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・苦行用です
・長いです
ご承知頂きたく存じます
鎮守府-近海~防衛線(航行中)
鎮守府所属艦:龍田艦隊_龍田/初春/子日/若葉/初霜
鎮守府所属艦:叢雲(初期艦)
長門等の位置からそれなりに距離が空いた
それを待っていたかの様に初春が溜息混じりに吐き捨てる
「全く、こんなもの作戦とは云えん、破れ被れというのじゃぞ、彼奴の我が儘にも困ったものよ」
「そんな事言いながら、反論もしないで参加を決めたよね、初春は」
今更そんな事を言い出した一番艦に突っ込む子日
「当たり前じゃ、彼奴の我が儘に付き合える粋狂な艦娘など数える程しかおらん、妾が付き合ってやらず誰が付き合うというのじゃ」
「ハイハイ、その我が儘に姉妹艦を付き合わせる一番艦の言い分は聞き飽きたから、その先は省略して良いよ」
「……初霜?何処かで悪い虫にでも噛まれおったか?」
思い掛けず入った突っ込みに初春が戸惑い気味だ
「いいえ、偶には言っておかないと、と思っただけですが?」
機嫌を損ねているのでは無い事だけは分かった、ただの緊張解しの軽口らしい
「皆んなよく聞いて、今、北上を軸に左翼を神通、時雨、右翼を木曾、皐月が支えてる、右翼が押され気味だけど、突貫するなら、どこが良いかしら?」
姉妹艦達の緊張解しが一息ついた所で龍田から呼び掛けられた
「進路は初期艦にって話じゃなかった?」
「叢雲ちゃんは最後尾、ここからだと話し難いんだけど」
「……無線は傍受の危険があるからの、お?どこでも良いらしい、兎に角正面の雑魚を突破しないと成らんのは、違いないそうじゃ」
子日と若葉が中継した様子で話が通った初期艦が前方を指し示していた
「雑魚、ね」
初春の姉妹艦達は状況に応じてよく動いてくれる、初春が無茶振りするのも頷ける
それはそれとして、あの包囲網の数を雑魚の一言で済ませられても、旗艦としては困る所
「なら、中央突破だね、そこから北上が圧迫すれば分断まで持ち込めるかも知れないし」
困っていたら子日から大胆過ぎる提案が出て来た
「それが良いだろう、僅かな資料に因れば、向こうの指揮艦は中央から右翼方面に感知されている、数時間前の位置情報だがな」
若葉が子日の提案に同意して来た、見渡せば初春達はそのつもりでいる
確かに、獲物に接触するにはあの包囲網を相手にしなければならない、獲物はその背後にいるのだから
ここで突貫するルートを何処にするか、そこに拘る必要も無かった
「じゃあ、北上の左舷を抜けて、突貫しましょうか、全艦全速」
艦隊の先頭を進む龍田は近接兵装を持ち直した
鎮守府-近海(雷撃位置=支援砲撃位置~防衛線の中間)
鎮守府所属艦:木曾艦隊_木曾/北上/皐月/神通/時雨
大和が砲撃不能になる事を見越して包囲網に接近、雷撃による防衛線維持の為に深海棲艦との距離を詰めていた
「クッソタレ、こいつら何時迄湧き出して来やがるんだ、補給があっても切りが無さ過ぎる!」
統制雷撃の煩わしさからは解放されたものの、雷撃目標が多過ぎた
ここで好き勝手に雷撃していたら防衛線が崩れる
結果、目標選定と優先順位の割り振りに忙殺された北上はとても機嫌が悪い
「北上!後方から第二艦隊が突貫して来る!左舷を抜けるって言ってるから、注意しろ!」
北上の機嫌など御構い無しの木曾が大声で注意喚起して来た
「はぁ?第二艦隊?」
散発的に降ってくる砲弾に回避行動を入れつつ、注意内容を確認しようとそちらに目を向けた
「北上!正面を確認して!後ろを振り返ったら砲弾の雨を避けられない!」
それを目敏く見つけた神通から別口の注意喚起が飛んで来た
「ったく、お節介な軽巡もいたもんだ、あんな撃ってるだけの砲撃なんて当たりっこないんだよ」
機嫌の悪い北上には無用の注意にしか聞こえていなかったらしい
「見えていれば、の話でしょう?お節介で悪かったですね」
それを感じ取った神通が不快感を言葉に乗せた
これを聞いた北上が一言で応じた
「オオコワイ……!!」
その瞬間、北上の左舷を高速で過ぎ去る六隻の艦娘達、その艦列は包囲網に向かって行った
「……六隻?第二艦隊は龍田と初春型四隻、誰が編成されたんだろ」
遠目に見えた龍田艦隊に少しだけ疑問を持つ時雨
鎮守府-近海(支援砲撃位置)
鎮守府所属艦:長門/加古/筑摩
大和が駆逐艦達と共に鎮守府に帰って行った、少しだけソレを見送ってから長門は行動指示を出す
「筑摩、加古、北上達のフォローに回ってくれ、元々私の砲身交換の時間稼ぎだ、撤収させたい」
「このタイミングで撤収?補給を受けたばかりだ、使い切らせてやった方が良くね?」
「長門もここで単艦行動になってしまいますよ?」
両者共に異論がある様だが、木曾艦隊の中で神通と時雨は行動時間が長時間に及んでいる
長門としては撤収させたかった
「単艦行動でも弾着確認用の観測機がある、支援砲撃なら問題ない」
筑摩の異論に答える事で加古の異論には否を示し、木曾艦隊の撤収を促した
鎮守府-近海(防衛線超え=深海棲艦包囲網突貫中)
鎮守府所属艦:龍田艦隊_龍田/初春/子日/若葉/初霜
鎮守府所属艦:叢雲(初期艦)
この数の中で船速は落とせない、落としたら囲まれるだけだ
先頭を進む龍田が深海棲艦の隙間を縫って包囲網を抜けて行く、それに続く駆逐艦達
「皆、着いて来てる?」
「心配無用、妾の姉妹艦ぞ、突っ切るだけの突貫で遅れる等あり得んわ」
「……姉妹艦じゃないのが、いるでしょう?」
初春の姉妹艦は問題ない、それは判る、これまでも幾度となく艦隊を組んだ事があるのだから
問題は新任の初期艦だ、着任したばかりなのだから
尤も、司令官は初期艦を艦隊に編成しなかった、編成したら旗艦が負わなければならない、この破れ被れの作戦の総てを、現地指揮権者として
「初霜が面倒を見ておる、心置き無く前進せい!」
「それにしても、気持ち悪い深海棲艦だね、何時も見れば撃ってくるのに、避けるだけで全然撃ってこない」
「司令官が言ってた、数はブラフだって、対応させて手数を掛けさせたいだけだってね」
「それは、聞いたけど、やっぱり気持ち悪い」
鎮守府-近海(雷撃位置=支援砲撃位置~防衛線の中間)
鎮守府所属艦:木曾艦隊_木曾/北上/皐月/神通/時雨
鎮守府所属艦:加古/筑摩
長門の方針を木曾艦隊に伝える加古、それに真っ先に北上が噛み付いて来た
「はぁ?撤収しろ?!何寝言言ってんの!?これからでしょ!面白くなるのは!!あたしは第二艦隊の開けた進路に突入して、奴らを分断する、アンタラも長門と呼応して殲滅戦に移ったら?」
「なんて予想通りの言い分、気持ちは分かるが、数が多過ぎる、駆逐艦や軽巡の資材保有量では途中で尽きる、そうなったら、どうする気だ?」
「補給を寄越せ!」
「無理を言うな、この数の向こうに補給隊が回れるわけないだろ、兵装を積めば補給の為の資材を持ってこれない」
「ふーん、回れる道を、作れば、文句ないだろ、重巡さんよぉ」
「はぁ、コレだよ、如何して球磨型ってのはこうも好戦的で血の気が多いのか」
「おい、加古、ソレと一緒にすんな」
加古の呆れ返った感想に木曾が不快を示した
「ですが、北上の言い分は尤もです、ここまで来て撤収は納得出来ません、再編されたとはいえ私は第一艦隊に編成された軽巡洋艦、資材が尽きてもいないのに、敵前から退くなど、何の為の水雷戦隊ですか」
「……球磨型だけじゃなかったか」
もう一隻の軽巡の言い分に加古は頭を抱えた
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦/大和
軽巡達と長門の方針との乖離はすぐさま事務艦に電達され、司令官に報告された
「司令官、前線での艦隊再編成で意見対立があり、戦線が押されています」
「余裕だな、あの数を目前にして内輪揉めとは」
事務艦の報告を聞いてこちらの想定が外れていない事を確信、それと同時に戦線を維持している軽巡達もある程度はソコが判っている事にも感心してしまった
「感心している場合ではありません」
余裕を見せ過ぎたのか、事務艦に若干睨まれてしまった
「だが、あの正面の数がブラフだと証明されたな、真面に砲雷撃してくる何時もの深海棲艦なら、あの距離で内輪揉めなんてしてたら、瞬殺されてる」
睨む必要はない事を説明した、説明自体には異論はない様子の事務艦
「……それは、そうかも知れませんが」
こちらとしては睨まれたから説明しただけだ
「前線から時雨と皐月を退かせ長門の周辺警戒に当たらせろ、北上、神通、木曾、加古、筑摩で艦隊を編成、筑摩に旗艦を任せる、目標は戦線の維持、出来そうになければ、鎮守府に帰投、判断は旗艦に委ねる」
「伝達します」
そう言って事務艦は通信室に行った
そこで問題となるもう一人、鎮守府に帰ってくるなり執務室に来て何も言わずに後ろに控えている大和に声を掛けた
「……大和、長門から何を言われたのか知らんが、私はここに居る、休んでこい、今回の様な長時間砲撃は初めてだろ?そんなに憑かれた顔を魅せられても困るしな」
正直、今の大和はちょっと怖い、なにか思い詰め過ぎている様子がハッキリと分かる
「司令官は、退避なさらないのですか?現時点では戦線を維持出来ていますが、何かの拍子に崩壊するかも知れません、そうなれば、この鎮守府にまで砲火が届く事になります、大和に出来ることは、そうなった時、司令官の盾になるくらいです、大和型戦艦の装甲はとても頑丈です、主砲の撃てなくなった戦艦の使い道はこのくらいしかありません、司令官が退避しないと云われるのなら、大和がお守りします」
長門が何を言ったのかは想像出来た、しかしソレはソレ、コレはコレだ
「……だからな、そうなるにしても今すぐじゃない、大和が一休みするくらいの時間はあるだろう、休んでこい」
そんな遣り取りをしていたら事務艦が戻って来た
「司令官、前線の艦隊再編が実行されました、北上が攻勢に転じ正面の数の分断を企図している様です、危険では?命令があれば止めさせますが」
「旗艦は任命した、現地の判断に委ねるよ、こんな所からアレコレ言っても良い事はない」
事務艦は懸念を示したが、現地指揮者は旗艦だ
鎮守府-近海(雷撃位置=支援砲撃位置~防衛線の中間)
鎮守府所属艦:筑摩艦隊_分艦隊_加古/筑摩
「筑摩って時々すっごく好戦的になるよね」
北上の提案を支持した筑摩に加古はある意味感心していた
「そうですか?北上の提案は戦術的に理に適っていると思いますが」
そういって来る筑摩の考えは加古には判らない、あの包囲網を前に戦術論?
その前に単純明解な数の論理じゃないのかな
「……それが実行可能なら、良いんだけどな」
数の論理は単純過ぎて覆す方法が無いのだから
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦
事務艦からも諭され、大和が執務室を後にしていた
なんであんな顔をするのか、長時間砲撃していたんだから休む様にと言っているだけなんだけど
資材残量の問題で入渠させてやれない辺りで情け無い司令官だと、見做されてしまったのだろうか
「補給をどう致しますか?北上が正面突破を企図している以上、補給を続けなければ軽巡が資材を使い果して行動不能になるのは時間の問題です」
ウチの優秀な事務艦が現状の問題点を指摘し対処を聞いて来た
「何とか続けるしかないな、天龍からは既に回復不能域まで資材が減ったと、報告があった、大規模増設計画を気にして資材を出し惜しみしても、意味が無いって状況だ」
「単に補給隊を出した所で、あの数を如何にかしませんと補給を必要とする艦隊に辿り着けません、対策はありませんか?」
「……こっちには、無いな、旗艦に何か考えがあるんじゃないかな」
対策と云われても無いものは無かった
鎮守府-近海(雷撃位置から防衛線へ進行中)
鎮守府所属艦:筑摩艦隊_分艦隊_北上/木曾/神通
筑摩に旗艦が移ったら中央突破が支持され、実行する事となった
「補給は受けた、第二艦隊が道を開いた、あたしらはその道を押し拡げ奴らを分断する、この広げた道が補給路になるって訳だ、そこまで出来ないと、敵中に孤立した挙句に資材枯渇で行動不能になる、文句があるなら、戻って良いよ、あたし一人で行くから」
確認の意味で二人の軽巡に言う北上
「冗談が言える余裕があるのは良い事だ、文句は大量にあるが、後にしよう、北上だけに良い格好されるのは癪だからな」
加古には一緒にするなと言ったものの大群相手に立ち回れる機会を逃す気は全くない木曾
「お話は終わりましたか?では、突入しましょう」
落ち着いているのか、先陣を切りたくて待ち切れないのか、どちらとも取れる雰囲気の神通
北上は予想以上に血の気の多い軽巡達に幾らかの警戒感を覚えていた
「……あたしが先頭、木曾が左舷を、神通が右舷、出来るだけ正三角形になる様に艦列を維持しつつ、強速で進撃する」
この鎮守府では今回が初陣の北上、前回はあの海戦だ、アレを繰り返すわけには行かない、今度は上手くヤれる、北上はそのつもりだ
「後方から重巡二隻の支援砲撃があります、無闇な進路変更は却って危険です、注意を」
艦列を整えながら神通からの注意喚起
「艦列を維持すれば良いんだろ、全く、こんな状況で神通と戦列を組む事に成るとは、夢にも思ってもなかった」
それに応じる木曾
「愉しい突入になりそうで、ワクワクします」
ホントに楽しそうな声が聞こえた
「では、突入、全艦強速!」
軽巡二人が位置に着いた事を確認した北上は深海棲艦の成す包囲網と云う壁に突入を開始した
鎮守府-近海(雷撃位置=支援砲撃位置~防衛線の中間)
鎮守府所属艦:筑摩艦隊_分艦隊_筑摩/加古
「ホントに突入してったよ、なんて血の気の多い軽巡共だ」
軽巡達を目視と観測機からの観測と、両方で追いつつ、感心した様な呆れた様な感じの加古
「では、此方も砲撃を始めましょう、長門にも砲撃支援を要請します」
手筈通りに軽巡達の予定進路沿いに砲撃を開始する筑摩
「……第二艦隊の援護に成れば、司令官の想定する状況に近付くとはいえ、この数を中央突破だけで抑えられるのかね、どこか一部でも鎮守府への直接攻撃を目論まれたら手数が違い過ぎるんだが」
加古も筑摩同様に砲撃しながらも、数の論理、言い換えれば数の暴力への不安は強くなって行く一方だった
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:秋津洲
「司令官、報告かも」
静かに掛けられた声にそちらを見るといつの間にか秋津洲が前にいた、雑務処理に追われていて来た事に気がつかなかった
「秋津洲か、何を見つけた?」
手を止め、秋津洲の報告を待つ
「取り立てて新しいモノは見つかってない、菊月達が言っていた大型艦も見つけられないかも、ただ、探索範囲を広げた結果、長良達の無線を拾った、それによると現在他所の鎮守府からの遠征隊は目前の深海棲艦の数に手出し出来ずに引き返してる
遠征隊航路の安全確保を目的としている長良達は鎮守府への帰還を企図したけど、同じく深海棲艦の数に手出しを躊躇っている状況
何らかの手を打てれば長良達と呼応して正面の深海棲艦の包囲を破れるかも」
「……暫く躊躇っていて貰うしかないな、此方の手数は出し切っている、他の鎮守府からの遠征隊が引き返してると言ったな」
「言ったかも」
「この状況を聞いて、動く司令官が、居てくれると助かるんだが、無理だろうな」
「……」
何か言いた気な秋津洲、それを待たずに続けた
「秋津洲は引き続き哨戒を継続、何か見つけたら教えて欲しい」
「わかった、かも」
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:大和/鳳翔/祥鳳/隼鷹
司令官と事務艦に休む様に云われ、執務室を後にした大和
そんな大和だが休む気になれず、当てもなく鎮守府内を散歩?していた
「どうしたよ、そんなに不景気な面下げて、天下の大戦艦が下げて良い面じゃないだろ」
工廠に来た所で声をかけられた、見れば軽空母達だ
「……空母の皆さんは変わりないですか?航空警戒を下令されていると聞いていますが」
「今の所深海棲艦の飛翔体は見つけていません、ですが、司令官が警戒している以上、何れ、大群が押し寄せるでしょう、先手を取り損ねる訳には行きません」
「あれだけの数がいて未だに飛翔体が全く飛んで来ない状況も、不気味過ぎるんですよ、前の海戦では有り得ない数を相手にしてますから」
「……あの時は、数で押し負けたんだ、出撃した飛行隊の十倍の数を撃墜したのに、数で押し切られた、補給があれば、違ったのにな」
鳳翔、祥鳳、隼鷹、其々に警戒態勢を整えている
発艦数こそ多くはなく警戒の域を出てはいないが、即応態勢なのが分かる
「補給が追いつく様な、戦場ではなかったですけどね」
「それを言うなよ、そこまで悲観されたら、あたしら艦娘はどうやっても深海棲艦に数で押し込まれて負け確定だ、負け戦と分かって戦わなきゃならないのは、願い下げだよ」
「……大和さん、貴方は昨夜から長門さんと共に遠距離砲撃を先程まで続けていたと聞いています、鎮守府に戻ったのも、主砲の砲身寿命が尽きたからだと、少しお休みになられては如何ですか?闘うにも休息は必要ですよ」
鳳翔にまで休む様に云われてしまった
「あー、長門は砲身交換してたな、大和の砲身交換までは資材が回らないのか、そんなん司令官の差配の問題だろ、大和がそんな不景気な面下げる理由じゃないだろ、あたしらが夜戦出来ないからって夜中にぐっすり寝てるのは、大和には不愉快だったりするのかい?」
隼鷹も鳳翔と同意見の様だ
「……そんな事はありませんが」
「なら、それとおんなじだ、今大和が鎮守府に、陸に居るのは司令官の差配の所為だ、大和が戦ってないからじゃない、みんな分かってるよ」
隼鷹の言う理屈は分かる
「……わかって、頂いても、大和は、悔しいです、皆んな戦っている、あの数を相手に誰も一歩も退かずに、でもそこに、大和は加われない、なんで大和は最強戦艦なんて謳われているんでしょうね」
しかしその理屈は大和の不景気面を一切動かす事は無かった
「「「……」」」
そう言う大和にかけられる言葉を誰も持ち合わせていなかった
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
大本営所属艦:五十鈴/高雄/愛宕/妙高/足柄
何の予告も無く五十鈴が執務室に来た、それも何人か引き連れてだ、嫌な予感しかしない
「司令官、司令部要員の志願者を連れてきた、サッサと司令部を構築して頂戴」
当たり前、それが当然だと言わんばかりの五十鈴
「……実行出来ないと、言った筈だが?」
「お言葉を返す様ですが、こんな状況でただ黙って見ていろなんて命令は受け入れられません、私達の修復を再開するか、司令部を構築するか、何方かを取って頂きます」
移籍組の一人が抗議の声を上げる
「……移籍組全員を、解体処理させたいのか?船で大人しくしていろ」
正直今移籍組に構ってる余裕はない、本気で大人しくしてて貰いたい
「大人しくしていたら、このまま押し込まれて全滅必死じゃないですか!私達は死に場所を求めてこの鎮守府に来た訳ではありません!是が非でも、戦況に関わらせてください、お願いします」
抗議して来た移籍組の一人は、深々と頭を下げていた、なんだろうね、そんなに面倒に首を突っ込みたいのかね、最悪の場合でも、大本営に掛け合って陸路で避難すれば済む事だろうに
頭を下げている移籍組の一人、五十鈴が連れて来た他の移籍組の艦娘を見てもソレに同意、大本営へ退避する様に言っても聞き入れそうに無い事だけは分かった
ここで起こった厄介事に最も最短で対処するには、向こうの言い分を受け入れる、事なんだが、ソレはソレで厄介事の先送りだろう、後々の手間を考えたらここで幾らかの手間をかけない訳にも行かなかった
「……全く、何奴も此奴も言いたい放題、如何して艦娘ってのはこんなのしか居ないんだ、研修じゃ、艦娘は基本的に従順で御し易いって話だったのに、詐欺だろ、あの研修内容は」
「今更な事を言っても始まらない、あの叢雲を初期艦に選んだ時点で判った事でしょ、そんな事は」
嫌味でも皮肉でも無く、平坦に言って来る五十鈴
言外に、余計な事を言って無いでサッサと司令部を構築しろ、そう主張していた
「……尤もなご意見どうもありがとう、で、司令部を構築するとして、如何するんだ?言っては何だが私はそんなモノ構築した事は無いぞ」
「……シロウト司令官、いや、こんな時にそんな事言われても」
装束から見て抗議して来た艦娘の姉妹艦だろうと思われる艦娘が感想を零す
「情報伝達の動線と指示系統の確保、其々に二名着けなさい、後、工廠のスケジュール管理と資材量の管理に一人づつ、それに鎮守府待機中の艦娘の管理業務兼鎮守府内雑務管理に一人、これで七名が役に着く」
五十鈴から提案が出て来た、司令部構築プランまで持って来てたのか、まあ、考えてみれば当然か
「……七名?来ているのは、四名だが、他にも居るのか」
「移籍組だって戦況に関わりたいのよ、志願者は多く居る、黙って見ているより余程マシだから」
どうマシなんだか、こちらにとっては問題しかないんだが
「……修復の中断で、大分荒れたと、聞いたが、この状況で面従腹背は願い下げだぞ」
これは確認しなければならない、今の鎮守府内は司令官と事務艦、指揮系統はこれだけだ
ここに七名も司令部要員が来て好き勝手やられたら乗っ取られるのは時間の問題、防ぎ様が無い
資材残量を無視して修復を実行、鎮守府を放棄して他所に行ってしまうといった事態も起こり得る
「……誰がソレを司令官に聞かせたのかは、この際問わないけど、この状況でそんな事をしたら、自殺行為だなんて事を言って聞かせなきゃならない馬鹿は移籍組にはいない、そこは信用してほしい」
「……信用、ね」
移籍組の素行はそれなりに聞いてはいる、信用って云われても、考えてしまう所だ
「……責任は、五十鈴が取るわ、司令官や鎮守府の艦娘達の手は煩わせないと約束する」
大本営司令長官の秘書艦が責任を取る、しかもこちらの手は煩わせないと云う
そう言う事なら使わない手は無い、鎮守府運営に手数が欲しいのは確かなのだから
「では、来ている四人に情報伝達と指揮系統を、残りは現在の担当との相性を見て五十鈴が決めてくれ、移籍組の代表は司令長官秘書艦の五十鈴だ、修復を終えていない以上この鎮守府の所属とは成らないしな」
「……わかった、高雄達もそれで良いわね」
「勿論です、では、早速ですが、自己紹介を……」
「高雄型重巡の一番艦と二番艦、妙高型重巡の一番艦と三番艦だろ、知ってる、私の自己紹介は必要か?」
正直な所、誰でもかまわない、司令部要員として相応に動いてさえくれれば、それで良い
「……五十鈴と初期艦達から良く聞かされています、取り敢えずは必要ありません」
「なら、仕事に掛かってくれ」
「了解です」×4
見事に揃った敬礼をされたのは、司令官職に就いてから、初めてかも知れない
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦
執務室に入って来るなり無言で迫って来る事務艦
「司令官?司令部の構築に関してお話がありませんでしたが、説明して頂けますか?」
何時もの事なので慣れてしまった自分がコワイ、でもまあ、事務艦の言い分は尤もだ
「……何で睨むの?座して死を待つより進み出て活路を見出す、ってヤツ、関わらせないと何をするか解らんからな、移籍組の蜂起なんて事態は回避したい、その為の処置だ、使えば良い、司令部要員として鎮守府運営に協力すると言っているのだから」
こちらの言い分に納得した様子を見せる事務艦
「……そういう、事ですか」
「それに、総力戦を想定しなきゃ成らない、鎮守府所属艦を陸に置いてる余裕はない、代わってくれるのなら何隻か戦力になる」
「天龍、ですか?」
「お前もな」
そう言ったら何故か表情を暗くしやがった、なんでだよ
「……お分かりだとは思いますが、私は事務艦としてこれまで来ました、艦娘としての運用は……」
ああ、ソレね、そんな事気にしてたのか
「大増設計画で大本営の初期艦達が新規格の艦娘建造法を立ち上げたのは知ってるな」
「はい」
「それを応用する事で艦娘としての運用が可能になる、既存の建造艦にも適応出来るそうだ」
「……妖精さんを入れ替える、のですか?」
「入れ替えたら馴染むのに時間が必要になる、入渠して、妖精さんを教育するんだとさ、艦娘の技量は妖精さんに依る所が多い、練度としては表れないが、技量は習得可能だそうだ」
「……実例は?」
「合同作戦で他の鎮守府の遠征隊を入渠させたのを覚えていないか?あれを境に資材収集率が安定しただろ」
「ああ、アレが、そうなんですか」
「事務艦はスペック的には工廠に居る夕張の上位互換らしい、機会があれば夕張に指南を頼む事になるな」
「……夕張の?確か兵装実験艦、とか言ってませんでしたか?」
「艦種的には軽巡枠だ、問題無いだろう」
鎮守府-資材管理室
鎮守府所属艦:天龍
大本営所属艦:摩耶
資材管理室内で二人の艦娘が顔を突き合わせている
「……摩耶、だよな、この鎮守府に何時着任したんだ?」
「……移籍組からの出向だ、この鎮守府には着任してねーよ」
「着任して無いなら、何でオレの所に?しかも資材管理に首を突っ込んで来る?」
「……司令官が司令部を立ち上げた、司令部要員として、資材管理をする様に割り振られたんだ、ってか、何で話が通ってないんだよ」
「……ああ、ここの司令官、可也の癖者だ、用心した方が良いぜ」
「……そりゃあ、気が合いそうな司令官だな」
顔を突き合わせている二人の艦娘はとてもイイ笑顔を見せていた
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:明石/夕張
大本営所属艦:那智
突然やって来てトンデモな言い分を真面目に言い放った相手に聞き返す夕張
「えっと、那智さん?今何と?」
「司令官が司令部を立ち上げた、その司令部要員として工廠のスケジュール管理を割り振られた、サッサと予定を教えろ、工廠が三つもあるのなら効率良く稼働させる事で全力出撃を継続する事すら可能ではないか、大変素晴らしい、この素晴らしい工廠の稼働率が低いなんて事はあってはならない
サッサと現状の予定を教えろ、問題があるのなら速やかに解消せねば成らん」
「……」
「……」
夕張と明石は呆気に取られ、何処から訂正していけば良いのか途方に暮れる他に無かった
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦
大本営所属艦:三隈
珍しく普通に執務室の扉がノックされた、続けて扉が開き艦娘が顔を覗かせた
「司令官はいらっしゃいますか?」
「居る、誰かな?」
「申し遅れました、私三隈と申します、司令部要員として鎮守府内の管理業務をと云われたのですが、具体的に、何をすれば良いのでしょう?」
「……事務艦、任せる」
「はい、わかりました」
「?」
一人だけ状況が飲み込めていない模様
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:大和
大本営所属艦:高雄/愛宕
休めと言っているのに散歩を終えたらしい大和が執務室に戻って来ていた
「……司令部ですか、実行出来ないと聞きましたが、立ち上げたのですか」
散歩で少しは気が紛れた様子を見て好きな様に動いてもらう事にした、アレコレ指示するよりストレスにはならないだろうし、何より修復待ちで戦力外だ
「成り行きでね、秘書艦に相談も無く悪かったな」
「いえ、司令官が決められたのなら、秘書艦としてその方針を履行します」
それに大和は戦力外である事実を秘書艦という肩書きで埋めようとしている
長門がそう誘導した様だが、今の大和に自室待機など指示したら事態が悪化するのが見えている
「……秘書艦?大和が、ですか?」
高雄が酷く不思議そうに聞いて来た
「何か問題が?」
いきなり面倒な突っ込みを入れて来る奴だな、どうやって回避しようか考えないといけない
「問題というか、大和は大本営で秘書艦に任命されたと聞いています、いち鎮守府司令官の秘書艦というのは、任命権、指揮権の観点から疑問ですが?」
そっちですか、手続きの方か、心配した面倒事にはならなそうだ
「その任命権から見ると、大本営で秘書艦の任命を受けている以上、鎮守府側の任命権では範囲外になる、そんな事は分かり切った上で大本営は大和をこの鎮守府、私の指揮下に移籍させた、秘書艦と任命したままでだ、ならば、こちらとしては秘書艦として扱わなければなるまい」
「……成る程、そういう過程を経ているのですか、問題だとしても対処は大本営ですべき事案ですね、司令官や大和には解消する権限が無い事はわかりました
秘書艦大和、私達は司令官が立ち上げた司令部要員として指揮系統の確保を目的に鎮守府運営に協力する事になりました、以後よろしくお願いします」
「あっはい、こちらこそよろしくお願いします、ですが、取り繕っても仕方ないので打ち明けますと、秘書艦といっても名ばかりでして、殆どの業務は事務艦が担当しています」
「そちらは三隈が事務艦にレクチャーを受けていると聞いています」
「……なので、大和はほぼ飾りですね」
作り笑顔で応対する大和に思わず口が出てしまった
「そういう言い方は止めろ、大本営でどうだったかは知らんが、ここでは出来ることを出来るようにやってくれれば良い、今の所、工廠や港で遠征隊の面倒をよく見てくれると聞いている、戦艦が駆逐艦達と仲良くしてくれれば鎮守府運営に取って大きな好材料だ」
「……あの、気になっているのですが、立ち入った事かも知れませんが、よろしいでしょうか?」
探る様に聞いて来る愛宕に少しイラっと来た、それは抑えつつ訂正を求める
「そういう回り諄い言い回しはしなくて良い、簡潔に言って良いから」
「では簡潔にお聞きしますが、大和は損傷していませんか?修復は?」
「大和の修復には大量の資材が必要になる、今はその資材を確保出来ない、戦力化しなければ、押し込まれる」
「……戦わせておいて、修復しないのですか?そんな運用を?」
異議あり不満あり問題しか無い、と言いたげな表情が全てを語っている、思わず反論しそうになったが、意外にも大和が割って入って来た
「損傷といっても、主砲砲身が割れているだけです、船体にも艤装にも損傷はありません、戦線は北上を中心に軽巡戦隊が中央突破を図り正面の数を分断している最中です、その支援を二隻の重巡が担い、広範囲な支援砲撃を長門が実行中です、大和の砲身に資材を使うより、実戦中の艦隊に資材を振り向ける、司令官の方針に異論はありません」
「……包囲されて補給線が断たれているのでしたね、備蓄資材の割り振りは司令官の専権事項、当人に異論が無いなら、外から何を言うのも筋違い、余計な事を聞きました、申し訳ありません」
大和の主張に愛宕はアッサリと抗議を引っ込めた、序でに司令官に詫びまで入れて来た
そこまで話が通るのなら、こちらから反論することも無い
「いや、気になるのなら構わず聞いてほしい、変に溜め込まれる方が面倒になる」
「……初期艦は、叢雲、でしたね」
何の確認だか知らないが、愛宕が聞いて来た
「そうだが?」
「新任の初期艦も叢雲でしたね」
何故か高雄からも確認が入った
「……それが?」
何、それがどうした、何の確認だろう
「いえ、変に遠慮しなくても良いかなと、思っただけです」
高雄から感想が出て来た
「……遠慮なら、司令部構築なんて言い出さないで大人しくしていれば良かったんだ」
「成る程、今更、ですか」
妙に納得した様子の二人
「そう言う事だ、司令部を構築したからには、相応の働きをしてもう事になる、仕事には配慮が必要だが、私に遠慮しても鎮守府運営に利はない、叢雲はソレを私に叩き込んで来た、其処は踏まえてもらいたい」
「……わかりました」
なんか、微妙な表情をしてるんですけど、何か不味い事を言ったかな
鎮守府-防波堤
鎮守府所属艦:秋津洲
大本営所属艦:妙高
いきなり背後に感じた気配に驚く秋津洲
「かも?!」
「秋津洲さん、司令官の指示で海域哨戒を二式大艇で実行中と聞いています、何か見つかりましたか?」
驚いている事など気に留めることもなく、和かに聞いてくる妙高
「……何も、これまで通り、包囲網は崩れず、深海棲艦は増え続け、長門達が防衛線を死守してる、北上が中央突破を目論んでいる様だけど、龍田艦隊には届いてない、あっちは包囲網を抜けて、釣り上げる獲物を探してる、司令官は私にその獲物を見つけて欲しいんだと思う、でも、見つからない」
「……突破した?龍田艦隊が?」
「さっき包囲網を抜けた、龍田と初春が盛大に電探を使ってる、大艇ちゃんの逆探でもはっきり分かるんだから、多分最大出力で発振して、獲物を探してる」
「……司令官に伝えます、秋津洲は引き続き哨戒をお願いします」
「……わかった、かも」
鎮守府-近海(支援砲撃位置)
鎮守府所属艦:長門/皐月/時雨
「観測機が使えるのは良い事の筈なんだがな」
長門の独り言を聞きつけた皐月が心配そうに近付く
「長門、大丈夫?」
「心配は無用だ、この長門に問題などない、砲撃の衝撃波を受けてしまう、少し距離を取った方が良い」
「……それで白雪が中破したって言ってた」
その話は聞いている長門、自身の砲撃で駆逐艦を損傷させている事にも気が付かない戦艦、そこまで練度が無いのか、或は駆逐艦が戦艦にそういった要求をしたのか、何にしろ大和は現状では戦力外だ
「……無茶をする、だが、そのお陰で大和の砲撃精度が安定していた、駆逐艦にしておくのは惜しい度量だ」
戦場では戦艦種の様な大型艦は否定的な発言は控える、それをするのは伊座というときだけに限らなければ、発言が軽んじられてしまう、結果として逆説的な接続詞が多用される事になっていく
「まーた、ムリを言ってる、駆逐艦はどう頑張っても駆逐艦だよ、艦種変更は出来ないよ」
長門の言い分に少しだけ呆れている時雨
「そうだな、駆逐艦にして置くのが惜しいのでは無く、度量のある駆逐艦と共に戦える戦艦である事を喜ぶとしよう」
???
米海軍_対艦娘部隊_観測班:班長/班員1/班員2/班員3
「なんだ?この電波?」
「どうした?」
「今解析してます、っと如何やら艦娘の使う電探の電波を捉えた様です、それにしては電波強度が強過ぎますが」
「艦娘の電探?レーダーの事か?何処の所属艦娘か、分かるか?」
「おそらく、あの包囲されてる鎮守府の艦娘、軽巡級、駆逐級もかな?複数の電波を捉えています」
「……来援要請の通信ではなく、レーダー発振?何がやりたいんだ?あの鎮守府は」
「何かを探しているのか、存在を誇示したいのか、ちょっと判断出来ませんね」
「どちらにせよ、包囲されてる鎮守府からの動きが観測出来た訳だ、上に報告を」
「……包囲されて以来、こっちからの探査波は遮断されてましたからね、有線通信も大本営を経由しないと出来ない仕様になってるとかで、事実上使用不能ですし」
「……自衛隊が我々に協力しないからな」
外洋-他の鎮守府遠征隊循環航路
鎮守府所属艦:長良/名取/球磨/その他
「長良!電探に反応!」
「分かってる、ウチの誰かだ、合流しよう」
「……こんな盛大に電探発振?何を考えてるクマ?」
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
大本営所属艦:妙高
「司令官、秋津洲と話して来ました、龍田艦隊が包囲を突破したそうです、今釣り上げる獲物を探し、電探を盛大に使っていると、言っていました」
「……エサが悪かったかな、其処までしても喰い付いて来ないとは」
「深海棲艦の鹵獲目標は最初の初期艦、新任の初期艦では、興味を引けないと?」
「妖精さんですら同じ個体と視えたんだ、興味は引けると思うが」
「興味を引き過ぎても、それはそれで問題です、しかし司令官の予測通りなら、ここで包囲網を形成させている本隊を引き出せなければ、こちらの行動限界が先に来ます」
「その通りだ、折角司令部要員として働いてもらってるのに、短い付き合いになる、かも知れんな」
「……」
そう言う司令官の心情を妙高は測りかねていた
鎮守府-資材管理室
鎮守府所属艦:天龍
大本営所属艦:摩耶
「何だよ、結構残ってるじゃねーか、何で出し惜しみしてんだよ、あの司令官は」
「……使用予測から逆算するとカツカツだ、多分足りなくなって詰む未来図しか見えないんだが」
天龍の言い分に疑問を持つ摩耶
「……こんだけ残ってて、足りなくなる?大和を修復して再出撃させるのか?」
「それはない、資材供給を確保出来ない限りもう大和は出せない、この状況で資材消費を増やしても自分の首を絞めるだけだ」
「なんだ?あたしの知ってる艦娘の資材消費とは、かけ離れてるぞ?如何いう事だよ?」
「……説明はメンドクセーから、この資料を読み込んでくれ」
この、で出て来た資料を思わず二度見した
「……おい、なんだよこの資料の厚さは……」
そう言うのが精一杯だった
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:明石/夕張
大本営所属艦:那智
「……つまり、予定は無いと、必要が生じたらその都度逐次対応が基本だと、そういう事か?」
「そうなってしまうのは仕方ないのでは?出撃した艦娘の誰がどの程度の損傷を負うかなんて、事前に誰も知りようが無いんですし、こちらの準備としては資材とか必要物資を確保して置くくらいしか、やりようがないじゃないですか」
乗り込んで来た那智に色々と訂正を求める明石
「……資材は別管理だ、遠征隊の運用と絡む、何より使用には司令官の許可がいる、資材以外で準備出来る物資はなんだ?」
「……高速修復材とか、高速建造材とか?あと、改修資材とかもあるか」
那智の質問に指折りで数えながら答える夕張
「ならばソレを確保せよ、確保の手段は?」
「明石が資材から抽出する」
簡潔に答える夕張
「……資材が要るのか」
「無いと抽出出来ないですよ?」
ニッコリ笑顔で応じる夕張
「確保しろと言うからには、資材、調達してくれるんですよね、那智さん?」
「……」
明石に迫られ言葉に詰まる那智だった
鎮守府-廊下
鎮守府所属艦:事務艦
大本営所属艦:三隈
「だいたいわかりました、でも、貴方軽巡ですよね、こんなに沢山業務を抱えていらしたのですか?私の知る限りでは軽巡の処理能力を超えていますけれども」
「……私は、この鎮守府で建造されて直ぐに事務艦研修に出されました、これしか司令官に仕える方法を知らないんです」
これまでの業務説明と比べると少しだけ言い難そうな様子の事務艦
「……そう、建造艦で司令官に仕えたいと、全霊を賭けているのですね、良く分かりました、この三隈にも少しお手伝いさせてくださいね」
艦娘として運用されていない、それでも司令官に仕える、事務艦の身上、信条、心情、それらを出来るだけ汲もうと思う三隈だった
鎮守府-移動指揮所
自衛隊_鎮守府派遣隊-指揮所:司令官/副官
自衛隊_憲兵隊:隊長
「撤収準備、終了しました、いつでも撤収出来ます」
「後の問題は、包囲している陸自を如何躱すか、だな」
「撤収するんですか?」
あまりに自然に会話に入って来た隊長に一瞬言葉に詰まる指揮所司令官
「……憲兵隊長か、悪く思わんでくれよ」
「何処から入って来たんですか?出入口は中からじゃ無いと開かないんですが?」
副官が抗議らしき声を上げた
「そんな事はどうでもよろしい、撤収するんですか?幕僚会議の許可も取らずに、後で問題になりますが、承知の上ですか」
「このまま残留しても何か出来る訳でも無し、鎮守府司令官からは撤収を勧められている、ここは指揮所であって、戦力は無いのだ、保護対象が多いと艦娘等も、困るだろう」
「……成る程、鎮守府に迄砲火が及んだ時に、ここから負傷者や殉職者が出ると鎮守府側の手を借り出さなければならなくなる、少なくとも、艦娘等は助けようとしてくれるでしょうな、結果、砲火への対応に支障が出ると、それを避ける事が撤収の理由だと、そう言う事で、よろしいか」
「何を考えている?」
指揮所司令官は憲兵隊長が何を意図しているのか、読み取れなかった
「この指揮所の設備は無人でどのくらいの情報収集と発信が出来ますか?」
「……機密指定されている、答えられない」
「そうですか、では、こちらをお持ちください、陸自の封鎖を通れる筈です」
「……通行許可証?何故?」
指揮所司令官は渡された許可証と憲兵隊長を交互に見る
「なに、折角手続きを定めて発行まで漕ぎ着けたのに、無駄になる所でした、有効活用しないとあの苦労はなんだったのかと、自棄を起こしたくなる、私の我が儘ですよ」
「……我が儘か、ここの鎮守府司令官も随分と我が儘だそうだな」
「それはもう、その上意地っ張りと来てる、救い難いですな」
「……通行許可証は使わせてもらおう、我々は直ちに撤収する」
「部下の原隊復帰までが、貴方の仕事になります、お覚悟を」
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:大和
大本営所属艦:高雄/愛宕
「ちょっと出てくる」
「どちらへ?」
「見回りだ、ここに座っている時間が長くてな」
「要するにお散歩、ですね、お伴します」
「……そう明から様な言い様はさ、もっとこう、それっぽい言い回しってのが、あるでしょ」
「では、巡察という事で、よろしいですね」
「お、おう」
外洋-包囲網の外側
鎮守府所属艦:龍田艦隊_龍田/初春/子日/若葉/初霜
鎮守府所属艦:叢雲(初期艦)
包囲網を抜け、獲物を探している龍田艦隊
「龍田!電探に反応有り!じゃが、方向が変じゃ!」
「こっちにも反応が出てる、想定と逆方向?それにこれって、艦娘の反応、じゃあないかな?」
「包囲網を抜けたら、穏やか過ぎる海しか見つからないって、どうなってるんだろうね」
子日が感想を言う
「しかし、包囲の方向の海面は見た事が無い程に赤く染まっている、周辺警戒を怠るな、この辺りまで、まだ赤い海が広がっている」
若葉は警戒を緩めていない、注意喚起までしている
「鎮守府の辺りはもう赤い海に飲み込まれているのかな?」
周囲を見回しながらこちらも感想を言う初霜
「何も喰い付いて来ないなんて、私じゃ足らないって?信じらんない!」
穏やか過ぎる海に癇癪を起こしている初期艦だった
鎮守府-近海(防衛線を超え包囲網突入中)
鎮守府所属艦:筑摩艦隊_北上/木曾/神通
「クソッタレ!!あの第二艦隊の奴ら!通っただけじゃないか!撃破した形跡が無さ過ぎる!!!」
先頭を行く北上が盛大に愚痴る
「当たり前だ!第二艦隊の目的はこの雑魚共の背後に居ると予測される本隊の釣り出しだ!そう聞いただろうが!こんな所で無駄に弾薬を消費する理由が無い、そんな事は承知で分断するって言い出したのは北上だろーが!」
今更何言ってるんだ、とばかりに木曾が言い返している
「クッソムカつく!木曾っちに正論吐かれたよ、なんて可愛気の無い末っ子なんだろう!」
それでも北上の愚痴は止まらない
「そんな事より、進撃速度が落ちてるぞ、重巡の支援があるとはいえ、周りは深海棲艦の群れだ、速度の低下はそのまま包囲、殲滅に繋がる、速度が維持出来ないのなら、そこを換われ!」
「替るのなら、私が替りましょう、木曾より練度は上ですから」
それを聞いた神通から提案が入った
「こんな所で練度自慢かよ、神通は最後に控えてろ、先ずは俺が換わる」
「……黙って聞いてれば、言いたい放題言ってくれちゃって、只の軽巡が重雷装艦の火力に代わる?面白い、代われるかどうか、その眼で確かめろ!本気出すから、着いて来い!!」
血の気の多い二人に対し持ってしまった懸念が北上の行動を縛っていた
その縛りがここで失われた
鎮守府-近海(雷撃位置=支援砲撃位置~防衛線の中間)
鎮守府所属艦:筑摩艦隊_筑摩/加古
「なんか、揉めてないか?軽巡達」
観測機からの観測を見る限りそんな感じに見えた
「仲が良いのでしょう、良い事です」
簡潔に返されてしまった
「……それにしても、観測機が飛び過ぎだな、長門の搭載機まで来てるし」
「観測を共有する様には出来ていませんから、仕方ありません」
「その辺り新規仕様って艦娘は改良されてるのかな?」
「さあ、その新規仕様について、私は知らないので」
「……秋津洲の二式大艇がさっきからかなりの高度でウロウロしてるんだが、なんだろうな」
「哨戒任務を遂行中だと思われます、でも、確かに高度を上げてますね、何か低空での不都合があるのでしょうか」
「筑摩は、変だと、感じないか?」
加古は簡潔に返して来る筑摩にもう少し違う答えを期待していた、何しろ今の旗艦は筑摩なのだから
「……何をです?」
「こっちの観測機が飛び放題、二式大艇は高度を上げて哨戒中、これは深海棲艦の飛翔体が全く出て来ないから出来る事だ、確かにあの飛翔体は偶にしか遭遇しないが、これだけの数を揃える大群で、飛翔体が全く出て来ないってのは、どういう事だ?
それに北上達が突入したら包囲網から鎮守府方向に出てくる奴等が居なくなった、こっちの観測では北上達の方向に向かって集まり出してる、なんだコレ?」
「それはこちらの観測でも同じ結論を得ています、だから、支援砲撃を絶やす訳にはいきません、長門がこの辺りまで観測機を飛ばして来ているのも、それが理由でしょう」
「って事は、奴等の進撃方向が変わったって事になる、なんでだ?奴等鎮守府を攻めているんじゃ無いのか?」
「……司令官が言っていたそうです、あの数はブラフ、見せかけだと」
「ブラフ?囮とか、偽物って事?」
「そう考えれば、この数にウチの鎮守府だけで対抗出来ている事に説明が付きます、何時も遭遇する深海棲艦なら、これだけの数にウチの鎮守府だけでは対処仕切れません」
「……云われて見れば、その通りだな、この数に対処仕切れている事に違和感を持つのが先だよな、なんでソレを感じなかったのか」
「先程の変な感じとは、この事ではないのですか?」
「……コレとは別だ、いや、関連はしているのか、正面の此奴等、どうも胡散臭くてな、砲撃して来てもただ撃ってるだけだし、船速は出さないし、艦隊としての行動も見受けられない、ただ何隻かが纏めて前進して来るだけ、まるで操り人形だ、それも操ってる奴のセンスが悪過ぎる人形みたいで気色悪い」
「……司令官の言い分が、正解だと?」
「筑摩がそう言ったんだぞ?それとも違う考えがあるのか?」
筑摩が疑問形で聞き直してくる意図が加古にはわからない
「……深海棲艦とは言え、操り人形というのは、想像出来ないですね」
外洋-包囲網の外側
鎮守府所属艦:長良/名取/球磨/その他
鎮守府所属艦:龍田艦隊_龍田/初春/子日/若葉/初霜
鎮守府所属艦:叢雲(初期艦)
「こちら長良です、そちらは誰ですか!」
「初春じゃ」
「こういう場合、旗艦の私が応答するんじゃないかな、初春?」
「お、おう、済まぬ、つい、返答してしまった」
「相変わらずだね、龍田は」
「ウチの一番艦を一睨みで黙らせられるのは龍田だけだし」
「ふーん、そうなんだ」
子日と初霜の話に感心している初期艦
「……なんじゃ、その何か言いた気な顔は?ハッキリ言えば良かろう」
感心していたら初春から突っ込みをもらった
「初春にも、天敵が居るのね」
「プッ、アッハハハ」
「笑い処では無いと、思うがの」
「良かった、合流出来て、鎮守府はどうなってるの?状況を教えて」
「どうって、見ての通り、包囲されて孤立中、長門達が防衛線を構築して包囲が狭まるのを防いでいる最中ね」
龍田が長良に答えている
「なら、ここから突入して包囲に穴を開ける、共同戦線を組みましょう」
「うーん、折角だけど、それは出来ないわねぇ」
「……なんで?包囲を破らないと資材枯渇で動けなくなる、長門が戦闘行動をとってるんでしょう?」
「そもそもの話として、龍田達はただ出て来た様に見えるクマ、包囲を抜けて来た目的はなんだクマ?」
長良の疑問に球磨が質問を重ねて来た
「……球磨、その語尾付けなくていいわよ、駆逐艦は居るけど、ちょっとくらいで軽巡に怖れを成す様な可愛気の持ち主はこの中には居ないから」
「なにそれ!ひっどい云われようだ、子日はこんなに可愛いのに!!」
龍田の言い様に子日が抗議の声を上げた
「……ハイハイ、カワイイ、カワイイ」
龍田が子日の頭を撫でながら棒読みのセリフを述べていた
「……わかった、それで?こっちまで何しに出て来た?」
それに満足気な子日を見て球磨が言い直している
「本隊の釣り出し、司令官の予測では、この大群は只の目眩し、本隊が別にいる、そっちを叩かない事には、この大群をどれだけ沈めても無限湧きして来るだけ」
龍田の説明に名取の様子が変だ
「……無限湧き、あの、忌々しい、無限湧き……」
「名取、落ち着いて、で?本隊を釣り出すって、どうやって?」
姉妹艦を宥めつつ質問を続ける長良
「私がエサになる、らしいから、獲物が私に喰い付いて来たら、長門達の攻撃圏内まで誘導して、撃破する、ソレを、少なくとも三回、実行する」
それに応じる初期艦
「……三回?獲物というか、本隊と呼んでいるのが、三隊いるって、事にならない、ソレ?」
「そういう事になるわね、その為に龍田達が私のフォローに入ってる」
「……無謀過ぎる、そんなの作戦行動じゃない!あの司令官何を考えてるのよ!?」
長良にはこの作戦行動が正気の沙汰とは思えない
「長良、落ち着いて、確かに無謀過ぎる、それは同意するけど、あの司令官が、この手の我が儘を言うのは何時もの事、一々目くじら立ててたら身が持たない」
長良を宥めつつ龍田が説明を続ける
「……無謀過ぎる作戦行動が、何時もの事?もしかして長良達、トンデモ無い鎮守府に、司令官の元に着任してしまった?」
「今更、気が付いても、手遅れじゃ」
初春がアッサリ言い切った
「文句は、五十鈴に言ってね、元々五十鈴が言い出したんだから」
この鎮守府に来る様に提案したのは五十鈴だ、龍田はそこを指摘して来た
「「「……」」」
護衛隊の三隻はお互いの顔を見合わせた
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦
大本営所属艦:高雄
「事務艦、少し手を借りたいんだが、良いか?」
「御用件は、何でしょう」
「天龍が資材管理をしてる訳だが、その最新版、現時点の物が欲しい、もし、纏まっていない様なら手を貸して纏めて持って来てくれ」
「わかりました」
「……事務艦にそんな事まで?」
「事務艦が居ないとこの鎮守府は回らんよ」
鎮守府-資材管理室
鎮守府所属艦:天龍/摩耶/事務艦
事務艦からの要件に天龍が応じている
「あー、補給やら何やらで伝票は来てるが、纏めてねーな、悪りーな」
「いえ、伝票は?纏めます」
「……事務艦が?そんなに急ぎなのか?」
「司令官が現時点の資材管理状況を確認したいと」
「……何度見ても、足りねー物は足りねーぞ?」
二人の会話の向こう、会話に加わる余裕もない様子の摩耶が頭を抱えながら分厚い資料と格闘していた
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦
大本営所属艦:高雄/愛宕
事務艦が頼んだ資料を持ち帰って来た、それを検討している
「んー、ズレてるな、誤差にしてしまえなくもないが、この状況では確認した方が良いか」
「ズレ?ですか」
「明石の申告して来た資材使用量と纏めてもらった資材残量、天龍は資材の現物で残量を見ている筈だ、書面で申告してる明石等工廠組、どこかで噛み合ってないらしい」
「明石等が、過小に申告している?」
高雄が可能性を言ってくる
「そういう単純な話なら、天龍が気付く、天龍からそういう話はあったか?」
事務艦に話を振る司令官
「いいえ、この資材残量では大増設計画への復帰は無理だと、司令官の立場が悪くならないかとは、気にしていましたが」
「……アレは何を気にしているんだ、兎も角、確認作業が要る、要るんだが、その手間を取る手がない、困ったね」
「私が確認して来ますが?」
アッサリと当然の様に言って来る事務艦、然し乍らそうもいかない
「事務艦にこれ以上の負荷はかけられん、かと言って司令部要員はこんなに細かい確認作業が出来る程の熟練度はない、就いたばかりだしな、どーするかな」
「あの、大和に依頼されては?この鎮守府所属艦ですし、工廠組や艦娘達とも司令部要員よりは馴染みがあります、何より熟練度という点に於いて適任かと思われますが」
高雄からの提案があった
「……アレは大本営でなにをやらされていたんだか、そこは置くとしても、資材不足で修復を待ってもらっているのに資材残量の確認作業は嫌がらせとかマイナス要因に取られかねん、出来れば避けたい」
「大和はそんな狭量な思考はしません、司令官の指示であれば確実に履行します」
事務艦からの主張なら一考出来るか、大和とはそれなりに交流がある事を知っている、主張するくらいには信用しているのだろうから
「……自分を抑え込んででもな、そういう使い方はしたくない」
確認の意味もありこちらの懸念を示し、事務艦の反応を見る為の台詞を言う
「使い方、ですか、使われないより、使われた方が大和はプラス思考に向く、と私には見えますが、実際、私のフォローをお願いした時には嫌な顔一つせずに完璧に熟してくれました、司令官は大和に偏見をお持ちなのでは?」
事務艦の主張からは大和を高く評価していると伺える
「……偏見、そう見えたのなら、私の対応が悪いのだろうな、正直な所扱いかねてる部分はある、他人の言い分を聞き過ぎるんだよ、言いたい事もあるだろうに、文句一つ言って来ない、ああいう艦娘は、どう扱えば良いのやら」
「ソレって、私達が、言いたい放題だと?少しは遠慮しろって、事でしょうか?司令官?」
少し愚痴気味に言ったら、空かさず高雄からの突っ込みを受けた
「な、高雄の言っている様に、こういう艦娘が私には何時もの艦娘なんだ、大和は大人し過ぎる、天龍から聞いた話だと、アレは色々と溜め込み易い性質を持っているそうだ、気が付いた所はコッチで対処していかないと、地雷になりかねん」
「飛躍し過ぎです、仮に司令官の言い分が正しいとしても大和の司令官への忠信は疑う余地がありません」
事務艦の主張は変わらない様だ
「忠信?要らんよ、そんなモノ、艦娘は艦娘同士で仲良くやってくれれば、それで良い、艦娘部隊なんて艦娘の群れに司令官という体裁で人が入り込んでいるだけだ、艦娘の群れに司令官を受け入れる性質というか前提が無ければ、私はこれまでに何度死んだか、数えきれないよ」
「何ですか?その穏やかじゃない話は、鎮守府司令官に鎮守府所属艦娘が危害を加えるとでも?あり得ません」
今度は愛宕からか、なんか不満そうだ
「……移籍組では知られていないのか、建造直後の艦娘が司令官に危害というか何かしらしでかす事は、司令官内では割と、知られた話なんだが、尤も、研修時の話と違うし、下手に騒ぎ立てると失職のリスクがあるから、無かった事にしているが」
「……建造直後は司令官の指揮下にいないから、ですか?理屈の上では艦娘は人に危害を加えられます、司令官の命令なら、間違いなく、実行します
建造時に、既に、建造された鎮守府以外の司令官の指揮下に居る、という事ですか?」
事務艦が聞いてきた
「理屈的には色々と仮説は立つ、基本的に艦娘が自発的、自身の思考によって司令官というか人に危害を加える事は無いとは思ってるが、確証はないし、検証なんてしたくもないがな」
尤も状況に寄っては、考えも無く思わず手が出るという場合はいくらでもあるんだが
「ちょっと待ってください、建造時に他の司令官の指揮下に居るって、どういう事ですか?建造艦は建造された工廠で初めて意識を、自我を持つ筈、それ以前の指揮系統があるなんて、聞いた事もないです」
高雄から疑問点を指摘して来た
「……移籍組は、ドロップ艦だよな、建造艦とは余り接点がないのか?」
大本営でも建造は行われていた、なのに知らないという高雄、愛宕も高雄と同意見らしい
「移籍組と呼ばれている私達は元は最初の鎮守府に配属された艦娘です、その最初の鎮守府が正式に発足した日にほぼ全艦娘を出撃させる事案が発生、そこで生じた海戦によって兵装も艤装も失くしてしまった、あの収容所からやっと解放されたと思ったら、コレですよ」
「事前情報も無ければ、敵測情報も無いまま海域だけ指定されて、あんな大勢の艦娘を艦隊編成すらせずに出撃だけが命令された、こんな運用がありますかって抗議したら今度は官舎に軟禁、もう、大本営に改称したくらいでは、あそこの指揮下に戻る気にはなれませんよ」
こちらの疑問に長い愚痴で応じて来た
「……コッチも地雷持ちだったか」
たった一言でここまでの長台詞が出て来るとは思っても見なかった
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦/大和
大本営所属艦:高雄/愛宕
結局、資材の確認は大和に当たってもらう事になり、執務室に呼び出した
「大和、参りました、長くお側を離れ申し訳ありません」
それを言うのなら散歩中に寄った食堂でゆっくりしてろと言った私の所為だし、これは予定外の急な呼び出しな訳だし、本来なら大和は詫びる必要どころか文句を言って良い状況なんだが
「……いや、それは良いから、呼んだのは手を借りたいからだ、司令部要員の愛宕と共同でこの資料の確認を、書類の数値が何処かでズレて実際の数値を拾えていない様なんだ、書類の修正は後で私がやるから、大和等にはズレた要因を特定してもらいたい、出来るだけ速やかに、だ」
「はいっ?私も、ですか?」
「……高雄、代わってくれるか?」
愛宕の驚いた声を聞き高雄に振った
「えっ?!そういう事を、言っているのでは……」
「なら、大和と共同でこの確認作業を、良いわね」
高雄が愛宕に念押しの様に言っている
「……資材備蓄量と資材使用量、報告と申告が合わない、のですか?」
そんな遣り取りの間、大和は資料を読み込んでいた
「言い換えるなら、資材残量と資材消費量だ、明石等が工廠で消費した量と天龍が纏めてる残量が、合わない、遠征隊が資材を確保できる状況なら誤差で済ませるんだが、今はそうもいかない」
「……天龍が出庫した資材量よりも、明石が使用した資材量が、多いんです、よね、この資料に拠ると、工廠側で多少の備蓄があるとか、ですか?」
大和なりの仮定を言って来る
「わからない、何の要因でこうなっているのか、確認作業に充てられる時間が少なくて悪いが、要因となりそうな条件の絞り込みだけは何とかしてほしい」
「時間?作業終了時間が定まっているのですか?」
ここで漸く資料から視線を外した大和
「急かす様で悪いが、長くても九十分だ、その頃には補給隊を出さないとならなくなってる、筈だ」
「北上達への補給、ですね、補給隊を出さない訳には行きませんからね」
限られた作業時間しかない事は納得してくれた様だ
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:秋津洲
大本営所属艦:高雄
一息ついて落ち着いた執務室に秋津洲が飛び込んで来た
「司令官!タイヘンかも!!」
「どうした?」
「大艇ちゃんが雨雲みたいな塊を見つけた!深海棲艦の飛翔体の大群かも!!」
秋津洲の報告に驚き過ぎて大声で返すという失態だけは如何にか避けることが出来た
「……方位と距離は?」
「鎮守府南南東三千!」
「……遠くない?三千?」
距離を聞いて聞き直してしまった、そんな遠くの目標を見つけた事にも感心してしまった
「大艇ちゃんが高度を取ってるから遠くの方まで見えたかも」
「司令官、龍田達の方向では?包囲網を抜けたのでしょう」
高雄が可能性を言ってくる
「……方位は兎も角、それでも遠い、遠くても六百よりは前の筈、一桁違うんだが」
「そんな位置に飛翔体の大群?何でしょう?こちらの包囲網とは無関係、だと良いのですが」
「……願望としては兎も角、注意喚起しておかないと、今の所、遠過ぎて対処しようがない」
「……余計、な報告だった、かも?」
こちらの会話に何か感じる所があったのか秋津洲が声を細くしてしまった
「何故そう思う?何か見つけたら報告する様にと、私が言ったのだ、秋津洲はそれに協力してくれているのだろう、余計な報告などでは無い、引き続き何か見つけたら報告して欲しい、協力を、してくれるな」
「はい!かも」
気分を持ち直してくれた様だ、飛び込んで来た時の様に元気な返事だった
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:鳳翔/祥鳳/隼鷹
秋津洲の報告は軽空母達にも聞こえていた、半自立行動型の妖精さんを兵装として扱う空母種の艦娘
鎮守府の様な限られた範囲の情報収集など基本行動でしかない
しかもこの三隻は高練度艦、更に司令官からの指示は警戒態勢、抜け目はなかった
「……三千、ですか」
「ちょっと遠い、ここの防衛戦を下令されている私達が見つけるには遠いですね」
「……でも、大群だって、話だろ、向こうの動きが、活性化する兆候かも知れない」
「三千、というとほぼ、行動限界距離、ですよね」
「ここまで来るのなら、片道切符、帰還を考えていない事になります、だから司令官も遠過ぎる、と言っているのでしょうし」
「……深海棲艦の飛翔体が私等の偵察機と同程度の航続距離、って前提なら、な」
遠すぎる飛翔体発見の報にもどかしい思いの空母艦娘達だった
外洋-包囲網外側
鎮守府所属艦:龍田艦隊_龍田/初春/子日/若葉/初霜
鎮守府所属艦:叢雲(初期艦)
鎮守府所属艦:長良/名取/球磨/その他
秋津洲の二式大艇から飛翔体発見のメッセージが入った
「?ソレって、今の私達に言われても、どうしようもないけど?」
「鎮守府起点だから、ここからなら、もう少し距離が近い、注意喚起だとは思う、けど、深海棲艦の積極的行動が観測されたって事」
長良と名取がメッセージに対して感想を述べている
「今のメッセージでは飛翔体の進行方向も移動速度も届けられておらん、見つけたと言うだけじゃな」
「そんな遠くの飛翔体を見つけただけでもよく見つけたって褒めなきゃね、目視なんだし」
「自衛隊のレーダーってこういう時便利なんですけど、何とかなりませんかね」
初春に子日、初霜も感想を言う
「……待て、目視でそんな遠くの飛翔体を見つけた、という事は、言っている通りに、大群である事が確実と考えられる、その方向に飛翔体を飛ばすあの丸いのが大挙しているという事では無いか?」
若葉が何か思いついた様だ
「だとしても、ここから、何か手が出せるって事にはならない、私達の交戦距離は対峙条件が最適でも二十から三十、十倍以上の距離は、ねぇ」
それらの感想を聞いても龍田には打てる手が無かった
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:明石/夕張/大和
大本営所属艦:愛宕
司令官からの指示を伝え協力を求める大和に困り気味の明石
「……ええと、そんな事云われましても、使用時にキッチリ計量する様にとは天龍からも話がありましたし、そうしてますよ?計量器も定期的に原点出しと、基準器で計量値を確認してます
そもそも、コッチには天龍が資材庫から出庫した数量は知らされていないんですよ、それを出すと、計量せずにそのまま書くだろうからって」
「司令官の指示はこの数値がズレた要因の特定です、最低限要因の絞り込みまではして欲しいとの要望です、何か、思い当たりませんか?」
資材使用量を直接計量している明石の困惑振りにも関わらず、大和が重ねて質問している
「……話からすると、コッチの使用量が天龍の出庫量よりも、多いんだよね、何処かで、資材が足されているって事になるけど、減ってるのなら明石が銀蠅したって事で終わるけど、増えてるって、どういう事なの?」
「ちょっと!?夕張?!」
夕張の飛んでも無い仮定に声を荒げてしまう明石
「その原因を特定したいのです」
「そう言われても、資材が勝手に増えました、その原因を特定してくれって、如何すれば良いのよ?」
「資材の搬送工程を検証していきましょう、出庫から計量までの工程は、多く無いでしょう、一番手短かに済むと思いますけど?」
夕張に問われて愛宕が提案している
「……それでアッサリ特定出来れば、良いんだけどね」
愛宕の提案にも明石の表情は晴れなかった
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
大本営所属艦:高雄
愛宕の提案が執務室に届いた
「実際に資材搬送工程を検証するから、資材使用許可をって、本末転倒な気もするが」
「搬送するだけで、使用後には資材庫に戻すと言っていますし、方法論としては妥当だと考えます、許可されては如何ですか」
乗り気でなさそうな司令官に高雄が言い聞かせている
「検証には天龍も同行する事、それで許可しよう」
「わかりました、了承を伝えます」
鎮守府-資材管理室
鎮守府所属艦:天龍/明石/夕張/大和
大本営所属艦:愛宕
大和から事情を聞かされた天龍は同行していた夕張に目を向けた
「……おい、お前らの所為で余計な手間を取らされてるんだが?」
「そんな事、いわれても」
「手間を最小限にする為です、協力をお願いします」
困り果てている夕張に変わって大和がお願いしている
「……で、資材搬送すれば良いのか?」
仕方ない感をこれでもかって程出しながら応じる天龍
「はい、その工程を検証して行きます」
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:明石/夕張/大和
大本営所属艦:愛宕
結局、天龍は大和が同行するなら良いだろと言って工廠には同行しなかった
「……何処で、増えたんですか?」
「さあ、資材庫から出してそのまま工廠に持ち込んだのに、何故増えてるんですか、コレ?」
「……計量器の不良?でも、元からあった計量器ですよ、コレ」
運んで来た資材を計量した結果を見た四人が首を傾げている
「確か、原器と基準器があるんでしたよね、それを資材庫側の計量器で計量してみましょう」
首を傾げてばかりもいられないので大和が提案して来た
「そっちのズレ?なのかな?まあ、計れば判るか」
疑問しか無いといった感じではあるが、止める理由もない夕張
鎮守府-資材管理室
鎮守府所属艦:天龍/大和
大本営所属艦:愛宕
大和が持っているモノを見て状況を察した天龍が呆れた顔を見せた
「今度はソレかよ、ってか、そういう話なのか?」
「可能性は検証して、結論を出して行かないと要因の絞り込みも出来ませんから」
「こちらにも原器と基準器はあるんですよね、先ずはソレを」
ソレをと云われてソレを取りに行く天龍
「……ほれ、気の済むまでやってくれ」
九割呆れている天龍は全く興味を示さずソレを渡して来た
「……合ってます」
「ねぇ、キッチリ合ってます、では、工廠の原器と基準器で、やってみましょう」
ソレを受け取った大和が載せ換える
「……合ってます、ねぇ」
「……合ってます、ズレてないです、どういう事ですか?」
大和も愛宕も状況が分からず困惑している
「計量値自体がズレてるって事にはならないな、元からある計量器だし、そこまで良い加減な管理はしてないだろう」
放って置くと何時迄も首を傾げていそうな二人に天龍が言う
「……念の為、資材庫側の原器と基準器を工廠側の計量器で計量してみましょう」
それを聞いて少し考える様子を見せた大和が提案した
「……好きにしてくれ、付き合いきれん」
天龍は十割呆れていた
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:明石/夕張/大和
大本営所属艦:愛宕
アレコレと計量器に乗せ量りしている二人を見て大体の状況は察している工廠組
「……」
「……」
「えっと、つまり、どういう事?」
言葉をなくしている二人に変わって夕張が言った
「ここまでの検証結果だけを元にするのなら、計量器は正常なのに計量値だけがズレる、資材庫から出して工廠に運んだだけなのに、何故か資材が増えてる、ちょっとだけだけど」
明石から解説があった
「そのちょっとが誤差なのか、何らかの現象を伴っているのか、人為的な、作為的なモノなのか、原因を特定、最低限要因の絞り込みだけはして欲しい、というのが司令官の要望です」
その解説を受けて大和が状況を再確認している
「……そうだ、この資材は検証用に借り出した資材、これは資材庫に返却予定、これを資材庫側でもう一度計量すれば、単に数値の問題なのか、実際に資材が増えてるのか、そこは切り分けられる、と思うけど、どう?」
その再確認を聞いていた愛宕が再度提案して来た
「搬送用に標準量を個別梱包された資材ですよ?封冠までそのままなのに、天龍がなんて言うか」
天龍の余りに呆れた様子を思い浮かべ、気を重くする大和
「そんな事は言っていられません、司令官の要望は明確です」
再確認したでしょう、と言いたげな愛宕
「仕方ないですね」
大和としても愛宕の提案は避けられなかった模様
鎮守府-資材管理室
鎮守府所属艦:大和
大本営所属艦:愛宕
資材管理室に行ったら、天龍はこちらを一目見ただけで終わってしまった
勝手にどうぞ、という事だと判断して要件を済ませる
結果を見て、二人共暫く考え込んでしまった
「……こうなると、可能性として、残るのは……」
「……妖精さんの、悪戯?でも、そんな事が?工廠の妖精さんが資材を増やしてる?そんな事が出来るんですか?」
幾ら何でもな結論に言葉を濁す愛宕に、敢えて聞き直す大和
「わからないけど、計器類の誤作動や不具合は昔から妖精さんの悪戯って、事にはなってるし」
「……都市伝説、ですよね、原因の特定にも、要因の絞り込みにもなっていないのですが」
果たしてこんなに結果を司令官に報告して良いものか、考え込んでしまう大和と愛宕
しかし、司令官からは時間制限を言い渡されており、報告として上げざるを得なかった
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:大和/事務艦
大本営所属艦:高雄/愛宕
大和と愛宕は中間報告という形で報告、更に検証が必要と付け加えた
「……検証結果はわかった、で、都市伝説とやらを検証するのに初期艦の協力が必要と、そう言う事か?」
「はい、その通りです」
「……検証結果に疑問の余地は?試行数は一回だけなのでしょう?」
中間報告とはいえ、報告内容に眉をひそめる高雄
「良いじゃないか、初期艦は三組の初期艦が暇を持て余してるしな、事務艦、協力を要請してくれ」
「わかりました、工廠で合流してください」
司令官の指示により三組の初期艦達が工廠に集められた
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:大和/三組の初期艦五
大本営所属艦:愛宕
工廠で合流するなり楽しそうな表情の漣が一番に目に付いた
「やまちゃんてば、また面白い事やってるね」
「司令官の指示です、大和が始めた訳ではありません」
漣の言い分に一応の反論をする大和
「それで?実測値としては、増えてるんてしょ?なら、妖精さんの悪戯って訳じゃ無いと思うけど?」
漣と大和の話は傍に置いた叢雲が確認と推定を言ってきた
「……五人も応援が来るなんて、大事になってしまった……」
愛宕が何か呟いた
「ああ、気にしなくて良いですよ、なにしろこっちは司令官から直々に艦娘としての任務は無いって宣告されてますから、時期が悪過ぎましたし」
それを聞き逃さなかった五月雨が愛宕に答える
「確かに、悪過ぎるよね、あの包囲網を見たら、大規模強襲って話に異論なんて挟み様がない」
「アレへの対応に追われてる最中に着任したのでは、放置されるのも仕方ないのです」
吹雪と電も五月雨と同意見の様子
「……一層の事、戦力として出撃させてくれた方が、落ち着く処まで来てるわ」
そんな中叢雲が悔しそうに零した
「叢雲、無茶を言わないで、同名艦が出撃しているからって、貴方が気負うことは、ないのですよ」
電が宥めている
「……聞いた限りだと、囮役として、重要な役回りを任されたとか、支援に第二艦隊が付いたとか、主力艦扱いじゃない、戦力外宣告されてる私は、一体なんなの!?」
それでも叢雲は収まらなかった様だ
「戦力外なのは、大和も同じです、今は、司令官の指示を履行しましょう」
そんな叢雲に静かに声を掛ける大和
「……あんた……わかった」
「……なんか、胃が痛くなって来た、気がする……」
叢雲と大和の遣り取りが愛宕の顔に影を落としていた
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
大本営所属艦:高雄
大和達が執務室から退出した、事務艦まで用事で退出したから執務室には司令官と高雄の二人のみ
「質問しても良いですか?」
「回り諄いのは省略して良い、なに?」
「資材量のズレ、普段は誤差で処理されていると言ってましたね、今回に限って確認させている、理由はなんですか?」
「……遠征隊が出られず、資材確保に問題があるからだが?」
「それもある事は解ります、別の理由もあるのではありませんか?司令官は妖精さんと会話の出来る提督だと、伺っております、今回の大規模強襲は、妖精さんとの会話の中で予測されたのでは?資材量のズレも、何かあったのでは、ないですか?」
「……そういう、突っ込みはさ、自身に着いてる妖精さんと、してくれないかな」
鎮守府-資材管理室
鎮守府所属艦:天龍/三組の初期艦五
如何な天龍でも初期艦五人相手に引っ込んではいられず、引き出されてしまった
「確かに誤差で処理出来る量だが、それが?」
「塵も積もれば何とやら、その誤差の蓄積が結構な量になりますねぇ、その点について、天龍の意見は?」
普段は誤差で処理している量でしかない、しかし誤差は誤差、その差分はある訳でそこを問題視している漣
「……纏まった資材量を確保したら、やる事は建造か、開発か、指揮下に艦娘が居るなら修復や補給もあるが、どれだ?」
「建造、だろうね、今回の場合、開発したって装備する個体が居ないんだし」
個体が居ないから修復や補給も除外される、漣の言い分はそれを言っている
「……アメリカの司令官が呼び戻されてた、アレ?この鎮守府でも、発生すると?」
少しの間考えるようにしていた五月雨が聞いてくる
「抑えないとね、最悪でも現場は押さえたい、三組の初期艦が揃って見過ごしたとか、まーた、一号の初期艦に見下される材料になってしまう」
如何も漣は演習の時の一号の初期艦達の言い分を気にしている模様
「なら、手分けして工廠に張り付きますか?工廠組とか、一号の初期艦、更に一組の初期艦とか工廠に居る事が多い様ですが」
五月雨の提案に頷く四人、提案しか聞いてもらえなかった、提案の後にあんまり意味のある提案ではない理由を並べていた五月雨は少し困り気味の様子を見せた
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:三組の初期艦五/大和
大本営所属艦:一号の初期艦四
大本営所属艦:愛宕
鎮守府:叢雲(旧名)
「どしたの?三組揃って」
声をかけて来た一号の漣に三組の漣が応じる
「資材量のズレって話は聞きました?」
「ああ、なんかやまちゃんとあたごんが調べてたね」
「……あたごん……」
一号の漣の言い様に目を丸くしている愛宕
「資材を纏まった量確保したら、次の手は?って事で、工廠の見物に来ました」
「……次の手?」
三組の漣の云わんとする所が掴めず聞き直す一号の漣
「天龍に云わせると、建造が視野に入るそうです」
「……アメリカの?アレがここで?」
三組の五月雨の答えで事情が読めた一号の漣
「可能性の話ですよ、今の所」
それに応じた三組の漣に別口からの質問があった
「アメリカのアレって?なんの話?」
「……どちら様で?」
三組の漣が聞く、他の三組の初期艦も誰?という視線を投げていた
「……元、叢雲、村雨は分かったのに、なんで初期艦が分かんないの?」
その視線を受けて困惑気味の叢雲(旧名)
「村雨?この鎮守府に着任してましたっけ?」
三組の漣が疑問を口にした
「他所の鎮守府からの遠征隊にいた子よ」
「……叢雲?にしては、色々育ちすぎてませんかねぇ、司令官は喜ぶかも知れませんが」
「漣の口の悪さは相変わらずね、個体が違ってもそこだけは変わらない、良いんだか悪いんだか」
「御姉様?随分な云われようですが、反論は?」
三組の漣が一号の漣に話を持ち込んでいる
「……ざみちゃんの言い分を聞いてると、その気も失くなる」
持ち込まれた一号の漣は反論する気力を三組の漣に削がれていた、要は叢雲(旧名)と同じ見解を持つ模様
「まあまあ、叢雲が育ったのは確かですし、ちょっと羨ましい」
いつの間にか来ている一号の五月雨が一号の漣を宥めていた
「……羨ましいんだ、意外な感想だ」
「漣はもうちょっと発育が良ければって、思いませんか?」
「うーん、そういうのは今の所無いかな、抑、そういう状況がなかったし」
「状況の話では、無いんですけど」
一号の初期艦達の話に痺れを切らせたのか三組の叢雲が言い立ててきた
「そんな事より、工廠の設備、ちゃんと管理されてるんでしょうね、勝手に稼働したり、なんか建造したりしてないでしょうね」
「それは、工廠組に聞いて、こっちも工廠に籠る事はあるけど全部を管理してる訳じゃない」
一号の漣はそう応じるしかない
「……なんか、逃げ出してる、妖精さんが居るんだけど、なに?」
「結構な数が、逃げ出してる、様に、見えるのですが、なんでしょう?」
周囲を見回していた三組の吹雪と電が続けて感想を並べた
「逃げ出してる、というより、隠れてる?見慣れない初期艦が来たから警戒してる、のかな?」
二人の言い分を確かめてから、叢雲(旧名)が応じた
「……元、なのに、視えるんだ、妖精さん」
感心した様子の三組の漣
「……多分、今の内だけ、その内に見えなくなると思う」
外洋-包囲網の外側
鎮守府所属艦:長良/名取
鎮守府所属艦:龍田艦隊_龍田/初春/子日/若葉/初霜
鎮守府所属艦:叢雲(初期艦)
「龍驤から報告、偵察機が深海棲艦の飛翔体を多数発見、但し遠いので、当面の心配は要らないと、現在飛翔体の発生元を探索中、遠いから見つからない公算大、との事です」
時差はあったが龍驤も秋津洲が見つけたという飛翔体を見つけた様だ
「龍驤?軽空母の?来てるの?」
長良達の中に空母種の艦娘はいなかった筈、だから龍田はこっちに龍驤がいるとは思っていなかった
「あれ?話が通ってない?こっちに借り出してるんだけど」
「そう言えば、広域探索用に偵察機が必要って話になって護衛隊にって話になってた」
叢雲(初期艦)が思い出した様に言う
「自衛隊の活動が縮小されたから海域情報も自前で取らないと、いけなくなったから、仕方ないね」
子日もそれに続いた
「龍驤の偵察機で、コッチの獲物を探せない?」
龍田としては使えるのなら使いたい所だ
「それは、並行してやってもらってる、けど、手掛かりなし、包囲網の外側に目立った深海棲艦の群れは見つかってない」
長良が既に使っていた、それでも見つからない
「……見つかったのは、遠過ぎる飛翔体、ハズレ、引いたかなぁ」
作戦行動中でなければ、凪の海と晴れた空、気分良く航行出来るだろうに、今回の作戦は暗礁に乗り上げたかも知れない
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦
大和達から最終報告は来ていないが、これ以上は待てない、事務艦に指示を出す
「補給隊を編成し、出発準備を整え待機、出発は別命あるまでするなよ」
「了解、工廠組に準備させます、補給隊は長月等睦月型を中心に編成します」
「哨戒部隊の面子か、皐月が抜けてるが、代役は?」
「特型から編入します」
スラスラ言ってくる辺りから予定はしていたのだろう、しかし長月達と聞いて、思い付いた事がある
「……いや、夕張を旗艦として編成、補給隊をどの程度仕切れるか、技量を見させてもらおう」
「現状で、そういった試験的な行動は避けるべき、と考えますが……」
事務艦が明らかに反対だと顔に書いて言って来た
「それは、正論だ、だが、前に言った通り、総力戦になる、事が予測される、形振り構ってられないんだ、夕張は移籍組だ、戦力に数えられるだろう」
総力戦と聞いて事務艦の顔に書いてあった反対が消えた、その総力戦には事務艦も含まれているのだから
「わかりました」
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:明石/夕張
事務艦からの連絡に表情を暗くする夕張
「……明から様よね、この編成、補給隊を仕切れって、ここの駆逐艦とは殆ど接点が無いのに」
「司令官は移籍組の技量を知りたいのでしょう、これはチャンスと捉えた方が、良いと思うけど?」
明石からも応援なのか助言なのか、兎も角前向きにと言って来た
「……移籍組代表みたいな扱いが、嫌だって言ってるんだけど」
「そういう代表なら、もう北上が前線に出てる、今更じゃない?」
「はぁ、断る理由が無い、退路もない、やるしかないって、事か」
なんとか断れないか考えてみたものの、通りそうな説得材料が見つからなかった
鎮守府-近海(包囲網中央突破中)
鎮守府所属艦:筑摩艦隊_分艦隊_北上/木曾/神通
本気を出した重雷装艦は呆気なく進撃速度を取り戻し、軽巡二隻を引っ張りながら深海棲艦の大群を割って行った
「クッソ!まだ包囲を抜けられない!!」
「進撃速度を維持してるのに、包囲が厚すぎる、一度補給を受けられる位置まで撤収する事も、考えないと、ならないな!」
もう数えるのも面倒なくらい、北上とこんなやり取りをしている木曾
「そんな余裕はありません、ここからどうやって撤収するんですか?重巡二隻の支援砲撃は進撃を前提に為されています、進路変更は却って危険です」
北上の愚痴には付き合わず必要事項だけは言ってくる神通
「尤もなご意見ありがとよ!なら、突破するしかない!残弾はあるのか!」
両者に対応している木曾は可也忙しい様子
「誰に向かって言ってるんだ!そんな心配は、自分の兵装とすれば十分だよ!」
北上が怒鳴り返して来た
鎮守府-近海(雷撃位置=支援砲撃位置~防衛線の中間)
鎮守府所属艦:筑摩艦隊_分艦隊_筑摩/加古
観測機から北上達の様子は見えている加古と筑摩
「彼奴等、結構進んだな、突破出来そうだが、まだ、突破出来ずにいる」
「……なんといいますか、包囲網自体を引き摺ってる、感じですよね、観測で見る限りは」
若干困った様に言う筑摩、包囲網が北上の進撃に合わせて偏重して行くとは予測していなかった
「ああ、ホント、そんな感じだな、長門の遠距離砲撃もそれ用に目標を換えて来てるし」
「結果として、鎮守府から包囲網を遠ざけています、北上の働きは火力担当艦としての働きを十分に果たしている、と判断出来ます」
予測とは若干のズレはあるがもうすぐ北上達は包囲網を抜けられる、取り敢えずはそこが目標点だ
「……ただのビックマウスじゃなくて、よかったよ」
筑摩が何を考えているのか、今の旗艦は筑摩だ、動向には気を付けないとな
鎮守府-港
鎮守府所属艦:夕張/睦月型五
補給隊旗艦を命じられた夕張は渋々その準備に取り掛かっていた
「皆んな、司令官から補給隊の出発指示が出た、取り敢えず、長門と合流し、そこで補給を実施、筑摩艦隊への補給はそれと並行して状況確認後に、具体策を検討、実施となる
こっちの兵装は、ほぼ意味が無いから全部資材搬送用の機材を積む事、それが最大量を戦線に持ち込み戦闘部隊の継戦能力を維持する最適解だからね、何か質問は?」
「……最適解ってのは、わかるけど、非武装の補給隊なんて、只の的だよ、的にされるのは、何だかなー」
遠慮がちではあっても言うことは言う駆逐艦
「夕張は今回の補給隊旗艦として、色々思惑があるんだろうけど、出汁にされるのは、遠慮したいな、出涸らしにされたくない」
こっちもか、中々口の減らない子達じゃないか、頼もしい事だ
「そういう心配はしなくて良いよ、こっちもやらなきゃならないって、状況なだけだから、ここで司令官に媚びた所で、私には何のメリットも無い、もう修復は受けてるからね
あんた達から見ると、移籍組としてのメリットが見えるのかも、知れないけど」
「総力戦、司令官が言ってたって、聞いた、そういう事?」
一番大人しそうに見える子が言って来た
「……多分ね」
先を読み過ぎだとは思うが、それを気にするだけの視野を駆逐艦が持ち合わせている事に少しだけ驚いていた
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦
大本営所属艦:高雄
「補給隊、出発しました、先ず長門艦隊と合流、後に筑摩艦隊と合流予定となっています」
事務艦から報告を受けた、同時に渡された詳細が記載された書類に気になる箇所があった
「……兵装無し?夕張も資材搬送用の機材を全装備?この判断は、夕張が?」
「そうです、戦闘部隊の継戦能力の最大化にはコレが最適解と、主張したと、明石から報告がありました」
「思い切った行動に出ましたね」
高雄が感想を漏らす
「それもあるが、長月達が、良くも承諾したな、どうやったんだ?」
「明石の報告では、先の主張で反論は無かったと」
淡々と受け答える事務艦、普段なら行われない装備選択に暫く考え込んでしまった
「……あいつら、状況を重く視過ぎてるのか?」
「司令官?お言葉ですが、この包囲されている状況で、ソレは、どうかと」
高雄には異論がある様子
「あの包囲しているのは、ただの案山子だと、判明しているんだが、長月等には、伝わっていないのか?」
「……継戦能力の最大化、こちらを優先させたと、思われます」
遠慮がちに言う事務艦
「はぁ、先の広域海域展開でソレをやったからな、影響してしまったか」
鎮守府-近海(支援砲撃位置)
鎮守府所属艦:長門/夕張/睦月型五/時雨/皐月
補給に来た艦隊になんと言っていいのか戸惑っている長門、兵装を持たずに戦闘海域に来るなど提督の指示ではない、旗艦の夕張の判断だと直ぐに分かったが、それをここで言っても事態は良い方向へは向かわないだろうから
「……お前達、兵装も無しで、幾ら近海への補給とはいえ危険過ぎる、自衛用の兵装は必要だ」
苦言を呈する長門には想定外な事に反論して来たのは駆逐艦だった
「そんなこと言ったって、包囲されててその内側に長門が居て、こっちの行動圏内は全部長門の砲撃可能範囲なんだよ?兵装よりも、資材でしょ、この場合」
「長門が居るし、問題無いでしょ、何が問題なの?」
どうやら補給に来た駆逐艦達はこの旗艦の主張に賛成したのは見て取れた
「……わかった、速やかに補給を終え鎮守府に戻れ、戻るまでこの長門が支援しよう」
「それがね、そう簡単には行かないんだ、筑摩艦隊への補給があるんだよ、向こうの状況を詳しく教えて欲しいんだけど」
直ぐに鎮守府に戻そうとした所、旗艦の夕張から異論が出て来た
「……なんと、そうか、それはそうだな、しかし、難問だな」
「何が難問なのさ、僕達が補給を受けて、長月達を護衛しつつ筑摩艦隊に補給を実施する、何処に問題があるのさ」
「……北上達、分艦隊行動で、中央突破の真っ最中、幾ら何でも、アレに補給はムリ」
時雨と夕張の言い分はこの難問への回答を迫っていた、第一艦隊旗艦を拝命している長門は戦闘海域での現地指揮権を持つ、それも現地指揮権としては最上位、提督の信頼に応えなければならない難儀な立場にいた
「そうだ、確か工廠防衛で軽空母が戦力化されていたな、艦載機による支援を要請しよう、私の砲撃と噛み合えば補給隊の安全はより確実になるだろう」
「……噛み合えば、ね」
長門の提案にも楽観視はしていない夕張
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦
大本営所属艦:高雄
長門の提案は特に反対されることもなく鎮守府へ、司令官の元に通された
「航空支援?北上達への補給に必要だと、言ってきてるのか」
「軽空母の艦載機による支援を要請して来ました、軽巡戦隊は現在中央突破、包囲網分断の最中です、ここに補給となると、支援砲撃に加え、艦載機群による爆撃を実施する事で補給隊の被弾率を下げ、補給をより確実に出来ます、有効な手段であると判断します」
事務艦は長門の要請を支持している
「……数が足りれば、の話だな、五十鈴の話では軽空母は搭載機数が少なく数の劣勢は避けられない、と言っていたが、あの数を相手に有効な攻撃が出来るだけの数が揃うのか?」
「隼鷹と祥鳳が全力出撃するならば、可能と判断します」
高雄も事務艦同様に長門の要請を支持、但し条件が付いた
「鳳翔には、出来ないと?」
「鳳翔は搭載機数が最も少なく、今回の場合は工廠防衛を任せた方が良いと判断します、出来ない訳ではありません、単純に搭載機数が多い方がより有効だと、申し上げています」
「……事務艦、今の話を工廠防衛中の軽空母、指揮を執っている五十鈴に伝達、実施の可否を問い合わせてくれ」
「わかりました」
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:鳳翔/祥鳳/隼鷹
大本営所属艦:五十鈴
五十鈴から長門の要請を聞いた軽空母三隻、少し驚いた様子も見せたが異論は無い模様
「全力出撃?北上達の補給?」
祥鳳が疑問形で詳細を聞いている
「そういう依頼が、長門からあったそうよ、今、司令官から実施の可否の問い合わせを受けてる、やる?」
「そこでやらないって話が、あるのかい?あたしはヤるよ、五十鈴が駄目だっていってもヤる」
「……私の出撃は予定に無い様ですが、理由を聞いても?」
乗り気の隼鷹と対象的な質問をする鳳翔
「鳳翔は引き続き工廠防衛に当たる様に、祥鳳と隼鷹と、二人が全力出撃したら、工廠防衛は鳳翔一人でなんとかしてもらわないと、いけない、個々の搭載機数と練度を考慮したら、妥当な配分だと、思うけど?鳳翔には不満が?」
「あの数を圧倒して、補給隊を北上達に届かせるんだ、数の問題だわな、単純に」
「補給隊は兵装を装備せず、補給資材の最大量を持ち出したと、聞いています、中央突破中の北上達に、是が非でも、この資材を届けなければ、ならない、今回は練度よりも数の問題です」
鳳翔の質問には五十鈴、隼鷹、祥鳳とこの場にいる三隻から回答が出された
「まあ、そういう事になるわね、鳳翔の練度なら、工廠防衛を任せられるでしょ、誰の判断でも、不思議でもなんでもない」
五十鈴はこの戦力配置に問題無しとの考えを、重ねて示した
「……そういう事に、しておきます」
「変に勘繰る事も無い、鳳翔を出撃させずに防衛を任せる事には、司令官も高雄から助言を受けていたそうよ、あの司令官、空母種の艦娘の運用はした事ないって言ってたし」
「……確か、ソレで五十鈴が空母艦娘の指揮を執ってるんだったっけ?」
不満では無いのだろうが、一言付け加えたい様子の鳳翔に五十鈴が説明を重ねた所、隼鷹から質問が来た
「そういう事」
それには簡単に答え、警戒態勢から戦闘態勢へ移る様に指示した
鎮守府-近海(支援砲撃位置)
鎮守府所属艦:長門/夕張/睦月型五/時雨/皐月
「提督から了承の返答があった、十分後に二隻の軽空母から艦載機が全力出撃する、時雨、皐月、両名は補給隊の護衛に付き、可能な限り被害を抑えよ、補給隊は護衛を当てにして、全速にて筑摩艦隊と合流を目指す事、詳細は筑摩等と合流し、良く検討して実行に移す事、何か質問は?」
「十分後じゃ、良く検討してる間に艦載機が開けた航路をあの数で埋め戻されちゃうよ」
行動内容を説明した所、真っ先に駆逐艦から異論が飛んで来てしまった、しかも反論出来ない類のモノだ
「……成る程、それはそうだな、出撃時間を変更出来ないか、問い合わせる」
増派される艦隊なら戦闘海域に着くまでに時間がかかる、今回の来援は空母艦載機、移動速度が違った
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
鎮守府所属艦:事務艦
大本営所属艦:高雄
長門からの再度の要請を受け、困惑中の司令官
「出撃を遅らせろ?どういう事だ?」
「艦載機の移動速度と艦娘の全速では、かなりの速度差が生じます、補給隊の航路を確保する事が目的なのですから、補給隊の行動と連携させる必要があります」
「……そんなに、差が生じる?いや、確かに飛行機の方が速い、それは知ってる、でも、そこまで言う程?」
「司令官、申し上げ難いのですが、空母艦娘の扱う艦載機は、戦艦や巡洋艦の扱う観測用の複葉機とは異なる航空機だと、お考えください、飛行速度だけを見ても複葉の観測機は百から二百、単葉の艦載機は、三百から四百になります」
「……そうなの?全然違うじゃんか、五十鈴からは何も言ってこなかったぞ、こういう事態を避ける為に指揮を執って貰っているんだが!?」
「それは、後で幾らでも、今は延期乃至待機を下令してください、全力出撃が無駄、或は再攻撃が必要になってしまいます」
事務艦の助言に異論も反論も無い司令官は直ちに命令を発した
鎮守府-工廠
鎮守府所属艦:鳳翔/祥鳳/隼鷹
大本営所属艦:五十鈴
全力出撃準備中に突然の延期命令、今度は軽空母二隻が困惑中
「……出撃延期?どういう事だよ、補給が中止にでもなったのか?」
隼鷹の呟きに五十鈴が応じた
「どうやら、事務艦が艦載機運用について学習を怠らなかった様ね、司令官と違って……全く優秀と評価される訳だ、あの事務艦」
「……五十鈴?どういう事だよ、説明、はあるんだろうな」
五十鈴に不穏な気配を感じる隼鷹
「あの包囲網を崩すには艦載機による爆撃が有効、でも現状では数が足りない、それを補うには反復攻撃しかない、今回の全力出撃は補給隊の航路確保が目的、包囲網を崩す事は考慮されていない
折角全力出撃の許可が出たのだから、包囲網を分断するだけでなく、崩しに行来たかった、その為に反復攻撃が必要な戦況を作ろうとしたんだけど、事務艦に阻止されてしまった」
「……五十鈴さん?それは、鎮守府司令官の指示した作戦行動では、ありませんね、どういう事でしょうか?」
「越権行為じゃないですか、司令官の指示を無視して戦況を作ろうと、艦娘に戦闘命令なんて、どういうつもりですか?!」
五十鈴の説明に異論しかない様子の軽空母達
「どういうも何も、シロウト司令官に全権を持たせてたらいつまで経っても戦況は動かない、有効な手段が取れるのなら、ソレを実行するだけ、こんな所で沈みたくはないでしょう?」
そんな軽空母達にも全く動じることなく語る五十鈴
「……五十鈴さん、貴方は確かにこの鎮守府の所属艦では無い、ですが、空母艦娘の運用経験の無い司令官に請われ、その指揮を任された筈、その信頼を、利用した、そういう事、なのですか?」
鳳翔が確かめる様に、ゆっくりとした口調で問う
「私の姉妹艦は合同作戦でこの鎮守府に資材を運んでくる他所の鎮守府の遠征隊の護衛に付いてる、包囲網が形成されてから、状況が、聞こえないの、包囲網に風穴を開けないと、通信出来ない、船での解析だと、あの包囲網が何らかの妨害をしている事が、確実、何とかしたいの、五十鈴は」
目論見が破綻したからか、五十鈴は動機を素直に話した
「……秋津洲の報告を聞いてないのかよ、船の方に籠り過ぎだろ、少しは周りを見渡す余裕を持ったら?」
尤もそれを聞いた隼鷹は呆れていた
「どういう、事?」
隼鷹の指摘に合点がいかない様子の五十鈴
「秋津洲の二式大艇が長良達の無線を拾ってる、それに龍田達が包囲網を抜けた、戦況は五十鈴が考えてる程、膠着してないぜ、再検討してみたら?」
「……無線を、拾ってる?無事なの?長良達は」
呆れられながらも説明される状況に驚きと、安堵を見せる五十鈴
「聞いた限りじゃ無事だってさ、龍田達と合流してるトコまでは秋津洲の報告にあったな」
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
大本営所属艦:足柄
執務室の扉が静かに少しだけ開けられた、そこから顔を覗かせる足利
「司令官?少し、良いかしら?」
司令官が声の方を見れば、なんでそんな所からそんな風に覗く様にしているのか、疑問しかない
「足柄?なに、その遠慮しぃなのは、もしかして、厄介事?」
「あー、そうね、そうなるわ」
足利の肯定に『マジですか、全力で遠慮したい』と危うく言いそうになった
「……聞かないって、のは無し?」
「あー、そうなると、鳳翔達からの報告で、初耳に、なるけど、それで良い?」
これは聞いておかないと手に負えなくなるヤツだ、遠慮している場合ではなくなってしまった
「鳳翔?工廠防衛の軽空母?取り敢えず、入って来い、そんな所からでは話辛い」
鎮守府-執務室
鎮守府:司令官
大本営所属艦:足柄/高雄
鎮守府所属艦:事務艦
足利は工廠での五十鈴と軽空母達の遣り取りを報告した
「ふーん、そんな事になってるのか、メンド臭い」
「司令官、長門から出撃要請が来ました、祥鳳、隼鷹、両名に全力出撃の指示を出します」
事務艦が良く働いてくれている
「補給隊の航路を確保する様に、再度確認の後、出撃させろ」
「了解です」
事務艦が執務室を出るのを見計らって高雄が口を開いた
「……司令官、五十鈴の行為は褒められる様な類の行為では無い、それは認めます、だからと言って私達移籍組と呼ばれている全員が、五十鈴と同様の行動に出る訳ではありません、判断をお間違えにならない様、申し上げます」
「……五十鈴からは、空母艦娘による攻撃を進言された、不採用を言い渡したのは、私だ、事情を説明してもらっても、不採用の判断を変える事は無い、五十鈴にもそこは汲み取れたのだろう、話すだけ無駄だと、見做されたんだな、だから、独自判断を下し、行動に出た
五十鈴の肩書きは大本営司令長官の秘書艦だ、いち鎮守府司令官ごときに、進言を退けられたのが、腹に据えかねた、或いは、姉妹艦を心配する余り、視野狭窄を起こした、どちらにせよ、私の問題ではないな」
「……それは、どういう?」
高雄にはこちらの意図を汲み切れなかった様だ
「五十鈴は大本営所属艦、私の指揮下では無い、そもそも私の指示を履行する道理は五十鈴には、無いという事だ」
「それは、私達、移籍組にも、適応されてしまいます、司令部要員として、司令官にその様に見做されるのは、心外です」
予想通りでは無くとも的外れにはなっていない事を言い出した高雄
「だから、メンド臭いと言ってるんだ、五十鈴一人の行動で、何故移籍組全体を見做す必要がある?別個体だろ、五十鈴に支配されてる訳じゃないだろう、同名艦ですら別個体なら、同一視は意味が無い、変な括りで艦娘を見做しても鎮守府司令官としては、何の利にもならない、下手したら不利、悪くしたら実害にすらなりかねない
その程度を弁えていないと、思われる側の事も考えてくれ、メンド臭いから」
「それは、確かに、面倒臭そうね、ソレに成るのは御免被りたいくらいには」
足利がこちらの言い分に同意を示した
「だろう?話のわかるヤツが居てくれて助かるよ」
「……助けてる、つもりはないんだけど」
「細かい事を気にするな、私は助かっているんだ、それで良いじゃないか」
「悪い、よりはマシって事にしておくわ」
少しの間が空いた、その間を引き取ったのは高雄だ
「……五十鈴の処置は、どうなりますか?」
「話のわからないヤツが居ると、こうなる、足柄、意見を言ってくれ」
「放っておきましょう、というか、鎮守府司令官には、大本営所属の司令長官秘書艦をどうにも出来ない、そんな権限はないし、下手を打てば、鎮守府司令官自身が越権行為で罷免されかねない」
「……しかし、このままという訳には」
足利の意見に反対ではないが、十分ではないと言いた気な表情を見せる高雄
「その通り、コレは、大本営所属艦でケリを着けなきゃならない案件、五十鈴が約束したって聞いてる、この状況で面従腹背は有り得ない、もしもの場合でも、司令官と鎮守府所属艦の手は煩わせない、と」
十分ではない、その点には足利も異論は無い模様
「一応、確認しておくが、今ウチの鎮守府にいる大本営所属艦は移籍組とその代表の五十鈴、一号の初期艦四人、一組の初期艦二人だ、三組の初期艦は辞令を持って来たから、所属は鎮守府に移ってる」
鎮守府-近海(雷撃位置=支援砲撃位置~防衛線の中間)
鎮守府所属艦:筑摩艦隊_分艦隊_筑摩/加古
鎮守府所属艦:夕張/睦月型五/時雨/皐月
「補給が来たー!」
夕張を旗艦とする補給隊が加古、筑摩と合流した
「……加古?はしゃぎ過ぎ、補給隊の本命は北上達への補給、今上空を艦載機が通り過ぎた、もうすぐ爆撃による航路確保が始まる、私達は長門の支援砲撃の座標指示と、爆撃によって出来た航路を自身の砲撃によって確保しなければならない、難題よ?コレ」
全身で喜んでいる加古に状況の厳しさを再確認する筑摩
「筑摩は難しく考え過ぎ、要は、北上達の航跡を辿れば良いだけだ、カンタンだろ?」
しかし加古は気にしていない、筑摩の状況説明を理解していない
「……言うのはね、簡単だ、でも、そこに突入するとなると、話は難しくなる」
加古の補給に手を貸しながら時雨が補足する
「なんだよ、時雨の言い様じゃまるで難題って言ってる筑摩が突入するみたいじゃないか……えっ?!ウソ、だろ?」
漸く状況に理解が及んだ加古が信じられない、冗談だよな、とばかりに筑摩を見る
「幾ら何でも、護衛が駆逐艦二隻だけなんて、あの数に突入するのですよ?有り得ないと思いませんか?」
砲撃の手を休めずに問う筑摩、加古の補給が終わったら筑摩補給作業が始まる
「……思う、思うけど!筑摩が突入したら、ここからの支援砲撃はどうするんだよ」
「頑張ってくださいね!」
加古にとてもイイ笑顔を見せる筑摩
「……ウソ、だといって……」
補給は丁度終わった所だが、それを素直に喜べない加古だった
鎮守府-近海(雷撃位置=支援砲撃位置~防衛線の中間)
鎮守府所属艦:加古/夕張
筑摩への補給を終え、補給隊と皐月、時雨、筑摩が包囲網に、艦載機が開いた航路へ突入して行った
行ったのだが、突入するに当たって再編を如何する、とか、司令官への許可は、とか、少しの混乱があった
そんな中で、その混乱の割りを一人で喰わされた軽巡がいた
「……なんで、旗艦の私が、置いてけ堀、食らわされるの?補給隊旗艦は私なのにー!!」
「そう言うなよ、夕張が置いていかれたお陰で、こっちは助かった」
因みに補給隊の駆逐艦達は補給資材残量の再配分を行い、空になった資材搬送用機材を夕張に押し付ける事を忘れなかった
鎮守府-近海(雷撃位置~包囲網への途上)
鎮守府所属艦:筑摩/睦月型五/時雨/皐月
「ちょっと、可哀想、だったかな、夕張」
旗艦を置いて来た事を少しだけ気にしている駆逐艦
「仕方ないよ、旗艦といっても僕達と艦隊行動した事ないんだもの、この数を相手にするんだ、よく知らない艦娘は、居られても、困るし」
気にしないキニシナイ、とばかりに楽し気に話す皐月
「そう言う話は、帰ってからにしましょう、艦載機により航路は開きました、が、直ぐに埋め戻されるでしょう、その僅かな時間の中で、北上達に追い付き、補給を実施、後に反転、帰投します、但しコレは基本プランで、状況によっては変更もあり得ます、兎に角、今は、全速で行けるところまで、行きましょう」
筑摩から行動方針が示された
「みんなー、全速前進!正面は筑摩が持たせてくれるってさ!」
早速皐月の元気な声が響く
「おお、流石重巡、頼もしい」
応じた駆逐艦の声に不安を感じている様子は見えない
「駆逐艦の火力じゃ、正面を持たせるのは、無理過ぎる」
皐月と共に補給隊の護衛に付いている時雨は苦笑い
「だから、横に付いてるでしょー、牽制と陽動と釣り出しってね、三役兼ねてんだよー」
駆逐艦の火力の限界を言う時雨に駆逐艦の火力の使い様を言い返す皐月
「……ハイハイ」
そんな二人の会話を補給隊の駆逐艦達はいつも通り過ぎて聞き飽きていた
鎮守府-近海(包囲網中央突破中)
鎮守府所属艦:筑摩艦隊_分艦隊_北上/木曾/神通
何時迄も抜けられない包囲網、しかし突破しない事には話が繋がらない
「あー、木曾っち?」
そんな中突然に北上から拍子抜けする程フラットな声が掛かった木曾
「何だ!今忙しいんだ!!」
「場所変わろうか」
「?なに?」
「木曾!来てますよ!砲撃を!!」
北上が何を言ったのか理解が届かず、聞き返していた所、神通から注意が飛んできた
「あー!いつまで出て来やがるんだ!!っと?!おい!いきなり後退して来るな!衝突するだろーが!」
「だから、場所変わろうって言ったじゃん」
「?なにを、言ってる??」
北上はホントになにをいってるんだ
「弾切れ、いくら北上さまでも、弾が切れたらどうしようもない」
「???、!!!!おい、残弾確認してなかったのかよ?!」
一瞬だけ考え込んだ、直ぐに理解が追い付き思わず大声を出してしまった
「うっさい!切れたモンは切れたんだ!!しょうがないだろ?!」
北上も負けずに大声で返してきた
「逆ギレかよ、子供か?」
北上に大声を聞かされ少しだけ取り戻せた冷静さで普通に返す木曾
「木曾っちが、イジメる」
イジメる?ってホントに北上はなにをいってるんだ?
「お二方!姉妹漫才は鎮守府に帰ってからにして!深海棲艦の大群を分断中なんですよ?!」
周囲を深海棲艦の大群に囲まれている事をスッカリ忘れ果てた様子の二人に神通が痺れを切らした
「……だからなにさ、弾切れの北上さまは、もう木曾っちの背中に隠れるしか、残された道はないんだ、ああ、姉を背中に庇い一人奮戦する末っ子、木曾っち!カッコイイ~」
「……随分な、余裕が、感じられるんだが?そんなクサイ芝居何処で覚えたんだ?」
戦場真っ只中、周囲には味方より敵が多数の中で、砲弾の雨まで降っているというのに、木曾は北上の相手をしていた
「そういう木曾も、随分余裕そうですね!まだ漫才を続けられるとは!!」
一方で神通が痺れを切らすだけで無く、堪忍袋の尾が切れかかっていた
鎮守府-近海(包囲網突入~分艦隊後方位置)
鎮守府所属艦:筑摩/睦月型五/時雨/皐月
先頭を行く筑摩とその両翼に位置している皐月と時雨、当座の目標である北上達を視界捉えた
「……えーと、なにアレ」
いつにない光景にどうしようかと反応に困る皐月
「見なかった、事にしない?」
ある意味現実逃避を提案してきた時雨
「三人とも元気一杯で良い事ですね」
軽巡三隻が元気に走り回っているのを微笑ましく見ている筑摩
鎮守府-近海(包囲網突入中〜分艦隊と合流)
鎮守府所属艦:筑摩/睦月型五/時雨/皐月
鎮守府所属艦:筑摩艦隊_分艦隊_北上/木曾/神通
神通が漫才と評した状況は想定外の方向から聞こえた砲撃音により強制終了した
「!なんだ?!」
「背後からの砲撃!回り込まれた?!」
その方向を見たとき、木曾は見慣れた駆逐艦達を見た
「軽巡のみなさーん!補給隊を連れて来たよー」
皐月の元気な声が響く
「……えーと、補給?補給だって!?早く寄越せ!!!」
北上が過剰に反応している
「落ち着きなさい、こんな状況での補給はしっかりと防御策を整えてから、実施するものです、先ず私が先頭に位置し進撃速度を維持、それから……」
筑摩が行動方針を説明しようとするが、横槍が入った、神通だ
「そんな間怠っこしい事をしている余裕はありません、時雨!皐月!補給は受けましたか?」
「モチロン」
「終えてるよ」
「では、私の左右に付きなさい、今から北上と木曾が補給の為、戦列から離れます、私達で持たせますよ、良いですね!」
「「了解!!」」
「筑摩は補給隊の護衛を!補給を受けられなければ、こっちが詰みです!」
神通は駆逐艦二隻を従え先頭に立った
「……えーと、もしかして、あの神通って軽巡、カナリヤバイ?」
それを見ながら木曾に聞く北上
「今更かよ、神通に先導を任せたら、こっちが死ぬ目を見る、最後に控えてろってのは、そういう意味、だ」
「……ふーん、最後に控えさせる程か、あの神通ってのは」
場所-殆ど鎮守府の何処か、断りの無い鎮守府表記の場合は佐伯司令官の鎮守府
所属:登場人物/登場艦娘 等
~近距離無線~は通話、交信 等
上記の書き方が基本となっています、同じ所属が複数行になっている場合は行動単位
大本営所属初期艦〔一号(漣.電.吹雪.五月雨)、一組(漣.電)、二組(吹雪.叢雲.漣.電.五月雨)〕
移籍組〔修復待ちの高練度艦娘、以前の大規模海戦の帰還艦娘、現在の代表は五十鈴〕
鎮守府所属初期艦〔鎮守府配置の初期艦(叢雲)、三組(吹雪.叢雲.漣.電.五月雨)〕
工廠組〔明石、夕張、北上、秋津洲〕
護衛隊〔以前の大規模海戦の帰還艦娘、移籍組が回収されての帰還に対し自力で帰還している〕