初期の艦これ   作:弱箔

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御注意

・大幅に書き方が変わっています
・苦行用です
・長いです
・方言擬き注意

ご承知頂きたく存じます


83 司令部から報告を受けている

 

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

大本営所属艦:高雄/愛宕

 

 

工廠を出てからも精力的に動き回る司令官、今度は執務室で司令部から報告を受けている

 

「報告は何処まで纏まった?」

 

「那智から修復プランが、天龍からは大淀、夕張両名の評価が提出されています、修復プランは摩耶が資材供出を拒否している為実行不能、両名の評価は実践に対応可能と判断されています」

 

「資材不足はわかってる、実行不能なのは資材量の問題だけなのだな?」

 

「修復を必要とする艦娘も小破以上の損傷艦がいません、それに補給は終えていると報告にあります」

 

「夕張は工廠に戻った様だが、大淀は何処に行った?」

 

執務室に姿の無い大淀、職務放棄した訳でもあるまいし、司令官としてはいてくれた方が何かと助かる

 

「……ええと、暫く頭を冷やしたいと、自室に籠もっています」

 

高雄に変わり、愛宕から回答があった

 

「ん?評価に何か不満でもあるのか」

 

「いいえ、評価演習で非武装の夕張に標準装備の兵装を以って対したにも関わらず、大破した事を気にしている様子でした」

 

「……夕張を大破させたのに、不満なのか、休む前に顔を出しておくか」

 

「休む?」

 

愛宕が何故か疑問調で聞き直して来た

 

「権兵衛さんが気を使ってくれてな、寝不足の呆け頭では交渉に支障があるって事で寝て来いだとさ、意外と話せる相手かも知れない、ちょっとだけ交渉に興味が出て来た所だ」

 

「……交渉をどの様に進めるおつもりなのですか?」

 

不安そうに聞いてくる高雄

 

「まだ相手の出方が定まっていない、権兵衛さんは時間を気にしてはいるが、焦ってはいない、ここはジックリと腰を据えた対応が良いだろうと考えている、進展を急かしてもこちらに有益とは限らない、その辺りを踏まえて、私が休んでいる間鎮守府の維持に努めて貰いたい」

 

「わかりました」

 

「あっ、司令官、移籍組から通知が来ています、移籍組代表を五十鈴から伊勢、赤城の二名に変更する様ですが、承認して良いですか?」

 

思い出した様に愛宕から出て来た通知報告、忘れていたとは思わないがそういう通知は次いでの様に出て来る事では無いと思う、思うが、そこを言っても始まらない

 

「五十鈴の扱いは?」

 

「移籍組代表の肩書き以外はそのまま変わらず、大本営とのパイプ役に専念して貰う方が良いでしょう」

 

「空母種の艦娘の指揮は、司令部で執るのか?」

 

「司令部で執る事も可能ですが、司令官のお考えは?」

 

「基本的には司令部に任せる、但し鳳翔に意見を求める事、鳳翔が反対したら実行しない事、とはいえ、今空母種の艦娘は運用停止状態だ、直ぐに指揮が必要になる事態にはならないと思うが、万一の場合には、必要になる」

 

「了解です」

 

司令部との関係性が出来ていないのは所属艦娘だけでなく司令官との間にも出来ていない

これを構築するのには多くの時間が必要、その期間を上手く乗り切らねばならない

司令部の設置が吉と出るか凶と出るか、今は誰にもわからない

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)_周辺海域

鎮守府所属艦:龍驤/長良/名取

 

 

「なんというか、拍子抜け、あの包囲網をすんなりと通ったって、信じられない」

 

長良が感想を言う

 

「コッチの偵察でも戦闘行動は見つけてへん、休戦ゆうとった司令官の言い分が正確やったちゅう事やろ」

 

龍驤は淡々と事実を並べ、状況を確認していく

 

「あの無限湧きって、こういう事なんですか?あの時私達は目前の深海棲艦を撃破する事ばかりに気を取られていた、攻撃し続けた、だから反撃され数に押し切られた

そんなバカな話がありますか!?攻撃したから倍返しされてすり潰されたなんて!それじゃあ何の為に闘った?あの海戦は何だったの?!」

 

報告が信じられない、そこは長良と同じだが、あの海戦の状況と比較してしまった名取は声を荒げた

 

「名取、落ち着いて、今回とあの海戦は違う」

 

長良が名取を宥めようと声をかける

 

「何が如何違うの?!圧倒的な戦力差、勝ち筋の見つけ様も無い絶対数の差、それでも私達は目前の深海棲艦を攻撃した、収容所にいたから深海棲艦の事前情報は個体単位で其々が持ち合わせたモノしかなかった、深海棲艦に対した時攻撃以外の手段を知らなかった、それがあの結果、あの時も攻撃では無く、別の手段があったんじゃないの!?こんなのって無いよ、あんまりだよ……あの時、司令官は闘えって命じた、私達はそれに従った、司令官の命令なら確りと運用してくれる、収容所での扱いは終わったって、ようやく思えたのに、なのに……」

 

「今、そうなっとるやろ、それじゃあかんか?」

 

言葉に詰まる名取に冷静な声を、ある意味割り切った様子の龍驤が問う

 

「……今?」

 

「今の司令官がソレを魅せてくれとる、ウチはそう思うが、名取はそうは思われへんか?」

 

長良は名取を宥めるより、龍驤の言に乗り、名取にこれから、この先を見据える様に視点を変える様に方針を変更し、話を継いだ

 

「前の司令官の元に、大本営には戻らず、あの鎮守府に行って司令官に受け入れを求める、そう提案して来たのは五十鈴、提案の妥当性を見極める為に、大本営の遠征隊に紛れてあの鎮守府の司令官を初めて見た、私達は長い事五十鈴や天龍の協力で隠匿生活だった、まあ、紛れて大本営の設備は使わせて貰ってたけど、何時迄も続けられる状況ではなかったのは確かだ

切羽詰まってたのもあるとはいえ、あの司令官に賭けたのも私達だ、今回はその賭けに勝ちに行こう、前の時の様に、流されるまま、従わされるまま、命じられるままでは、賭けにならない、賭けに使われるチップでしかない、名取の言いたい事はわかるつもり、だから、今回は勝ちに行こう」

 

「……勝ちにって、どうやって?」

 

「そこは司令官からなんか言ってくるでしょ、取り敢えずは当初の指示通り、護衛隊としての任務を遂行しましょう、通信が回復しているんだ、鎮守府側の行動に合わせて行動する、コレばっかりは名取の言う様に数が違いすぎて護衛隊だけじゃ手も足も出した先から失くなるだけだからね」

 

「司令官は話をしてるって、言ってたんだよね、二式大艇の飛行士さんは」

 

「そうゆうとった、何の話かまではわからんけどな」

 

「鎮守府に乗り込んだのに攻撃して来ない獲物、大群だけど攻撃に積極性を持たない深海棲艦、そして獲物と話をする司令官、一時的との条件付きだけど確かに実現された休戦、どこまでが司令官の手腕で実現されたモノなのか、司令官は何処に向かおうとしているのか、ソレに私達は何処まで付いていくか、どれのどこを取っても見極め、判断が必要になる、護衛隊としての任務を遂行しながら情報収集だ、状況の確認が取れない事には何も判断出来ないから」

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)_周辺海域

鎮守府所属艦:龍驤/長良/名取

桜智鎮守府所属艦:熊野/鈴谷

 

 

周辺探索に協力すると言っているのに何故か放置された熊野と鈴谷は相談しつつ駆逐艦達に周辺警戒を依頼、二人は長良達との対話を試みようとしていた

 

「少しよろしくて?」

 

熊野が慎重に声をかける

 

「……なに?」

 

友好的とは言い難い長良

 

「そんなに警戒しなくて良いよ、指揮系統が違うとはいえ艦娘同士、味方だよ?私達は」

 

半分呆れながらも言葉に乗らない様に注意深く言う鈴谷

 

「あー、そっちの言い分は分かるけどな、コッチの護衛隊は事情がややこしいねん、味方や言うてくれるんは嬉しいが、それは事情を知らんで言うてええ事やないんや、悪う思わんといて」

 

そんな注意など気に止めない龍驤に軽く返されてしまった

熊野が引っかかるモノをその軽い返しに感じたらしく、それを聞いて来た

 

「……事情?あの鎮守府の所属艦にどんなややこしい事情が御在りなのです?お聞かせくださいませ」

 

「それこそ話されへんがな、聞かれてホイホイ話せる様な軽い事情や無いんや」

 

龍驤の口調と違い軽い事情ではないそうだ、熊野も鈴谷も事情を知っている訳もなく顔を見合わせてしまった

 

「でも、あの鎮守府の所属艦で、あの司令官の指揮下に居る艦娘なんでしょ、そう言うのを何とかするのは司令官の仕事じゃ無いの?なんで艦娘自身が対処を考えてるの?司令官はその事情ってのを知らないとか、知ってても放置してるとか、そう言う事?」

 

鈴谷が何とか事情と状況の整合を計ろうと知恵を絞っている

 

「司令官は大本営に、老提督に押し付ける腹積もりをしてる、その為の確約は取り付けてるって言ってた、それで済む話なら、良いんだけど、そうは行かないと思ってる」

 

鈴谷の問いに応じる長良

 

「老提督?あの老提督でも対処に問題がある事情ってどんなややこしい事情なの?全然わかんないんだけど」

 

今度は疑問しかないという心情を言葉に乗せてしまった鈴谷

一方の熊野は何やら考え込んでいたが、何らかの結論に達した様子を見せた

 

「……そこまで複雑な事情なら、確かに知らない方が良いですわ、下手に知る事でウチの司令官にまで類が及びかねません、私達を此処に派遣しているだけでもウチの司令官はかなりの無理をしています、これ以上の無理を重ねさせたくはありません」

 

「で、何の要件やったかいな?」

前段は終わったと判断した龍驤が本題を促す

 

「こちらの旗艦は長良さんでしたね、落ち着いている内に共同戦線構築の協定を纏めておきたいのです、戦闘行動が始まってからこういった問題に直面するのは避けたいですし、行動報告の際にも記載が必要になって来ますから」

 

「鎮守府間で合同作戦が実施中、それを適応して良い」

 

素直に本題に入った熊野に事務的に簡潔に答える長良

 

「それは、協力関係に付いて、です、私が言っているのは、戦闘行動、共同戦線構築の協定です、協力関係では突発的な事態にしか対応出来ません、それではここに居る戦力を十全にに活かせないでしょう」

 

熊野はそれを良しとせずに食い下がった

 

「そちらを戦力と数えるつもりは無い、貴方達は他所の鎮守府所属艦、私達護衛隊は他所の鎮守府所属艦が当鎮守府担当海域内で損傷等しない様にする事が任務、合同作戦に因り当鎮守府担当海域に他所の鎮守府所属艦が来る事が確定しているから、その対処を司令官から指示されている、それが積極的に貴方達を損傷させ、沈むかも知れない状況に連れて行けと言われても無理があり過ぎる」

 

食い下がられた所で長良の方針は変わらない、護衛隊の行動方針を通す構えだ

 

「そんな事言ったってウチの白露達がそっちの鎮守府に行ってるじゃん、こっちだって白露達を無事に連れ帰らなきゃいけないんだ、あのクソ分厚い包囲網に何をするにしろ戦力を出し惜しみしてられない、どう考えたって集中運用出来なければ孔も開けられない、その為の協定が必要なんじゃないの?」

 

鈴谷からも長良の方針に異論が出て来た

 

「あの包囲網はここに居る全ての艦娘で当たった所でどうにもならない、数が違い過ぎる、穴を穿つにしても内と外から挟撃して、可能性が少し見えてくる程度でしかない、司令官の根本的な対処が示されない現状ではどんな協定を結んでも意味を持たない、寧ろ下手に協定なんか結んだら後日に司令官を攻撃する材料にされかねない、鎮守府間の独自協力体制の構築は現状では反逆行為と、大本営は判断するだろうから」

 

「……それは、旧来の規定です、改定されていますが、ご存知無い?」

 

長良の主張に戸惑いを見せる熊野、長良の主張は理解は出来る、但しその前提を今更出されても意図がわからない

長良の主張の根拠となっている規定は改定されているのだから

 

「らしいね、そういう話は聞いた、けど、ウチには来てないんだよその話、だから貴方達の言う旧来の規定がウチには適応される事になる

大本営が名目上であっても指揮統率している限りウチの司令官には大本営という鎖に縛られる、ウチの司令官はその鎖を千切れる程の立場にはいないし、それをしたら自立勢力として全方位交渉を強いられる事も解ってる

ウチの司令官はあくまでも大本営麾下の鎮守府としての立場を維持しようとしているし、其処に私達も異論は無いんだ、だから、共同戦線構築の協定は結べない、どうしてもと云うのなら、其方の司令官からウチの司令官に話を通して」

 

長良の言い分に困った感じの熊野、だが鈴谷はその言い分から何か思い付いた様子

 

「そうか、通信は出来るんだ、白露達の事もあるし司令官に連絡取ってもらうってのは、悪くないね、熊野はどう思う?」

 

「司令官同士の直接通話は、媒体が何であれ記録されます、その為の憲兵隊であり、施設管理室なのですから、それらが活動中の鎮守府に司令官からの直接通話は、リスクが大きいと判断します、ましてあの鎮守府を包囲している半分は自衛隊です、傍受されずに通話や通信は出来ないでしょう」

 

「そうなると現地指揮を執る旗艦同士の協定の方が良いって事か」

 

折角思い付いたのに熊野のダメ出しに合う鈴谷、結局最初の結論に戻ってしまった

 

「あら?」

 

突然に上がる疑問の声、声の主は熊野だ

 

「ん?どしたん?」

 

首を傾げる熊野に聞く鈴谷

 

「今気が付いたのですけど、私達の旗艦は二人とも鎮守府へ行ってしまいましたわ、此処に残っている中に旗艦指名を受けた艦娘が居ませんね」

 

熊野の指摘に一瞬考え込む鈴谷

 

「……ホントだ、協定を結べ無いじゃん、どうすんの?」

 

「どうしましょう?」

 

熊野は首を傾げたままだった

 

 

 

鎮守府-防波堤

鎮守府所属艦:球磨/北上

 

 

「クマ〜」

 

防波堤の上で疲れた様子を見せる球磨、その球磨に歩み寄る北上

 

「どしたん?クマちゃん?まさか駆逐艦の相手をしただけで疲れ果てた、なんて事はないよね〜」

 

「……球磨に怨みでも持ってるのか?言葉が辛辣過ぎる、あの駆逐艦を撒くのにこんなに苦労するとは思ってなかった、やっぱり陸の上は勝手が違う、アレで建造艦?」

 

ウンザリ仕切りの球磨に畳み掛ける北上

 

「形振り構っていられないって言ってたでしょ?アレは大マジだ、諦めて弟子にしたら良いんじゃないかな、少なくとも言う事は聞く様になるかも知れない」

 

「そんな見え透いたトラップに引っ掛かる訳ない、アレは一度弟子にしたら習得する迄あの付き纏いをし続けるタイプだ、安心して眠る事も出来なくなる、まーた、あの漂流生活みたくなるなんて嫌過ぎる」

 

「駆逐艦だよ?耐久は軽巡以下なんだからやり様はあるでしょ」

 

暗に艦種違いの特性を活かした対応を勧める北上

 

「……そこまでする気になれないクマ、駆逐艦が沈む所を見過ぎた、駆逐艦がどれ程脆いか、駆逐艦がどれ程無鉄砲に突撃して行くか、嫌になった、戦場に立つ駆逐艦は自身を省みない、ただ、深海棲艦を撃破する事だけしか、考えられなくなるらしい、それに引き摺られ、駆逐艦と伴に在る軽巡も見たくないクマ」

 

北上の勧めは球磨のお気に召さなかったらしい

 

「でも、軽巡は駆逐艦を率いてナンボでしょ?駆逐艦を率いない軽巡の価値は何処に?」

 

「そんなのは知らんクマ、率いて行けるのなら良し、そうでないのなら相応に、多摩や北上がそうしている様に、気楽にやるクマ、ここの司令官はその辺り融通が効きそうだ」

 

「……相手が司令官なら融通は利くだろうね、ただ、ここの軽巡筆頭は龍田だ、それに第一艦隊旗艦は戦艦種の長門、駆逐艦の纏め役に初春、各所の補佐に軽巡の阿武隈、重巡の筑摩、新任とは言え初期艦の叢雲、人になってしまった元叢雲もあの司令官には付いてる、それに何と言っても駆逐艦達が司令官を支持してる、手強いよね」

 

球磨の言い分に一定の理解を示しながらも、司令官を取り巻く艦娘達がソレを赦さない

北上はそう推測している様子

 

「長良も大分苦労したらしい、名取から聞いた話だと司令官への支持が強過ぎるクマ、其処まで支持される様な司令官には見えない、球磨にもいつかは駆逐艦達が支持してる理由が解る刻が来るのかな」

 

球磨にとっては数える程しか顔を合わせていない司令官、それでも球磨には評価を下すのに十分な筈だった

現状は自身の評価と所属艦娘達の評価にズレがある、このズレの理由を球磨は見つけていない

 

「……あたしは、判りたく無い、かな」

 

北上の見解は球磨とは些か異なる模様

 

 

 

鎮守府-工廠

大本営所属艦:一号の初期艦四

 

 

一号の初期艦達はアレから行動方針を決められずに話し込んでいた、結論は当分出そうにない気配だ

 

「この状況、如何しようか?」

 

「どうにか出来るんですか?」

 

「放置は出来ないのです」

 

「だからって、何が出来るの?」

 

「……参ったね、何も思い付かない、兎に角あの包囲網をなんとかしたいけど、数が多過ぎて手が出せない、乗り込んで来たアレも第二食堂で大人しくしてるから、下手な事をする訳にも行かない、それに指揮権だけとはいえ大本営から佐伯司令官に移されてるから、余計に身動きが取りにくくなってる、詰んでる訳じゃ無いのに動けないとは、情け無い限りだ」

 

漣が吐き捨てる様に現状への不満を口にした

 

「詰んでるでしょ?この状況の何処を見たら詰んでないって事になるの?」

 

それに吹雪が異を唱えた

 

「状況はね、でも、何か出来る事があると思うんだ、それが何かが思い付かない」

 

「んー、じゃあ、相談して見ましょう」

 

五月雨から提案が出て来た

 

「……誰に?」

 

「天龍はいつも言ってました、駆逐艦の面倒を見るのは軽巡の務めだって、叢雲ちゃんの時だってややこしくする前に初めから相談に来いって言ってたでしょ?」

 

「……天龍はこの鎮守府所属艦、私達は大本営所属艦、相談するのなら、大本営所属艦で老提督秘書艦の五十鈴の方が適任だろうね」

 

五月雨の提案に漣は条件を付ける

 

「肩書きとしてはその通りなのです、ですが、五十鈴の今の立ち位置は微妙な事になっています、それでも五十鈴に相談を?」

 

電が質問?確認?して来た

 

「考え様に因るんじゃないかな、移籍組代表を解かれた五十鈴なら時間の都合も付きやすいし、能力的には問題ないんだし、姉妹艦が無事と分かれば無茶もしない、このまま四人で話し合いを続けているよりはマシだと思う、異論があるならどうぞ」

 

「異論はないけど、相談の前にもう一度状況を確認したい、ちょっと話してる時間が長かったから」

 

吹雪から現状確認の必要性が提起された

 

「……なんか動きがあった?聞こえて来てないけど?」

 

漣は吹雪の言い分に疑問があるらしい

 

「五十鈴が独断行動に出たのは船に引き籠もって状況確認を怠ったからでしょ?それを私達がやる事はないと思う」

 

再度必要性を提起する吹雪

 

「あー、周囲との整合性を欠いたから、身勝手な行動になってしまったんだ、確かに話してる時間が長かった、結論も出せなかった、これで周囲との整合性まで失くしたら、アホ丸出しだ、叢雲に何言われるか分かったもんじゃないね」

 

後半は冗談粧して応じた漣、吹雪の提起した必要性は他の初期艦達にも理解された

 

「そうなったら、きっと、漣の期待通りの事を言ってくれますよ?」

 

漣の冗談に冗談で返す五月雨、尤も冗談だと思っているのは五月雨だけだったりするが

 

 

 

鎮守府-仮眠部屋_前の廊下

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

鎮守府所属艦:大和

 

 

元事務艦、現大淀の顔を見に行き、一通りのカタを付けて休もうと仮眠室に来たら、何故か二人も仮眠室前に居るのを見つけた司令官

 

「で?お前達は何故ここに居る?」

 

「何故って、休むんでしょ?大和が二人纏まってないと護衛がやり難いって言うし、丁度良いから私も休ませて貰うわ」

 

「……何が丁度良いのか、分からんが」

 

何を言っているんだ、折角一組の二人が作ってくれた休み時間なのに何か引き延ばされる様な事態でもあったのだろうか

 

「護衛対象者の就寝時間は最も重要な確保しなければ成らない時間です、護衛を指示された以上その時間の確保は必然的に重要な任務となります」

 

何か大和から大真面目な返答が来たんだが、どうしようか

 

「指示したのは、叢雲の護衛なんだが……」

 

「大和は司令官に護衛が付いていない事を気にしてる、なら、私が司令官に付けば大和の気がかりは解消されるって事、簡単な話でしょ?」

 

叢雲(旧名)から説明?が入った

 

「自室なら兎も角、ここは仮眠所だぞ?何処で寝る気だ?」

 

「寝具が一組しかないって?だからなに?今更でしょ?気にする事?」

 

「そういう話なのか?根本的になんか掛け違えてる気がしてならないが」

 

「就寝時間は無限ではありません、特に今回は交渉相手の好意に寄り確保された時間です、有効に活用しては、如何でしょうか」

 

「……つまり、サッサと寝ろと?」

 

「そういう事」

 

 

 

鎮守府-第二食堂

???:???(権兵衛さん)

大本営所属艦:一組の初期艦二/その他少々(移籍組)/三隈/その他少々

鎮守府所属艦:初春/叢雲(初期艦)/叢雲(三組)/その他少々

桜智鎮守府所属艦:駆逐艦五

 

 

「随分楽しそうね、私も混ぜてもらって良いかしら?」

 

三組の現状確認と情報共有の結果がどうなったのかは定かではないものの、叢雲(三組)が食堂の一角に合流した

 

「……先程のイミテーションか、こちらの疑似餌は良く出来ているが、随分と造りが違うな、同型でもここまで造りに違いが出るものなのか」

 

掛けられた声に一応反応してくれた権兵衛さん、余計な感想も付けられた

 

「……そのイミテーションって、何の事?」

 

「その疑似餌って呼ぶのやめてくれる?」

 

二人の叢雲は揃って権兵衛さんに文句を言った

 

「ほう、声は似ているのだな、面白い」

 

「権兵衛さんの興味は何処に惹かれているのか、興味あるんだけど

一応紹介しておくと、今来たのが三組の叢雲、さっきから居るのがこの鎮守府の初期艦の叢雲、同型同名艦だから人からは判別し辛いと思うけど、権兵衛さんはそういう事なさそうだね」

 

漣が感心した様に言う

 

「三組?」

 

「大本営では五人一組で初期艦を運用してたから、その組み分けの番号だね」

 

「すると、三組というのなら、十五隻の初期艦が居るのか」

 

「理屈の上ではそうなる、実際には違うんだけど」

 

「違うと言っても十五隻もの初期艦を保有しているのならその内の五隻を我等に引き渡す事など簡単な話ではないか、あの鎮守府司令官は何を渋っている、引き渡せば我等は退くと言っているのだ、実際の保有数も十五隻より多いのだろう?何が障害になり引き渡しを拒むのか、理解し難い」

 

権兵衛さんの言う様に初期艦自体の数はそれなりに居る、まして複製まで可能になっているのだから権兵衛さんからすれば司令官が初期艦を出し渋る理由に疑問しか湧かなくとも不思議では無い

飽くまでも権兵衛さん側から見ればの話だが

 

「タダで渡せって言ってるからでしょ?交渉に当たって利益を得られるって誘導しておきながら、タダで寄越せって、権兵衛は詐欺を働きに来たワケ?」

 

叢雲(初期艦)から異論が入る

 

「……詐欺、ナルホド、そういう手もあるのか、考慮に入れよう」

 

「入れんな!何考えてんの?そんなので司令官と交渉しに来たって云われても、疑いしか持ち様がないじゃない、少しは信用を得ようとは思わないの?」

 

「信用?そんな概念が交渉に当たり何になるのだ?」

 

「信用もならない相手に交渉しに来たの?権兵衛は」

 

「その通りだ、その様な概念などより双方が利益を得られる交渉を纏める方が確実だ、利益となるのなら、交渉を進められるし、妥結も出来るだろう、概念では進めようがあるまい」

 

「根本的に思考が違う、例え利益を得られるとしても信用ならない相手とは交渉の妥結なんてあり得ない、何故って、その利益には少なくないリスクが内包される事になる、そのリスクを司令官か許容すると如何して考えられるの?」

 

「許容出来るだけの利益を得られるからだ、我等はソレを提供する用意がある、真っ当な思考の人ならば、利益を取る筈だ」

 

叢雲(初期艦)の主張に真っ向から異を唱える権兵衛さん

 

「その権兵衛さんの言う真っ当な人のサンプルが醜いと評した人なんでしょ?それって如何なの?ホントに真っ当な人なの?」

 

見かねた訳でも無いだろうが、漣からも疑問が出て来た

 

「……その点については、再考の余地がある様に思われる、我等も意見が割れている、交渉相手の情報が不足している事実の前には、この基準の変更を考えなくてはならない事態ではないのか、と、但し我等の目的は交渉の妥結であり、鎮守府司令官との契約の成立だ、優先順位を変更する程の事ではない」

 

「前提が誤っているのに、それを正さず交渉だけ進めようって事?無理があるとは思わないの?」

 

「根本的な前提は既に修正不能だ、そして我等はこのまま退く事は出来ない、何も得られず退くだけではタダの繰り返しだ、何度も何も得られない行動を起こしただけになってしまう

強引であれ、強行であれ、結果は出さねばならない、其処まで辿り着けて、漸く我等は自らの智慧と見識を活かせた事になる、何も得られない結果ばかりでは我等はタダの愚か者だ、ただ眠っているだけの深海棲艦と呼称されるあのモノ達に劣る存在である事の証明になってしまう

それは我等にとって許容し難い、赦されざる暴挙だ、如何なる手段を用いてでも、結果は出す、それがどんな結果であっても、そこに何かを見出せるのなら、我等は歩みを進められる、チカラを振るう以外の行動に弾みが付く

もし、我等があのモノ達に劣る愚か者でしかないと確定したのなら、この様な手間の掛かる事は一切止め、これまで通りにチカラを振るい続けていくだけだ、愚か者の知恵などに何を期待出来るというのか」

 

思い掛けず強い意志を伴った口調で口上とも思える主張をする権兵衛さん

そんな権兵衛さんに周囲の艦娘達は少し緊張感を増した

 

「なんか、随分と切迫詰まってるんだね、それはそれとして、何度もって言ったね、前にも何処かで交渉を持ちかけた事があるの?」

 

緊張感などモノともせずに漣はこれまで通りに話を続ける

漣の質問に答えるか、否か、少なくとも漣には解るくらいには我等の方々で意見交換が為された様子があった

 

「……持ちかけた、司令官は交渉の席に着いた、しかし、それは全て人の軍に寄る偽りだった、席に着いて交渉をしている最中に、軍が乱入して、司令官ごと我等を攻撃して来た、あの時の様子から推定するに、司令官は知らなかった様だ

もし、知っていたら止めただろうからな、我等に陸上歩兵の携帯兵装など何の役にも立たない、我等の装甲は戦艦の主砲弾を想定しているのだ、何故陸戦兵の携帯兵装で攻撃するのか、何を考えて為された攻撃なのか、我等には全く理解出来ない

あの交渉で得られた教訓は交渉の場は我等の手で確保する必要があるという事だ、今そうしている様に」

 

「交渉の場を確保する為だけに、あの包囲網を構築したっていうの?なんというか、如何言えば良いのか、言い様が見つからない」

 

叢雲(三組)が呆れ気味に言う

 

「それって何処?日本じゃないよね、大本営麾下の鎮守府で権兵衛さんが言う様な事態は起こってない」

 

叢雲(三組)の言い様は置いておき、漣から別の質問がなされた

 

「何故それを聞くのだ?艦娘の運用拠点としての鎮守府は現在日本とアメリカにしか開設されていない、日本でなければアメリカしかあるまい」

 

言質が欲しいのだろうと当たりを付けた権兵衛さんが素直に応じている

 

「……持ちかけた先って、もしかして、ハワイ?あそこは鎮守府じゃないんだけど」

 

漣の頭の中にはある仮定があった、それを確認する意味でも話を続ける

 

「そんな筈はない、確かに鎮守府が開設されていた、実際に艦娘の建造を行なっていた、妖精を通じて確認している、空母種の艦娘を建造した事を」

 

漣の言い分に反論して来る権兵衛さん

 

「……ハワイにはアメリカの、人の軍の司令部がある、アメリカに開設された鎮守府はアメリカの海軍とは協力関係にあってハワイ沖で建造した戦艦種の艦娘の運用試験を実施した、とは聞いてるけど、この戦艦種を建造したのは北アメリカ大陸の西海岸に開設されている鎮守府だ、そして鎮守府司令官はこれ以後の建造を許可していない、その空母種の艦娘は妖精達が勝手に建造したらしいんだ、詳細な情報は入って来てないからわからないけど」

 

漣の頭の中にある仮定が、仮定では無くなりつつある

 

「つまり、如何言う事だ?」

 

漣の話に過去の事態に対しての認識に疑問が出て来た権兵衛さん、それは口調にも乗せられて来た為にその場に居る者達にも感じられた

 

「権兵衛さんが言う交渉を持ちかけた鎮守府ってそもそもが軍事施設、人の軍なんじゃないかな、司令官というのも、艦娘の司令官ではないかも知れない」

 

「我等は人の軍に交渉を持ちかけた、そう、言うのか?」

 

漣の言い分に疑いを持ちながらも完全には否定出来ない、困惑と疑惑と若干の混乱、そんな感じの権兵衛さん

 

「交渉したっていう司令官は、ホントに艦娘の司令官だった?権兵衛さん達なら、目視で判別出来るでしょ」

 

「……まさか、初めから虚構だった?人の軍に拠る芝居を我等が見抜けなかった、結果、何も得られなかった、そういう事、なのか?」

 

半信半疑というか、信じられないあり得ない可能性を聞かされた様な驚きを見せる権兵衛さん

 

「確証は無いけど、もし、交渉したっていうのがハワイでなら、そういう可能性もあるんじゃないかな」

 

「確認する、その可能性は無視出来ない、第二工廠を貸して貰いたい、妖精もだ」

 

 

 

鎮守府-執務室

大本営所属艦:高雄/愛宕

~鎮守府内線~

鎮守府-工廠

鎮守府所属艦:夕張

 

 

権兵衛さんの要請は漣から工廠に伝えられ、工廠組の夕張が執務室に連絡を取った

工廠からの連絡に応答する高雄

 

「許可出来ません、そもそも権兵衛さんのお仲間は同調しているのではなかったのですか?」

 

要件を聞くと即答する高雄、同時に疑問を投げる

 

「そこは、こっちに聞かれても、一組の漣から要請があったって事しか分からない、詳細は漣に聞いて、工廠組としては司令部の許可があれば貸すこと自体には反対しないから」

 

話は聞こえていた愛宕が話に加わる

 

「高雄、私が食堂に行って直接聞いてくる、あそこで何の話が進んでるのかも気になるし」

 

「……漣は今、第二食堂ですね?愛宕が話を聞きに行きます」

 

順番的に留守番を断り難かった高雄は仕方ないといった感じで夕張に司令部の対応を伝えた

 

「伝えます」

 

 

 

鎮守府-第二食堂

???:???(権兵衛さん)

大本営所属艦:一組の初期艦二/その他少々(移籍組)/三隈

鎮守府所属艦:初春/叢雲(初期艦)/叢雲(三組)/その他少々

桜智鎮守府所属艦:駆逐艦五

 

 

夕張から司令部の対処を伝えられた漣

 

「あら〜、アタゴンが来るってさ、来て如何するんだろ」

 

「第二工廠は使えないのか?」

 

誰かが来るという漣、権兵衛さんは使用許可が下りなかった事を覚った

 

「司令部では許可出来ないってさ、司令官が睡眠中だから、起きてこないと許可は出ないね」

 

「確認が取れないではないか、それにも時間が必要なのに、人の睡眠時間の確保というのは予想以上に厄介だな、これではどれだけの時間が必要か、予測するのも難しい」

 

「今同調してるっていう我等の方々はその辺りの事を知らないの?」

 

漣も高雄と同様の疑問を持った様だ

 

「言ったであろう、我等の行動を制限するのは物理制限だと、距離は物理制限だ、ここに同調しているのはその制限の影響が少ない我等だ、あの交渉が行われたのはここからは遠い、距離の制限を受けるのだ」

 

「第二工廠を使うと距離の制限を受けない?なんで?」

 

「艦娘とて通信手段を使うであろう、通信は移動よりは距離の制限を受けない、同じ理屈だ、何の不思議があるのだ」

 

「通信?工廠に通信機器なんてあったかな?」

 

この初期艦は最初の初期艦ではないが、ソレに限りなく近い

そこを分かっている権兵衛さんは漣の言い分が何を意図してのモノか、本人が思い当たったのか、同調している我等の方々からの指摘があったのか、兎も角その意図を察した様子

 

「……言質を取りたいのか?初期艦ならば、妖精を媒介とした通信手段を知っているだろう、ソレを使えるのは初期艦だけではない」

 

「って事は、もしかして、コッチの内緒話とかに聞き耳立ててたりする?アレって受信制限ってないんだけど」

 

「初期艦は如何なのだ?我等の内緒話に聞き耳を立てているのか?」

 

質問に質問返しして来る権兵衛さん

 

「そういう事はしてない、そもそも想定していない相手に繋がるって事自体を想定してなかったから」

 

「想定しないのは当たり前だ、妖精を媒介とした通信手段は通信相手を選択出来ない、通信相手は妖精に依り決定される、通信の使用者には如何にもならないからな」

 

「つまり、聞き耳立てても聞けるわけじゃないって事か、受信制限じゃなくて通信仕様ってワケか」

 

納得気に頷く漣、そんな権兵衛さんと漣の一連の遣り取りに叢雲(三組)が疑問を投げかけた

 

「その妖精を媒介にした通信って、なに?」

 

「私等がテレパシーって呼んでるヤツ、覚えはあるでしょ?」

 

叢雲(三組)にカンタンに応じる漣

 

「アレって近距離じゃないと使えない筈じゃないの?ここからハワイまでの距離で使えるの??」

 

「初期艦の一部は出来る、送受信共に初期艦ならそれなりの距離でも使える筈だよ、他の艦娘だと、ムラムラの言う通り近距離でしか使えない」

 

「そんなの、知らないんだけど……」

 

驚きというよりは戸惑いとか困惑といった様子を見せる叢雲(三組)

 

「ムラムラ達はあの海戦で揃ったからね、調べてないけどあの海戦以降の初期艦と以前の初期艦で仕様が変わってる、一号の初期艦がムラムラ達を評価するのにも影響してると思う」

 

「……一号が私達を見下してるのは、ソレが原因って事?」

 

「別に見下してはいないよ、同じではないって前提があるだけ」

 

「それなら、私は如何なの?私がドロップしたのはそこまで昔のことじゃないんだけど?」

 

何か興味を引かれたらしい叢雲(初期艦)まで質問して来た

 

「……それは、第三者には聞かせられない話になる、聞きたければ後でしてあげる」

 

叢雲(三組)への対応と違い、漣は叢雲(初期艦)への答えを濁した

 

「ほう、我等には聞かせられない話になると?その様な話なら是が非でも聞きたい、鎮守府司令官が起きて来るまで時間を無為に過ごす事になりそうなのだ、少しは有意義な時間があっても良いであろう」

 

濁した答えに権兵衛さんが興味を持った模様

 

「そうよ、仕様が変わってるって如何言う事?私も聞きたいし、知らずには置けない事よね」

 

漣の言った第三者、自身はこの中に含まれると判断した叢雲(三組)

 

「ムラムラ、落ち着いて、権兵衛さんに同調して如何するの?貴方はこの鎮守府の所属艦、そこを忘れないで」

 

漣の言った第三者は間違い無く、権兵衛さんを含む括りだ

その括りに自身が含まれると判断した叢雲(三組)に注意を促す叢雲(初期艦)

 

「……言いたい事は、分かる、けど、それはソレ、これはコレ、私自身の事なのよ?放って置けないでしょ?」

 

「ハッキリ言っておく、私はこの鎮守府の初期艦、司令官に着いた艦娘、鎮守府と司令官に害となるのなら、実力を以ってでも排除する、分かった?」

 

「……自身の事より、司令官を優先しろと?任務中なら兎も角、自由行動中よ?そこまで行動制限されるっていうの?鎮守府所属艦は」

 

想定外にも叢雲(三組)が叢雲(初期艦)に喰い付いた、放って置けなくなった漣が割り込んで来た

 

「あー、ムラムラ?そこは食いさがっちゃダメ、叢雲ちゃんはこの鎮守府の初期艦、大本営で研修中だった時とは条件が違うんだ、ムラムラだって大本営所属艦からこの鎮守府所属艦に立場が変わってる、そこを踏まえないと、話が通らないでしょ?」

 

漣の言い分に何やら難しい顔をする叢雲(三組)

 

「……一組は大本営所属のままだったよね」

 

「一号もね」

 

「……漣達からも自重しろって、言ってきた、仕方ない、前言撤回、この件は後日にしましょう」

 

「ざみちゃん?聞き耳立ててるの?」

 

想定外にも程がある、鎮守府内で、然もこんな状況でテレパシー使用?

目前に居る権兵衛さんと呼称されるモノが何者かが解っているのなら、その危険性を理解出来る筈

増して我等の方々まで同調している、そこにあるリスクは半端なモノでは済まされない

 

「……テレパシーでね、あの四人は工廠の監視を指示されてるからここに来れないのよ、一号に混ざって行動してたお陰で私だけその指示を受けなかった」

 

叢雲(三組)の様子からはそのリスクを承知の上での行動とは、漣には如何しても視えなかった

 

「それも、自室待機の指示を無視してね、司令官の指示に不満があるのならちゃんと異論を唱えなさい、黙って無視とか、面従腹背は止めてもらいたいんだけど?」

 

対応に困った漣を置き去りにして、叢雲(初期艦)と叢雲(三組)は話を続けている

 

「異論ね、異論というか別の方法が有効なんじゃないかって、そう思っただけなんだけど、自由行動を言い渡されてるし、問題ないと思うけど、問題なの?」

 

「ムラムラだけが、自室待機を無視してる、後の四人は自室待機の指示に従った、単艦行動が問題なの、それを許した漣もだけど」

 

「漣が冤罪だって言ってるけど?」

 

ここで叢雲(三組)が言っているのは三組の漣

 

「漣?言いたい事があるなら、直接繋ぎなさい、ムラムラを盾にするな」

 

叢雲(三組)の言い様に不快感を見せる叢雲(初期艦)

 

「ん?テレパシーとやらで初期艦は全て繋がっているのではないのか?」

 

権兵衛さんから叢雲(初期艦)の発言に突っ込みが入る

 

「繋がってるのは三組だけ、コッチにも繋いでない」

 

それに応じたのは此処に居る一組の漣

 

「ほう、三組とやらはそこまでせねばならない程にイタズラしたのか、これは鎮守府司令官が起きて来たら、面白いモノが見れるやもしれんな」

 

「……なんの、話?」

 

権兵衛さんの言い分は叢雲(三組)にはさっぱり判らなかった

 

 

 

鎮守府-第二食堂

???:???(権兵衛さん)

大本営所属艦:一組の初期艦二/その他少々(移籍組)/愛宕/足柄

鎮守府所属艦:初春/叢雲(初期艦)/叢雲(三組)/その他少々

桜智鎮守府所属艦:駆逐艦五

 

 

「はーい!お話聞かせてね!」

 

食堂の一角を占める集団にとても明るい声が掛けられた

 

「……愛宕?少し話空気読もう?」

 

余りの明るさに漣が引いている

 

「なーにを深刻そうな顔してるの?状況は一向に好転してないんだよ?今更深刻な雰囲気だけ作っても意味無いでしょ?」

 

「雰囲気って、まあ良いけど」

 

「それで?我等は少しは有意義な時間を過ごせるのか?」

 

愛宕と漣の遣り取りを全て聞き流した権兵衛さんが話を戻しに掛かった

 

「取り敢えず、アタゴンに工廠を使う説明をしたら良いんじゃないかな、もしかしたら許可が出るかもしれないよ」

 

それに漣が応じはしたが、応じただけで意味を成していない

 

「司令部では許可を出せないのであろう?ならば説明をするだけ時間の無駄だ」

 

そこを権兵衛さんも指摘して来た

 

「で?何のお話をしてたの?」

 

明るい雰囲気をそのままに聞いて来る愛宕

 

「面倒な、おい!!そこの重巡!聞き耳立てていたのなら我に代わって説明くらいしろ」

 

「……何故バレたし」

 

呼びつけられたのは足利だ、本人的には然りげ無く聞こえている様相を装っていたらしい

 

「私としては、アレでバレないと思ってる足柄の方に疑問を持つけど?」

 

愛宕にも突っ込まれる足利

 

「愛宕、コッチから報告上げるまで待てなかったの?」

 

足利には足利の考えがあったのだろうが、ソレは誰にも理解されなかった模様

 

「ここのお話に混ざりたいのは、足柄だけじゃないんですよ」

 

「いや、私は、別に混ざりたいワケじゃ……」

 

「ふーん、混ざりたいワケじゃないのに、聞き耳は立てる、報告はするつもりだと、つまり、司令官が起きた来たら真っ先に報告しようと準備していたと、そういう事かな?」

 

言葉を濁す足利に叢雲(初期艦)が質問の様な確認をする

 

「……流石に話が話だからそこまで待ってて良いのか、自問自答になったけどね、まあ、こうなった以上、愛宕に報告で良いでしょう、報告した所で判断は司令官が起きてこないと出来そうにないし」

 

「もしかして、足柄、何か気にしてる?気になってる事があるのなら聞くけど?」

 

足利の返答に感じ取れるモノがあった様で叢雲(初期艦)が質問を重ねる

 

「あー、それは、司令官に言うから初期艦の叢雲ちゃんは気にしなくて良い、コッチの話だし」

 

「高雄達は上手く司令部を回してるのに妙高達の情報伝達が思うように行かない事を気にしてるの?」

 

「うーん、初期艦とはいえ駆逐艦、その貴方にそんなにキッパリ言われてしまうと、なんだかな〜」

 

叢雲(初期艦)の言い分に困った様子を見せる足利

 

「移籍組はこの鎮守府に所属していない、情報伝達は情報の発信者と受信者を特定出来ないと上手く行かない、司令部で情報が集まってくる高雄達とは条件が違う、妙高達は特定が出来ないと話にならないんだし、特定するにはこの鎮守府の内情を知らないとやりようがない

その辺りは司令官だって分かってる、だから結論を出して無いでしょ?それに重巡を情報伝達に使うって配置も艦種の特性からすれば不適切な訳だし、高雄達の方が重巡の使い方としては適切でしょ?気にする事では無いと思う」

 

「艦種の特性、ね、艤装があれば、そうなんだけどね、今はそれも無い、それに気にしているのは、それだけじゃないんだ」

 

足利の様子から司令部要員としての働きとは別の案件を言っている、叢雲(初期艦)にはそう思えた

 

「……羽黒?」

 

思い当たる案件を、当事者の名を、言ってみたら足利の表情が変わった

そう思った叢雲(初期艦)のカンは当たっていた様だ

 

「そう、あの子が帰還してたなんて知らなかった、未帰還者として名簿に名があった、それが、貴方を抱き抱えて目の前を通り過ぎた、私達は三人とも自分の眼を信じられなかった、あの戦いの中であの子を見たのは雪風と天津風を両翼に配して深海棲艦のかなりの大型艦に攻勢に出ようとしてた処だった、どう見ても無理過ぎた、でも、私は止められなかった、こっちも朝霜と清霜を両翼に同じ事をしようとしていたから

私は、自衛隊に拾われて帰還出来た、でも、朝霜と清霜は、未帰還、戦いの最中に二人を見失って、そのまま今日まで見つからない、妙高姉さんも那智も状況は似た様なモノ、麾下の子達を見失って、今日まで見つからない

羽黒は凄いよ、今も雪風と天津風を両翼に配しているんだから」

 

独白の様に、噛み締める様に、色々な想いが混ぜ交ぜになっている様に見える足利

あの海戦に参加した艦娘には、思う所が多いらしい

 

「……それを言うのなら、こちらも同じです、殆どの駆逐艦は未帰還者として登録されている、酷い事に出撃したのに出撃記録すら無い駆逐艦までいる

大本営と称するあの人の組織は艦娘を運用する為の組織だと、主張しているけど、実態は全く違った、それに気付くのが遅過ぎた、あの戦場で漸くソレに気付くなんて、幽閉されて情報の更新が無かった状態だったとはいえ、自分の馬鹿さ加減に嫌気がする」

 

あの海戦に参加した艦娘の一人、愛宕もソレは同様だ

 

「深海棲艦のかなりの大型艦?それはどんな特徴を持つ深海棲艦だ?」

 

足利の話に何の興味を持ったのかは不明ながら、権兵衛さんから質問が出て来た

 

「どんなって、角みたいなのが額から生えてて、物凄い色白で、黒の薄いドレス?みたいなのを纏ってた、後は、自身より大きな艤装とそれよりも大きな主砲、アレの発砲音は今でも覚えてる、単装砲で速射砲並みの連続発砲音、あの大きさであの連射は反則でしょ」

 

戸惑いながらも質問に答える足利、途中で色々思い出した様子も見受けられた

 

「……初期艦、この艤装を持たない艦娘は、あの海戦の生き残り、なのか?」

 

相手を足利から漣に替えて問い直す権兵衛さん

 

「そうだよ、この鎮守府で修復予定、だけど権兵衛さん達が交渉に来たから保留中だ」

 

「修復より戦力化、か、そうなるだろうな、修復を終えた艦娘はいるのか?」

 

権兵衛さんの問い掛けが続く

 

「いるけど、何?気になる事でも?」

 

「協議しなければならない、議題が増えた、それだけだ」

 

第二工廠から権兵衛さんが出て来た際に鳳翔が対峙した、鳳翔は以前にも対峙した相手である事に気付いた

権兵衛さんはたった今、確信した模様

 

 

 

鎮守府-仮眠部屋

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

 

 

常夜灯のみの薄暗い部屋の中で司令官が半身を起こした

 

「……」

 

「?どうしたの」

 

間を置かずに声が掛けられた

 

「ん?起こしたか?」

 

「起きてた、眠れない」

 

「横になってればその内に寝れる、寝てていいぞ」

 

「あんたは、もう起きるの?」

 

「どうやら、呑気に寝ていられない事態が起こるらしいからな」

 

「ん、じゃあ起きよう、そんな事態に高鼾出来る程の太い神経は持ち合わせてないし」

 

「……」

 

「……なによ」

 

「好きにすると良い、こっちは一風呂浴びてから第二食堂か、その前に執務室かな」

 

仮眠室を出て司令官の自室に向かった

 

 

 

鎮守府-執務室

大本営所属艦:高雄

~鎮守府内線~

鎮守府-司令官自室

鎮守府:司令官

 

 

「はい、こちら執務室、高雄です、提督?自室からですか?」

 

仮眠室に居る筈の司令官、内線番号が示しているのは司令官の自室からだ

 

「状況に変化は?」

 

「ありません、強いて言えば権兵衛さんの話し相手が増えたくらいでしょうか」

 

取り敢えず状況の不明瞭は脇に置き、司令官の質問に応じる高雄

 

「何か言って来たか?」

 

「工廠の使用許可を求めて来ました、司令部での許可は出していません」

 

「使用目的は、なんだと言ってる?」

 

「同調していない我等の方々との通信だと、確認と協議が必要だと言っています」

 

「その内容は、聞いているか?」

 

「愛宕が聞きに行きましたが、こちらに報告が来ていません」

 

「愛宕は第二食堂か?」

 

「そうです」

 

「高雄は秋津洲を捕まえておいてくれ、二式大艇に飛んでもらわなきゃならない」

 

「了解しました」

司令官から指示があった、司令部要員としては履行しない訳には行かない

 

 

 

鎮守府-廊下

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

 

 

自室から出た司令官は工廠に向かっていた

 

「で?第二食堂に行くんじゃなかったの?」

 

「明石が報告書を出してないんだ、直接聞きに行かなきゃならないだろ、文句があるなら寝てろ」

 

足早に歩いていく司令官、身長差がある為にそれを小走り気味に追う叢雲(旧名)

 

「私は、邪魔?」

 

そう言ったら司令官が足を止めてこちらに向き直った

 

「!なに?」

 

「人になって、艦娘としてのチカラを亡くした私は、邪魔なの?」

 

「何その理屈、随分と卑屈な考えだな、とても叢雲とは思えん、寝不足で頭を悪くしたのか?」

 

「……ユメを見た気がする、海の上で波に揺られ身動き出来ない、誰かに連れ去られるユメ、あなたは見なかった?」

 

寝不足を指摘して来た司令官に仮眠室で眠れなかった理由を話す

 

「その話は後だ、優先順位を間違えるな、今は護衛隊の安全確保が先だろ?」

 

そう言った司令官は再び工廠に向かって歩き出した

 

「……やっぱり、そうなんだ、あのユメ、妖精さんが魅せてくれるユメ、どこかで艦娘が見聞きした記録、それを伝えるユメなのね」

 

 

 

鎮守府-工廠(第三工廠)

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

鎮守府所属艦:明石/祥鳳/鳳翔/夕張

 

 

工廠に着いたら早速明石に見つかった

 

「あっ、司令官、もう良いんですか?」

 

「解析結果が提出されていない様だが、手間取ってるのか?」

 

「解析は終わりました、今夕張が照合してます」

 

「データベースを構築してそのまま照合作業を?」

 

データベース構築は結構な重労働の筈、そのまま続けて照合作業まで通しで行わせるというのは、流石にどうかと思う

 

「そうです、何かしていないと碌な事を考えないから仕事させろって、何時に無い迫力で迫られました」

 

明石の様子から夕張が我が儘を通した事が窺えた

 

「あー、あの演習結果、そんなに気にしてるのか、出来るのならそっとしておいてやりたいが、状況が状況だ、そこは触らずに済ませようか」

 

夕張がそんな無理を通した理由は直ぐに思い当たった、が、ソレはソレとして解析結果は貰わないといけない

 

そこに背後から声と資料が出て来た

 

「解析結果なら、ここにある、どうぞ」

 

「……夕張?大丈夫か?」

 

思わずそう聞かずにはいられなかった、聞いた所で返ってくる内容は予測出来たが

 

「モチロン大丈夫に決まってます、あの練度差で引き分けに持ち込まれたくらい何とも思ってませんよ」

 

「そういうのはしなくて良い、北上と交代して少し休め」

 

「……命令ですか?」

 

何時かの大和と似た憑かれた顔を魅せる夕張

 

「そういう台詞は、鏡を見てから言ってくれ、駆逐艦には見せられない顔してるぞ」

 

 

 

鎮守府-第二食堂

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

???:???(権兵衛さん)

大本営所属艦:一組の初期艦二/その他少々(移籍組)/愛宕/足柄

鎮守府所属艦:初春/叢雲(初期艦)/叢雲(三組)/鳳翔/その他少々

桜智鎮守府所属艦:駆逐艦五

 

 

食堂に入ったら真っ先に権兵衛さんに見つかった

 

「む?鎮守府司令官?ヤケに早いな、六時間から八時間は睡眠を取るのではなかったのか?」

 

「そんなに寝かせてくれるつもりだったのか?もしかして、権兵衛さんって良い人?」

 

「……人ではない」

 

「叢雲が付いてくるのは、まあ、分かるけど、何で鳳翔さんまで付いて来てるの?」

 

一組の漣が興味深々な顔で聞いて来た

 

「連絡の不備で司令官の護衛が不在です、復帰まで私が護衛を務めます」

 

「……大和にも休む様にと妙高が気を効かせてくれた様なんだが、何処にいるか分からんのだ」

 

鳳翔の説明を捕捉する司令官

 

「大和に護衛を再開する様に伝令を?」

 

足利からの質問だ

 

「いや、折角休んでるんだ、そのまま休ませてやろうと思ってる、だから伝達不要としたいんだが、こんな要件で広域無線を使う訳にもいかんしな」

 

「私から伝える、艦娘間の個人通話なら大袈裟にならないでしょ」

 

「頼む、足柄がいてくれて心配事が一つ減った、で?何でここに居るんだ?」

 

そう聞いたら何故かバツの悪そうな表情になる足利

 

「……そりゃあ、アレよ、ホラ、色々手が要るかと思って……」

 

「ふーん、意外と権兵衛さんに敵意とか害意とか、無いんだな、移籍組はそういうのを抑えられるか如何か、気にはしていたんだが、取り越し苦労だったか」

 

「それ、どういう意味?」

 

足利に不思議そうに聞かれてしまった、もしかして気付いていない?

 

「ほう、鎮守府司令官は気付いていたのか、我等があの海戦で艦娘と闘った事を」

 

足利の不思議に応じたのは権兵衛さんだ

 

「そちらから見れば、闘わざるを得ない状況だったんだろ?いきなり数百の艦娘が攻撃して来たんだ、応戦するなって方が無理筋だ、権兵衛さん達は人の軍を相手にしていたんだから」

 

「貴様、何処まで、視たのだ」

 

視線を厳しいモノにして来た権兵衛さん

 

「妖精さんが何処まで魅せてくれたのか、そこまでは知らん、詳しい事情も知らないが、アレは艦娘が介入せずに放置すれば良かった案件の様に、私には視えた」

 

この返事で事情を読んだ権兵衛さんは困ってる様に見えた

 

「……妖精供が、余計な真似を」

 

「それで?工廠を使いたいそうだが、何に使うんだ?」

 

そこを追求しても厄介事になる、そう見越して本題を切り出した

 

「我等は知らぬ内に人の軍に莫迦された可能性が指摘された、それを確認する、それと、この艤装を持たない艦娘等はあの海戦で戦った艦娘だと、聞いた、現状の我等だけでなく広範囲な我等の意見が必要な条件が発生した、この協議を実施する」

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:秋津洲/鳳翔

大本営所属艦:高雄

 

 

権兵衛さんを第二工廠に連れて行き、その足で執務室に来た

こちらの指示に従い高雄が秋津洲を執務室に呼んでいた

 

「待たせた、早速だが、秋津洲、二式大艇を包囲網の向こうにいる長良達に向けて飛ばしてもらいたい」

 

「哨戒任務、かも?」

 

「哨戒ではない、伝令を頼む、広域無線では都合が悪いんだ、近距離無線で連絡を取ってもらいたい」

 

「内容は?」

 

「当鎮守府所属艦娘を他の如何なる組織、軍、国家にも引き渡すつもりはない、そう伝えてくれ、後は旗艦の長良が上手くやるだろう」

 

「……それじゃあ、権兵衛さんの要求は拒否、かも?」

 

少しだけ不安そうな様子を見せる秋津洲

 

「結果としてはそうなるだろう、ただ、権兵衛さんの利益次第では、別の取り引きが成立するかも知れない、それと、鳳翔、二式大艇の護衛が出来る艦載機はあるか?」

 

秋津洲の不安は直ぐには除けない、今は条件が整っていない

今現在対応出来る事案の条件を整える為に護衛と称して付いて来ている鳳翔に聞く

 

「距離次第です、二式大艇の最大航続距離を随伴出来る護衛機はありません」

 

迷いも無く即答してくる鳳翔

 

「そこまでの距離ではない筈だ、秋津洲、往復の飛行距離は?」

 

「目的が近距離無線による通信なら長良達を探す所から始める事になるかも、飛行距離は探す時間で変わって来るかも」

 

「そうか、そうなるな、せめて龍驤との秘匿通信が確保出来ればやりようはあるんだが、仕方ない、鳳翔は艦載機を可能な限り護衛に付けてくれ、帰って来れなくなるまで飛ぶ必要は無い」

 

「司令官、護衛が必要な訳を聞かせてください」

 

鳳翔から質問が入った

 

現状で深海棲艦の飛翔体は見つかっていない、更に一時的とはいえ休戦中、ならば二式大艇に付く護衛機の相手は何処の誰なのか

 

「知らない方が良い、大人の事情ってヤツだから」

 

「……そうですか、大人の事情、ですか」

 

つまり、人の都合、二式大艇が人の手に拠り撃墜される、そう仮定しなければならない状況にある

司令官の言っている意味を鳳翔はそう判断した

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)

鎮守府所属艦:龍驤/長良/名取

 

 

広域探索中の龍驤の偵察機が同一高度で飛翔体を見つけた

 

「ん?アレは、鳳翔の艦戦やないか、増槽まで付けて何しとるんやろ」

 

「艦戦?この状況で単独飛行は無い、何を護衛してる?」

 

長良から質問が出た

 

「んー、単独飛行にしか見えへん」

 

「単機で飛んでるの?」

 

名取にも艦載機、それも戦闘機が単独飛行しているというのは不思議でしかないらしい

 

「まあ、ごちゃごちゃ考えるより、偵察機を接触させた方が早いやろ」

 

龍驤は言った通りに偵察機を艦載機に接触させるべく行動に移った

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)_周辺海域

鎮守府所属艦:龍驤/長良/名取

 

 

接触させた偵察機から報告が来た

 

「……二式大艇が着水するから、合流しろと、言っとる、どういうこっちゃ?」

 

「着水位置まで誘導するって事?なんだろう?」

 

今の状況で二式大艇と護衛隊を合流させる意図がわからない

 

「長良宛に司令官から命令やと、『当鎮守府所属艦娘を他の如何なる組織、軍、国家にも引き渡すつもりはない』なんやろな?」

 

「引き渡す?合流しろってソレの事情説明?」

 

長良の疑問は解消されない

 

「わからん、合流するのに態々コレだけ先に近距離無線で伝えて来たんは、なんでやろな?」

 

龍驤にも事情が読み切れない様だ

 

「……長良、軍による鹵獲、私達はあの海戦の生き残り、司令官が大本営に着任要請を出した事で存在が公になってる、外郭警戒中の重巡達に緊急警報を、旗艦じゃ無いと警報は出せない」

 

名取から状況の予測と対応が提案された

 

「鹵獲って、私達、鎮守府所属艦だよ?そんな事何処の軍が?」

 

長良は名取の提案に疑問しか湧かない模様、一方の龍驤は厳しい表情になっていた

 

「……そういうこっちゃか、あいつら未だに艦娘コレクションしとるんか、長良、悪いが、向こうの水上機持ちに話して、手を借りるで、ウチの重巡等手持ちの観測機で最大範囲の観測をやっとるさかい、ちぃっと、探し難いねん」

 

名取の提案を受け入れて更に行動に移そうとする龍驤にも疑問しか湧かない長良

 

「龍驤は警報を出す事に異論はないの?誤報の可能性もあるんだよ?」

 

「司令官から命令が来とるやろ、何処に誤報の余地があんねん、命令が来てる以上誤報だしたんは司令官っちゅうこっちゃやろが」

 

龍驤の指摘に漸く二人の言動に合点が行く長良

 

「ああ!!そうか、そうなるよね、いけないイケナイ、隠匿生活が長かったから、色々忘れてる、では、旗艦権限で緊急警報発令」

 

護衛隊旗艦長良から広域展開中の護衛隊所属艦娘に対し緊急警報が発信された

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)_周辺海域

鎮守府所属艦:龍驤/長良/名取

桜智鎮守府所属艦:鈴谷/熊野

~近距離無線~

桜智鎮守府所属艦:時雨/春雨/海風/山風/江風

 

 

「なに!なにがあった?今の警報!」

 

長良が警報を発した、其れ程間を置かずに此方側に残った航空巡洋艦二隻が駆け込んで来た

 

「おお、来よったか、ちょっくら手を貸してくれへんか?」

 

駆け込んで来た二人にノンビリと呼び掛ける龍驤

 

「……私はあんた達の旗艦じゃないんだけど」

 

龍驤とは違い微妙な感じの長良

 

「それより、貴方達とこちら側に残った駆逐艦達は、今何処に?」

 

そんな長良は放置して問題解決に向け動く名取

 

「時雨達なら、この島を起点に周回しています、それがなにか?」

 

熊野が名取に説明、状況を聞いて来た

 

「もし、接触して来るモノがあれば、それに取り合わず直ぐにここに来る様に連絡してもらえませんか」

 

「どういう事?」

 

名取の依頼に鈴谷は疑問しか持ち様がなかった

 

「艦娘の鹵獲を目論む何者かが、接触して来る可能性があります、司令官から警告が来ました、私達は司令官の指示に従い、これを拒否します

ですが、貴方達は他所の鎮守府所属艦、ウチの司令官の指示を根拠に出来ない、規定の上では艦娘は国の定める国際法規、軍や組織に因って結ばれている協定や条約を根拠とする要請を無視出来ない

それを鹵獲に活用する何者かが接触して来る可能性を警告されました」

 

「時雨、聞こえて?」

 

名取の話を聞き終えた熊野が無線を使い始める

 

「聞こえる、熊野かい?なにがあった?今の警報だよね」

 

直ぐに時雨が応答して来た

 

「長良達からの情報提供です、周辺海域に艦娘の鹵獲を目論む何者かがいる、そうです、五人揃っていますね?」

 

「いる、鹵獲って、なんの話さ」

 

「直ぐにこちらと合流してください、この何者かは、正式な要請を出して来る可能性があります、そうなると旗艦がいない私達は対抗手段が、要請を拒否する権限を持つ旗艦がいません、接触される前に対応する必要があります」

 

時雨からの返答に暫く間があった、直接無線を繋いでいる熊野には時雨が別回線での応答の為に空いた間だと判別出来た

 

「……熊野、少し遅かったみたいだ、春雨が海軍からの協力要請を受信、海難救助に手を借りたい、といって来た、受諾してしまった」

 

時雨の別回線での応答は長良達から受けた警告内容だった、後手に回った事を悟った熊野は状況への対応策を講じる必要を感じた

旗艦でなくとも警告された危険に身を晒す様な真似は避けたい、何よりウチの司令官は無理を押して艦隊を派遣した

この艦隊を無事に連れ帰る事を司令官は巡洋艦達に期待しているのだから

 

「仕方ありません、私も同行します、鈴谷は龍驤に手を貸してください、なにやら探しモノがある様ですから」

 

「……大丈夫?司令官に連絡取った方が良くない?」

 

熊野の言い分に心配そうに聞く鈴谷

 

「連絡といっても距離が距離です、広域無線を全力で使う事になりますよ?陸で携帯端末を使う様な気軽さではいけません」

 

「他所の担当海域だからねぇ、遠いから通信手段も限られる、だから旗艦権限なんてモノが設定されてる訳だし、仕方ないか」

 

取り得る手段と実行可能な手段は必ずしも一致しない、巡洋艦としてなら兎も角、派遣艦隊として出来る事には制限が付く

無闇に動くとソレは後日に司令官に跳ね返って来る事が確実、自分達のクビを絞める事態にも繋がりかねない

 

「事情はウチの司令官に伝える、なにか手があれば、良いんだけど」

 

鈴谷の心配事は長良も理解出来る、護衛隊旗艦としても、一隻の艦娘としても、打つ手があるのなら協力を惜しむ様な事案ではない

鎮守府からの伝令として二式大艇が来ている、活用しない手は無い

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:秋津洲

大本営所属艦:高雄/愛宕

 

 

二式大艇から秋津洲へ事態は報告され、直ちに司令官に伝えられた

 

「大艇ちゃんから報告、龍驤達との接触に問題なし、但し他所の鎮守府所属艦の駆逐艦隊に海難救助要請が出され、受諾した、駆逐艦隊は重巡と合流しつつ指定された海域に向かい救助支援を実施する見込み、かも」

 

「龍驤の偵察機で先行偵察出来ないか?」

 

報告を受けた司令官は打てる手を打っていく様だ

 

「大艇ちゃんとの接触の後収容して補給中、直ぐには無理かも」

 

「重巡なら観測機を積んでないか?それで先行偵察する様に依頼を」

 

「……重巡じゃなくて航空巡洋艦だって、水上機持ちだから先行偵察は可能、でも、観測機じゃないから下手に接触させると問題になるかも」

 

秋津洲から訂正が入った、同時に懸念も示された

 

「観測機じゃなくて戦闘機とか攻撃機って事か?」

 

「水上戦闘爆撃機だって、言ってる、救助要請した相手によっては武装した艦載機との接触をどう捉えるか、相手次第かも、それと、この駆逐艦隊には旗艦がいないって言ってる、そっちの方が当面の問題かも」

 

秋津洲からは修正と問題提起、更に輪を掛けた問題と次々と出て来た

 

「それだと、公的な要請を正面から拒否するのは難しいな、艦娘部隊は国際機関とはいえ治外法権って訳じゃないし、取り敢えず龍驤に偵察機での接触を絶やさない様にいってくれ、状況を見ないと迂闊に手出し出来ない、護衛隊の方は?」

 

次々と出て来た問題に状況不明では直接の対処仕様がない、護衛隊の行動に任せる事になる

 

「外郭警戒中の重巡は応答なし、龍驤が他所の鎮守府所属艦の手を借りて探し出す準備中、長良が警報を出したからこっちに合流する筈だって、いってるかも」

 

長良は良く状況判断をしていると判る、護衛隊は龍驤の広域探索を軸にはしているが、それとは別に独自に外洋に展開している

 

長良を始めとする遠征隊を直接援護する艦娘達、行動範囲内の海域から深海棲艦を追い払う艦娘達、ある意味で二重の防衛線を持った艦隊配置を採用している護衛隊

無補給での長期間行動、資材を自己収集出来る妖精さんを保有する長良達にしか出来ない艦隊運用だ

 

「手を借りて?航空巡洋艦ってのが複数来てる?」

 

秋津洲の報告に確認を取る司令官

 

「最上型の三番艦と四番艦が来てる、四番艦が駆逐艦隊と合流、龍驤は三番艦の手を借りるって」

 

「最上型?重巡、だよな?」

 

司令官が記憶を頼りにしたらしく首を傾げている

 

「改装で艦種変更したっていってる、鎮守府に来てる利根も艦種変更して、航空巡洋艦になってるかも」

 

「三隈と筑摩の姉妹艦か、全員ドロップ艦なんだろうとは思うが……」

 

司令官が何を言い淀んだのか気になった秋津洲はソレを聞く

 

「なにか、問題かも?」

 

「いや、艦娘は姉妹艦って言っても沢山いる、ドロップ艦と建造艦だと難しいみたいだから、ドロップ艦で揃っているのなら変に気を回さない方が良いかと思ってな」

 

「私は姉妹艦っていないから、そういうのはわからないかも」

 

司令官が言い淀んだのには理由があった、先を促したのは秋津洲だ

 

 

 

???

米海軍_対艦娘部隊_観測班:班長/班員1/班員2

 

 

長良の発信した警報は此処でも捉えられていた

 

「このタイミングで警報?これって……」

 

「間違いなくこちらの動きを見越してる、何処から情報が漏れた?」

 

「漏れた、というより、予測されたんじゃないですかね、艦娘の鹵獲作戦は二度目ですし、前回も完全な隠匿が出来ずに、日本政府に疑われたままですし」

 

班員が推定と思われる意見を言う

 

「……あの鎮守府司令官が日本政府と繋がってる?」

 

「繋がってるも何も彼、日本人ですよ?鎮守府自体も日本国内に設置されてます、前回の様に公海上で陸の見えない場所での鹵獲と同じ様には行かないでしょう」

 

「前回の鹵獲で目的を達成していれば、今回の作戦は実施しなくて済んだモノを、科学者とか研究者ってのは、予算の確保に必死になり過ぎて目的を達成する事を忘れ過ぎて困る」

 

若干愚痴気味の班長

 

「あちらにして見たら自分の研究室を確保出来るか失うかの瀬戸際ですからね、必死にもなるでしょう」

 

他人事なので他人事として感想を言う班員

 

「その結果が、今回の作戦実施だ、何度同じ手間を取らせる気だ、そもそも艦娘のサンプルなんて鎮守府を誘致して建造すれば良いのではないのか?

態々他所の鎮守府の、それも日本で運用されている艦娘のサンプルを寄越せとは、注文が過ぎるだろう、何か勘違いしてるとしか思えん」

 

その感想にも愚痴気味に応じる班長

 

「……不思議ですよね、その注文なら政府間交渉で片付くと、私なんかは思うんですけど、この作戦は実施された、これって政府間交渉がなされていないか、拒否されたって事ですよね?」

 

班員からの疑問、流石にコレには愚痴で返す訳にはいかない班長

 

「そこに口を挟みたかったら政治屋に転職するんだな」

 

「折角の提案ですが辞退しますよ、職業政治屋なんて道化者より自分には向きません」

 

 

 

???

艦娘部隊上部機関-本会議場

???:監察官/各方面代表/老兵

大本営司令長官:老提督

 

 

状況は逐一報告されていた

 

「ほう、もう警戒されたのか、素早いな、彼は何処から情報を得ている?」

 

彼、鎮守府司令官、佐伯司令官を指している

 

「彼は本当に民間起用なのか?鎮守府を包囲している深海棲艦への対応、そしてこの素早い警戒態勢、協力者或いはこの上部機関の中に指揮者がいるとしか思えない行動だが?」

 

「……私の事を言っているのかね、残念ながら、私は彼に何もしてやれなかったタダの年寄りだ、買い被られても困る」

 

老提督の発言だ

 

「……私をそういう目で見ているのか?」

 

老兵が続けて発言した

 

「いや、アメリカの鎮守府は壊滅した、その経緯からソレは否定出来る」

 

「誤解がある、壊滅したのは軍司令部だ、艦娘部隊の鎮守府ではない」

 

代表の発言を訂正する老兵

 

「ソレよ、それは予想していなかった、アメリカが打撃艦隊を複数投入したにも関わらず深海棲艦の進撃を止められなかった、この海戦に投入された艦隊は壊走、同時にハワイ諸島への上陸を阻止できなかった

主にカウアイ島への上陸と聞いているが、他のハワイ諸島へも少数は上陸しているだろう、このまま放置すればハワイ諸島全体が深海棲艦の拠点となりかねない、まさか、深海棲艦が陸に拠点を造るとは、予想外過ぎる」

 

「その新たに判明した脅威に対抗する術を捜す必要がある、その為にも艦娘の研究とより深い理解が重要になってくる」

 

「……より深い理解、司令官の資質を持たない者にそれが出来るとは思わない、貴方の言う理解と、司令官、提督の艦娘に対する理解は全く別のモノだ、艦娘部隊は司令官や提督の理解にこそ、意義を見出す方がより有意義であると、私は考えている」

 

列席の面々に自身の主張を述べる老提督

 

「研究機関には艦娘を通じて妖精と呼ばれる存在が持つ技術を解明する責務が課せられている、妖精を直接観測出来ない以上艦娘を通じて究明していくしかない」

 

「それで?前回の研究結果が未だに出ていない様だが?サンプルだけは追加すると?前回の研究結果を検討もせずに追加要求だけは通した理由を、是非聞かせてもらいたい」

 

老兵が問う

 

「サンプルが少なく結果が出せないそうだ」

 

「サンプルが多ければ結果が出せる?本気でそう考えているのかね?」

 

老提督も質問する

 

「何にせよ、現状では日本に艦娘が多過ぎる、他国に分配すべきと考えるが」

 

「……先日の報告会では、日本国内の艦娘の数が絶対的に足りない、と糾弾されましたが、アレは私の覚え違いかな?」

 

代表の言い分に老提督が質問を重ねる

 

「……日本が艦娘を独占している現状を変えたい、深海棲艦への対抗手段に成り得る艦娘は世界中で需要がある、艦娘部隊は国際機関である為商売となると難しいが、取り引きは出来る、この強い需要を取り引き材料に艦娘部隊をより強力な国際機関に育て上げ、何事をも優位に進められるだけの実権を掌握する事こそ、我々上部機関の責務であり職務ではないのか」

 

「国際機関としての実権、その取り引き材料に艦娘を充てると、知っているか?彼は艦娘を対価としても取り引き材料としても扱わない、そう主張している事を」

 

老兵が指摘する

 

「それがどうした?」

 

「今、彼は誰と休戦しているか、忘れたのか?覚えているのなら、其処から導き出される最悪の事態に少しは想像力を働かせた方が良い、それでも彼の主張に対し、それがどうした、などと云えるのなら、何を言っても無駄だろう」

 

老兵が指摘を重ねる

 

「……彼は今日本国内に居る艦娘の大多数を指揮下に置いているのだったか」

 

「直接指揮下に置いている訳ではないが、現状の予測では日本国内の艦娘の七割は彼の指揮下に入る事になるだろう」

 

代表の疑問に応じる老提督

 

「残りの三割は?」

 

「他の鎮守府に、現在稼働中の鎮守府は三箇所ある、大本営は既に艦娘の運用拠点としての意義を亡くした事は確認されている、この他の二箇所で残りの三割を持つ事になる」

 

「もし、彼を艦娘から、離したら、どうなる?」

 

代表の疑問が続く

 

「大本営はどうなった?何故大本営はそうなった?今まで散々話してきた事だ」

 

今回の上部機関本会議、何が議題で何を話して来たのか、幾ら何でも忘れるには時間が短過ぎた

 

「……つまり、現状で彼の主張を無視すれば、艦娘の離反が、大本営でそうであった様に集団でのサボタージュに発展する可能性が、高いと?」

 

「そうなった時、軍で艦娘と深海棲艦の両者を同時に相手取るのか?アメリカですら進撃を止められなかった深海棲艦に加え、人の戦術、戦略を理解し駆使する艦娘を向こうに回すのか?敢えてその方向に進まねばならない理由を、私は思い付かない、列席の方々には、どうだろうか」

 

そう老提督は呼び掛けた

 

「想定に疑問はあるが、可能性がゼロでない事は、理解した

艦娘部隊は国際機関であり、この上部機関は艦娘から理解者としての立場が重要、そういう報告は受けている、人の都合だけで艦娘を扱う事のリスクも報告されている

これらを総合的に考慮しなければ、我々の目的は達成出来ないだろう、先ずは、彼がその主張を何処まで実行出来るのか、見せてもらうとしようか」

 

この代表の発言に反論する列席の面々はいなかった

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

鎮守府所属艦:秋津洲

大本営所属艦:高雄/愛宕

自衛隊_憲兵隊:隊長

 

 

執務室の扉が叩かれた、それに応じる高雄

 

「はい、と、憲兵隊長?どうされましたか?」

 

「司令官に面会を」

 

「通して、秋津洲、悪いが、お茶を用意してくれないか」

 

「わかった、かも」

 

二式大艇からの報告の都合上執務室にいた秋津洲に雑務が言い付けられた

 

「……なんで、秋津洲?私や高雄でなく?」

 

「大本営所属艦だろ、秋津洲はウチの艦娘だ」

 

「……ああ、そういう」

 

「で、ご用件は?」

 

何時もの様に長椅子に座ったものの周囲に複数の艦娘がいる事に戸惑い気味の隊長

 

「……なんか、やり辛いな、先程海自から艦娘の発した警報らしき信号を捉えたと、こちらに問い合わせがあった、この警報らしき信号を発信したのは、司令官の指揮下にいる艦娘か?」

 

「それは、関わらない方が良い案件だと、思いますが、憲兵隊長はどうしても関わりたいですか?」

 

そう聞いたら隊長は少しだけ表情を固くした

 

「米軍絡みか」

 

「何処の軍かは、わからない」

 

「……この鎮守府には元大本営所属艦娘が着任していたな」

 

「大本営から移籍して来た艦娘ならそれなりにいるが、それが?」

 

「大本営で未帰還者として登録されていた艦娘だ、着任している筈だ、何処にいる?」

 

隊長の質問の意図を掴みかねた、所属艦娘の所在など憲兵隊の職務からすれば問う必要は無い筈だ

その必要は艦娘の身柄が不自然な場所で確保されない限り生じない筈

現状でその可能性はこの鎮守府には無い

 

「……それを、聞いて、どうする?」

 

隊長の意図を探る意味で聞いてみた

 

「矢張りその線か、逃したのか?」

 

益々隊長の意図がわからない、何かの行き違い?兎も角このまま押し問答になっても良い事はない

 

「何か、勘違いをしていないか?そもそも逃した、とはどういう意味だ、まさかその線というのは管理不行き届きを理由に憲兵隊で私を拘束する口実にでもするつもりか?」

 

「では、理由を聞かせてもらいたい、未帰還者達が今この鎮守府にいない理由を」

驚いた事に隊長はこちらの問いを否定しなかった、悪い方の可能性を言ったらそれを否定する理由を問い返して来た

この隊長の台詞に高雄が溜息を吐いた

 

「……なんというか、呆れてモノが言えないというのはこういう事なんでしょうね、誰が何を憲兵隊に吹き込んだのやら、大本営は未だ健在って事なんでしょうけど、こんなバカな案件は司令部で受けます、司令官は職務にお戻りください」

 

「司令部?そういえば、移籍組から協力者を選抜して鎮守府運営に関わらせているという報告はあったな」

 

隊長の台詞に更に呆れてみせる高雄

 

「……そこからですか、尚の事司令部で受ける案件です、司令官の時間を割く迄もありません、重要な案件が複数同時進行中なのですから、こんな些事は司令部にお任せください」

 

「重要な案件?複数同時進行?」

 

「隊長さん、貴方に俳優の素養は無いんだから、それに腹の探り合いも苦手でしょ?簡潔に言って良いんじゃない?」

 

高雄と隊長の遣り取りを見ていられなかったのか叢雲(旧名)が口を挟んで来た

 

「……あんたがそんな事を言ってくるとは、大本営所属艦って所は気にしなくて良いんだな?」

 

「ソコを気にしてたのか?ソレを気にするのは秘書艦の五十鈴だけで良い、移籍組は隊長の言う未帰還者達のお陰でこっち側に付きつつある所だ」

 

隊長の懸念事項を、意図がわからない言い回しをしていた理由を漸く理解した司令官

 

「司令官?私達は大本営に戻るつもりはありません、修復が実施されればこの鎮守府に着任します、お間違えのない様に、お願いします」

 

高雄から要望?訂正?が入った

 

「着任する鎮守府はそちらの希望を出来るだけ通す、少なくとも手続きはする、最終判断はよく考えてからで良い」

 

「なるほど、そういう事情になってるのか、で、話を戻すが、あの未帰還者達が外洋にいる経緯を説明してもらいたい、何やら海自に好ましくない動きもある、幕僚会議で何かあった様なんだが、情報が憲兵隊に回って来ない、こちらとしても司令官を拘束する様な事態は避けたい

こんな事は自衛隊内で処理すべきなんだが、私には其処までの権限はないのでね、対抗手段が欲しい、鎮守府運営への協力条項を遵守する為にも必要になる」

 

懸念事項が晴れて漸く本題に入る憲兵隊長

 

「もしかして、鎮守府への道路を封鎖してる陸自って、協力条項に基付く行動なんですか?」

 

ここで協力条項を出して来た理由が判別出来なかったので隊長に聞いてみる

 

「半々だ、何方でも対処出来る様には準備してる」

 

「それを知っていれば、移動指揮所の司令官も撤収しなかったと?なら知らずにいてくれて良かった」

 

「良くはない、その撤収を理由に艦娘との協力関係に肯定的な海自自衛官が現場から遠ざけられてる、明から様に艦娘部隊に否定的というか、そういった自衛隊員が現場を仕切り出してる、何をやるつもりなのかまでは分からんが」

 

「それが好ましくない動き?」

 

「その一つだ、その火の粉が憲兵隊にまで飛んで来てる、憲兵総監でも火元に近付けない様でコッチも困ってる」

 

「自衛隊そのものが、艦娘部隊と対立しかねない?それは勘弁してもらいたいんだが」

 

「私だって願い下げだ、ただ、憲兵総監も幕僚会議の決定には従わざるを得ない、自衛隊も官僚組織には違いないんだ、悪く思わないでもらいたい、が無理があるか」

 

「公僕としての立場は私なりに理解しているつもりです、こちらは只の一般人なので余程の理不尽でもなければ一般市民としての協力はしようと思っていますが、私にも鎮守府司令官という職務はある訳で、完全に自衛隊と立場を同じくする事は出来ない、お互い様という辺りでご理解頂きたい所ですね」

 

「……まあ、細かい所は後にしよう、海自の行動と防衛省内部での綱引きやら色々あるが、憲兵総監からは艦娘部隊との協力条項の遵守をと言ってきている、何しろ現状で憲兵隊が駐留してる鎮守府はここだけだ、艦娘部隊との協力関係を維持する事は閣議決定であり確定事項、国会の議決も取り付けて政府決定だ、これは有効性を失っていない、自衛官としては政府決定と直属の上官からのお墨付きが来てるんだ、無用な心配はしなくて良い」

 

「ここだけ?後二箇所の鎮守府に憲兵隊は駐留してない?」

 

駐留していない理由が分からずに聞いてしまった、同期の司令官は五人、同時期に開設された鎮守府は五箇所、二箇所は司令官の退役に伴って解体されたのだから駐留していなくとも解らなくは無い

 

「向こうの鎮守府はそちらの大規模増設計画で新設された鎮守府へ移転している、知らないのか?」

 

「……えっと?」

 

司令官は視線を高雄に向けた、この視線の意味は高雄にも分かった

 

「合同作戦でこの鎮守府に来る遠征隊の航路が変わっていると、指摘があり、その調査過程で鎮守府の移転が確認されていますが、これは司令部が立ち上がる前の案件です、ご存じなかったのですか?」

 

言われてみればそんな話を誰かから聞いた気がする、事務艦からの報告ではなかったから鎮守府の話になってなかった

 

「……あー、事務艦が変に気を回したのか、知ったからどうこうって話じゃないのは、そうなんだけど、話としては持って来て貰いたい案件だったな」

 

「申し訳ありません、既に報告された案件だと判断していました」

 

詫びは要らないと言っているのにソレを言って来る高雄、ソレを指摘しようとしたら愛宕に遮られた

 

「では、関連情報である鎮守府司令官と艦娘部隊との契約変更についてもご存じないのですか?」

 

「それは聞いた、契約変更を嫌って二人が退職したって話だろ、もう二人は変更に応じたと、コレ同時進行なのか、ウチには何の話も来てないんだが、どういう事だろう?」

 

「ここは向こうの鎮守府と違って抱えてるモノが多過ぎだ、安易に移転させられないって事だと、外からは見えるが、それでは合点がいかないか?」

 

何故か憲兵隊長が応じて来た

 

「色々押し付けられた結果、押し付けた側が持て余した、そういう事?大本営は監査中な訳だし、別の理由がありそうだけど、正直関わってる時間も手間の取れない、私は放置するから、必要なら司令部で対処して良い……アレ?不味いか、大本営所属艦に投げられる案件じゃないか、これは困ったね」

 

大本営を起点とする問題だからと大本営所属艦を当てる訳にもいかない、起点は大本営でも問題の発生は鎮守府で影響を受けるのも鎮守府だ、鎮守府所属艦の判断が入らないと変な所に変な亀裂が生じかねない

 

「……所属の問題でしたら、今直ぐに移籍手続きを実行して良いです、異論はありません」

 

高雄からだ、こちらの言い分を理解しての言い分だろうか、単に投げられない、任せられないと言った部分に反応しただけなのか

 

「それには修復作業が完了しないといけない、資材不足で修復作業は中断してる、手続きは出来ない」

 

「こちらから申請すれば……」

 

「言いたい事は判るが止めといた方が良い、大本営も今どうなってるか良く分からんしな、あの監査も何時迄やってるのか、そもそも何をやってるのか、こちらからは窺えないんだし、変に突っ込み所を提供することもないだろう」

 

どうも反応しただけらしい

 

「老提督は未だ大本営司令長官の立場にあります、それでも、その様にお考えなのですか?」

 

愛宕から質問が出て来た

 

「……老提督もだが、あの老兵って爺さんも可也の曲者だろ、用心に越した事はない、これだけの無茶を振られてるんだ、挙句に何も言ってこない、向こうがその気になれば私を如何にでも処理出来るだろう、そうなれば私には対抗手段はないんだ、どこを相手にするにせよ迂闊な事は出来ない、時間がかけられるのなら掛けられるだけかけて、状況を見極めないとな」

 

何時に無く愛宕の表情が固かったのは見て取れた、そんなやり取りをここまで大人しく話を聞いていた叢雲(旧名)が口を開けた

 

「間怠っこしい、あんたがその気なら、私達、最初の初期艦は全員あんたに着く、それにこの鎮守府所属になってる三組と出向扱いの一組もあんたに着く、一層の事これで艦娘部隊の実権を取れば?

そうしたらこんな面倒な話にはならない」

 

口を開けたら開けたで跳んでも無い事を言い出した叢雲(旧名)、これには流石に呆れる外無い

 

「アホか、何を言い出すのかと思えば、そんな厄介な話に出来るか、艦娘部隊の実権なんて興味ない、国際機関だぞ?

今の百倍面倒な事になるに決まってる、昼寝する暇もなくなるじゃないか、この鎮守府だけで手一杯だよ、私には」

 

予測した範囲内の答えだった様で叢雲(旧名)は司令官の言い分に反論せずに溜息一つで流した

 

「……そう言うと思った、全く、これだから権兵衛さんが利益を提供するって言っても何を提供すれば良いのか、なんて話になるのよね、バカな話と笑えば良いのか、私欲の無い司令官だと感心すれば良いのか、真っ当な人としては、如何なの?」

 

叢雲(旧名)が憲兵隊長に話を振った

 

「ん?私に聞いているのか?私は憲兵隊長であって鎮守府司令官じゃない、知らんよそんな事は」

 

いきなり振られた話に少し戸惑いを見せる憲兵隊長

 

「参考までに聞きたいんだけど、部下を数人差し出せば一生豪遊出来るだけの地下資源を提供されるとしたら、隊長は部下を差し出す?」

 

「……色々前提がおかしい、仮定そのものが成立していない、成立すらしない仮定は検討する価値すらない、参考にしたいのなら仮定が成立する前提でモノを言って貰いたい」

 

「成る程、検討の価値すらないと、権兵衛さんも交渉相手を間違えたって事ね、どこでこんな前提を仕入れて交渉に来たんだか」

 

叢雲(旧名)の言い様から件の交渉に於ける司令官の判断との比較対象にされたと判る、その経過は耳にしている憲兵隊長、しかし当人から直接回答が得られるのなら、それに越した事はないとも考えた

 

「地下資源を提供すると、言って来たのか?」

 

「利益の参考例として言ってきた、換金手段がないから断った」

 

「あー、日本で地下資源の換金手段か、それは、難易度高いな、他にどんな利益提供を言ってきたんだ?」

 

「鎮守府担当の海域での戦力提供、これには継続性が必須だ、権兵衛さん達との関係を維持、継続する事が前提になる、私の独断では決められない」

 

「戦力、提供?海域の安全を権兵衛さんが提供すると?如何やって?」

 

「知らん、権兵衛さん達に言わせるとその程度の事らしいが、さっぱりわからん」

 

「権兵衛さん達は極一部、だと言っていたな、深海棲艦と一括りにしているが、派閥みたいなグループに分かれているのか?」

 

「派閥というのは大枠では同じ集団の中での話、権兵衛さん達をそう見做すのは人の視点、向こうから見れば無意味な話だ」

 

「人だからと一括りに見做して国単位を派閥と見る様な話になってしまう、という事か?」

 

憲兵隊長から確認の様な質問が出て来た

 

「スケールを如何取るか、だよね、これまでの話からは私と権兵衛さん達との間のスケール感にもズレがある、向こうのスケールからすれば私ではなく大本営に行ってもらわないと話が合わないだろうに、何故かこの鎮守府での交渉妥結に拘ってる、如何したものか」

 

鎮守府司令官の言い様に自衛隊としての行動を挟める余地を見た憲兵隊長は自衛官、陸自一佐としての左官の仕事を始めた

 

「……もし、可能なら、憲兵総監を始め、政府側の官僚、関係政治家がこの鎮守府で、交渉の席に着く事は出来ないか?」

 

「権兵衛さんと、交渉を望んでいる政府関係者が、多いって事?」

 

鎮守府司令官は憲兵隊長の予想に反し異論では無く質問して来た

 

「多いのか、少ないのか、割れている事だけは確かだ」

 

変に飾っても仕方ない案件だ、それにこの鎮守府司令官、民間上がりだと見做して下手を打つと艦娘を相手にするよりも厄介な事態を引き起こす事を経験上から知っている憲兵隊長

 

「そうは言っても鎮守府は大本営麾下、日本政府とは艦娘部隊を経由した関係しかない、今回の交渉の席に着くには、当事者としての立場には無いと思う、少なくとも大本営からそういう指示が無いと鎮守府側だけでは無理筋だ」

 

「……どうにか、出来ないか?」

 

左官としての仕事は簡単には進まない

 

「如何してもというのなら、大本営司令長官の秘書艦が当鎮守府に滞在している、そちらへどうぞ」

 

「そうなるのか、わかった、では後で部下を来させるので、未帰還者についての話は司令部で対応をお願いしたい」

 

「本気?」

 

叢雲(旧名)に聞かれた

 

「……宮仕えの何とやらってヤツだ」

 

憲兵隊長は叢雲(旧名)、元鎮守府配置の最初の初期艦にそう返した

 

 

 

 

 

 

 





場所-殆ど鎮守府の何処か、断りの無い鎮守府表記の場合は佐伯司令官の鎮守府
所属:登場人物/登場艦娘 等

~近距離無線~は通話、交信 等

上記の書き方が基本となっています、同じ所属が複数行になっている場合は行動単位




大本営所属初期艦〔一号(漣.電.吹雪.五月雨)、一組(漣.電)、二組(吹雪.叢雲.漣.電.五月雨)〕

移籍組〔修復待ちの高練度艦娘、以前の大規模海戦の帰還艦娘〕

司令部要員〔高雄.愛宕.摩耶.妙高.那智.足柄.三隈〕




鎮守府所属初期艦〔鎮守府配置の初期艦(叢雲)、三組(吹雪.叢雲.漣.電.五月雨)〕

工廠組〔明石、夕張、北上、秋津洲〕

護衛隊〔以前の大規模海戦の帰還艦娘、長良を始め帰還後に原隊の大本営に戻らなかった艦娘達、広域探索役として龍驤が加わっている〕



上記の初期艦の所在
・二組の初期艦は大本営に、老提督から長期休暇を取らされるも老提督の補佐に勝手に着いている
・他は舞台となっている鎮守府(佐伯司令官の鎮守府)に所属、出向、立ち寄りなどで滞在中



艦娘について
・鎮守府の大規模増設計画に伴い、初期艦達が配置する艦娘の問題解決手段として艦娘の複製(正確には妖精さんの増殖)手法を確立、作製(建造)に至っている
・本編中では複製艦娘達は新規格の艦娘と呼ばれている
・この新規格の艦娘は新規設計の第三工廠、或はそれに準じる工廠にて作製可
・初期艦も複製可能となり増設計画に拠って増設された鎮守府に配置され、留守番中




・工廠に陣取る軽空母達、鳳翔、祥鳳、隼鷹
・工廠防衛を指示されている
・ちょっとした問題が発生、待機中



・他所の鎮守府所属艦娘達(桜智鎮守府所属艦)
・白露型十、航空巡洋艦三
・包囲網を通って鎮守府に来たのは利根、白露、村雨、夕立、五月雨、涼風
・時雨は同名艦が居ると聞いて残留
・改白露型三隻は内輪の事情により残留
・春雨は他所の資材採掘地に興味深々で残留を希望
・最上型三番艦、四番艦は護衛隊の周辺探索に協力する為に残留




鎮守府間の合同作戦
・老提督(大本営司令長官)からの依頼が起点、大本営から許可を得ている作戦行動
・大本営内で引き籠もり状態だった帰還艦娘達を修復し現役に復帰させる
・引き籠もり状態だった帰還艦娘達は艤装を喪失している為、現役復帰には再艤装が必要
・帰還艦娘の修復(再艤装)には相応量の資材を要する
・必要となる資材の採掘と備蓄、運搬を稼働中の全ての鎮守府で行う協力体制を構築済み
・現状は実行中ではあるが、諸般の事情により事実上の停止状態


鎮守府大増設計画
・老提督から再度の無茶振り、但し佐伯司令官は他所の司令官にこの無茶振りを直には伝えていない
・この無茶振り自体は広範囲な噂話として知れ渡っている
・他所の鎮守府では資材供給以外に実行可能な行程として関われる箇所がない
・前述の理由もあり合同作戦をそのまま延長して諸般の厄介事を回避する腹積もり
(合同作戦の際に色々あった、特に二箇所の鎮守府で運用方針の違いが発露し所属艦娘数が減少した)
・他所の司令官達からは何の質問も問い合わせも佐伯司令官に寄せられていない
・鎮守府の設置自体は大本営所属艦で実行、配置する初期艦、工廠妖精さんは第三工廠で複製を作製
・現状は実行中ではあるが、諸般の問題が起こって事実上の停止状態



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