな」

 

「でも、それって今でも織込み済みじゃない?海域攻略にしろ資材回収にしろ全て予定通りになんて司令官は言った事ないよ?いつも余裕を見た予定を組んでるから辻褄は合わせるって言ってるし、辻褄合わせに必要だから報告は正確にって」

 

淡々と感想の様に並べる阿武隈

 

「……まあ、そうなんだけどな」

「司令官の安眠と引き換えですね」

「?」

 

苦笑いの二人に対しもう一人は疑問の表情を見せた

 

 

 

鎮守府-近海(鎮守府至近)

鎮守府所属艦:最初の初期艦叢雲/新任の初期艦叢雲

 

 

自身の艤装を破砕された新任の初期艦叢雲が驚きと困惑を露わにしている

 

「今の、なに?」

 

「貴方は艦娘のチカラを使えていない、ドロップして間も無いというのはあるのでしょう、けれど、貴方はもう司令官に初期艦として着いた、出来ませんでは済まされない立場に立っている、ヒントをあげましょう、人の作った兵装でも深海棲艦を撃破する事は出来る、でも、数値化された威力が同じなら艦娘の兵装の方が深海棲艦に与えるダメージが大きくなる、それは何故?」

 

「妖精さんの付与してくれるチカラが深海棲艦により多くのダメージを与えるから、でしょう?それと今私の艤装を破砕したのと如何いう繋がりが?」

 

本気で疑問の声を上げる新任の初期艦に、最初の初期艦はその表情を一切動かさない

 

「……付与されるチカラは妖精さんと会話出来る初期艦ならより強く出来る、それは相手が艦娘でも適応される、寧ろ艦娘が相手の方がより強く発揮される、もし、艦娘が司令官に危害を加えようとしたなら、艦種に関わらず司令官を護れる様に」

 

「……」

 

最初の初期艦の言葉に、新任の初期艦が呆気に囚われている

 

「それが私では側にいる事しか出来なくなるという事、司令官を支えられるのは貴方だけという理由」

 

その言葉に、新任の初期艦はこの演習の意義を理解した

 

「そして無理を押して迄この演習を強行した理由でもあると」

 

新任の初期艦の眼が変わった

 

「貴方にこんな事を教える初期艦は他にいないでしょう?」

 

その眼を見つめ返す最初の初期艦はとても嬉しそうな表情を見せていた

 

 

 

鎮守府-港/近海(鎮守府至近)

鎮守府所属艦:長門/龍田/初春/大和

鎮守府所属艦:最初の初期艦叢雲/新任の初期艦叢雲

 

 

「む?なんだ?新任の初期艦の雰囲気が、変わった、のか?」

 

新任の初期艦の雰囲気が変わったのは見守る艦娘の多くが感じた

 

「あら~、なにかのスイッチ入っちゃたかな~」

 

大和はその雰囲気の変化に嫌な感じを受けた様で表情を険しくしている

 

「……止めた方が良く無いですか?とても不穏な感じがします」

 

「見届け役を頼まれたのは大和であろう?そうしたければそうすれば良かろうて」

 

「……使われた検証が必要な装備は一つだけです、二つ使われる迄は介入不要と念押しされました」

 

「その通りにするもしないも大和の好きにすればよろしい、なにしろ頼まれたのは大和じゃからな、我等は只の見物じゃ」

 

「……」

 

険しい表情のまま演習を見守る大和、判定役を頼まれていなければ止めに入ったかも知れない程にその表情は複雑さを見せている

 

「新任の初期艦、叢雲ちゃんもアレを使い始めたわ、ウチの叢雲が無理を押した甲斐はあった様ね」

 

「使い方がまるでなっとらんがな、機会があれば妾が鍛えようぞ」

 

「あら~、ソレ私もやりたいんだけどな~」

 

「龍田には大和が充てがわれておろう、妾の愉しみを取るでないわ」

 

「充てがわれて……大和の扱いは一体……」

 

突然出て来た会話で複雑な感情が薄められた様に困惑顔が覗いた

 

「事が落ち着いたら、鍛練すると、聞いておらんか?」

 

「それは、聞いてますが、資材回収量次第との条件が付いています」

 

「そうねぇ、事が一区切り付いたら他の鎮守府から資材提供が無くなるんだし、遠征隊は休む間がないわね〜」

 

「その辺りを如何にかしようと彼奴は無い知恵を絞っておるぞ、幾ら考えたところで遠征隊を酷使するか、大和の鍛練を先に延ばすか、どちらかしかあるまい」

 

「……提督にその選択権があるといいのだがな」

 

零す様に、独り言の様な長門の言葉

 

「長門?何かあるの?」

 

それに龍田が返した

 

「この演習を観ているのは、我々だけでは無い、そんな感じがするのだ」

 

見れば長門の視線は演習をしている二人では無く、その向こうを視ていた

 

「?なんじゃそれは、我々というのは鎮守府にいる者達か、その他にも視ていると?」

 

「確証は無い、ただ、あの日の、初期艦が大破したあの海域で感じた違和感の様なモノを思い出させる」

 

「違和感?あの赤い海で感じる?」

 

「ああ、それなら妾も感じておるぞ」

 

アッサリし過ぎの言葉を聞いた長門がその発言者に視線を向ける

 

「長門は叢雲から妖精さんを預かっておるじゃろ、艦種違いの妖精さんからの伝達がそう感じさせておるのじゃろ、艤装を出してみよ、それで解消される筈じゃ」

 

今一つ合点が行かない風ではあったが初春の言い分を試そうとする長門

 

「やまとちゃん?離れた方がいいと思うな~」

 

立ち位置を変えない大和に龍田が注意を促す

 

「えっ、あっ、はい」

 

その瞬間、大和が長門から離れ長門が艤装を出したと同時にかなり耳障りな衝突音が、金属特有の高周波音が辺りに響く、そして何かを掴む音

 

その音源をただ見つめるしか無い大和、音の発生源となった艦娘が三隻

 

「……なんのつもりだ」

 

自身に向かって投擲された切れ端を掴み取ったまま聞く長門

 

長門に向かって投擲されたソレを自身の近接兵装で切り落とした龍田

 

「流石に白刃取りとはいかなんだ、妾もまだまだよのう」

 

浮遊砲とでも言えばいいのか、独特な兵装を持つ初春は新任の初期艦が長門に向かって投擲した叢雲の近接兵装を浮遊砲で受けようとして盛大な衝突音を発生させた

 

「いきなり艤装を出すからこの子が過剰に反応しただけ、全く、あんなのにいちいち反応してたら幾つ身体があっても足りるわけないでしょう?脅威度を付け優先順位を明確にして確実に処理していかないと、今の貴方では単純な陽動にすら釣り出されて最悪の結果を生じさせてしまう、練度だけ高くても意味が無い」

 

港から普通に声が届くくらいには近い位置に来ている演習中の初期艦二隻、片方は呆れ返っている

 

「……ハッ!あれ?今、私、長門に投げつけ無かった?」

 

もう片方は、漸く事態に理解が追いついた様子

 

「思いっきり全力投擲したわよ、アレはいくら長門でも笑って済ませる範囲を超えてる」

 

「……ちょっと謝りに行って来ても、良い?」

 

「はぁ、貴方の近接兵装なら龍田が刻んだから取りに行くだけ無駄よ」

 

「……刻まれたんですか、アレで」

 

未だに保有者の手で保持されている軽巡の近接兵装を新任の初期艦は凝視している

 

「気をつける事ね、貴方が刻まれない様に」

 

「叢雲よ、そう脅すものではない、龍田とは遠征で共に行動する時間があるのじゃぞ」

 

「フン、この程度が脅しに聞こえて萎縮する様なら話にならない、この場で沈めた方が司令官の為に成るわ」

 

「そんな言い方しないで~、駆逐艦に怖がられるとこっちもやりにくいから~」

 

「全く、反射的に投げたのだろうが、戦艦に駆逐艦の近接兵装など無意味だ、何に対処したかったのか知らんが、演習中に無意味な攻撃を行うなど基本が出来ていない証左だ、大和と共に基本からやり直さねば成らんな」

 

「そこは司令官の所為じゃろ、初期艦研修を途中で切り上げさせておるしの」

 

「……そうだった」

 

初春の突っ込みに長門は納得した

 

 

 

鎮守府-工廠

大本営所属艦:一号の初期艦四/一組の初期艦二/三組の初期艦一

鎮守府所属艦:明石

 

 

港とは少し離れている工廠から演習中の二人とそれを見守る艦娘達を観察している初期艦達

 

「今の視えた?」

 

「視えた、けど、アレに対応するのは厳しいかな」

 

「お二人共ドロップ艦ですからね、鎮守府での建造艦とは違います」

 

「……ドロップ艦だからといって持ち合わせた練度では足らなかった、より高い練度が必要な司令官に着いてしまった結果なのです」

 

「結果が、アレですか、アレは五十鈴達でも厳しいかもしれないね」

 

「……漣は視えなかったんですけど、御姉様方?ホントに視えたんです?」

 

三組の漣が疑問の声を上げた

 

「ざみちゃん、そういう所が、ブッキーにツッコミ入れられる隙になってるんだよ、虚実の見極めは難しいけど、判断に感情を乗せてはいけない」

 

「判断に感情を乗せると、只の願望にしかならない、現実と願望は、全くの別物」

 

「現実を追わずに願望を追いかけても、ズレが酷く成るだけだしね、何処かで方向を修正しないと、如何成るか、自分で試したいのなら、止めないけど?」

 

「……それは如何転んでもたのしい結果にならなそうなので止めときます」

 

一号の初期艦達に総突っ込みされた、一人は言葉など使わずにその眼だけで雄弁に語って来た、流石にこれ以上疑問を重ねるのは藪蛇というモノだ

 

「長門はこの鎮守府での建造艦、それでもアレに対応出来てる、疑問の余地なんて無いからね」

 

一組の漣からも三組の漣にダメ押しが入る、本人は確認の意味合いかもしれないが

 

「やまちゃんとの練度差がスゴイのです」

 

何気なく、一組の電がサラリと呟いた、それを聞いた一号の漣が思わす溜息を吐いた

 

「……言ってくれるな、アレ見て一番衝撃受けてるのはやまちゃんだろうし」

 

「見ているだけでしたからね、反射行動さえ取れなかった」

 

「鈍過ぎるのです、鍛練が足らな過ぎなのです」

 

「見ているというか、音がした方に視線を向けたら全部終わってたって感じかな」

 

一号の初期艦達の感想を聞いた三組の漣も感想を口にする

 

「実戦でそんな状況になったら、大破所か轟沈待った無しですな」

 

それを聞いた一号の漣が深刻そうな顔になった

 

「そうなんだよね、だから司令官はやまちゃんを使おうとしない、困ったものです」

 

「さらに困るのが、やまちゃん自身が高い耐久性に頼るクセがある、まあ、大本営で標的艦としてしか海に出られなかった事もあって、根深いことになってるし」

 

淡々と言う吹雪

 

「……流石に佐伯司令官に同情したくなって来ました」

 

三組の漣の感想が続いた

 

「やまちゃんの消費資材、修復やら砲撃、航行に必要な資材、これらを揃えるだけでも、事だよねぇ」

 

「加えて演習に掛かる資材も必要と、海域維持なんてしてたら資材が足りないね」

 

「鎮守府の本業は海域維持なんですけど」

 

「詰んだね、コレは」

 

「それでも佐伯司令官はなんとかしようと、知恵を絞ってるそうですよ」

 

「……知恵で如何にか成るとも思えないけど」

 

知恵を絞って如何にかしようとしているという佐伯司令官に初期艦達は憐憫の情を寄せた

 

 

 

鎮守府-防波堤

鎮守府所属艦:木曾/阿武隈/筑摩

 

 

港とは少し離れている防波堤から演習中の二人とそれを見守る艦娘達を見守る鎮守府所属艦達

 

「……流石は第一艦隊、ああいうのを見せられたら、文句の言い様が無い」

 

感心しきった様子の軽巡

 

「叢雲ちゃんの投擲も予備挙動なしの全力投擲だった、アレに対応してくるんだから、呆れるわ」

 

感想以上の感情も無くアッサリの軽巡

 

「わざわざ対応しなくても長門なら無傷で済みましたよ?戦艦の装甲はとっても堅いですし」

 

対処が大袈裟だったと言いたげな重巡

 

「わざわざ対応したんだろ、あのコンビは、大和がちゃんと視えているのか半信半疑だったしな」

「視えてないのが丸わかりになっちゃたね」

「それは、大和がというより大本営の方針がそうだった、と聞いていますが」

 

訓練も鍛錬も成されていない建造艦に思う所はある素振りを見せる重巡

 

「それじゃ、ウチで使えないだろう、生半可に知識だけはある建造艦だからタチが悪い」

「その辺りのこっちの方針を決めるって言ってたのは、こういう事?」

「ウチの初期艦は最後まで鎮守府の為に尽くしてくれますね」

 

重巡の言い分に軽巡二人は顔を見合わせていた、大和と同時に演習中の初期艦二隻まで視えている、その視野の範囲は軽巡より確実に広い

 

 

 

鎮守府:近海/港

鎮守府所属艦:最初の初期艦叢雲/新任の初期艦叢雲

鎮守府所属艦:長門/龍田/初春/大和

 

 

何時迄も呆れ返ってばかりもいられないと、最初の初期艦叢雲は気持ちを切り替えに掛かる

 

「さてと、もう時間切れ、サッサと検証して演習を終わらせましょう」

「?」

 

「貴方の方は検証済み、もう一つは私が装備している、撃ちなさい」

「?!」

 

「貴方自身が実証したでしょう?何を躊躇うの?」

「……」

 

「それともこの装備を貴方に渡してもう一度実証する?」

「……」

 

「時間切れだと言っているでしょう、早くなさい」

 

「相手が艦娘では撃てんか?それとも叢雲だから撃てんのか?」

 

初春から突っ込みが入る

 

「いや、撃てって、このまま?こんな至近で?」

 

疑問と困惑と躊躇いを見せる新任の初期艦叢雲

 

「どれ、妾が手本を……」

 

初春が一歩踏み出す前に声が掛かった

 

「演習中です、当事者以外の海域進入は大和が阻止しますが、よろしいか」

 

「……冗談の通じん戦艦じゃのう」

 

いくら建造艦でも相手は戦艦、駆逐艦がこんな至近で威圧されたら堪ったモノではない

 

「思ったほどブレはないのね、これならなんとか成るかな」

 

「龍田さん?何か?」

 

「何も?それよりウチの初期艦が時間切れだって言ってる、叢雲ちゃんにも検証を終えるように言ってくれないかな~」

 

龍田の言い分に従い二人に声を掛ける大和

 

「検証を終えないと大和は演習に介入出来ません、お二人共検証を済ませてください」

 

それを受けて、最初の初期艦叢雲が新任の初期艦叢雲に行動を促す

 

「ほら、判定役もああ言ってる」

「……」

 

それでも迷いを有り在りと見せる新任の初期艦

 

「本当に時間切れなのよ、私が艦娘でいられなくなる、そうなる前に検証を終えて人化処置に入らなければいけない」

「……」

 

「早くなさい」

「……」

 

「撃ちなさい」

「……」

 

「撃て!!」

「!」

 

反射的に撃ってしまった、この距離で外れる訳もなく、ご丁寧に装備している火砲は勿論、魚雷まで撃っていた、完全に気圧された、気合い負けしてしまった

 

「……いくら撃てと言っているからと言うてもだな、あの距離で魚雷まで撃つか?」

 

初春が感想を零す

 

「撃沈というか轟沈でしたね、完全に沈んで行きましたから」

 

「直ぐに浮かんでくるでしょう、明石の技量が確かなら」

 

「新任の初期艦の方はその効果を発揮したのじゃ、心配あるまいて」

 

其々が感想を零す中で海面を見つめていた長門が声を発した

 

「む?艤装は浮かんで来たが、叢雲は何処だ?」

 

「演習終了!これより叢雲さんの捜索に移ります!!」

 

長門の呟きに大和が宣言して直近の海に乗り出した

その宣言を聞いた多数の鎮守府所属艦も海に乗り出し、ちょっとした混乱状態が創出されてしまった

 

「明石を連れてくるわ」

 

海に出る事なくそう呟く龍田

 

「彼奴泳げなかったかの?そこそこ泳げた覚えがあるのじゃが」

 

此方も海に出る事なく呟く初春

 

 

 

鎮守府-工廠

大本営所属艦:一号の初期艦四隻/一組の初期艦二隻/三組の初期艦一隻

鎮守府所属艦:明石/龍田

 

 

港の様子は工廠からも見えた

 

「明石?叢雲が浮かんで来ないんだけど?」

 

「修復はされてる筈ですよ、現に艤装は浮かんで来てるじゃないですか、それよりあの艤装吹雪のでは?叢雲は自分の艤装をどうしたんですか?」

 

「叢雲の艤装はとっくに使えなくなってる、今回の演習は吹雪の艤装を借り出してるんだ」

 

「うーん、そのパターンは想定していないですね、借り物の艤装でも修復はかかる事は今回の演習で分かりましたが、想定外の運用なら事前に言って欲しかった」

 

「想定外?何が想定外なんですか?」

 

「今回の検証に使った装備妖精さんは艦娘の修復と補給を同時に短時間で行います、所要時間の違いはあれどこれと類似の事は珍しい事ではないですし、妖精さんにはいつもの事、今回の検証での想定外とは、艦娘と艤装の妖精さんが一体ではなかったという事、借り物の艤装では一体とは言えません、複数体の修復を同時実行出来る妖精さんは今の所見つかっていません、そこを妖精さんがどう解釈してどう対処したか、当の装備妖精さんは消失していますから結果から推測するしかありませんね」

 

「……つまり、平たく簡単に言うと?」

 

一号の漣から確認が入った

 

「艤装には修復がかかった、あの装備妖精さんは艦娘と一体になっている艤装込みで完全復帰させる特性を持たせた、艦娘は自身の制御下にある人型部分と自身に着いている妖精さんの制御下にある艤装及び兵装部分から成り立っています、その一体を艤装側、妖精さんの制御下のみと解釈していれば、艦娘には修復がかかっていない可能性がありますね」

 

「……叢雲が轟沈した、可能性がある、と?」

 

一号の漣が文字通り眼の色を変えている

 

「私をそんな眼で睨んでも何の解決にもなりませんよ、兎に角、見つける事です、叢雲を」

 

ソレを一向に気にしていない明石は一先ず置いておく、今は明石の言う通り叢雲を見つけないと話にならない

 

「明石は高速修復材を用意して、ざみちゃんはここで記録を続けて、皆んな行くよ」

 

「漣と電は司令官に経過報告をして来ます」

 

一組の二人からの提案を聞いて、一号の漣は忘れかけていた事を思い出した、この二人は五月雨の件で誰からも一線を引いた言動を取る様になってしまっていた、そしてその例外となる司令官がいる事に気が付いた

 

「……お願い」

 

一号の漣は二人にそう言うのが精一杯だった

 

「新設の工廠の方に用意しておきます、その方が人化処置も続けて出来るでしょう」

 

そう言って新設の工廠(第三工廠)に向かった明石に新たな声が掛けられる

 

「叢雲が無事に見つかれば、ね、オハナシ、聞かせてほしいなぁ」

「……用意しながらで良ければ」

 

絶対零度の視線を向けられながら動揺を表に出さない様に努めた明石だが、冷や汗は、止められなかった

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

大本営所属艦:一組の初期艦二

鎮守府所属艦:事務艦

 

 

一組の二人から報告を受けた司令官はこう言った

 

「演習なら明石に任せてある、工廠組に言ってくれ」

 

「叢雲が轟沈して明石の創った装備が機能しなかったかも知れないんですよ?随分と他人事ですね」

 

「明石は私の期待に応えるといった、叢雲は明石の工作艦としての能力を信頼している、何よりアイツの我が儘で始めた演習だ、トラブったからと言ってこちらに持ち込まれても手の打ちようが無い」

 

「このまま叢雲が、司令官の初期艦が見つからなくても、そう言えるのですか?」

 

電の不思議そうな感情を乗せた顔を暫く見ていた司令官が口を開いた

 

「……わかった、着任したばかりだが、働いてもらおう、事務艦、ハチを呼び出してくれ」

 

「わかりました」

 

「ハチ?建造したばかりの潜水艦種の艦娘でしたね」

 

「一号の初期艦が構築した手段の複製型と呼んでいた建造艦娘だ、これまでの建造艦との違いを見ておこう」

 

 

 

鎮守府-港

鎮守府所属艦:長門/初春/伊8

鎮守府:司令官

大本営所属艦:一組の初期艦二

 

 

港に司令官が到着するなり長門に見つかった

 

「ん?提督、心配で見に来たのか?」

 

「心配?何の?……あの様子だと見つかっていないようだな」

 

「ああ、演習終了からだいぶ経つが未だ浮上してこない」

 

「と言う事だ、ハチ、叢雲は沈んでいると思われる、見つけて来てくれ」

 

「了解」

 

短く答えてそのまま海に入るハチ、それを視界に捉えつつ長門が問う

 

「……大丈夫なのか?建造直後の筈だが」

 

「一号の言う所の複製型だ、これまでの建造艦とは違うそうだ」

 

「……確かドロップ艦の真似事までは出来る、という話だったな」

 

「海面に立つのも一苦労なこれまでの建造艦では無い、という謳い文句だ」

 

長門の視界の中でハチと呼ばれている潜水艦種の艦娘は危なげない様子で静かに潜航していった

 

 

それから暫くの時間経過の後ハチが戻って来た

 

「見つけた」

「拾えるだけ拾って工廠へ持ち込んでくれ、あとは明石の仕事になる」

「了解」

 

そう言ったハチは再び潜航して行く

 

「漣、電、明石に伝言を伝えてほしい、工廠を任せるかどうかはこの結果次第だ、と」

 

ハチが浮上して来るのを待つ間、一言も喋らなかった司令官、一組の二人はかける言葉が見つけられなかった

 

「……わかりました」

 

「もう一つ、明石もわかっているとは思うが、反対する者がいるかも知れんから命令しておく、高速修復材は使わないように」

 

「なぜですか?」

 

思わず聞いてしまった電

 

「アレは劇薬だ、効果が大きい分反作用も大きい、今の叢雲では耐えられないだろう」

 

「……そこまで衰弱する、いや、している?演習でアレだけ動けていた叢雲が?」

 

漣は疑問しかないといった感じだ

 

「お前たち初期艦には、分からなかったのか?」

「……漣にはわかりませんでしたけど、電は?」

「そういう感じは受けなかったのです」

 

一組の二人の感想に特に応えるでもなく一言だけ発する司令官

 

「私は仕事に戻る」

 

 

 

鎮守府-港

鎮守府所属艦:長門/初春

大本営所属艦:一組の初期艦二

 

 

港から立ち去る司令官を見送る

 

「割とアッサリでしたね」

 

「人にしてまで側に置きたい初期艦では、なかったのですか?」

 

一組の二人の呟きに長門が応じた

 

「……そこには触れない方が良い、それより明石に伝言を伝えてくれないか」

 

「そうします」

 

一組の初期艦二人が工廠へ向かう

 

「……あやつかなり押さえ込んでおったの」

 

初春が何時もの扇子を広げて口元を隠すポーズを取りながら零す

 

「ああなると色々面倒なんだがな」

 

「轟沈した上に見つからないのじゃから、思考が追いついておらんのやも知れんな」

 

初春の感想は長門には厄介事の材料にしか聞こえなかった

 

 

 

鎮守府-近海

大本営所属艦:一号の初期艦三

~近距離無線~

鎮守府-工廠

大本営所属艦:三組の初期艦一/一号の初期艦一

 

 

大和の演習終了宣言で鎮守府所属艦が近海に乗り出し、一号の初期艦達もそれに続いた

 

「これだけ探しても見つからないなんて」

 

「捜索範囲を広げますか、この湾内で流されるにしてもそうは広範囲にならないでしょうし」

 

漣と五月雨が話している所に工廠に残った三組の漣から無線が入った

 

「御姉様方、聞こえますかー」

 

「ざみちゃん?どうしたの?」

 

「御探しの叢雲なんですが、今明石から回収したから修復にかかるって連絡が入りました」

 

「?明石が回収した?どういう事?」

 

「さあ、そういう連絡があったとしか漣にはわかりません」

 

「誰が見つけたのです?」

 

「さあ、そこまで言って来ませんでした」

 

「……兎に角戻ろう、ざみちゃんの様子からして、無線に乗せにくい話みたいだし」

 

無線に乗せない様に一号の漣が話す

 

「そんな感じですね、この無線一般回線ですし」

 

「ブッキーの艤装は曳航していきましょう」

 

「……この艤装、艦娘が装着しなくても浮くんだね、知らなかったよ」

 

「手持ちの主砲まで浮くのです、兵装は重りだなんて誰が言ったのです?」

 

 

 

鎮守府-工廠

大本営所属艦:一号の初期艦四/三組の初期艦一

 

 

曳航して来た艤装は持ち主に戻された、それから本題を切り出す

 

「で、詳しい話は?」

 

「さっき司令官がハチを連れて来まして、沈んでいるだろうから見つけてこいと、それで見つけて明石に引き渡したみたいですね」

 

「ハチ?」

 

「こちらの新規仕様での建造艦、でしたね」

 

五月雨が確かめる様に言う

 

「そ、司令官がこれまでの建造艦との違いを見たいって言って建造させた潜水艦種の艦娘」

 

「潜水艦種になったのは偶然だろうけど」

 

「新規仕様でも艦種はある程度しか絞れませんし、艦型やら特定の艦娘となると妖精さんの気まぐれとしかいえませんからね、そこは」

 

「……建造直後でも潜航して捜索出来るのか、浮き方からやらないと沈みっぱなしになるこれまでの建造艦の潜水艦種とは違うという事になるね」

 

感心した様な一号の漣

 

「それが分からなくて沈めてしまう士官が後を絶たずに潜水艦種の艦娘って建造数はそれなりなのに着任数が少ないんだよね」

 

「新規仕様の艦娘はこちらの想定通りの技量を持って建造される事が確認出来た、という事でいいんでしょうか」

 

「まあ、そうなんだけど、建造一隻目からソレを実地で試すってのは、どう考えたら良いんだろ?」

 

「私達をそれだけ当てにしているという事では、ないのです?」

 

「……当てに、だったら良いんだけどね」

 

一号の漣には別の見解がある様だ

 

 

 

鎮守府-工廠(第三工廠)

鎮守府所属艦:明石/夕張/北上

 

 

一組の二人から司令官の伝言を伝えられた明石は先の時と違い、動揺を隠しきれていない

 

「夕張、工廠の方は暫くお願いね、司令官の伝言からして、失敗なんてできる状況じゃない」

 

「……それは、そうかも知れないけど、アレを修復?出来るの?」

 

「やるしかない、司令官にただの大口叩きと見做されてしまう、それだけは避けないと」

 

動揺を無理矢理押し込めているのが見て取れる、夕張は何と言ったら良いのか思い付かない様だ

 

「そこまで深刻な状況じゃない、と思う、修復もある程度はかかってるし、ここから全快へ持っていけるか、どうか、出来なかったら……」

 

明石の台詞から可能性はあると判断した夕張は努めて平静を保ちながら声をかけた

 

「はぁ、コレは幾ら何でも私の手には負えない、何か手伝える事があったら言ってね、出来る限り手は貸すから」

 

「ありがとう」

 

修復溶液に浸かる叢雲に向かう明石、それを見送りつつ自身の仕事に戻る夕張

 

「無理じゃない?轟沈したんでしょ、それも至近距離からの砲撃と雷撃で、駆逐艦に耐えられる火力とは思はない、諦めも肝心だと思うけどなぁ」

 

極めて平時のお気楽な声をかけて来る同僚を思わず睨みそうになったが、努めて平静を装い応じる夕張

 

「……ヒマなら、この書類纏めといてくれない?北上」

 

「オオコワイ、そんなに睨まないでよ、夕張だって無理だと、思ってるんでしょ?」

 

思っていても言葉に出す訳にはいかないが、正面の同僚の顔はこちらの内心を見透かすかの様に真剣な表情だった

 

「無理でも、何でも、修復が前提、出来ませんは、通らない」

 

「……演習前にそういう話をしちゃったからね、アレで修復出来ませんって言ったら、そりゃ二度と意見具申なんてさせてもらえないだろうけどさ、無理なもんは無理なんだよ」

 

「……」

 

何か言い返したかったが、何も思い浮かばなかった

 

「さてと、これをまとめるんだっけ?」

 

北上はお気楽な調子に戻っていた

 

 

 

鎮守府-工廠(第一工廠)

鎮守府所属艦:新任の初期艦(叢雲)

大本営所属艦:一号の初期艦四/三組の初期艦一

 

 

至近海域に出ていた艦娘達に帰投が指示され、皆が上陸して来ている

初期艦(叢雲)が工廠に艤装も収納せずに駆け込んで来た

 

「叢雲は?一号の、司令官の叢雲は何処にいるの?」

「……明石が修復中だって」

 

一号の漣が簡潔に答えた

 

「は?!修復中?あの装備で全回復するって、言ってたでしょ!?私の時にはそうだった!なのに、修復中ってどういう事!!」

 

漣の回答に感情的になっている初期艦(叢雲)

 

「想定外、だそうなのです」

「何が、想定外なの?」

 

一号の電の台詞にも何とか冷静さを保とうと努力はしているが、焦りを隠しきれていない

 

「艦娘と艤装が一体ではなかった、艦娘の妖精さんと艤装の妖精さんが別だった、叢雲の艤装は使えなくなっていたから、ブッキーの艤装を借り出しました、それが想定外」

 

一号の五月雨が説明している

 

「は?そんな事、演習前に分かってた事じゃない、何の注意喚起もなかった!」

 

「だから想定外なのです、今回はあの装備の初実装、そして検証が目的、明石は叢雲が自身の艤装を使えなくなっていることを知らなかったのです」

 

説明を電が続けた

 

「……明石は大本営で建造され、私がこの鎮守府に連れてきた、確かにこの鎮守府の事には疎いかも知れない、けど、それなりの期間をこの鎮守府で過ごしている、それに鎮守府の居室だって事務艦と同室、なのに、知らないって、ありえないでしょ?!」

 

頭の中を整理する様に状況を並べるが、起こってしまった事象は変わらない

 

「それがあり得た、結果こうなった、確認不足って事に、なるね」

 

三組の漣の言葉は初期艦(叢雲)に直ぐには理解が及ばなかった

 

「……」

 

血の気が引く、状況に理解が追いついた時、それを実感した、司令官の叢雲を撃沈した

司令官は人にしてまでも自身の叢雲を側に置こうとしている、なのに、その叢雲を撃沈した

何も考えられなかった、ただ、意識が真っ白になっていく、気がした

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:夕張

 

 

工廠組の夕張が執務室に来た

 

「司令官、資材の使用許可をください」

 

「……この演習での資材消費は、無いハズだが?」

 

唐突な工廠組の来訪、そしてこの言い分、嫌な予感しかしない

 

「隠しても仕方ないので、ハッキリ言います、現状で叢雲の修復は不可能です、明石が別方向からのアプローチを試みます、その為の資材使用を許可してください」

 

「……不可能、別方向からのアプローチ、それで、結果は出せるのか?」

 

努めて平静を装う

 

「……確約は、出来ません」

 

夕張の言い様は簡潔だった、余計な一言が加えられていたら、平静ではいられなかったかもしれない

 

「可能性は、あるのか?」

 

「あります、具体的には改装を実行します、改装は改修と違い艦娘の部分強化では無く全体的な底上げ、言い換えれば全体を造り直します、その造り直しが、結果となります」

 

「……そのままでは修復出来ずに造り直す、か、あいつは何処までも手間をかけさせる、許可は出すが、使用量は龍田達と相談してくれ、あの二人が出せないと言ったら、そこまでだ、良いな」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「それと、入渠場は三十時間以内に空けるように、空母種の艦娘の修復予定が入ってる」

 

「……わかりました」

 

事前に可能性として聞いていても実際に報告を受ければ、それなりに揺さ振られる、今回はどうにか平静を保てたが、何度もあれば如何なるかわからない

 

 

 

鎮守府-工廠(第三工廠)

鎮守府所属艦:明石/夕張/北上

 

 

工廠に戻って明石に状況を説明、明石の顔はずっと深刻なままだ

 

「取り敢えず許可はもらった、けど、三十時間以内に空けろってさ、移籍組の修復予定があるからって」

 

「……休んでる時間はないね、夕張、使って悪いけど、資材の調達をお願い」

 

「どのくらい必要?」

 

いつもの明石からは信じ難い程の深刻な表情、事の難易度が窺える

 

「正直わからない、こんな変則的な改装なんて妖精さんからも聞いた事ないからね、可能な限り大量に、余ったら返せば、というか、その後の修復で使えば良いんだし」

 

「はー、あれ?そういえば秋津洲は?もう哨戒終わってるでしょ?」

 

あんまりに深刻な表情の明石を見かねて、別の話題を振ってみる

 

「……司令官に呼ばれて執務室に行った」

 

「入れ違い?」

 

「そんな感じ、なになに、資材の使用許可が出たの?ちょっと多めに貰っておこうよ、私の改装の為に」

 

お気楽な調子の同僚が来た

 

「……」

「……」

 

思わず声が出なかった、あんまりにお気楽な調子に

 

「なにさ」

 

「なら、資材を運ぶのを手伝ってもらえる?北上さん?」

 

もう少し気の利いた言い様はなかったのかと、夕張自身アドリブの弱さを変な所で実感していた

 

 

 

鎮守府-資材管理室

鎮守府所属艦:夕張/北上/天龍/龍田

 

 

夕張が天龍を前に状況を説明、資材の出庫を頼んでいる、が渋い顔をされてしまった

 

「……資材を使わせろって、いわれても、な」

 

「使用許可なら取ってある」

 

執務室で貰った許可書を見せる

 

「使用量が書いてねーぞ」

 

「……そこは天龍と龍田と相談しろって」

 

「?龍田もか、そういえば暫く見かけないな、どこ行った?」

 

「呼んだかしら~、天龍ちゃん」

 

何処にいたのか、龍田が出て来た

 

「ちゃん付けは止めろって、これ、どうするよ」

 

貰ってきた使用許可書を眺める龍田

 

「使用許可が出ているのなら、出すしかないんじゃない?」

 

「使用量はこっちで決めて良いって話なんだと」

 

「あら~、司令官も横着したわね~」

 

「やっぱりそうだよな、コレ」

 

資材管理者としての仕事を増やされた事だけは確定した

 

「それで、改装に掛かる資材消費量は確定出来たのかしら」

 

龍田の質問に『何故、それを知っている?』と声に出しそうになったのを押さえ込んだ夕張

兎も角、話が早くて説明の手間が省けた、そう考えれば疑問を口にしても墓穴になりかねなかったから

 

「出来てない、だから、出来るだけ多く貰いたいんだけど」

 

「……無限に出せっていわれてもな」

 

渋い顔の天龍を何とか説得しようと試みる夕張

 

「対象は駆逐艦、それ程多くは無い、と思う」

 

「新任の初期艦が大本営で入渠した時には小破未満の損傷にも関わらずやまとちゃんが大破した時と比較できるくらいの資材を消費したと聞いたわ、ウチの叢雲の改装にはそれなりに見込んだ方が良いと思うなぁ」

 

その説得は龍田に全否定された、というかナニソレ聞いた事ないんだけど

 

「なんで駆逐艦の入渠であの大戦艦並みの資材を使うの?!そんな資材何処に使うの!?駆逐艦だよ?」

 

思わず突っ込みを入れてしまった

 

「対象は最初の初期艦、私達の様にただのドロップ艦では無いの、妖精さんには特別な艦娘、勿論司令官に取っても、特別、ここは必要なだけ提供した方が……天龍ちゃんはどう思う?」

 

なにやら二人の間に目配せがあり、何事かの判断?決定?がなされた、感じがした

 

「……わかった、但し、使用量はきっちり計量してくれ、あーあ、色々やり直しだぜ、まったく」

 

「ありがとう、天龍ちゃん、じゃあ運び出しましょうか、三人で」

 

北上に視線を向ける龍田

 

「……やっぱり頭数に入れられるよね」

「それで大人しくしてたの?空気になって間が空いたところで抜け出そうと?」

 

龍田の視線を追った夕張が呆れ気味にいう

 

「資材重いし」

「運びましょうね?」

 

龍田が北上にイイ笑顔を向けていた

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:秋津洲/事務艦

 

 

秋津洲は長門が主張していた様に哨戒任務に駆り出されていた

 

「哨戒報告は以上、かも」

 

「……予測通りか、厄介な事になりそうだ、秋津洲には引き続き海域哨戒をしてもらう事になる、当面は工廠の仕事は向こうの二人に割り振って良い、今日はもう休んで明日に備えてほしい」

 

「予測、してた?深海棲艦が集まるのを?どういう事かも?」

 

疑問しか無いという顔の秋津洲

 

「それを明日以降の哨戒結果から確定させる、ウチに着任したばかりだが、協力して貰いたい」

 

「哨戒結果?見つけても戦闘部隊を出撃させないのに?司令官の考えが解らないかも?」

 

「……今は確証が欲しい、結果が出ない事には対応策も定められない、理解して貰いたい」

 

「兎に角、海域哨戒で、深海棲艦を見つければいいかも?」

 

疑問はあるが任務は任務、と思ってくれれば助かるんだが、この艦娘はどう出るか、もう少し言葉を足してみる事にした

 

「今日の報告でしてくれた様に時間、数、方位、距離、出来れば艦種も欲しいが、それをやると観測範囲が狭まるんだったな」

 

「遠くまで見渡すのには高度が必要、艦種を見分けるには低空で飛ばないと、かも」

 

「自衛隊に協力を求められては如何ですか?」

 

事務艦から提案が出た

 

「自衛隊はこちらの行動に合わせて装備品の総点検に入る、らしい、事実上の休業だ、当てにしない方がいい」

 

しかし現実はそう上手く運ばない

 

 

 

鎮守府-工廠(第三工廠)

鎮守府所属艦:秋津洲/北上/夕張/明石

 

 

執務室の件で考え込みながら工廠に戻る秋津洲

 

「うーん?」

「どしたの、かもちゃん?」

 

そこに北上から声が掛かった

 

「司令官が何を考えてるのか、さっぱりかも」

「北上、今は資材を運んで!時間がない!!」

 

何時に無く声を荒げる夕張に違和感を感じながらも北上はいつも通りに淡々としている事から大体の事情を察した

 

「えっと、かもちゃんにも手伝ってもらおうかと……」

 

「……さっき事務艦から連絡があった、秋津洲は当面哨戒任務を優先、工廠の作業は極力割り振らない様にって、秋津洲は明日も一日中哨戒任務でしょう?早く休んで」

 

「哨戒任務を遂行してるのはかもちゃんじゃなくてたいていちゃんでしょ、少しくらいいいじゃん」

 

「二式大艇は秋津洲の兵装、北上の理屈で行くと空母艦娘はただの輸送船になるけど、そう言ってみる?」

 

「止めとくよ、で、かもちゃん?司令官が何を考えてるって?」

 

話が揺り戻されるとは思ってなかった秋津洲

 

「北上?」

 

夕張も同意見だった模様、でも、折角振ってくれたんだしといった感じで話を始める秋津洲

 

「えっと、司令官は今日の演習の状況を予測してた、かも、なんで予測出来たの?それに明日以降の状況も、対策が必要だって言ってた、どういう事かも?」

 

「演習の状況?」

 

北上が聞き返した、状況と云われても鎮守府から見える範囲では秋津洲の言い分が判らない

 

「こっちの哨戒圏ギリギリの所に深海棲艦が集まっていたかも、それもかなりの頻度で入れ替わり立ち替わり、延べ数にしたら三桁はいたかも、多分あの演習が深海棲艦を呼び寄せた、でもなんで演習で深海棲艦が集まるの?深海棲艦が撃破されて空白域が出来たらそこに雪崩れ込む事はあっても艦娘同士の演習が深海棲艦を呼ぶなんて聞いた事ないかも」

 

「それは叢雲が最初の初期艦だから、深海棲艦は最初の初期艦の動向にかなりの敏感に反応する、らしい話は妖精さんから聞いた」

 

突然の解説、何時の間にか明石も話を聞いていた様だ

 

「明石?それはいったい?」

 

明石の話だと耳を傾ける夕張、なんだかなぁ

 

「私も詳しくは知らない、ただ、最初の初期艦は何処の誰に取っても特別な存在、って事、なにしろ妖精さんが手加減なしで詰められるだけ詰め込んだって話だからね最初の初期艦には、途中で盛り過ぎな事に気がついてスケールダウンの為だけに艦種を駆逐艦にしたそうだし」

 

「?」×3

 

明石が何の話をしているのか誰も分かっていない様子

 

「もし、最初の初期艦が戦艦種として造られていたのなら、後の初期艦も戦艦種になる事だし、初期艦だけで深海棲艦を殲滅出来るくらいの戦力になったハズだと、妖精さんが自慢してた、話半分でもスゴイ話よね」

 

伝聞だからなのか他人事として感心した様に話す明石

 

「もしかして、あの海戦に初期艦を参加させなかったのは、それを、知っていたから?万一にも最初の初期艦が戦域で沈む様な事になったら、詰め込まれた手加減なしの妖精さんが海域に放出されるかも、その妖精さんを深海棲艦が取り込んだら、艦娘は……」

 

「数の上で劣勢、更に妖精さんの質まで劣ったら、的くらいにしか、使い道がなくなるね、艦娘は」

 

「楽しい未来図だねぇ」

 

秋津洲が言い出した仮定に夕張の仮定予測、それに感想を付け足す北上

 

「夕張、ちょっと手を借りたいんだけど、誰か工廠に手伝いを呼べないかな」

 

こっちが明石の本題、それで入渠場から出て来たのか

 

「司令官に掛け合ってくる」

 

即答する夕張、なんだろうね、何か運んでたんじゃないのかな

 

「それは秋津洲がやるかも、何人手伝いを呼べばいいかも?」

 

何かを運んでいる二人のお手伝いとばかりに秋津洲が買って出た

 

「じゃあ、かもちゃんはそれ終わったら直ぐに休みなさい、明日も扱き使われるんだから、ね」

 

北上にかもちゃんと呼ばれ続けている秋津洲、少しだけ不満そうな顔を見せたかもかも、では無く秋津洲

 

「出来れば戦艦を、無理なら、七、八人は要る、資材搬入とこっちの改装にも手が欲しい」

 

明石がトンデモナイ無理を言って来た、お陰で不満を忘れてしまった

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:秋津洲/事務艦

 

 

執務室に取って返した秋津洲は明石の本題を司令官に説明した

 

「事務艦、手漉きの者を工廠へ、人選は任せる」

 

「……」

 

不思議そうにしているのを見つかって声を掛けられた

 

「?なんだ」

 

「あっ、何も聞かずに了承してくれるとは、思ってなかったかも」

 

「……ここで話を長引かせても秋津洲の睡眠時間を削るだけだ、サッサと寝て明日に備えてくれ」

 

あれ?こんなに気を使われるって事は、あの哨戒任務ってそんなに重要なのかな

 

 

 

鎮守府-工廠(第三工廠)

鎮守府所属艦:北上/夕張

鎮守府所属艦:長門/大和/初春/皐月/時雨/白雪

 

 

事務艦からの要請を受けた艦娘達が工廠に揃った

 

「手がいるそうだが、何をすれば良いんだ?」

 

「長門に大和に初春、皐月に時雨に白雪か、遠征隊主力は温存ってとこか」

 

「妾の姉妹艦のことかえ?」

 

北上の感想に初春が聞いてる

 

「それと、睦月型と朝潮型、特型からもう少し出せるんじゃない?」

 

「これ以上は資材収集に影響が大きい、この面子で対応するしかないな」

 

北上は手数を増やせると考えているが、そうもいかない事情もある、鎮守府は工廠を運用する為に運営されている訳では無いのだから

 

「わかった、長門と大和は北上と一緒に資材搬入を、駆逐の四人は私と一緒に明石の手伝い、始めに言っておくけど、あんた達、相応の覚悟をしておいて、見るもの聞くもの感じるもの、全てが、あり得ないから」

 

夕張の説明は何やら不穏な気配を感じさせる

 

「なにそれ、そっちの方が面白そう」

「北上!!」

 

「冗談でしょう、そんなにムキになりなさんな、さてと、こっちは資材運びだ、サッサと終わらせちゃいましょう」

 

北上と夕張、随分と状況に対する対応が違う、練度的にはほぼ同じなのに

軽巡としての資質の違いなのだろうか

 

 

 

鎮守府-工廠(第三工廠)入渠場

鎮守府所属艦:明石/夕張/初春/皐月/白雪/時雨

 

 

入渠場内で作業中の明石が入って来た夕張達に気付いた

 

「夕張?手伝いは四人だけ?あと二人欲しいんだけど」

 

「これが資材収集に影響を出さない範囲で出せる最大数だって、長門にクギ刺された、下手に突か無い方がいいと思う」

 

「あと二人は常に要るのかえ?後に回せる工程なら資材運びが終わった二人に来て貰えば済むのでは無いかの」

 

明石の言い分に提案を出している初春

 

「……なるほど、そうしますか、って貴方確か初春、でしたね、駆逐艦達の取り纏め役で司令官が無条件で信認する程にこの鎮守府内での発言力が強いと聞いてます」

 

何か畏まった様子を見せる明石

 

「なんじゃそれは?妾の発言など他の者と何ら変わらんぞ、違いがあるとすれば言う機会を作るか逃すかだけじゃな」

 

「司令官は捕まえるのが一番難しいからね、しょうがない」

 

「そうなったのは、皐月達が司令官の仕事の邪魔をして事務艦を激怒させて追い払われてからですよね、お陰で駆逐艦は任務以外で執務室に行きにくくなってしまったじゃないですか」

 

「えー、皐月達の所為なのー、初雪だって空調が効いてるからって執務室で昼寝してたじゃん、空調なら宿舎にだってあるのに、変な話だよねー」

 

「二人共、そういった話は今度にしよう、今は明石の手伝いをしに来たんだから」

 

「あー、そうやっていっつも良い子振る、時雨ってばそういうの良くないなー」

 

「なっ、良い子ぶってなんか……」

 

早速ガヤガヤ騒ぎ出した駆逐艦達を夕張が纏めに掛かった

 

「ハイハイ、駆逐たち、静かに、取り敢えず手伝って欲しい作業を説明するね」

 

 

 

鎮守府-資材管理室

鎮守府所属艦:天龍/龍田

 

 

資材管理責任者としては頭の痛い状況になってしまった

 

「あー、ごっそり持っていかれた、どうやって回復させよう」

 

「天龍ちゃん、取り敢えず遠征隊のローテーションを考えて見たんだけど、意見をきかせてくれないかなぁ」

 

龍田が出して来たローテ表を見て、少し固まった

 

「……龍田、何気に鬼だな、長老でもここまでの過密シフトは組まなかったぞ」

「長老?」

 

「ああ、大本営で初期の頃建造された天龍、まあ、俺の先任だ」

 

「もしかして、最初の鎮守府の頃に、大本営に改称する前に建造された天龍がいるの?」

 

感心したのか何なのか変なテンションで聞いてくる龍田

 

「言ってなかったっけ?大本営には天龍が三隻着任してる、俺の後にもう一人着任したからな」

 

ソレには取り敢わず無難に返した

 

「ふーん、それで、このローテーションはどうかなぁ」

 

「ここの駆逐艦達の耐久性に疑問が無ければ、良いんじゃないか」

 

「このローテーションはウチの駆逐艦全艦を投入しなければならない、司令官の説得は天龍ちゃんに任せて良いかなぁ」

 

何を言い出しやがるんだ、いくら姉妹艦だからって無茶振りが過ぎる

 

「……駄目に決まってんだろ、それこそ龍田から言った方が司令官も耳を貸すと思うが?」

 

「それは無理な相談ね~、司令官に馬鹿だと思われてしまうから~」

 

「そんな話を俺にさせようとしたのかよ」

 

龍田の考えはイマイチ掴み難い

 

「だから、意見を聞きたいんだけどなぁ、これを実行するに当たって、何か方法はないかなぁ」

 

「……大本営から駆逐艦を借りるとか、イヤでも、向こうも大増設に入ってるし駆逐艦の空きなんてないし、建造して増やすのが確実じゃないかな」

 

「司令官は移籍組が一時的にせよこの鎮守府に所属し艦娘数が増えることを気にしている、ここで建造して所属数を増やすという提案はし辛いのよねぇ」

 

「……移籍組に駆逐艦はいないんだよな」

 

考えは掴み難くとも、隠し事はしないらしいし、何より姉妹艦だ、駆逐艦の面倒を見るよりは気楽で良い

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:長門

 

 

工廠に手伝いに行った長門が途中報告的に執務室に顔を出した

 

「提督、工廠の方はなんとかなりそうだ、明石が言うには改装自体はもう直ぐ終わる、この後大本営の初期艦達に依る人化処置に移る、終了予定は今夜半、明日早朝から予定されている移籍組の修復時間までには入渠場は空く、予定だ」

 

「予定は未定ってヤツだな、修復に時間の掛かる大型艦より小型の空母の修復を第二工廠で出来ないか夕張に確認してくれ、必要なら、初期艦達にも協力を要請して良い」

 

「……あの移籍組の修復は新規設計の第三工廠でなければ出来ない、と聞いたが、無茶が過ぎないか?」

 

「状況が待ってくれそうにない、秋津洲の哨戒結果次第では、備蓄資材を全て戦力化しなければならなくなる、当然、長門には資材が尽きるまで矢面に立ってもらうことになる」

 

「?なんの話だ、それは」

 

「確定出来ていないが、深海棲艦の強襲が予測される、それも可也の規模でだ、現時点での予測でも、正直な所、対処は無理だ、殲滅戦になるだろう、深海棲艦側の、な」

 

「……何を根拠に言っているのか、分からないが、それなら来援を要請したらどうだ」

 

「状況は確定していない、根拠は無いんだ、そして根拠が出来た時には手遅れだ、その時点で来援を要請しても、損害を増やす効果しか無い、こちらに出来ることは予測される被害をどれだけ抑えられるか、そこにしか無い、ウチに展開中の自衛隊の方々をどうやって撤収させようか考え中だよ」

 

「この鎮守府にまで、深海棲艦の砲火が及ぶと?そこまで攻め込まれると、言うのか」

 

「おそらく向こうの狙いは初期艦、それも最初の初期艦達だと思われる、叢雲が派手に動いたからな、可也刺激した様だ」

 

「それは、どういう事だ?」

 

「説明は難しい、妖精さんと話せないモノには判り辛い事案だ、そういうモノだと思ってもらうしか無いな」

 

「そういう言い方は、無いだろう、少しは説明する努力はしてもらいたいものだ」

 

「なら、初期艦達に聞いてくると良い、私が説明するよりは、長門には理解し易く説明してくれるだろうよ」

 

どうやら司令官は長門に説明する気がないらしい

 

 

 

鎮守府-移動指揮所

鎮守府:司令官

自衛隊_鎮守府派遣隊-指揮所:司令官/副官

 

 

指揮所司令官は疑問を口にした

 

「どういう事かな?」

 

こちらの話を取り敢えずは聞いてくれたものの、説明を求めて来た

 

「権限も取り決めもないことは承知していますが、状況が変わりました、そちらへの対応に手間と時間が掛かり尤もらしい口実を作る余裕が無かった、ご理解頂きたい」

 

「無理だな、我々は幕僚会議の結果が出なければ撤収出来ない、この上はハッキリと言ってもらいたい、どう状況が変わったというのか」

 

「証拠や根拠はありませんが、近く深海棲艦の強襲が有ると予測しています、自衛官が鎮守府で殉職する事もないでしょう」

 

殉職、という単語に反応してくれた、自衛官なら誰も望まない事だから敢えて使ったが効果はあった

 

「……この指揮所からも殉職者が出る、そういう状況が目前に迫っていると、鎮守府司令官は言うのか」

 

「可能性の話です、無視出来ないくらいに高い確率で現実化すると、予測しています」

 

「そんな規模の深海棲艦の動きは見つかっていないが?」

 

副官から突っ込みが入る

 

「深海棲艦の行動の全てを自衛隊が把握出来るのなら、艦娘部隊の出る幕は何処にも無くなる事に成りますね」

 

「……司令官の言い分は幕僚会に伝えよう、その上で判断を仰ぐ事になる」

 

「それでは間に合わない、最悪の場合でも人員だけは離脱してもらわないと、こちらの士気に関わる、その準備だけでも出来ませんか」

 

「……そんなに至近で強襲して来る、と言うのか」

 

「そう言えばハワイの南方海域で……」

「?」

 

副官が何か言い出した所で指揮所司令官が言葉を被せてきた

 

「兎も角、各方面と連絡を取り状況把握に努めよう、現時点ではこれが此方から示せる妥協点だ」

 

「施設管理室の方々と憲兵隊も各方面に含めて下さい」

 

「……自衛隊だからと一括りにされても困るんだが」

 

それは知ってる、知ってるがこの際一緒に撤収して貰いたい処

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

自衛隊_憲兵隊:憲兵隊長

 

 

いきなり執務室のドアが開いた、誰かと思ったら憲兵隊長が怒鳴り込んで来た感じだ

 

「司令官!憲兵隊に鎮守府から出て行くように要請したと言うのは本当か?!」

 

「鎮守府で殉職したくはないでしょう?退避をお勧めします」

 

憲兵隊長も自衛官、先程の手を使ってみる

 

「殉職?なんの話だ」

 

「深海棲艦の強襲が予測される、それもかなりの規模で、但し根拠や証拠はまだ無い、それらが出てきた時には手遅れだ、今の内に理由を付けて本部へ移動して下さい」

 

そう言ったら少しだけ考える様な間が空いた

 

「……司令官は鎮守府に残るのだろう?」

 

「艦娘を、部下を盾にするつもりは無い、司令官なんて役職に就いている以上職務放棄するなら部下共々一連托生だ」

 

「待て待て、それなら何故深海棲艦の強襲なんて話が出て来る?何もなければ予測しようがないだろう、その辺りを聞かせて貰いたいんだが」

 

「妖精さんの噂話だ、妖精さんの声が聞けない者には示しようがない」

 

なんだろ、一瞬理解が繋がらないという感じの表情を見せた憲兵隊長

 

「!詳しく話してもらいたい」

 

何かが繋がったらしい

 

「悪いが、話が長すぎる、それを今から隊長に話していたらこちらの体勢が整わなくなってしまう、私に自殺願望は無いし、艦娘を無駄に使い捨てるような真似もしたくない、兎に角、時間と資材が足りないのだ、時間はどうしようもないが資材だけでもなんとかしたい、それにも時間は必要だ、隊長と話していても資材は調達出来ない、ご理解頂きたい」

 

「……では、この話、大本営に通知する事になるが、異論は無いな」

 

「御自由に、憲兵隊の職権に文句を付ける謂れは持ち合わせていない」

 

憲兵隊長が執務室を静かに出て行った

 

 

 

鎮守府-工廠(第三工廠)入渠場

大本営所属艦:一号の初期艦四/一組の初期艦二/三組の初期艦一

 

 

初期艦達が集まって叢雲の人化処置を実施中、実作業と各種観測、記録と分担している

 

「あの話、どう思いますか?」

 

「どの話?」

 

「秋津洲が言ってたっていう、アレ」

 

「ああ、哨戒結果次第では対応策が要るって司令官が言ってたっていう?」

 

「んー、どうなんだろうね、漣にはわからんですな」

 

「秋津洲の話だと、かなりヤバイ状況になりそうって事だったけど、どうなんですかね」

 

「哨戒中に三桁越えの深海棲艦を数えたそうですが、その割に自衛隊が大人しいのですよ、幾ら何でもそこまでの数が居るのなら何らかの行動があると思うのですが」

 

「延べ数って話じゃなかったっけ?」

 

「延べ数であってもそこまで動きがあるのなら、無反応というのは考え難いと思うのです」

 

「まあ、兎に角今は人化処置を済ませてしまいましょう、これが終わらないとコッチも落ち着かないし」

 

「……そうですね」

 

「明石の技量は凄い、妖精さんに並ぶ技量というのを実証してみせた、大本営で変異した妖精さんはいったい何がどうなったんだろうね、妖精さんの艦娘化なんて、聞いた事ない」

 

実作業を担当する一人、一号の漣が感嘆した様な感想を漏らす

 

「妖精さんの艦娘化というより妖精さん自身なのではないですかね、私達艦娘とは構成が違うようにも思えるのです」

 

こちらも実作業を担当する一人、一号の電が感想を述べる

 

「妖精さん自身ね、同質の妖精さんが集まり過ぎた結果、なのかなぁ、よくわからない」

 

「艦娘と不可分な妖精さんは様々な特徴を持っていますからね、その特徴が艦娘を構成し形を成す、ヒトの発生は受精卵の分裂から分化を経て増殖へと進みますが、艦娘の発生は多数の妖精さんが集合して群体状の融合体を経て艦娘と成る、一から多数へ、多数から一へ、発生の工程が逆なんですよね」

 

実作業を担当する一人、一号の五月雨の感想

 

「明石の場合、その多数が同質だった為に多面的な特徴を持たずに妖精さんの特徴がそのまま表面化しているって事、なのかな、よくわかんないね」

 

実作業を担当する一人、一号の吹雪の感想

 

「そういう事なら、給糧艦の二人もそうなのですかね、明石と同じ様に」

 

記録担当の一組の漣の所見

 

「かも知れないし、見当違いかも知れない、わかんないね」

 

「御姉様、さっきからわからないを連呼してますぞ、何を考えてます?」

 

聞かれた一号の漣は少しだけ視線を三組の漣に向けた

 

「……いや、今話す事じゃない、それだけは確か、今は人化処置を済ませよう」

「?」

 

三組の漣は一号の漣の言い分に首を傾げていた

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:事務艦

 

 

執務室で書類相手に奮闘中に事務艦から声が掛かった

 

「司令官、大本営より通知が届きました、確認してください」

 

「……この忙しい時に」

 

内容を確認した所、他の鎮守府が再編成され所属艦娘数の調整を行う事を通知していた

 

「……上部機関の主導ではなく、大本営の介入による再編?数を減らしていた二つの鎮守府を解体、所属艦娘の内希望者を桜智と佐和の所に振り分けるとなっているが、もう少し状況が知りたいな、事務艦、大和を呼び出してくれないか?」

 

「大和は工廠にて手を貸している最中ですが、そちらを中断させますか?」

 

「あー、そっちに回したのか、それが終わってからで良い、大和をここに呼んでくれ、それなら手伝いの結果も聞けるだろうし」

 

この時は気が回らず気付かなかった、鎮守府の解体という事態は司令官の解任と同義である事に

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:大和

 

 

礼儀正しく執務室に入って来た大和、ソレを他人行儀に感じる自分に気が付いた、良く無い傾向だ

 

「大和参りました」

 

そんな感想は取り敢えず脇に置いておき、要件に入る

 

「工廠の方の手伝いお疲れ様、休憩も挟まず悪いが、工廠の方の報告を頼む、その後にもう一仕事して貰いたい、こっちは休憩を挟んでからで良い」

 

「工廠の方と言いますと、叢雲さんの人化処置、でしょうか?」

 

「初期艦達は成功率十割と言っていた、予定通り終わったのか」

 

「大和には確認の手段がありませんが、漣さんの言い分では作業自体は終了しています、まだ後処理があるということでしたが、そう時間はかからないとも言っていました」

 

「そうか、ではもう一仕事頼む、この通知を見てほしい」

 

事務艦を通して渡された通知を流し読みする大和

 

「……鎮守府の再編成、ですか」

 

「そこに書かれている以上の詳細が知りたい、一休みしてからで良いから、大本営に問い合わせて可能な限りの状況を聞き出して貰いたい」

 

「事務艦から問い合わせても、結果は同じだと思いますが、大和に問い合わせをさせる事に何か意味でもあるのですか?」

 

大和にはこちらの指示に疑問符が付いた様だ、ソレ自体は悪くない感じ方だ

 

「……大和は名目上であろうとも、私の秘書艦だ、対外的には事務艦を通すより秘書艦を通した方が良いだろう、何より老提督との接点が事務艦よりもあるしな」

 

「元大本営所属艦娘としてのコネを期待されているのですか」

「不満か?」

 

そっちに捉えてくれたか、それならそれで良いんだ、本題は伏せておこう

 

「いえ、鎮守府所属艦としての正式な秘書艦任務です、全力を持って当たらせて頂きます」

 

ビシッと敬礼してくる大和に苦笑いしそうになるのを堪える

 

「あー、大和は気がついていないかも知れんが、おまえさんの全力はちょっと強過ぎる、相手を威圧しても意味が無い、問い合わせとは詰まる所情報収集だ、相手に喋らせなければ目的は達成出来ない、休憩を入れて落ち着いてから、事に当たって貰いたい」

 

「……わかりました」

 

少し意外そうな顔をされてしまった、こちらの言い分を分かってくれただろうか

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

大本営所属艦:五十鈴

 

 

移籍組の修復作業予定に部分変更を加えた、問題視はされないと思ってたのに乗り込んで来たんですけど、大本営の秘書艦が

 

「第二工廠で移籍組の修復が始まったけど、どういう事なの?」

 

「第三工廠の入渠場が未だ空かない、初期艦達が何かに手間取っている様でね、修復予定は遅延出来ない、夕張の言い分では第二工廠でも修復可能という回答があったから、そうしただけだ」

 

なにかを考え込む様な五十鈴、もしかして工廠組から報告が無かったとか、考えてるのかな

 

「……それにしたって赤城を始め正規空母から修復の予定なのに鳳翔から修復に入っているのはどういう事なの?」

 

場所の変更より順番の変更が問題なのか、移籍組って変に序列があったりするのかな

 

「単純に修復に掛かる手間の問題だ、第二工廠では大型艦は荷が重いと忠告があった、第三工廠が空くのをただ待つより第二工廠で修復可能な艦娘がいるのだからそちらを先に戦力化する事にした」

 

こちらは現状を並べて承知してもらうしかない

 

「戦力化?こう言っては何だけど、軽空母では正規空母の代わりは出来ない、制空権の確保も上空からの撤退支援の牽制攻撃も軽空母の搭載機数ではかなり範囲が狭まってしまう、目的が達成出来ない、何を考えているの?」

 

「……時期にわかる、秋津洲の哨戒結果が来ればな」

 

当初目的からすれば五十鈴の言い分が正しいのだろう、状況が変わっていなければ戦力化を急ぐ必要も無いのだから

 

 

 

鎮守府-工廠(第三工廠)入渠場

大本営所属艦:一号の初期艦四/一組の初期艦二/三組の初期艦一

鎮守府所属艦:明石

 

 

叢雲の人化処置は無事終了した、にも関わらず初期艦達の実作業は終わっていなかった

 

「まったく、何だってこんな苦労をしてるんだか」

 

「ボヤいても始まりませんよ、手を動かして下さいな」

 

「痛っ、こういう細かい作業は苦手何だけど」

 

「そういう分担をしたからには、やってもらわないと、叢雲を素っ裸で司令官に引き合わせるわけにはいかないでしょう」

 

「まさかの誤算だったよね、人化処置で身体が人になると装束が消失するってのは」

 

「考えてみれば艦娘の着衣も妖精さん製作なのですから、当然といえば当然なのです」

 

「はぁ、採寸から裁断の方にすれば良かった、何で縫い合わせなんてやろうと思ったんだか、自分で何を考えてたのかわかんないよ」

 

明石は愚痴を溢し捲る初期艦達に呆れながら聞いてみる

 

「……衣服なんて外で調達して来れば良かったのでは?人の衣服なんていくらでも売ってますよ?」

 

「あー、それは勿論検討したさ、現実問題として、外出許可が出るかどうかわかんないし、そもそも人の社会で通用する通貨を誰も持ってない」

 

一号の漣がアッサリ答えて来た

 

「司令官に話せば解決するのでは?」

 

解決不能な問題には思えず、質問を重ねる明石

 

「司令官に叢雲が素っ裸だから服を買いに行く許可と費用を出せって、誰が言うの」

 

三組の漣から突っ込みが入る

 

「それにこの鎮守府の近辺の地理に詳しくないんですよ、お店はあるんでしょうけど、私達の見かけが幼すぎて衣服を一式買い揃えるだけでも怪しまれる可能性があります」

 

一号の五月雨からも漣の突っ込みを補強する話が出て来た

 

「下手したら通報されて保護名目で拘束されるかも知れないしね」

 

一号の吹雪も五月雨と漣の意見に同意の様子

 

「そういった普通の服は今後いくらでも買い揃えていけばいいんだ、今作ってるのは妖精さん印の皮膜、まあ、艦娘の衣服と同様の生地で作ってる、人に成っても、叢雲が私達の一人である事には変わりが無いからね、人に成った叢雲に私達がしてあげられる事は、どれだけあるのか、もしかしたら無いのかも知れない」

 

一号の漣が手元の作業をしながら言ってきた

 

「こういうのを確か、餞別って言うんでしたっけ?」

 

「お別れするつもりは無いけどね」

 

「でも、人と艦娘、接点がどれだけ保てるのかは、疑問なのです」

 

一組の電の言葉に一号の漣が何か思い出した様な素振りを見せる

 

「……そう言えば叢雲ちゃんが倒れたって聞いたけど、そっちはどうなったの?」

 

「自室に運ばれていましたよ、そのまま安静ではないですかね」

 

応じたのは三組の漣だ

 

「自室?ああ、船の方だっけ、鎮守府の部屋は断ったって言ってたね」

 

「自室に運び込んだのが長良達だったもんだから、ちょっとした騒ぎになってたよ」

 

一号の吹雪が何気なく言った

 

「……それ、司令官に伝わった?」

 

難しい顔を見せる一号の漣

 

「五十鈴が抑えてた、移籍組が随分と質問責めしてたみたいだけどね」

 

いつも通りに呆気なく何事も無かったかの様に答える吹雪

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:秋津洲

 

 

「午前の哨戒報告は以上、かも」

 

「……発見出来ずか、津波の前の引き波って所かな」

 

「単にいつも通りなだけかも」

 

「なら、こちらの準備が無駄になる、いい事だ、午後も引き続き哨戒を頼む」

「……」

 

なにやら複雑な表情の秋津洲

 

 

 

鎮守府-工廠(第三工廠)入渠場

大本営所属艦:五十鈴/一号の初期艦四/一組の初期艦二/三組の初期艦一

 

 

「ちょっと!いつまで占拠してるの!!」

 

慣れない実作業に梃子摺っている所をドヤされてしまった

 

「なんだ、五十鈴か、何を慌ててるの?」

 

「司令官が所属艦娘に戦闘待機を指示した、大本営と他の鎮守府にも通達済み、司令官の予測では二十四時間以内に深海棲艦の大規模強襲がある、と言ってる、これに伴って所属艦で編成された全ての遠征隊に帰還命令が出された、今の備蓄資材から最大戦力をどう引き出すかを検討に入った所、あんた達は大本営に戻る準備を、出来次第直ちに出発して良いそうよ」

 

ドヤしに来ただけではないらしい、司令官からの伝言まで持ってくるとは

 

「……そんな話を聞かされて、大本営に大人しく向かうと、本気で言ってます?」

 

「私は残るよ、五月雨が司令官として認めた司令官が居る鎮守府なんだから、ここは」

 

即決即答の一組の漣

 

「電も残るのです」

 

それに続く一組の電

 

「五月雨は出来ればここにいたいです」

 

抜け駆けする一号の五月雨、残りたいのは五月雨だけではない

 

「……ざみちゃんは戻るでしょ」

 

「残りますよ?大本営に戻った所でやる事ないですし」

 

「……天龍達の大増設の手伝いは?」

 

ダメ元で聞いてみる

 

「アレには初期艦が入っていませんよ、元々じーちゃんの方の補佐があったし」

 

三組の漣は残る気満々だ

 

「全員が残る訳にも行かないよね、仕方ないから私は戻るよ、艤装の調子も確かめたいし」

 

一号の吹雪は大本営に戻るらしい

 

「電も戻ります、一組が残るのなら、電は大本営でお爺さんの補佐をするのです」

 

「はぁ、漣が三人も居たら司令官も大変か、では戻りますかね」

 

一号の電も戻るし、ここは駄々捏ねても仕方ない、一号の漣も大本営に戻る事にした

 

「なら、御姉様、三組のみんなをこっちに来るように言って来れませんかね」

 

三組の漣にお使いを頼まれてしまった

 

「……大本営に居てもやる事がないから?」

 

一応理由を聞いてみる

 

「初期艦は多い方が何かと使えますよ?」

 

「それは、司令官次第じゃないかな」

 

あの司令官に初期艦を使う?遣う?運用が出来るのか、その判断材料を持っているのは未だ入渠場内に立て籠もる元一号の初期艦、叢雲だけだ

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

大本営所属艦:五十鈴

 

 

丁度そこにいたから伝言を頼んだら、反論もなく受けてくれた五十鈴が伝言の結果を持って来た

 

「初期艦達が残る?大本営所属艦娘に残られても困るんだが」

 

「一組の初期艦二人は五月雨の件があったから、一号の五月雨も一組の五月雨の事はずいぶん気にしていたし、それに三組の初期艦が来るって事になった」

 

「……来て、どうするつもりだ?資材の都合上出撃は出来ない、戦力にならないが」

 

「戦力に、というより初期艦として、妖精さんと会話出来る艦娘として、数がいた方が良いと考えた様だったけど?」

 

厄介な事態になりそうな印象だ

 

「一号の、吹雪、電、漣は大本営に向かったのだな」

 

兎も角、確認はしておこう

 

「そう、残ったのが、一号の五月雨、一組の漣と電、それと三組の漣」

 

「その漣が呼んだのか、他の三組の初期艦を」

 

「そういう事」

 

漣ね、一号の漣は何かと策を巡らす印象を初対面の時から持ち続けている、三組の漣、三組の初期艦達は少しは素直さというモノを知ってくれているのだろうか

 

 

 

鎮守府-大会議室

鎮守府所属艦:長門/阿武隈/龍田、以下数隻

鎮守府所属艦:北上

 

 

資材の効率的な戦力化についての検討に何故か顔を出して来ている北上

 

「何を考えているんだろうねぇ、あのシロウト司令官は、なんも見つからないのに戦闘待機とか、正気を疑うんだけど」

 

「……北上、工廠担当の軽巡が行動計画立案に立ち会う必要はない、持ち場に戻れ」

 

最低限の理由を示し退出を指示する長門

 

「言ってくれるね、司令官の話じゃ随分とハデにやり合うそうじゃないか、工廠担当を粗略に扱わない方がイイと思うけどなー」

 

聞き入れるつもりはない様子の北上

 

「ハッキリ言っておく、この鎮守府の第一艦隊旗艦を拝命しているのは私だ、鎮守府内規に於いて第一艦隊旗艦は戦闘行動全般を主導出来る立場にある、もし、これを阻害する艦娘があれば、実力を以ってでも排除する、わかったか」

 

「……長門は本気で深海棲艦の大規模強襲があると、思ってる?」

 

漸く北上は長門の指示に不満な理由を言った、根拠不明な言い分に一言も反論しない長門達に北上は不満があるという事だ

 

「司令官がそう言うのだ、何の余地があるというのか、兎も角、こちらは早急に行動計画を策定しなければならない、時間が無いのだ、持ち場に戻れ」

 

「……了解」

 

大人しく部屋を出て行く北上、それを見送る鎮守府主要艦娘達

 

「気持ちは、分からなくはないんですけどね」

 

阿武隈が感想を言う

 

「私としては北上より、五十鈴達の方が気になるわね~」

 

続けて龍田の感想

 

「五十鈴は兎も角、長良達は鎮守府所属艦娘、という事になっている、問題はない」

 

二人の感想に問題無しとの見解を示す長門

 

「長良達は高練度艦、それも移籍組と同等かそれ以上の練度、戦力になると思うけど、司令官は有効に使う積りがあるのかな~」

 

「龍田さん?分かって言ってますよね、ソレ」

 

龍田の言い分に阿武隈から突っ込みが入る

 

「やっぱり、当初予定通りに司令部要員で出撃不可、そう考えている?」

 

「でなければ、第一艦隊に行動計画の立案を指示しないでしょう、何と言ってもこの限られた資材から最大戦力を引き出せって、無茶振りですし」

 

呆れているのか、諦めているのか、しょうがない感満載の阿武隈

 

「高練度艦でも資材量で行動が制限されたら、戦力の最大化とはならないからな」

 

無い物強請りしてもしょうがないのは、長門も分かっている、私的見解は阿武隈に近い様だ

 

「天龍ちゃんが纏めた資材備蓄量の最新版を貰ってきたから、これを元に話しましょうか」

 

前置きが終わり資材の効率的な戦力化についての検討が始まった

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:事務艦/大和

 

 

諸般諸々の雑事を消化していたら事務艦から声が掛かった

 

「司令官、大本営よりメッセージが届きました」

 

手を止めずに事務艦の声を聞く

 

「読み上げてくれ」

 

「はい、佐伯司令官宛、大本営司令長官発、現時刻に於いて大本営所属初期艦の全てを佐伯司令官の指揮下に委譲する、以上です」

 

思わず止まった手に気付かず顔を上げ、事務艦を見た

 

「……なんだそれは?」

 

「メッセージですが?」

「……」

 

この事務艦、相変わらず私の神経を逆撫ですることを生き甲斐にしているらしい

 

「司令官、宜しいでしょうか?」

 

この間をどう取ったのかは定かではないがいつの間にか執務室に居た大和から言ってきた

 

「大和、問い合わせはどうだった?」

 

事務艦と一緒に執務室に来たらしい大和

 

「はい、鎮守府司令官二名に対し司令官役職契約変更の同意が得られたそうです、もう二名は契約変更を拒否、違約金の受け取りを条件に司令官を退職されたとの事です、今回の再編成はこの件に伴い発生した案件であると確定出来ます」

 

「なに?退職しただと?任期途中でか?」

 

あの鎮守府再編ってそんな事情での実施なのか、それに契約変更なんて話はこっちには来ていない

 

「契約期間内の契約変更は当初に結ばれた契約内容に反します、違約金を受け取り契約を打ち切るか、変更に応じて司令官を続けるかの選択が成されたものと考えられます」

 

そういう事なんだろうが、こちらに影響しそうな事柄を類推してみる

 

「再編成であの二人の所に何人艦娘が移籍したか、わかるか?」

 

そうなると気になるのは再編の具体的な内容になってくる

 

「多くはありません、元々数を減らしていた鎮守府からの移籍ですし、移籍を拒否して解体を希望した所属艦娘も多いと聞きました」

 

「桜智司令官の下に七隻、佐和司令官の下に八隻、と聞いています、ただ、移籍先の鎮守府に戸惑っている様で其々の司令官が鎮守府に馴染める様に苦心しているとも聞いています」

 

事務艦から補足説明が入った、ここで大和の情報収集に不足が有る事を指摘してもしょうがない

 

「ナルホド、それではこちらの事情を説明しても今以上の支援は期待出来ないか、寧ろ資材供給を止めた方が被害低減になる、か?」

 

「それは出来ません、資材備蓄量は予測される事態に対し不足しています、この上更に資材量を減らしたら十分な反撃すら出来なくなります、当初から深海棲艦の的に成るだけの行動計画なら策定するだけ労力の無駄と判断します」

 

事務艦の指摘は正しい、正しいがこちらの行動目的は予測される被害を可能な限り抑制する事にある

 

「尤もだ、だが、資材供給に来た他所の遠征隊に被害が及ぶのは避けなければならない、ならないが、ウチの所属艦娘だけでは数の上で対応仕切れ無い、何か手はないか?」

 

二人の艦娘に意見を聞いた

 

「……長良さんに話をしてみては如何でしょうか?」

 

大和から提案が出された

 

「長良に?司令部要員で出撃不可なんだが、どういう考えか、聞かせて貰いたい」

 

大和の提案に理解が及ばなかったので詳細を聞く

 

「長良さんをはじめ司令部要員となっている方は其々で資材生成可能な妖精さんを保有しています、資材を運んで来る遠征隊の護衛なら航路も限られますし、資材消費量も予測可能だと思われます」

 

そういう考えか、無茶振りではあるが、実現不能ではなさそうだ

 

「成る程、自前でその辺りの調整が出来るだけの練度はあるな、事務艦、長良を呼んでくれ」

 

ただ、大和の提案通りに都合良く行くかどうかは本人に聞かないとわからない

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:長良/事務艦/大和

 

 

事務艦の呼び出しを受けて執務室に長良が来た

 

「お呼びでしょうか?」

 

「幾つか確認したい事がある、まず、資材生成可能な妖精さんが着いていると言っていたな」

 

急な呼び出しと今の確認で悪い予測でも立ったのか、僅かに表情を暗くした

 

「それがなにか?」

 

「その生成量のみでどの位の行動が可能か?」

 

「連続した戦闘行動は出来ません、航行に支障のない程度、経済船速での移動が出来る程度です」

 

表情を暗くしたままだが、そこに構っていられない、状況は既に動いている

 

「……かなり厳しいな」

 

「深海棲艦の強襲に対して無補給での戦闘行動の継続を求められても、無理です」

 

私の零した感想に長良が即答して来た、どうやら対応する状況に誤解というか勘違いがある様だ

 

「其方への対応ではありません、合同計画による資材供給、その実務を担う他の鎮守府所属艦娘への対応です」

 

事務艦から説明が入った、それを聞いて長良の表情が戻った

 

「護衛、任務ですか?」

 

「航路は限られるし、あの二人の所から来る遠征隊はソコソコの練度がある、先導や回避誘導、出来れば遠征隊が戦域を離脱する迄の遅延戦闘、……並べてみると確かに求め過ぎか」

 

改めて言葉にしてみると確かに表情を暗くするだけの無茶振りを言ってると再認識せざるを得ない

 

「遅延戦闘は空母艦載機による牽制攻撃で行うのでは?」

 

長良から尤もな質問が来た

 

「その予定だったが、深海棲艦の大規模強襲を前に資材を移籍組の修復に割り当てられなくなった、現時点で修復を終え戦力化出来そうなのは軽空母三隻のみ、五十鈴の言い分では鎮守府周辺の制空権確保すら危うい、と見立てている」

 

「誰です?修復が終わってるのは」

 

「確か、鳳翔と龍驤、後一人が修復中、だったかな?」

 

報告は受けているが、修復に問題無しの部分意外は記憶の何処かに埋もれている

 

「龍驤をこちらへ貸してください、それで戦闘行動を極力避け、誘導や先導のみに出来ると思います、それなら私達に着いている妖精さんの生成する資材量で賄える、司令官の望む状況に近い筈です」

 

どうやら長良はこちらの無茶振りに応じてくれる様だ、しかしその提案には問題がある

 

「龍驤が長良達と同じ条件なら、そうかも知れん」

 

「その案ですと龍驤への補給が必要になりますが」

 

事務艦が問題点を指摘した

 

「遠征隊の航路付近に資材採掘地はありませんか?」

 

長良はその解決策を考えついていたらしい

 

「……龍驤の補給は自力でやらせると?」

 

「それしかないでしょう、遠征隊が運んで来る資材は生命線、途絶えたらこの鎮守府所属艦娘は只の的になってしまう」

 

「そうなると鎮守府周辺の制空権確保が不可能になります、三隻でも危ういと見込まれているのです、鎮守府と呼称されていても軍事施設ではありません、深海棲艦の攻撃に対し何らかの攻撃手段は勿論防御施設すらないんですよ、襲撃されれば司令官にまで砲火が及んでしまいます」

 

「それは考慮しなくていい、軽空母には工廠を確保してもう予定だ、資材があっても工廠が破壊されたらどうにもならん」

 

問題点を指摘する事務艦に問題点の訂正を求める

 

「司令官が深海棲艦の砲火に倒れるような事があれば、鎮守府所属艦娘は戦う意義を失います、そうなれば、的にしかなりませんが、それでも考慮しなくて良いと、お考えなのですか?」

 

事務艦は問題点の訂正に異議があるらしい

 

「長門がいる、それに人になったとはいえ叢雲もいるし初期艦も着任している、継戦は可能だろう、この鎮守府に代替の効かない立場のモノなど居らんよ」

 

「……」

「……」

 

艦娘が二人ともなんとも云えない表情を見せていた

 

 

 

 

 







場所-殆ど鎮守府の何処か、断りの無い鎮守府表記の場合は佐伯司令官の鎮守府
所属:登場人物/登場艦娘 等

~近距離無線~等は通話、交信

上記の書き方が基本となっています、同じ所属が複数行になっている場合は行動単位


工廠組〔明石、夕張、北上、秋津洲〕

移籍組〔修復待ちの高練度艦娘、以前の大規模海戦の帰還艦娘、現在の代表は五十鈴〕

長良達〔以前の大規模海戦の帰還艦娘、移籍組が回収されての帰還に対し自力で帰還している〕



以下本編中の書き出し



鎮守府-近海(鎮守府至近)
鎮守府所属艦:最初の初期艦叢雲(一号の叢雲)/新任の初期艦叢雲(研修を受けていた叢雲)


鎮守府-港
鎮守府所属艦:長門/龍田/初春/大和


鎮守府-工廠
大本営所属艦:一号の初期艦四(漣、電、吹雪、五月雨)/一組の初期艦二(漣、電)/三組の初期艦一(漣)
鎮守府所属艦:明石


鎮守府-防波堤
鎮守府所属艦:木曾/阿武隈/筑摩


鎮守府-近海(鎮守府至近)
鎮守府所属艦:最初の初期艦叢雲(一号の叢雲)/新任の初期艦叢雲(研修を受けていた叢雲)


鎮守府-港/近海(鎮守府至近)
鎮守府所属艦:長門/龍田/初春/大和
鎮守府所属艦:最初の初期艦叢雲(一号の叢雲)/新任の初期艦叢雲(研修を受けていた叢雲)


鎮守府-工廠
大本営所属艦:一号の初期艦四(漣、電、吹雪、五月雨)/一組の初期艦二(漣、電)/三組の初期艦一(漣)
鎮守府所属艦:明石


鎮守府-防波堤
鎮守府所属艦:木曾/阿武隈/筑摩


鎮守府:近海/港
鎮守府所属艦:最初の初期艦叢雲(一号の叢雲)/新任の初期艦叢雲(研修を受けていた叢雲)
鎮守府所属艦:長門/龍田/初春/大和


鎮守府-工廠
大本営所属艦:一号の初期艦四(漣、電、吹雪、五月雨)/一組の初期艦二(漣、電)/三組の初期艦一(漣)
鎮守府所属艦:明石/龍田


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
大本営所属艦:一組の初期艦二(漣、電)
鎮守府所属艦:事務艦


鎮守府-港
鎮守府所属艦:長門/初春/伊8
鎮守府:司令官
大本営所属艦:一組の初期艦二(漣、電)


鎮守府-港
鎮守府所属艦:長門/初春
大本営所属艦:一組の初期艦二(漣、電)


鎮守府-近海
大本営所属艦:一号の初期艦三(漣、電、五月雨)
~近距離無線~
鎮守府-工廠
大本営所属艦:三組の初期艦一(漣)/一号の初期艦一(吹雪)


鎮守府-工廠
大本営所属艦:一号の初期艦四(漣、電、吹雪、五月雨)/三組の初期艦一(漣)


鎮守府-工廠(第三工廠)
鎮守府所属艦:明石/夕張/北上


鎮守府-工廠(第一工廠)
鎮守府所属艦:新任の初期艦(叢雲)
大本営所属艦:一号の初期艦四(漣、電、吹雪、五月雨)/三組の初期艦一(漣)


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:夕張


鎮守府-工廠(第三工廠)
鎮守府所属艦:明石/夕張


鎮守府-資材管理室
鎮守府所属艦:夕張/北上/天龍/龍田


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:秋津洲/事務艦


鎮守府-工廠(第三工廠)
鎮守府所属艦:秋津洲/北上/夕張/明石


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:秋津洲/事務艦


鎮守府-工廠(第三工廠)
鎮守府所属艦:北上/夕張
鎮守府所属艦:長門/大和/初春/皐月/時雨/白雪


鎮守府-工廠(第三工廠)入渠場
鎮守府所属艦:明石/夕張/初春/皐月/白雪/時雨


鎮守府-移動指揮所
鎮守府:司令官
自衛隊_鎮守府派遣隊-指揮所:司令官/副官


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
自衛隊_憲兵隊:憲兵隊長


鎮守府-工廠(第三工廠)入渠場
大本営所属艦:一号の初期艦四(漣、電、吹雪、五月雨)/一組の初期艦二(漣、電)/三組の初期艦一(漣)


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:大和


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
大本営所属艦:五十鈴


鎮守府-工廠(第三工廠)入渠場
大本営所属艦:一号の初期艦四(漣、電、吹雪、五月雨)/一組の初期艦二(漣、電)/三組の初期艦一(漣)
鎮守府所属艦:明石


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:秋津洲


鎮守府-工廠(第三工廠)入渠場
大本営所属艦:五十鈴/一号の初期艦四(漣、電、吹雪、五月雨)/一組の初期艦二(漣、電)/三組の初期艦一(漣)


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
大本営所属艦:五十鈴


鎮守府-大会議室
鎮守府所属艦:長門/阿武隈/龍田、以下数隻
鎮守府所属艦:北上


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦/大和


鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:長良/事務艦/大和



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