初期の艦これ   作:弱箔

89 / 96


御注意

・大幅に書き方が変わっています
・苦行用です
・長いです
・方言擬き注意

ご承知頂きたく存じます


84 次の行動

 

 

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)_周辺海域

鎮守府所属艦:龍驤/長良/名取

 

 

状況監視中の龍驤、偵察機により監視態勢は充実しているが、監視した所で次の行動を起こす事が出来ずにいた

 

「クソッタレが〜、艦戦足りなさ過ぎや、偵察任務やからって偵察機ばっかもってきてもうた、あんの艦娘コレクションしとるアホンダラにお仕置き出来ひんやないか」

 

何とも成らない手持ちの艦載機達、龍驤に後で司令官に文句を付けるリストにこの件も加えた

 

「艦娘コレクションねぇ、私は話でしか知らないんだけど、名取は直接見たの?」

 

「見たというか、コレクションされかけた、私がそうならなかったのは、多分深海棲艦の所為、お陰と言うべきなのかな、私を引き揚げようとした艦船に誰かが魚雷を放った、その雷跡に驚いて逃げ出したから、私は今ここに居られる、まあ、長期間の漂流生活とコレクションされるのと何方が好待遇なのかは、わからないけど」

 

「……妖精さんやないか、ソレ、名取は何時資材妖精さんと修復妖精さんに着かれたんや?」

 

取り敢えずは文句を付けるリストに加える事で気分を落ち着かせた龍驤が名取の話に参加して来た

 

「……何時って、何時の間にか、としか、波に揺られるまま漂流していたから時間感覚なんてなくなってた、ただ浮いているだけ、沈み損なったって、ずっと思ってた」

 

「私の場合は大破漂流して割と直ぐだった、沈み切れなくて辛うじて浮いている所に何処かから妖精さんが寄って来て資材を生成し始めて、それを使って修復を始めた、時間は掛かったけど小破ぐらいの損傷まで戻った所からゆっくりと日本への帰路に着いたんだ」

 

名取と長良が龍驤に応じている

 

「寄って来た妖精さんを素直に受け入れたんか、ウチはナニモンやって聞いてもうたわ、アレがイカンかった様でな、それっきり寄って来いへん様になってもうた、失敗やったわ」

 

「龍驤は、自衛隊に拾われて日本へ戻ったんだよね、それなのにその、艦娘コレクションとかいうのをなんで知ってるの?」

 

自身の体験を語った龍驤に長良からの質問だ

 

「ああ、ソレな、ウチはコレクションされたんや、されたんやけど、あの龍驤やって分かった途端に海に放り出されたわ、なんやねんな、引き揚げてから放り出すやなんて、なにさらしとんねんアイツラ、今度会うたらシバイたると決めてんねん、邪魔せんといてや」

 

口調こそ軽かったが、眼が笑ってない

 

「放り出された?外洋で?沈まないくらいの損傷だったの?」

 

お互い高練度艦同士、誰に矛先を向けているかくらいは取り違えたりはしない

攻撃色を湛える龍驤の眼にも臆する事無く聞く名取

 

「あの海戦でそないなわけあるかい、大破を通り越しとったわ、偶々気密が確保されとったなんかのタンクがあったさかいその浮力頼みで漂流しとった」

 

「タンク?大破を通り越してるのに無事なタンクがあるなんて、凄い幸運ってトコかな」

 

「ウチの艤装のタンクちゃうで、アイツラがウチと一緒に海に放り出した廃棄物の中に紛れてたんや、アイツラ艦娘の艤装には興味ないらしいで、持っとる艤装の断片まで剥がして廃棄しとったからな」

 

「剥がして?剥がしてってどういう事?」

 

「やから、アイツラの目的は艦娘の船体だけやっちゅうことや、それをコレクションしとるアホンダラ供や、お仕置きせな、こっちの気が済まんわ」

 

「大本営が私達を未帰還者として未だ登録を変更しない理由は、その辺りを知っているから?」

 

未帰還に成っている期間を考慮すれば戦没扱いに変更されていても不自然では無い

寧ろこれだけの期間が過ぎているのに未帰還者登録が維持されている事の方が不自然だ、官僚主導なら杓子定規に一定期間が過ぎたら登録を一斉変更しそうなモノだ

 

「何処まで知っとるのかは、わからん、ウチも日本へ戻ってから事の顛末を大使館に垂れ込んだったから、そっちの影響もあるんかもわからん」

 

「……パラオ?」

 

「そういうこっちゃ、あの龍驤やっちゅうのなら、使えるモン使こうたるわ」

 

「変な所で怪文書扱いになってなければ良いんだけど」

 

 

 

鎮守府-旅客船(移籍組宿舎)_五十鈴私室

大本営所属艦:五十鈴/一号の初期艦四

 

 

「……私の所に相談に来るなんて、一体何を企んでるの?」

 

いつも通りの五十鈴、移籍組内部で色々あった筈だが、目の前にいる軽巡からはいつも通りとしか思えない雰囲気しか感じない駆逐艦達

 

「それはもう、アレですよ、こっちは四人で知恵を絞っても良い考えが出ないんで、軽巡の智慧を借りようと、ホラ、天龍が何時も言ってるてしょ?駆逐艦の面倒を見るのは軽巡の役割だって、五十鈴には天龍の言い分に異論が?」

 

いつも通りの雰囲気に安心した漣がいつも通りに話をしている

 

「はぁ、大本営に居る二組からも連絡があった、あんた達とおんなじ事を言ってたわ、全く如何して駆逐艦って変な所で意見を一致させて来るのやら」

 

「……二組から?何を言って来たんですか?」

 

大本営に居る二組の初期艦達、老提督の、大本営司令長官の補佐役を買って出ていた筈、それに天龍達が大本営を離れたと聞いている

現状で大本営に残っている艦娘は二組の初期艦だけと推定される

 

「老提督が上部機関の本会議に行ったきり戻らない、様子も見れない、何か手を打ちたいけど下手に動くと老提督を口撃する材料になりかねない、良い手立てはないかってね」

 

「様子も見れない?二組の妖精さんが本会議場に入れないって事、ですか?」

 

五十鈴の話に疑問しかない電、艦娘部隊上部機関の本会議場、名称の仰々しさからそれなりの警備体制はあるだろうが、それは人を対象にした警備体制の筈

対妖精さんの警備体制を敷いている?そんな事が上部機関に可能なのか

 

「らしいわね、如何やら本会議場に妖精さんを従えられるモノがいる様ね、人なら提督って事になるけど、上部機関に提督が居るって話は聞いた事ない、司令官の資質だって老提督や老兵さんの事は公になってる訳だし上部機関に提督が居るのなら隠す事は無いと思うんだけどね、その辺りがどうなっているのやら、一号のあなた達も現状での有効な手立てを相談に来たって事で良いのかしら?」

 

「……まあ、そんな所です、でも、上部機関が本会議場から妖精さんを閉め出せるなんて、ホントにどうやってるんでしょう?」

 

五十鈴の話にいつも通りの雰囲気を取り繕わなくては為らなくなった漣

 

「妖精さんを見ることの出来ない人に妖精さんを締め出す事は不可能、少なくとも妖精さんを見ることの出来る司令官の資質を持つナニモノかがいるって事、妖精さんを使役しているのなら、提督が居る

ただこれまでの上部機関の言動から上部機関在籍者の中に提督がいる可能性は低いと考えてる、そういう立ち位置に就ける提督が居るのなら上部機関で艦娘部隊の主導権を取りに来る筈

現状は老提督の主張に沿った形で日本国内で主導されてるんだし、それ以外に艦娘に対して手の出し様が無かったから否応無く現在の形になった

今になって提督が見つかったのなら、ソレはソレで上部機関の言動に今より過激な変化があってもおかしくない、けれど、そうはなっていない、これらの事情から、考えられる可能性は?」

 

五十鈴が敢えて初期艦達に問う

 

「……外部から、接触があった、提督が上部機関と接触、そのチカラを上部機関に貸している?」

 

吹雪が応じた

 

「多分ね、でも、上部機関は国際機関、ただの人がそう簡単に入り込める様な組織じゃない、相応の社会的地位を持つ人、という事になる、そうでなければココの司令官だって上部機関に招致されているでしょうから」

 

「……ただの人ではない、もしかしたら、人、ではない、とか?」

 

電が可能性を指摘した

 

「その可能性もある、けれど、相応の社会的地位を有すると考えられる、あんまり考えたくはないけれど、深海棲艦の中に人の社会で上手く地位を確立した個体が居るのかも、知れない」

 

「深海棲艦が支援に付くのなら、海上貿易とか海底資源とか、海産物とか、スッゴイ事になりますね、全部合わせても五百に届かない艦娘ですらこの現状ですし、絶対数がこの十倍以上の深海棲艦から供給される物資を背景に取り引きを活発に行えば、相応の社会的地位ってのも頷ける、ただ、深海棲艦が人の社会で上手く立ち回れるのかって所が疑問ですけど」

 

五十鈴の仮定を五月雨が補完、同時に疑問を示す

 

「そこよね、疑問は、又聞きだけど、今第二食堂に居座ってるアレ、そんな事を言ってなかった?」

 

「我等の中に人の集団が居る、とは言っていたのです」

 

可能性を指摘した電、その可能性が現実のモノに、進行形では無く過去形になっているかも知れない

 

「……そういう、事、なの?全部繋げるとそうなるってのは分かるけど、裏付けが無い、パズルのピースが並んだだけで、関連付けるのは、思い込みじゃない?」

 

漣には何処か合点がいかない様で懐疑的

 

「仮に、そう仮定した場合、深海棲艦が上部機関に立場を確保しているのなら、今来ている権兵衛さんは一体何をしに来てるのでしょうか?交渉は上部機関と行えば済む筈ですし、籍を確保出来ているのならそちらで動いた方が確実でしょう?」

 

妖精さんの行動に制限を設けられる存在、二組の初期艦達の言い分からその存在を否定し切れない五月雨

完全に否定出来ないのなら、その可能性は安易に排除出来ない

艦娘は妖精さんとは不可分な存在、妖精さんに影響力を持つのなら艦娘にも応用してくるだろうから

 

「……別口なのかもね、上部機関にいるのと、此処に来て居るアレ、深海棲艦だからって一括りで扱ってしまっているのは人の都合、深海棲艦の都合でも艦娘の事情でも無い」

 

状況は推定するしかない、問題はその推定が何処まで現実を拾えているか、如何にか整合を試みている五十鈴

 

「権兵衛さん達の交渉は、その成功例を見ているから?人の社会で上手く立ち回れれば、何が出来るのかを学習したって事、なんですかね?」

 

思い付いた様に軽く言ってくる吹雪

 

「どうなんだろう、その辺りは迂闊に決め付けると酷い事になりそうだから予断はしない方が良いと思う、あんた達でその辺りを聞き出したりは、出来ない?」

 

「……アレ相手に、ですか?一組との話し振りから思っていたよりも自由に話す事は出来るでしょうけど、そういう突っ込んだ話は、警戒されるでしょう、下手に押し込むのも悪手ですし」

 

「そうなると、私達で話すよりも状況を説明して司令官から話してもらった方が良いのですか?」

 

「あー、司令官にその気があるのなら、その通りなんだけど、司令官はこの交渉にどのくらい乗り気なのか、知ってる?」

 

「……司令官にして見れば時間を稼いで状況を確認して打開策を考えて行く方向だろうし、交渉に乗り気かって、聞かれると、どうなんだろう、私の知る限りだと権兵衛さんの要求を司令官が受け入れる可能性は、皆無だけど」

 

五十鈴に出来ないか、と聞かれた初期艦達、五月雨、電、漣、吹雪と其々が応じる

 

「初期艦を五人引き渡せ、ですからね、どう考えても司令官が受け入れる情景が思い浮かびません」

 

「ふーん、あんた達はあの司令官は初期艦を渡さないと、思ってるんだ、ちょっと意外」

 

五月雨の言い分に少し驚いた感じの五十鈴

 

「五十鈴には司令官が引き渡すと考える根拠があるのですか?」

 

「そりゃあ、この鎮守府所属艦娘の全滅を回避する為ならするでしょう?そうでなくては司令官として如何なの?」

 

電の言い分に部隊存続の為の行動として必然性をいう五十鈴

 

「並の司令官なら、そう考えたと思う、でも、ここの司令官は提督だ、提督がそう考えるのなら、私達艦娘は深海棲艦に絶対に勝てない、全滅を回避する為にって理由が付くのなら幾らでも何でも差し出す提督が居るって事だから、ソレが積み重なっていけば状況は艦娘に取って不利になり続ける事が確定的になる

只でさえ絶対数に劣る艦娘は個体技量と集団としての艦隊戦力、それを指揮統率する提督の智慧、これらで深海棲艦に対抗出来る事が最低条件、この条件を劇的に高いモノにして、対抗する難易度を気に掛けない提督が居るのなら、戦略レベルで負けが確定する」

 

漣は五十鈴の言い様に一定の理解は示したものの、結論としては全否定

 

「漣はこの交渉に反対?成立を阻止するつもり?」

 

何を思ったのか、表情に余裕を、笑みを浮かべながら聞いてくる五十鈴

 

「交渉自体を阻止するつもりは無いですよ?ただ、交渉の内容には注意を払う必要があると考えてる、提督がどんな取り引きを成立させるのか、その辺りは私だって興味ありますし」

 

「つまり、交渉の条件は変更されると、それも司令官の主導によって進められ、成立まで持って行くと、考えてる訳か、随分とあの司令官を買ってるのね、それも意外だけど」

 

「五十鈴は佐伯司令官が安易な妥協策でこの状況のみを打開するだけに終始すると考えているのですか?」

 

「ソレ以上を素人司令官に求めても、過ぎた望みだと、思う、彼は民間出身の一般人、情勢を適確に把握出来るのか如何かすら、心許ない、せめて軍属とかで軍事教練でも履修しているのなら助言の仕様もあるけど、それも出来ないし、実行なんて拒否して来る、如何にもね」

 

電の質問に応じる五十鈴、色々と思う所は多い様子

 

「五十鈴は十倍以上の敵に対抗する戦術理論を知ってるの?対抗するだけでは無く勝ち筋の通っている理論を」

 

助言すると言う五十鈴に質問する吹雪

 

「そんな都合の良いモノがあるのなら、私が知りたい」

 

「交渉は、その戦術理論の一つでは?勝ち筋が有るかは別の話ですが」

 

五月雨が自身の見解を付ける

 

「……相手は圧倒的な戦力差を誇示して要求を飲ませに来てる、素人司令官には一番効く圧力だと思うけど?」

 

「司令官の言動を良く観察して、五十鈴ってばホントにコッチに引き籠もって何も見聞きして無いんだね」

 

五十鈴の言い分に若干呆れる漣

 

「そんな事は無い、鎮守府内の様子は見聞きしてる」

 

「なら、その圧力が司令官には見透かされてるって、気付くでしょうに、移籍組から司令部要員にとアレだけの志願者が居たのは、何でだと思ってるの?」

 

「ここで黙って死にたく無いからでしょ?」

 

簡潔に応じる五十鈴、その対応に引っかかるモノを感じつつも話を続ける漣

 

「……ソレだけの理由で、あの高雄や妙高が司令官を支持すると?司令部要員としてでも、現状では戦闘指揮を受けないとは言え指揮下に入る事を良しとすると?」

 

「羽黒と鳥海はこの鎮守府に所属し護衛隊として行動している、あの司令官の指揮下に居る、その重巡達ならその辺りが根拠になるでしょう」

 

「……五十鈴が長良達を気にして独自行動に出た様に、姉妹艦を気にして指揮下に入ったと?工廠組や軽空母達は?その理屈だと姉妹艦が鎮守府に所属していないと指揮下に入る根拠にならない」

 

「北上は随分と口が回ってると聞いた、お陰で移籍組が鎮守府所属艦から疎まれる要因になってるとか」

 

「北上はあの包囲網を中央突破するって言い出して実行してる、それでも五十鈴には足らないって云うの?それこそ望み過ぎじゃない?」

 

「言葉より、実行、何を言ったのかより、何を行なったかで、本心を視る、そう視るのなら北上の服従振りは模範的ね」

 

漣と五十鈴の遣り取りを聞いていた五月雨は違和感を覚えていた、ただ、それを言葉にするキッカケが無く、聞く側に回っていた

然し乍ら、五十鈴から服従と云う言葉が出た、それを模範的と評した五十鈴に黙っていられなくなった

 

「……五十鈴?何を意地になってるの?自説を説くのなら挑発的な言動は無用の筈、まして駆逐艦相手にそれをするなんて、もしかして、大本営から、何か、言って来た?」

 

「……」

 

「五十鈴?ここで抱え込んでも状況は打開出来ないんじゃない?こっちだって相談に来たんだ、初期艦でも乗れる話なら、聞くよ?」

 

五月雨の覚えた違和感は話を続けていた漣も持っていた様だ

 

「二組からの話、如何も上部機関の本会議で老提督が厳しい立場に追い込まれているらしい、そこにテコ入れ出来ないかって、相談された、そんな事云われても様子がわからない本会議に如何介入すれば良いのやら、見当も付かない」

 

駆逐艦から相談を受けたが、どう回答すれば良いのか、全く考えが及ばない自身の不甲斐無さに様々な葛藤があるらしい五十鈴

軽巡には軽巡の論理がある、それを相談の最初に口にしてしまった為に誰も意図しなかった圧力が生じて五十鈴を追い込んでいた

初期艦達はそれに漸く気付いた

 

「様子が見えない本会議なのに、厳しい立場に追い込まれた事だけは二組に伝わった?おかしいでしょ、それ」

 

然し、ソレはソレ、議題は議題、ここで対処を変えてはいけない、ここに来た目的を満たす様に話を進めて行く漣

 

「……判ってる、そこだけ故意に漏らして来たって事、二組は司令官に老提督を選択している、だから形振り構わず打開に動く、そこを見越したナニモノかの策だって事も、ただ解らないのはその謀の目的、このナニモノかはこちらを如何動かしたいのか、ソレが読めない」

 

話を進める漣の意図をどう捉えたのかは当の五十鈴にしかわからないが、五十鈴は話を続けている

 

「五十鈴は老提督の秘書艦、二組からの相談を無下には出来ない、ソレをする必要もないし、最善手を決めるには状況が不明過ぎてなんとも、権兵衛さんが何か知っているとかいう都合の良い展開でも無いと、不明なままですね」

 

「別口かもしれないけど、全く知らない訳でも無いって、そう都合良く関係性を持っていれば良いんだけど」

 

五月雨と吹雪も漣の話を進める方針に参加して同意を示した

 

「大本営からは運営を代行中の監察官達に因り各鎮守府へ艦娘を配置する様に要請が出てる、今の所あの包囲網を理由に無理だって解るから無理強いはして来ないけど、何れして来るでしょうね」

 

「……艦娘を配置?初期艦なら既に配置済みでしょ?大増設計画自体も今は止まってなかったっけ、何処に配置しろと?」

 

「他所の鎮守府の司令官と所属艦娘を配置替えして大増設計画で新設された鎮守府に移動させたのは聞いてる?それで空いた四箇所の鎮守府にアメリカの司令官が配属された、現状では所属艦娘が居ないけどね、そこにも艦娘を配置する様に要請して来てる」

 

大本営からの要請、要請して来たという事はいつの間にか再稼働した様だ

 

「そんな要請が?もしかして自衛隊の包囲ってソレの阻止線だったりするんですか?」

 

動いたら動いたで早速余計な事を言い出したという大本営にウンザリしつつも現状と整合を試みている電

 

「私にも其処の判断は付かない、でも、陸側を自衛隊が包囲していなければ、乗り込んで来た可能性は高いと思う、そうなっていたらここの司令官は要請に応じざるを得ない、資材をどれだけ消費しようとも建造に励まなくてはならなかったでしょうね」

 

「この状況でそんな事になったら、不利どころか自滅行為、しかもソレを命令して来たのが上部機関となれば、司令官は如何動く事になったのやら」

 

どうやらウンザリしているのは電だけではないらしい

 

 

 

???

艦娘部隊上部機関-本会議場

???:監察官/各方面代表/事務職員

大本営司令長官:老提督

 

 

艦娘部隊本会議、開催中にも関わらず場内に外部からの要請、要求が届けられた

 

「日本政府?」

 

開催地である日本、その政府から直接使者が来たという、応対した艦娘部隊事務職員が本会議場にて代表達に伝えている

 

「艦娘部隊の実働組織である鎮守府への入場を求めています」

 

「……目的は?」

 

職員の言い分は政府からの使者の言い分を伝えるモノ、足蹴にする訳にもいかない

 

「件の休戦を利用し交渉の席を作りたい様です」

 

「交渉?深海棲艦と?何を考えているんだ、日本人の考えている事は理解に苦しむ」

 

代表の一人からは呆れと嫌悪が混じった感想が出て来た

 

「交渉の内容は?」

 

「そこまでは、わかりません、ただ、鎮守府自体が日本国内にある以上上部機関の許可が無くとも交渉に踏み切る可能性があります、状況を監視する意味でも条件を付けて許可を出す方が得策だと考えます」

 

「私が同席しよう」

 

職員の考えに乗る形で老提督は行動に出る様だ

 

「……老提督、此の期に及んで何をするつもりか」

 

交渉に同席する、老提督はそう言っている

これまでの経緯を踏まえて、代表達は老提督の行動を訝った

 

「為すべき事は、成さねばならない、それだけだ」

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府-司令官/叢雲(旧名)

鎮守府所属艦:大淀(事務艦)

大本営所属艦:高雄/愛宕

 

 

こんな状況でも執務というのは溜まって行く、処理していかないと手が付けられなくなる

それが判っているだけに仕事に精励している司令官

そこに大淀から声が掛けられた

 

「失礼します、司令官、大本営よりこんな通知が、届きました」

 

「?」

 

いつに無く遠慮がちな事務艦改め大淀からプリントアウトされた書類を受け取った

 

「……ナニコレ?」

 

「……」

 

一読した後、大淀に視線を向けた、大淀にしては珍しく困った様な申し訳なさそうな顔をしていた

 

「何を言って来たの?見せなさい」

 

司令官の手元から書類を抜き取り速読する叢雲(旧名)

 

「御歴々がここに来るって如何いう事になってるの?」

 

言いつつ書類を司令部要員の二人に渡す、それを読み込んでから高雄が口を開いた

 

「日本政府要人に老提督、それに上部機関からも何人かここに来る、となっています、何が起こってるんですか?」

 

「考えたくはないが、憲兵隊長の報告を受けた上の方々が休戦という事態を何か勘違いしたのではないかな、厄介な事になった」

 

高雄の質問に応じる司令官

 

「……この鎮守府司令官、というのは?」

 

そう言いつつ書類を睨む様に見ている愛宕、態々記載がある鎮守府司令官の役職、これはこの鎮守府司令官の事なのか、他所の鎮守府司令官の事なのか

 

「同期の司令官ではないだろう、大増設計画で新設された鎮守府に司令官は着任していない、と聞いている、何処の司令官なんだか」

 

記述を素直に取ればここに来る来訪者、役職が並んでいる行列に改行も無く続けて記載されている鎮守府司令官というのも他所の鎮守府司令官の筈

そして同期の司令官は鎮守府移転に伴う雑務に追われていて鎮守府を留守に出来る状況ではない、鎮守府に於ける全ての決裁権を艦娘に託せない以上司令官は鎮守府を留守に出来ない筈だから

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)_周辺海域

鎮守府所属艦:龍驤/長良/名取

 

 

 

状況監視中の龍驤、監視した所で次の行動を起こす事が出来ずにいる所へ偵察機からの報告があった

 

「アカン、お仕置きしとる場合や無くなった、例の艦隊の斥候らしいのが救助海域に迫っとる」

 

「なんですって!?」

 

不味い事態の発生、長良は護衛隊旗艦としての行動を考えなくてはならなくなった

 

「今ウチの艦戦で追い払っとる、偵察機からの報告やといくらもせんと海域に本体が来てまうで」

 

「本体ってさっき言ってた八個艦隊?」

 

名取から聞いて来た

 

「分離したらしいで、こっちに来とるんは三個艦隊や、残りは進路を変えた様やな」

 

「え?!ちょっと待って!あんた達だけじゃ無理、今からそっちに行くから合流するまで待ちなさい!」

 

いきなり声を荒げる長良、どうも何処かからの通信があった模様

 

「なんや、いきなり」

 

秘匿通信だった為に内容がわからない龍驤、護衛隊に編成されていても変な所に変な壁を作る長良達

球磨に不満を言った時雨、それに同意した北上、その不満は龍驤も持ち合わせていた、言った所で直ぐに解決する様な単純な話ではない事も判っているだけに悶々とした靄々は晴れる事もなかった

 

「今、羽黒から通信が来た、敵艦隊を捕捉、これより戦闘行動を開始するって」

 

「……戦闘行動って、羽黒のヤツ、確か雪風しか連れとらんやろ、天津風は鳥海と組んどるし」

 

「それに偵察任務だからって偵察機を多く持って行ってる、兵装的にも重巡の火力は出せない」

長良が通信内容を言って来る、それに懸念を示す龍驤と名取

 

「あっ!だから待ちなさいって言ってるの!!旗艦はこの長良!旗艦の指示を聞け!」

 

「……鳥海か?」

 

続けて声を荒げる長良に問う龍驤

 

「衣笠からも羽黒に合流するって言って来た、あーもう、警報出してこっちに合流させる筈が変な所で深海棲艦が出て来たもんだから、向こうで合流する流れになってしまった、私達も向こうで合流する、龍驤は引き続き偵察任務を続行して、名取!行くよ!!」

 

 

 

鎮守府-工廠

鎮守府所属艦:鳳翔/祥鳳

 

 

待機命令は解かれていないが、自主的に工廠防衛任務に就いている軽空母達

流石に発艦は控えていたが、その分目視警戒にチカラを割いていた

 

「ん?龍驤の偵察機ですよね、なんでしょうか?」

 

その警戒に因り飛翔体を見つけた、但し味方機だ

 

「……外洋で偵察任務中の龍驤が鎮守府に偵察機飛ばして来るとか、なにかあったのでしょうか」

 

鳳翔の見る方向に視線を向け、確認した祥鳳が疑問を口にした

 

「着艦許可?込み入った話でしょうか?」

 

龍驤搭載機から鳳翔に連絡が入った様子

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府-司令官/叢雲(旧名)

鎮守府所属艦:大淀(事務艦)

大本営所属艦:高雄/愛宕/足利

 

 

執務室に入って来るなり司令官に歩み寄る足利

 

「司令官、手は空いてる?」

 

「要件によっては空けるが?」

 

こっちは執務という名目の雑事に追われている、余程の事態でなければ司令部に振るつもりでいた

 

「詳細は分からないけど、龍驤の偵察機が鳳翔に着艦した、護衛隊の方で何かあったと思うけど、報告は聞いてるの?」

 

足利が態々報告に来た当たりで余程の事態だろうとは思ったが、護衛隊からの直接接触までは考えてなかった

 

「工廠か、直ぐ行く」

 

 

 

鎮守府-廊下

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

鎮守府所属艦:秋津洲

 

 

工廠に向かっていたら秋津洲に見つかった

 

「あー、司令官!大変かも!!」

 

「話は歩きながら聞く、工廠に居る空母組にも話を聞かなきゃならんしな」

 

「!もう一報が入ってるかも?!何処から?」

 

「それより報告は?」

 

「護衛隊が戦闘行動に突入、相手は深海棲艦三個艦隊、救助海域に近づく前に進路だけでも変えるって言ってる、龍驤の偵察機によれば相手の艦隊は水雷戦隊と水上打撃艦隊の構成らしいって、護衛隊だけじゃ対応しきれないかも」

 

「……あの救助要請か、桜智の所の艦娘達が受託していたな」

 

そういうと個人使用の携帯を取り出し、何処かに掛け始めた

 

「盗聴されるって、分かってる?」

 

分かっているだろうが、一応注意を促す叢雲(旧名)

 

「他に方法がない、様子見していられる状況では無くなった、お、桜智か、細かい事は後だ、今こっちに来てるお前の所の艦娘達の指揮権を譲って貰いたい……そうか、直ぐに手配してくれ、事が済み次第返還する、いつ事が終わるか、判らんが……五月雨の件?それは大本営に掛け合ってくれ、済まんが時間が無い、切るぞ」

 

「……あんた達って、どういう関係なの?話してる所は何度か見かけたけど」

 

余りと言えばアマリに雑な遣り取り、そして下される決定、叢雲(旧名)には何処からツッコミを入れるのかすら困る、悪い意味でハイレベルな会話だった

 

「詮索は後だ、空母組の話を聞かなきゃならん」

 

 

 

鎮守府-工廠

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

鎮守府所属艦:鳳翔/祥鳳/秋津洲

???:権兵衛さん

 

 

工廠に着くなり空母組に見つかった、少し困った様な表情を見せながら鳳翔が声をかけて来た

 

「あ、司令官、丁度今龍驤の偵察機の妖精さんから報告を受けた所です」

 

「なんて言って来た?」

 

「飛行隊を貸して欲しいと」

 

「龍驤は偵察機を多く積んで行ってたな、それで攻撃力となる艦載機が少ない事は分かる、私の聞いた限りでは空母に取って艦載機は戦艦に取っての主砲の様な兵装だと聞いている、貸し借りなんて出来るのか?」

 

「飛行隊は妖精さんの自立行動体の様な兵装ですから、理屈的には出来ます」

 

「問題は?」

 

「基本的に空母種の運用する飛行隊は発艦した艦娘と繋がります、私の飛行隊を龍驤に着艦させれば飛行隊の運用自体は問題ありませんが、本来の運用上限数を超えた飛行隊と繋がる事になり、これに伴う諸々の問題が龍驤に起こり得ます」

 

「……例えば?」

 

「最も問題となるのが飛行隊の補給と修理、整備が追いつかなくなり、また上限数を超えている為収容も出来ません、飛行隊を使い捨てる事になりかねない、空母艦娘としてこの様な前提での飛行隊の運用には賛成出来ません」

 

「そんなこと言ったって、護衛隊はもう戦闘行動に入ってる、放って置けないかも!」

 

飛行隊の貸し出しを渋る鳳翔に秋津洲から抗議が入った

 

「……戦闘行動?」

 

「鳳翔の飛行隊ではまだ見つけていないのか、という事は、接触海域は予測より遠いって事か」

 

鳳翔の飛行隊は二式大艇の護衛として外洋上空、包囲網の外まで出ている、その飛行隊が長良達、護衛隊の戦闘行動を見つけていない、戦闘海域となった海域の予測範囲が広く特定には相応の時間が必要となる

 

「護衛隊が戦闘行動に?接近中の深海棲艦を捕捉したのですか?」

 

祥鳳からも質問が来た

 

「三個艦隊だそうだ、護衛隊は重巡がいるとは言え十隻前後、数の不利はどうしようもない、挙句こちらから支援艦隊も出せない」

 

そんな話をしていた所に突然怒号が響いた

 

「おい!!今直ぐ戦闘行動を止めさせろ!こちらからは攻撃していないだろう、止めさせないのなら、こちらも力尽くで応じる事になるぞ!」

 

「権兵衛さん?今、なんと?」

 

遠くの我等の方々と協議するからと第二工廠に籠った筈の権兵衛さんがエライ剣幕で抗議して来た

 

「貴様の指揮下の艦娘が我等を攻撃している!止めさせろ!」

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府所属艦:大淀(事務艦)

大本営所属艦:高雄/愛宕

 

 

「こちら執務室、高雄です、司令官?はい、はい?!はい!直ちに連絡を取ります」

 

「どうしたの?」

 

「司令官から護衛隊に戦況を聞いて戦闘行動を停止出来そうなら戦闘を止める様にと」

 

「?戦闘行動の中止、どういう事?」

 

「わからない、けど命令は命令、直ぐ連絡を取ります」

 

 

 

外洋-戦闘海域途上

鎮守府所属艦:長良/名取

 

 

司令部からの直接通信、何を言って来るかと思えば余りにも意図不明過ぎる事を言い立てて来た

返答としては保留した長良だったが、司令部への印象は良いモノに成るワケも無かった

 

「司令部が戦闘行動の中止が可能かを聞いて来たんだけど、どういうつもりなんだろ」

 

「……重巡達はもう戦闘行動に入ってる、止められない」

 

 

 

???

米海軍_対艦娘部隊_対策班:班長/班員1/班員2

 

 

「……さっきから連続的に来てるこの振動、もしかして近場で戦争やってますかね、一応レーダー反応は確認しましたが、反応なし、尤もこれ民生品ですけど」

 

船内にいるにも関わらず振動だけは伝わって来る、広くない室内、機器類が所狭しと押し込められた空間に座っているから余計に振動が気になる

 

「……その距離で振動が来るって事は、艦娘の大型艦の戦闘行動かもしれん、撤収要請を出せ、艦娘と深海棲艦の戦闘に巻き込まれる可能性がある、こんな艤装船では一溜まりもないぞ」

 

座るだけのスペースが確保出来ず立っていた班長はそれ程気にならなかったが、班員の愚痴っぽい台詞に状況を推定、即座に撤収を決めた

 

「海難を偽装するのに小細工やら小道具やらを出しています、回収してからでないと海域からの撤収は出来ません、漂流者まで装っているんですよ?彼等を放置して撤収は出来ないでしょう」

 

別の班員から撤収に異論が出された

 

「艦娘が救助してくれる、放置でも問題ない」

 

「……そんな事したら、今回の作戦行動が艦娘達に知られる事になりますが」

 

班長の言い分に抗議しようとした班員だったが、それは飲み込んだ様子

別方向からの懸念を示す事で抗議の替わりとした様だ

 

「構わんよ、そうなればこんなバカな任務に二度と着かなくて済む」

 

 

 

外洋-海難救助海域途上

桜智鎮守府所属艦:熊野/時雨/春雨/海風/山風/江風

 

 

「……なんだろう、救助活動中の筈の船舶が海域を離れ出してる」

 

電探の探索結果に疑問を持つ時雨

 

「春雨、救助信号を受信した周波数で呼び掛けて、こちらはもうすぐ現着する、状況確認を」

 

その疑問に熊野が応じ、春雨に指示を出した

 

「了解です」

 

「先程から聞こえる砲撃音と関係あるのでしょうか」

 

「どうだろうな、要請して来たのは海軍だろ?砲撃音が聞こえたくらいで要救助者を放置ってのは無いと思うけど」

 

春雨の返事に続く海風と江風

 

「……司令官からの警告、艦娘を鹵獲しようとするモノがいる、そう言ってた、警戒を怠らない様に」

 

姉妹艦に注意を促す時雨

 

「司令官から?通信通った?」

 

この遠距離で直接通信を通すのはかなりの大事、そこまで悪い事態に直面しているのかと、吃驚気味の江風

 

「……佐伯司令官からの警告です」

 

熊野が江風の吃驚を訂正している

 

「?あたし等の司令官は桜智司令官だ、変な所を省略しないでくれよ、紛らわしい」

 

「それがね、江風、いつの間にか僕達の司令官は佐伯司令官になってるんだ、少なくとも桜智司令官は承諾してるって事、事情がわからないけど指揮系統が変更されてる」

 

文句を言う江風に時雨が状況の変化を説明した

 

「……どういう事?」

 

不安そうな様子を見せながら聞いて来る山風

 

「わからない、だけど今は目の前の問題に集中しよう、コレはコレで厄介事には違いないんだから」

 

「……時雨?秘書艦指定は?」

 

山風が質問を重ねて来た、応じるか、誤魔化すか、一瞬考えた時雨だったが応じる事にした

 

「……それは変わってない、だから指揮系統の変更を感知出来た、今も秘書艦指定されている、指揮系統の変更に伴い司令官も変更されてしまっているけどね」

 

「……そう言えば、ここの鎮守府、運用規定が古いままだと、言っていましたね、もしかしたら秘書艦指定の規定をご承知していないとか?」

 

時雨の言い様に熊野は色々思い付く様だ

 

「そういった事は後にしよう、僕達は海難救助要請を受けて、救命活動の為に行動中なんだ、司令官が変更されたからといって海での要救助者を放置して良い理由にはならない、佐伯司令官の事は桜智司令官からも話を聞いてる、救命活動に反対する様な人柄では無い筈だよ」

 

春雨が救助要請を受諾した以上、それを履行する必要が生じる

そこは変え様が無いのだから誤魔化しても意味はない、今は艦隊として救助活動を優先させる考えの時雨

 

「そうですわね、実際何の指示も命令も来ていませんし」

 

熊野も時雨の、桜智鎮守府秘書艦の考えに同意、優先順位を確定させた

そこに春雨から報告があった

 

「……通信が繋がりません、こちらの呼び掛けに応答無し、ただ、位置確認用と思われる信号を受信しています」

 

報告して来た春雨は状況に不信感を持ち始めている、救助要請して来た相手は海域より退去、無線発信器は海域に残す、相手の行動には疑問しかない

 

「……救助要請を発信した周波数で?」

 

「そうです、一定間隔で発信されています」

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)

鎮守府所属艦:龍驤

 

 

「何やろな、色々オカシナコトになってるで、コレはどう対処するんが正解なんやろな?」

 

偵察機から救助海域の様子見ている龍驤、その龍驤にも不審な行動に映った模様

 

 

 

鎮守府-工廠

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

鎮守府所属艦:鳳翔/祥鳳/秋津洲

???:権兵衛さん

大本営所属艦:足利

 

秋津洲の報告から護衛隊は海難救助要請を受けて行動中の駆逐艦隊の護衛任務として攻撃に出た事を知っている司令官、司令部からは戦闘行動の中止判断を護衛隊旗艦の長良は保留したと報告があった

これらの報告から状況を推定した司令官は権兵衛さんと対峙する事になった

 

「針路を変更しろ、その針路を取る限り攻撃中止は出来ない」

 

「なんだそれは!今更針路など何が問題なのだ!!貴様の保有艦娘程度では我等の包囲網に無力だろう!!!」

 

これまでに無く口調が荒い権兵衛さん

 

「もう一度言う、攻撃中止を求めるのなら、針路を変えろ、変えないのなら攻撃を続行する」

 

「そんなに力尽くが良いか?我等は力尽くでは無い交渉を行っている、貴様が力尽くでの決着が良いと判断するのなら、応じるまでだ」

 

口調を戻した権兵衛さん、いくらか冷静さが戻ったのか、それとも面倒な交渉を打ち切る好機と見たのか、司令官には判断出来なかった

 

「ちょっと、そんな所で睨めっこしないで、権兵衛さん達には救助要請が受信出来なかったの?権兵衛さん達の針路上に救助海域があるの、救助に艦娘達が向かってる、こっちも退く訳にいかないの」

 

司令官と権兵衛さん、二人の間に割って入る叢雲(旧名)、序でというか呆れた様子を見せながらも権兵衛さんに状況を説明、司令官の言い分を補完している

 

「……救助、要請?」

 

権兵衛さんが耳を傾けた、これは冷静さを取り戻したと、見て良さそうだ

 

「そう、何処かの軍から海難救助要請が出されてる、艦娘達はこれに応じた、その救助海域が権兵衛さん達の針路と重なる、だから退けない」

 

叢雲(旧名)が権兵衛さんに状況説明を続けている

 

「また軍の介入か、こんな状況で都合良くそんな所で海難事故など起こるものか、故意に、意図して起こしたに決まっている、事故そのものが起こったかも疑わしい」

 

とても嫌そうに吐き捨てる権兵衛さん、軍に余程嫌な思いでもさせられたのだろうか、軍に莫迦されたとか言ってたし

然しソレはソレ、コレはコレだ

 

「そうだとしても、救助要請を無視出来ない、こちらは人の組織だ、規定がある以上所定の行動は取らねばならない」

 

権兵衛さんの言い分を踏まえ、こちらの、鎮守府側の事情を主張して様子を窺う

 

「……厄介な、では、お互い停船させよう、攻撃を中止させろ」

 

少し考える素振りを見せた権兵衛さんは妥協案を示して来た

 

「足利、高雄に伝達してくれ」

 

 

 

外洋-戦闘海域

鎮守府所属艦:雪風/羽黒

 

 

旗艦からの攻撃中止命令、条件付きとはいえそれを聞いた艦娘達には疑問しかない

 

「止まったら攻撃中止?何故です?全部沈められますよ?」

 

「アレを全部沈めても鎮守府を包囲している深海棲艦がいなくなる訳ではないの、ここは戦場のひとつでしかない、戦術的勝利では戦略的敗北を覆せない、この戦場での勝利に拘ると勝ち続けているのに、いつの間にか大敗北している現実を突き付けられる事になる、雪風はソレを望んでるの?」

 

「……むつかしい話はわかんないです、でも、身に覚えのない負けを負わされるのは嫌ですね」

 

 

 

外洋-戦闘海域

鎮守府所属艦:天津風/鳥海

 

 

旗艦からの攻撃中止命令、条件付きとはいえそれを聞いた艦娘達には疑問しかない

 

「ホントに止まった、ここの司令官は何をやったの?」

 

「それはわからない、けど命令は、命令、攻撃中止」

 

 

 

外洋-戦闘海域

鎮守府所属艦:衣笠/多摩

 

 

旗艦からの攻撃中止命令、条件付きとはいえそれを聞いた艦娘達には疑問しかない

 

「なんだろうね、この靄靄は」

 

「お仕事終わった」

 

 

 

鎮守府-工廠

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

鎮守府所属艦:鳳翔/祥鳳/秋津洲

???:権兵衛さん

 

 

工廠では未だに司令官と権兵衛さんが対峙していた

 

「退かせろ」

 

「救助が終わってない」

 

「……だからそんな所で睨めっこしないで」

 

一応言っておくか、くらいな感じの叢雲(旧名)

 

「向こうでもこうなっている、ここで何を言っても無意味だ」

 

権兵衛さんが大真面目に応じて来たのを聞いた叢雲(旧名)、変な所で変な意地を張り合う司令官にも呆れつつ状況を動かしに掛かった

 

「ハァ、指揮権は貰ったんでしょ、救助の状況を聞いてみたら?」

 

 

 

外洋-救助海域

桜智鎮守府所属艦:熊野/時雨/春雨/海風/山風/江風

~広域無線~

鎮守府-通信室

大本営所属艦:高雄

 

 

指揮権が桜智司令官から佐伯司令官に移っているのを知った熊野は鎮守府、司令部の高雄達と交信中

 

「こちら航空巡洋艦熊野、現在予定海域に到着、これより要救助者の捜索、状況確認に移ります」

 

「司令部高雄、了解、十分注意してください、それと付近に船舶はいますか?要救助者を発見後に引き揚げて貰わなくては、救助は兎も角救命出来ません」

 

「それが、救命活動をしていたと思しき船舶はこちらの海域到着前に離脱してしまいました、可能ならソレを海保なり海自に依頼出来ませんか」

 

「……離脱?その件は司令官の裁可が必要になります、返答には時間がかかります」

 

熊野から思い掛けない要請が為された、それに不審な行動を取った船舶の報告

司令部だけで判断して良い状況では無い、事は鎮守府の外、艦娘部隊内に留まらないのだから

 

「わかってます、が、出来るだけ早くお願いします」

 

 

 

鎮守府-憲兵隊詰所

鎮守府:司令官

自衛隊_憲兵隊:憲兵

 

 

司令部からの報告を受けた司令官は憲兵隊詰所に出向いた

 

「失礼します」

 

「今度は何だ?鎮守府司令官、隊長なら外出中だ」

 

忙しいのか明から様に邪険にされた、だからといって要件が要件なだけに退く事も出来ず、さっさと用を済まする事にした

 

「申し訳無いが、手を借りたい」

 

「?憲兵の手を、か?」

 

司令官の言い分に疑問の目を向けて来た憲兵

 

「憲兵隊も大枠では陸自だろう、自衛隊、若しくは海上保安庁に協力をお願いしたい」

 

「話を聞こうか」

 

 

 

鎮守府-第二食堂

桜智鎮守府所属艦:利根/白露/村雨/夕立/五月雨/涼風

 

 

「しらつゆー!!」

 

第二食堂に大きな声が響いた、白露達は殆ど食べ放題状態の第二食堂に居座ったままでこの鎮守府内の探索も目的である最初の初期艦の五月雨とも接触していなかった

包囲網が健在な以上鎮守府から出られないのだから連れ帰るにしても接触を急ぐ理由もなかったが

 

「!な、なに?利根?」

 

突然大声で呼ばれ戸惑う白露、他の四人も声の主である利根に注目していた

そんな視線など御構い無しに白露に詰め寄った利根

 

「お主の指揮権は誰になっておる」

 

「誰って、ウチの司令官でしょ?」

 

利根が何を言い出したのか意図がわからない白露

 

「確認せい!儂の方は変更されておるのじゃ、何かの間違いか、本当に変わったのか、確認したい」

 

「何なのよ、一体……えっ?変更されてる?如何して……」

 

確認して驚く白露、いつの間に変更されたのか、何故通達も無く変更されたのか、状況に疑問しか湧かない

 

「佐伯司令官、ここの司令官に変更されておるのじゃな?」

 

「そうなってる、なんで?」

 

利根の確認に問い直すが、答えを知っていれば一々こちらに確認しに来ない事に気が付いた

 

「直接聞いてくるわい」

 

そう言うと食堂から出て行く利根、それを呆然と見送ってしまう白露

 

「白露?呆けっとしてる場合?旗艦でしょ?」

 

村雨に突っ込まれてハッとする

 

「待って利根!私も行く!!」

 

慌てて利根を追いかけて食堂を後にする白露だった

 

 

 

外洋-戦闘海域(双方停船中)

鎮守府所属艦:雪風/羽黒/天津風/鳥海/衣笠/多摩/子日/若葉

 

 

「向こうも止まりはしましたが、退きませんね」

 

「全部沈めてしまえば良かったのに」

 

戦闘停止が余程不満らしい雪風、鳥海の感想にも不満を漏らしている

 

「雪風は過激だにゃ、闘わなくて済むのなら面倒が無くて良いにゃ」

 

戦闘停止命令を仕事が終わったと解釈している多摩は雪風の不満が不安らしい

 

「雪風の言い分は全面的には支持出来ないけど、方針としては間違ってない、何れ戦う事になるのなら、沈められる時に沈めておくべきだと思う」

 

天津風は多摩の言い分よりも雪風の主張に同意の様子

 

「駆逐達、戦闘中止は司令部からの命令、独断での戦闘継続は得策ではありませんよ?司令官から何らかの指示があるでしょうから、ソレを待ちましょう」

 

戦闘停止に不満な駆逐艦たちに注意を促す鳥海

 

「雪風の戦い方は危なっかしい、もっと僚艦との連携を図った方が良い、今の戦い方では羽黒以外と艦隊行動が出来ない」

 

戦闘行動には間に合わなかったがそれ自体は見る事が出来た若葉、雪風の不満は不満として脇に置き、戦闘行動の問題点を指摘している

 

「……余計なお世話です、鎮守府産れの建造艦に心配される事じゃないです」

 

若葉の指摘に自覚があるのか、雪風はこれまでとは別の意味で不満そうな様子を見せた

 

「あらま、雪風って、こういう事言う子なんだ、成る程、こういうのを初春辺りは可愛気が無いって言ってるのか」

 

雪風の言動に妙な関心と一番艦の言い分に感心する子日

 

「……可愛気?」

 

何処の話と繋がつているのかわからなかった様子の雪風

 

「そうそう、雪風に限らないけど、駆逐艦には必要な実技だって、初春は言ってる、尤も叢雲なんかはコレを聞いて呆れてたけどね」

 

「……叢雲?」

 

「そう、ウチの初期艦、今は代替わりしたけど代わったのも叢雲だ、初春が鍛えてやるって張り切ってるよ」

 

「……代替わり?」

 

「ウチの初期艦の叢雲はある時の戦闘で大破したんだ、鎮守府に戻って入渠したら、そのまま目を覚まさなくなってしまった、その後は司令官が事務艦を酷使しつつ鎮守府運営に四苦八苦、ウチの司令官はスッゴイ意地っ張りなんだ

事務艦からも再三云われただろうに寝たままの初期艦を解体して大本営に居る初期艦を寄越せって言う事なく初期艦を再配置させたんだ、全く初春が気に入る司令官なだけに、まあ、アレな司令官だよ」

 

「……初期艦が起きられず職務不能なのに、鎮守府運営をしていた?司令官だけで?」

 

子日の話に疑問を持った様子の雪風、誇張なり虚構が含まれると思ったらしく、何処まで聞いていいのか、判別出来ないらしい

 

「ウチの司令官は所謂、提督だそうだから、何とかなったんだよ、他の鎮守府ならこうはならないかな」

 

そんな雪風の疑いの眼にも何も変わらず応対する子日

 

「提督だとは、聞いていましたが、子日の話を聞いていると、本当に提督なんですね、ここの司令官は」

 

提督と聞いて羽黒から感想が出て来た

 

「当人は妖精さんの声が聞けるだけだと言っているが、それだけではない、その手の心当たりは多くある」

 

若葉が羽黒の感想を受けた

 

「……この攻撃中止も、その心当たりのひとつだと?」

 

疑惑の視線はそのままに聞いてくる雪風

 

「一時的な休戦に入ったと、聞いていないか」

 

「……それは聞こえました、でもそれは鎮守府の包囲網限定では?」

 

「アレも包囲網に関わる艦隊だとしたら?伝聞になるがあの包囲網は今も数を増しているそうだ、その数はどうやって、どこから増やしているのだろうな」

 

「……休戦破りになってしまった、と、いうのですか?」

 

休戦、それが実行されるには多くの条件が必要で完全に履行される休戦など稀にしか無い事は雪風も知っている

自身の所属鎮守府が休戦に入った、それを自身の行動で反故にした可能性に言及され、動揺を見せる

 

「いや、それならアレが止まる理由が無い、こうやって対峙する事なく攻撃してくる、向こうが止まったという事は、司令官が何らかの手を講じたのだろう

だから鳥海も司令官からの指示を待つと言っているのだ、会敵したからといってただ攻撃するだけでは、司令官の意に沿う事は出来ない、アレな司令官だから思う所は沢山湧いてくるのは、良く分かる

ただ、それは司令官に直接言えば良い事だ、戦場で命令を無視する理由にはならない」

 

思わぬ所での動揺、若葉にはここで雪風を追い詰めても意味はなくそのつもりもない

結果として長い説明を言う事になったが、仕方ない

 

「直接言っても良いんですか?」

 

何故か驚く雪風、司令官に直接文句などの言い分をぶつけるのはウチの鎮守府では当然過ぎて誰も疑問視していない

 

「いけない理由があるのか?ウチの鎮守府では駆逐艦はとても大事にされてる、駆逐艦はいつでも執務室に行って司令官と話せる、少なくとも制度上はそうなってる

ウチで建造された大型艦は先ず司令官から宣告される、駆逐艦達と仲良くやってくれと、出来ないなら、解体か移籍だと、ウチの司令官の論法だと鎮守府運営に大型艦は居なくても支障は無いが、駆逐艦は居ないと話にならない、そう言っていた」

 

予想外の反応を見せる雪風に若葉は戸惑いを感じつつも長い説明を続けた

 

「……鎮守府司令官の職務のひとつは鎮守府の円滑な運営でしたね」

 

鳥海から感想の様な意見が成される

 

「だからといって大型艦を蔑ろにしている訳では無い、小型艦と大型艦、これらは鎮守府の両輪だ、同じくらいの大きさと回転力を保たなければ、鎮守府自体が何処に向かって進んで行くのか、舵取りをしている司令官にも手に負えなくなってしまう」

 

「何方か重要ということでは無く、揃わなければ話にならない、そういう考えを持った司令官なの?」

 

ここまで聞きに回っていた衣笠からも質問が出て来た

 

「司令官の考えは直接聞いて欲しい、ここで答えられる事ではない、若葉は初春型三番艦、ただの駆逐艦でしかない」

 

「まあ、ここの司令官が若葉に懐かれてる事は良くわかったにゃ」

 

多摩の感想、駆逐艦に懐かれている司令官

そこが確かな事実として在るだけでも重巡達には安心材料として十分だった

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

自衛隊_憲兵隊:憲兵

大本営所属艦:愛宕

 

 

先の要件の為に憲兵が執務室に来ている

 

「問い合わせたが、その海域での救助要請は確認出来ない、座標を間違えていないか?」

 

憲兵が来たものの要件は満たせそうにない、かといって目前の憲兵に何処まで話していいのか判断出来ない

 

「……隊長はまだ戻らないのですか?」

 

「ここでソレを聞いてくるとは、厄介事か?」

 

憲兵隊長の不在、それを問題視しているのは司令官だけではなかった模様

 

「申し訳無いが、只の憲兵に聞かせられる話では無い」

 

そう言ったら憲兵が何か考え込んだ

 

「……わかった、陸自になるが、道路封鎖している連隊長を連れて来よう」

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

大本営所属艦:高雄/愛宕

桜智鎮守府所属艦:利根/白露

鎮守府所属艦:大淀(事務艦)

 

 

執務室で執務に励んでいたら利根に詰め寄られた

 

「それで?納得の行く説明を聞かせてもらおうかの」

 

ここで何のことやらとか誤魔化しに掛かると話がややこしくなるだけだ

指揮権変更の事情説明を求められているのだから

 

「……説明していないのか?」

 

利根の詰問に思わず高雄に聞いてしまった

 

「司令部にも十分な説明がなされていません、こちらにも説明をお願いします」

 

「あれ?そうだっけ?大淀?」

 

司令部にも説明を求められてしまった、アレ?説明してなかったっけ?

 

「大枠の状況は伝わっています、其々の関連が不明瞭なのです」

 

大淀からは詳細が不明瞭だと指摘されてしまった

 

「じゃあヨロシク」

 

そこまで分かっているのなら後は大淀に任せる、私が説明するよりスッキリした説明が期待出来るしな

 

「……長門と初春、それに龍田も呼びましょう、そうすれば一度で済みますから」

 

コイツ投げやがった、そんな感情を顔に出した大淀だが、説明役は引き受けてくれる様だ

 

「大和も呼んでくれ、初期艦もな」

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

大本営所属艦:高雄/愛宕

桜智鎮守府所属艦:利根/白露

鎮守府所属艦:大淀(事務艦)/長門/龍田/初春/大和/叢雲(初期艦)

自衛隊_陸自普通科:連隊長

自衛隊_憲兵隊:憲兵

 

 

ドアがノックされ、自衛官が姿を見せた、憲兵が連隊長を連れて執務室に入って来た

 

「面倒事は御免被りたいんだが、って、何だこの人数は……」

 

文句を言いながら執務室に入って来た連隊長、室内にいる艦娘の数に引き気味だ

 

「丁度良かった様だな、連隊長をお連れした、協力を求めるのなら事情を説明しない訳には行くまい」

 

連隊長の背中を押しながら執務用の机に歩み寄る憲兵

 

「御足労をお掛けして申し訳無い、憲兵の言う様に事情を説明する所だ、暫く聞いてきてもらいたい、説明の後協力を求める事になる」

 

一度立ち上がり、一礼してから説明を、ここに呼んだ要件を話した

 

「……説明は要らん、協力内容は?」

 

周囲を見回した連隊長からは意外な言葉が出て来た、その理由には心当たりがある司令官

 

「もしかして、お忙しい?」

 

先の通達、政府の御歴々ここに来るという、それへの対応だろう

 

「そっちにも通達は行っただろう、その準備に追われてる、時間を掛けたくない」

 

そうだろうとは思ったが、それならそれで疑問もあるので聞いてみた

 

「陸自が対応するんですか?警察案件では?」

 

「あの包囲網の所為だ、警察組織では対応不能となってしまった、対応は陸自で行う、サッサと協力内容を話せ」

 

あー、あの数の深海棲艦を見ればね、警察案件というのは確かに無理がある、そういう事なら連隊長の要望通りにさっさと要件を切り出そう

 

「現在ある海域で救助活動が実施されています、その救助活動に協力をお願いしたい」

 

「……陸自に海に出ろと?」

 

何をいっているんだ、と喉まで出かかった様子の連隊長、何とか言い様を変える事には成功した

 

「こちらは艦娘部隊であって直接的に日本国の国家組織に協力を要請出来ない、規定の上では艦娘部隊は要請を受ける側であって出す側では無い、例外は鎮守府に駐留する憲兵隊だけだ、自衛隊への協力要請は憲兵隊を通さなければ行えない、通した結果として、連隊長である貴官がここに来た、協力をお願いする」

 

そう言ったら連隊長が憲兵に矛先を向けた

 

「……おい、こんな厄介事だと知ってオレを連れて来たのか?」

 

不機嫌を隠そうともしていない口調だ

 

「一介の憲兵隊員より普通科とはいえ連隊長の方が話が通るだろう」

 

そんな感情の乗った台詞にも素で応じる憲兵

 

「憲兵隊長は、何処に居る?」

 

「外出中だ、行き先までは知らんよ」

 

「ったく、飛んだ貧乏クジを引いたもんだ、鎮守府司令官、その救助活動は艦娘部隊で実施しているんだな?」

 

矛先を引っ込めたらしい連隊長がこちらに聞いて来た

 

「そうです」

 

「真っ当な救助活動なら態々陸自の連隊長を呼び付けて協力要請なんて必要無い、救難信号を海保辺りが聞き逃す筈無いからな、哨戒任務を負っている海自だってそうだろう、どんなウラがあるんだ」

 

「こちらもその救難信号を直接受信していない、その信号を受信し、救助を承諾し、現在実施しているのはウチの所属艦娘ではない、向こうの司令官と話して指揮権を譲り受けただけなのだ、詳細はまだこちらも把握出来ていない」

 

これを聞いた連隊長は分かりやすく表情を歪ませた

 

「……把握出来ていない?なのに自衛隊に協力を求める?悪いが隠し事は止めてくれないか、時間が惜しい、如何しても話したくないのなら、オレは帰るが?」

 

説明は要らないと言ったのに話せと言う、なんて一貫性の無い主張なのか、時間の無さがそれをさせているのだろうが、ここでソレを指摘しても時間の無駄だ

 

「隠している訳ではない、確証が無いのだ、憶測や推論を連隊長相手に並べられない」

 

「つまり、あんたが出した強襲予告と同じって事か、そいつは是非聞かせてもらいたい」

 

ここで初めて連隊長自身が執務机に歩みを進めて来た

 

 

 

大本営-執務室(司令長官室)

大本営司令長官:老提督

大本営職員:事務屋A

 

 

艦娘部隊上部機関本会議場から大本営の司令長官室に移った老提督は早速報告を受けた

 

「予定の延期?鎮守府からの申し入れが?」

 

「何でも救助活動中とかで受け入れ準備に手が回らないそうです」

 

現在大本営の運営は日本の中央官庁からの出向職員により実施されていた

大本営職員は公募からの選出予定でそれらの人員が揃うまでの繋ぎだそうだ

 

「……あの包囲網で出撃不能なのに、手が回らないとは、状況を確認しなければならない、予定を繰上げよう」

 

「あの、鎮守府司令官は邪魔だから来るな、と言っているのだと思われます、繰り上げは如何かと考えますが」

 

アッサリと予定を変更してくる老提督に一応の懸念を示す職員

 

「なに、向こうには私の秘書艦がいる、何も問題は無い」

 

老提督は大本営に用は無く、早く鎮守府に行きたいのだと悟る職員、何しろ今の大本営は監察官達に仕切られ、司令長官といっても肩書きだけなのだから

 

「……通告はしますよ?幾ら何でもこんな状況でのサプライズは誰に取っても不幸な結果を招きかねませんから」

 

出向職員としては起こると分かっている問題に回避策を講じ、何事も起こらない様に状況を整えるだけだ

 

 

 

???

艦娘部隊上部機関-本会議場

???:監察官/各方面代表

 

 

老提督が大本営に行き、老兵も本会議場を後にしていた

二人の退室とは関わりなく艦娘部隊上部機関本会議は続けられる

上部機関在籍者の大半が集まる本会議、開催の機会自体が多くなく、開催されれば議題は幾らでもある

そんな本会議場に開催地である日本国内の動きが報告された

 

「報告、日本の自衛隊が動き出しています、政府内でも何らかのアクションがあった様で、現在詳細を確認中です」

 

「……自衛隊の何処が動いた?海自か?」

 

代表の一人が問う

 

「空自の哨戒任務の増加と、陸自の鎮守府封鎖の強化、今判明しているのはこれだけです」

 

「海自の動きが、判明しないのか、こちらの予定通りなら、海自が最初に動き出している筈、計画の変更を」

 

別の代表から意見が出る

 

「既に老提督は大本営に戻っている、行動の自由を手しているのだ、後手に回るわけにはいかない」

 

艦娘部隊上部機関、艦娘を独占運用する事で相応の対価を見込んで集まった各方面の方々、各方面の有力者が多数に及んだ事から国際機関としての看板を掲げるに至った

そこに参加する代表達の思惑は多岐に渡る、国際機関の看板の所為で純粋な商業者だけでなく国家の代表まで抱え込んだ

 

老提督の行動と本会議での演説により上部機関は艦娘を独占する事が出来なかった

 

現状で艦娘を独占している日本、各方面から不満が集中しそうな状況にも関わらず、一部を除き様子見、静観の構えを各方面から取り付けている

日本の外交力と老提督を始めとする老兵達の影響力、艦娘部隊上部機関在籍者には何方も取り扱いが難しい模様

 

 

 

東京湾-出港中

海上保安庁_巡視船:海保の方々

 

 

「深海棲艦は無視しろ、だと?」

 

「その対処は艦娘部隊で受け持つと、こちらは救助活動の支援に注力する様にとの指示です」

 

「深海棲艦の武装に巡視船では為す術はない、救助活動なら放棄も出来ない、速やかに終わらせるしかないな」

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

大本営所属艦:高雄/愛宕

鎮守府所属艦:大淀

 

 

大本営からの通達、何を考えたのか老提督を始め大本営の方々が予定より早く鎮守府入りするという

 

「……あのジジィ、依にも寄ってこんな時に」

 

「大本営からの指示では無視出来ません」

 

相変わらず事務的な元事務艦の大淀

 

「……救助活動中の艦娘達からはその後の報告は?」

 

早々に思考を切り替えて出来る事を片付ける事にした

 

「巡視船との合流は出来ているそうです、救助者を収容中との報告は来ています」

 

「居るのかよ、権兵衛さんは疑わしいと言っていたのに」

 

権兵衛さんは軍の工作活動だと決めつけていた、救助要請で誘き寄せた艦娘をどういう方法かは不明ながら鹵獲、平たく言えば誘拐しようと目論む集団というのが司令官の予測

何方にしても要救助者が実際にいる事は想定していなかった

 

「……それについては、熊野から不審な点があると、報告がありました」

 

高雄から遠慮がちに言ってきた

 

「どんな?」

 

取り敢えず不審な点を聞いてみない事には何も判断出来ない

 

「海難事故で海に投げ出された、或いは海に飛び込まなくてはならない状況になってしまった、それにしては要救助者が極めて冷静だと、事故だと云うのなら不意に起こった筈、ライフジャケットは当然としても、潜水用具を装備している事に疑問がある、船舶が居たのに救命艇が出されていない事も疑問だと」

 

「……潜水用具?」

 

「簡易式の空気ボンベを持っているそうです、何人かは重りを付けていると、事故前の状況の推定が困難だと、言っています」

 

「重り、ねぇ」

 

海難事故で海に投げ出されたのに重りを外さない要救助者、どんな事情を並べれば整合性を持った事故状況の説明になるのやら

 

 

 

鎮守府-応接室

鎮守府:司令官

大本営司令長官:老提督

 

 

「やぁ、久しぶりだね」

 

室内に入ると気軽な声がかかった

応接室に居たのは老提督一人、他の随行者は憲兵隊の方で引き受けたと連絡を受けている

この爺さん単独行動が好みなのか、或いは単独行動せざるを得ない事情があるのか

 

「ご無沙汰しています、老提督」

 

兎も角挨拶、挨拶は大事だろう

 

「先ずは救助活動の進捗を聞かせてもらいたい」

 

本題ではない、前段の話だが避けて通れない話だから早く済ませてしまいたい、老提督からはそんな雰囲気が感じられた

それに違和感を覚えたものの、指摘しても差して意味はない、要望通りに話を進める

 

「……要救助者は巡視船に引き上げられました、巡視船と艦娘達の捜索で周辺海域にこれ以上の要救助者を発見出来ない事、要救助者からの聞き取りからも要救助者全員の引き上げを確認、救助活動を終了とし、巡視船は帰港中、艦娘達はウチの護衛隊に合流予定です」

 

「護衛隊に?確か護衛隊は深海棲艦と対峙しているのでは、なかったかな?」

 

流石と言うべきか、耳聡い老提督

 

「現在護衛隊はその対峙海域に集結しており、他に合流出来る海域がありません」

 

「……何処かの資材採掘地を拠点にしていると、聞いたが、そこでは都合が悪かったのかい」

 

何かを確認しているのだろうか、前段の話なのだから流しても良い筈なのに質問が重なる

 

「そちらは距離があります、救助活動を行なっていた艦娘達は合同作戦にて資材運搬を実施中の遠征隊、護衛隊と速やかに合流させた方が良いと判断しました」

 

兎も角、話を進める

 

「ほう、そう云うシナリオか、あの艦娘達を来援艦隊とは、見做さないと云う事だね、指揮権が移っている事も、その方向で調整しよう、それでは救助活動に関しては一区切り着いた訳だ、本題に入ろうか」

 

あー、こっちが勝手に動いた結果の尻拭いね、下部組織の長としてはこういう時こそ上部組織に問題を丸投げして、対処して貰えるというのは有難く思うべきなんだろうな

 

 

 

鎮守府-封鎖線

自衛隊_陸自普通科:連隊長

自衛隊_憲兵隊:憲兵

 

 

 

「全く、何でこんな苦労を負わされてんだか」

 

大本営御一行様の相手をさせられた連隊長が愚痴る

 

「ボヤくなよ、コッチは何時もこうだ」

 

それに付き合わされた憲兵、連隊長が艦娘部隊との折衝に不慣れを理由に憲兵隊に協力を求めた結果だ

 

「……何時も?」

 

「艦隊部隊と関わると何時もこうだ、面倒事が次々に舞い込んで手間が幾らでも掛かる」

 

「……それでも艦娘部隊との協調の為に動くのか、憲兵は憲兵で苦労があるんだな」

 

「何処も一緒だ、自衛隊はな」

 

「違いない」

 

 

 

鎮守府-応接室

鎮守府:司令官

大本営司令長官:老提督

 

 

本題という名目の事情説明、当座の厄介事であるお偉い方々の鎮守府訪問についての詳細説明があった

 

「そんな訳で政府関係者が鎮守府に来るのは少し先になる、結果としては司令官の延期要請に沿うことになるだろう」

 

「……海自の大掃除、ですか」

 

憲兵隊長が言っていた自衛隊内部のゴタゴタ、その辺りにケリをつけるらしい

 

「海自だけではないがね、在日米軍のMPまで借り出して全自衛隊から例の一派を一掃すべく行動中だ、先程話に出ていた巡視船が収容したという救助者にも同様の疑いがかけられている、防衛省と海上保安庁で折衝中だが、政治決着になるだろう」

 

政治決着、この一言で大体の事情は察した、そもそも自衛隊内部の事情に在日米軍が直接関与している辺りからしても日米安保を絡めて例の一派とやらが繁殖していたと推定される

 

「……何処までご承知なのですか?」

 

「……さて、何処までだろうな、司令官は明確に答えられるかね」

 

 

 

鎮守府-第二食堂

鎮守府所属艦:長門/龍田/初春/大和/叢雲(初期艦)

大本営所属艦:一組の初期艦二

 

 

執務室で現状説明を受けた後、今後の対応を話し合おうと、誰が言い出すでもなくゾロゾロと第二食堂の一角を占めた

 

席に着くなり長門が零す

 

「なんだか、蚊帳の外に放り出された気分だ」

 

「そうねぇ〜、今の所出る幕が無いし、そんな感じよねぇ」

 

「老提督が来ておる、もう時期動きがあるだろうて」

 

「初春は老提督をアテにしてるの?」

 

初期艦は初春の言い様に不思議そうにしていた

 

「アテにというか、アレでも実績のある司令官じゃ、何も無い事もあるまい?」

 

「……あの、皆さんは、老提督の雰囲気が変わった様な感じ、しませんでしたか?」

 

大和から老提督に対しての疑問が投げられた

 

「そう言われてもな、大和の様に接点があった訳ではない、この鎮守府に視察に来た事がある、それだけの接点だ、私は感じなかったが」

 

「接点という事なら叢雲ちゃんが適任じゃないかな」

 

長門、龍田共に大和の疑問には答えを持ち用が無く、初期艦に答えを求めた

 

「……大和の言い分は分かるんだけど、なんというか、言葉に出来ない、何処が如何って変化では無いのよね、ホントになんて言えばいいんだろ」

 

初期艦は大和の感じに同意したものの、答えとなると詰まってしまった

これを聞きつけたと思われる一組の二人が長門達に加わって来た

 

「叢雲ちゃん?鎮守府の初期艦として、それは如何なの?」

 

「一組には、言葉に出来る事?」

 

漣の言い分に問い直す初期艦

 

「妖精さんの対応が明らかに変わったのです、以前なら司令官より老提督に寄っていた妖精さんが今では離れてすらいるのです、初期艦ならその辺りに気が付いて欲しいのです」

 

電が答えと共に初期艦の観察力、洞察力といったモノが必要とされる技量に言及してきた

 

「妖精さん?老提督の懐かれ具合は凄かったけど、そういえば、来ているのに大人しい?呼ばれていない所為では無いって事?」

 

電の言及に今一つ気が付かない様子の初期艦

 

「うーん、叢雲ちゃんはドロップしてから間がないのもあるんだろうけど、妖精さんの動向にもっと注意を向けても良いかもね、会話出来るからって妖精さんが何でも話してくれる訳では無いんだから」

 

漣の言い様でやっと理解が追いついた初期艦

 

「……観察力不足、だと?」

 

苦い顔の初期艦、包囲網への単艦突撃はどう考えても視野狭窄を起こした結果、状況を俯瞰で見れ無いのは経験不足が主要因、俯瞰での視点を持っていないから状況に流されるし周りが見え無くなる

 

「あれ?他からも指摘されてるの?」

 

叢雲(初期艦)の言い様からそう感じた漣

 

「……優先順位の振り方も成ってないって、経験不足は理由にならないとも、指摘されてる」

 

苦い顔のまま言う叢雲(初期艦)

 

「あー、一号の叢雲か、あの演習で色々指摘されてるんだ、まあ、艤装を破砕して見せるくらいだ、それくらいはするか」

 

「あんな短時間で指摘した所で如何にもならないのです、指摘されたからと言って即対応出来る訳では無いのです」

 

叢雲(初期艦)の苦い顔のワケを知り、漣も電も然も有り無んと言った感じだ

 

「そうじゃな、一朝に出来ることでは無いな、焦らずとも妾がチカラになってくれようぞ」

 

苦い顔を見ていられなくなったのか、初春が叢雲(初期艦)を励ましている

 

「……初春が叢雲ちゃんの相手をするのなら、私はヤマトちゃんの相手で良いのかしら?」

 

「そうなるだろうが、その前に現状を打開し平穏を取り戻す必要がある、その道筋はまだ付いていない」

 

今後の対応といっても、司令官次第、という以外には艦娘達だけでは結論を出し様も無かった

 

 

 

外洋-戦闘海域(双方停船中)

鎮守府所属艦:長良/名取/雪風/羽黒/天津風/鳥海/衣笠/多摩/子日/若葉

 

 

司令官からの指示を護衛隊に伝える為に司令部は秋津洲の飛行艇から龍驤に連絡を取り、龍驤の偵察機で護衛隊にメッセージを届けてもらった

 

「救助活動の終了に伴い海域から離脱、資材採掘地に集合し今後の指示を待て、ですか、この目の前の深海棲艦は無視しろって事ですか?」

 

「そうなるね、気分的にはアレだけど戦闘行動の許可は出ていない」

 

「背中から撃たれたら如何するの、コイツラがコッチの撤収を見送る確証がない」

 

その届けられたメッセージに重巡達が意見を付けた

 

「私が殿を務めます、皆さんは指示に従い資材採掘地へ」

 

その中で羽黒が最後衛を買ってでた

 

「若葉も殿を持とう、羽黒だけでは最悪の場合に対処しきれない」

 

「そういう事なら、子日も持つよ、鎮守府所属艦、司令官の指示を履行するリスクを羽黒だけに負わせるのも、違うし」

 

護衛隊に再編成された二隻、若葉と子日が羽黒の両翼に着く様だ

 

「何を言っているんです?羽黒の隣は雪風の指定席ですよ?鎮守府産まれや鎮守府育ちでは荷が勝ちすぎる、残るのなら雪風です」

 

雪風から抗議が入った

 

「雪風?言いたい事は分かるけど、今回は譲りなさい、羽黒も了承してちょうだい」

 

長良としては雪風の言い分より若葉、子日の言い分を採用するつもりらしい

 

「……旗艦指名を受けているからって、横暴じゃないですか?」

 

長良に恨めし気な視線を投げつける雪風

 

「今の若葉と子日は護衛隊に編入されている、そして護衛隊旗艦はこの長良、指示に従いなさい」

 

「雪風、心配ないですよ、司令官は攻撃して来ないと言っているのですから、殿を務めるのも念の為、保険の様なモノです」

 

羽黒からも長良の言い分を取る様に促されてしまった雪風、不満だと顔に思いっ切り出てる

 

「司令官の言い分という辺りに不安を感じます」

 

遂に不満をぶつけて来た

 

「だから、殿を子日と若葉でって言ってるの、僚艦の不安は伝染するんだよ?」

 

「不安は無用の予測を立ててしまう、熟練者程その予測に引き摺られる、今の雪風が羽黒と殿を務めても良い事はない」

 

ぶつけた筈の不満を二人に拾われてしまい、対応に困ったらしい雪風

 

「……」

 

「それに、もし、司令官の言い分が外れたら、ケツモチしないとね」

 

「ケツモチ?」

 

「あの深海棲艦が攻撃してきたなら、羽黒は若葉なり子日を盾にして護衛隊に合流して良い、時間は稼ぐ、その為に二隻いるんだ」

 

「……」

 

羽黒が駆逐艦を置いて一人で戦場を後にする事など有り得ない、そこは雪風も良く知る所だ

この目の前にいる二隻の駆逐艦、二人は重巡という戦力を当てにしない配置、三隻での艦隊行動を前提にしていない位置にいる

本気で羽黒に盾にしろと、攻撃距離から離れられる時間を稼ぐと言ってる、二隻だけで対峙中の深海棲艦を相手取るつもりだと、雪風には解ってしまった

 

「まあ、そういう事、救助活動してた艦隊と途中で合流する事になってる、護衛隊の本業だ、では、殿の三人は適時行動して、他は長良に続いてこの海域から離脱します」

 

 

 

鎮守府-第二食堂(鎮守府専用食堂)

???:権兵衛さん

鎮守府所属艦:大淀(事務艦)/長門/龍田/初春/大和/叢雲(初期艦)

大本営所属艦:一組の初期艦二

 

 

権兵衛さんが工廠から第二食堂に戻って来た所、食堂の一角を占める集団が嫌でも目に付いた

 

「なんだ?揃いも揃って財布でも落としたのか?」

 

「……なんだそれは?」

 

権兵衛さんの言い回しに戸惑った長門は、コレしか言葉が出て来なかった

 

「あら〜、そんな雰囲気だった〜、それはいけないわ〜」

 

「龍田、無理に空気変えようとしなくても……」

 

「権兵衛さんに財布落としたなんて言われる様な空気って事は、無理にでも換えないといけないんじゃないかな、そんな空気を鎮守府中に広める訳にはいかないでしょう?」

 

「そうじゃな、彼奴が何やら動いておるのだ、その内無理難題を吹っかけに来るだろうて、その時に備えるとするかの」

 

そういうと席を立つ初春、向かった先は食堂のカウンター、腹拵えだ

 

「……腹が減ってはなんとやら、か」

 

長門がそれに続いた

 

「なんだ?」

 

二人の行動に合点がいかないのか、まだテーブルに残っている面子と交互に見ている権兵衛さん

 

「権兵衛さんの方は?協議とやらは如何なった?」

 

「それを艦娘に話しても意味が無い、鎮守府司令官を呼んで来い」

 

「……ナルホド、漣が言って事はその通りってワケか」

 

「?」

 

「権兵衛さんは日本語を良く学んできているけど応用が成ってない、誤用とまではいかなくても、適切な語句の選択に難がある、まあ、言葉を覚えたばかりの相手の様に対処するのが望ましいって事ね」

 

「言葉がオカシイと言いたいのか?」

 

「オカシイというか、適切ではないって感じかな、特に交渉なんてデリケートな事をやろうとしている割にその辺に無頓着、交渉事に不慣れだと分かってしまう、ウチの司令官相手ならそれでも不利にはならないでしょうけど、その筋の相手ならとっても足元見られるでしょうね」

 

「……見下される、という事か」

 

「見下すのとは違うかな、遇らい易い相手だと判断されるって事、一組との話を聞いていても権兵衛さんの受け答えは素直だし、お仲間からの助言がなければもっと素直な会話になりそうだしね」

 

「……我等は腹の探り合いに来たのではない、交渉を纏めに来たのだ、有り体に話した方が無用な手間を省けるではないか」

 

割と真面目に答えて来た権兵衛さん、それを見て初期艦は言葉を選び話を続けた

 

「人と人の交渉なら、それだけでは足らない、権兵衛さんも言っていた様に交渉はその内容を相互に履行しなければ無意味になる、そこの程度を推し量る事も交渉の内、権兵衛さんは利益を提供する事でソレを確保しようとしている様だけど、ソレを確保する方法は色々ある、信用を得るというのもその一つ、信用を得ている相手を交渉相手に選ぶ事でソレを確保したと看做す事だってある

交渉や取引を行う上で重要な要素なんだけど、権兵衛さん達は人の交渉術に不慣れという事もあって、ココを見ていない、まあ、見ていたから如何なるってモノでもないんだけど」

 

「信用?ただの概念、思考の一つではないのか」

 

「んー、信用取引って聞いた事ない?その信用なんだけど?」

 

「用語の一つだろう、商取引の形態の一つ、其々の履行に時差が生じる際に用いるのだったか」

 

「誰彼構わず行う取引では無い、なんらかの信用が必要となる取引、でしょ?その信用なんだけど」

 

「……時差を利用し後に履行するモノが不履行のまま逃げたら取り立ての手間をかけねばならんからな」

 

「その手間を取る事になると分かってる相手に何の対策もなく信用取引なんてしない、それは分かる?」

 

「……その対策が信用だと?」

 

「違う、信用はそういう手間を取らせないと判断出来る相手が得ることが出来るモノ、対策ならそういう相手を交渉に関わらせその手間をこちらの代わりに受け持たせるって事になるのかな」

 

「……信用取引には第三者の介入が必須、という事か?」

 

「必須ではない、けれど当事者間での信用が成り立たない場合はソレを視野に入れれば交渉を纏める確率を上げる事ができるでしょうね」

 

「確率、確定には出来んのか」

 

「第三者は第三者、交渉なんだから最終的に当事者間の合意が必要、第三者が決定権でも持ち合わせているのなら話は変わってくるけど、今回は当てはまらないんじゃないかな」

 

「なれば第三者を介入させるだけ余計な手間が増えるだけではないか」

 

「当事者間の信用が成り立たないままでは交渉は纏まらない、手間を増やして交渉を進めるのか、時間を掛けて当事者間の信用を構築するのか、或いは別の方法を取るのか、まあ、考え所だと思う」

 

「……なんと煩雑で面倒な事か、力尽くで押し切った方が遥かに容易だ、交渉を行うと下した判断は誤りだったかも知れん、方針転換も視野に入れねばならんな」

 

「……それで醜いと評した人に倣うの?」

 

「……あんな醜い存在と同一になろうとは思わん、我等は我等の智慧を計っている、コレが愚者の智慧なのか、賢者とまでは行かなくとも、使える、有効な智慧なのか、我等の在り方を我等自身で決定するに足る智慧なのか、そうでないと判明したなら、我等は我等の智慧を捨てるだけだ」

 

「そして醜い存在に成り果てて行く、それで良いの?」

 

「良いと考えているのならこんな手間をかけていない、我等がこれ程の手間を掛けて交渉に臨んでいる事実を視ろ」

 

叢雲(初期艦)と権兵衛さんとの対話、双方がどこまでなにを汲み取れたのかは、時間が経たないとわからない

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)_周辺海域

鎮守府所属艦:龍驤

桜智鎮守府所属艦:鈴谷

 

 

「龍驤、熊野達と護衛隊が合流した、このままコッチに来るってさ」

 

周辺探索への協力、確かにそう言ったけれど、護衛隊の探索任務を割り振られてしまった鈴谷

 

「そのまま見たってや」

 

「……さっきから、何してんの?」

 

本来の任務をこっちに投げて龍驤は偵察機を何処かに飛ばしている

 

「アホンダラ供を追っとる、今何処ぞの駆逐艦?巡洋艦?と接触しとる、なんやここの駆逐艦は大き過ぎやろ、巡洋艦にしか見えへんでも駆逐艦や言い張る様やし」

 

「……偵察機、使い捨てるつもり?」

 

発艦した時間から計算すれば折り返し不能点への到達は近い筈、なのにこの軽空母は偵察機を戻す気配がない

 

「場合によったらソレもせにゃならん、ここから離れとるし今も遠ざかっとるしな」

 

「そういう運用をここの司令官は容認するんだ」

 

「しとらんで、ウチが勝手にやっとるだけや」

 

「勝手にって、良いの?」

 

ウチの運用とかなり違う、だからと言って他所の鎮守府の内情に無闇に口出しは出来ない、司令官が違えば運用も変わる、ウチで引き取った他所の鎮守府で建造された艦娘達、その面倒の一端を見て来た鈴谷はその問題の厄介振りを肌身で知っていた

 

「文句があるなら解体するやろ、その前にコッチも言いたいこと言わせてもらうがな」

 

「……解体って、そういう事になってるの、この鎮守府」

 

「しらんで、この鎮守府には所属したばっかやし、出撃予定も聞いてたんとはちゃうしな、こんな無茶させといてコッチの言い分聞かん様な司令官なら、そこまでの司令官っちゅうこっちゃ

まあ、そうはならんやろ、鎮守府所属のドロップ艦やら建造艦の話を聞く限りではな」

 

所属したばっか?その練度で?鈴谷は今更ながら事情がややこしいと言っていたのはハッタリでは無い事を確信した

 

「……それにしても、あの深海棲艦、停船したままだ、まだ動かない、観測は続けるけど、もう時期交代させないと」

 

下手に事情に関わらないほうが良い、熊野はそう判断していた、鈴谷にも異論があった訳では無いが、極力触れない様にしようと改めて思った

 

「あんまり近付くなや、落とされるで」

 

余計な事を考えて艦載機への注意が漫ろになったのを感じ取られたらしく龍驤から忠告が来てしまった

 

「分かってるって、ただの観測任務で水上機落とされたらカッコ悪いし」

 

流石は空母種の艦娘、艦載機への扱いには厳しい目が向けられる

 

 

 

???

艦娘部隊上部機関-本会議場

???:監察官/各方面代表

 

 

「いかんな、こちらの仕込みが悉く掘り返されている、米軍内にも離反者がいるのではないか」

 

口頭ではなく書面で回覧されている各所の報告、そこに記載されている内容は上部機関の御歴々には色々と痛い案件が並んでいた

 

「自衛隊に直接仕込むのは難しかったのだ、米軍経由で自衛隊に割り込ませたが、逆用された様だ、ハワイ沖海戦の結末は米軍内でもそれなりに知られている、その結果だろう」

 

「ハワイ奪還作戦を実行するにはハワイ諸島を奪われた事実を公表しなければならない、ワシントンは通信が生きている事を利用しハワイ諸島の現状を隠蔽しているからな、尤も軍関係者には時間稼ぎにしかならないだろう、真珠湾の司令部との通信に問題があるからな」

 

「ハワイ諸島の詳細な現状はどうなっている?」

 

「通信が生きているお陰で詳細なレポートが上がって来ている筈だ、が、何処かが検閲と称して囲い込んでこちらに回ってきていない、アメリカの通信も共産圏の様に統制下にあるらしい」

 

「それに各所で通信障害を装っている、これでは一般人からはハワイ諸島の現状を知る術がないだろう」

 

「そうでもない、ハワイ沖海戦で潰走した艦艇が各所の海軍港に入港を始めたそうだ、外観の損傷は目立たないが要修理艦艇の急増に関係者が各所に問い合わせを始めている、時間の問題ではないかな」

 

「……ホワイトハウスの動きは?」

 

「まだない、大方、支持率向上やら選挙戦にどう利用するのか思い付かないのだろうさ」

 

「……他の主要国の動きは?」

 

「表立った動きは見えない、非公式なルートでハワイ沖海戦の顛末は伝わっている筈だがね」

 

上部機関本会議場に集う各方面の方々には議題が尽きない様だ

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官

大本営所属艦:高雄/愛宕

 

 

高雄からの報告はどう聞いたら良いのか、困る内容だった

 

「南鳥島?」

 

「龍驤からそこへの艦載機着陸許可を要請してきました」

 

「……そんな事言われても、所管違い過ぎてどうしろと?」

 

これでも艦娘部隊というのは民間組織の括りになるんだけど、なにを言いだすんだか

 

「管理しているのは自衛隊では?協力要請は出せると考えます」

 

「着陸して、その後は?龍驤が回収に行くのか?向こうで艦載機への補給は期待できないが」

 

「……妖精さんを待機させる事が目的だそうです、偵察機の妖精さんを使い捨てにしない為の方法だと、言っています」

 

「龍驤の艦載機は殆どが偵察機で航続距離は長い筈、それが使い捨てとはどういう事だ、広範囲の観測は依頼したが、偵察機の行動半径で担える範囲に収まっているだろう、こちらの担当海域を超えて行動を取っているのか?」

 

「先の救助活動に於いて救助隊が現着する前に海域を離れた船舶が観測されています、龍驤は偵察機を用いてその船舶を追尾中です」

 

思いも寄らない事態を言い出して来た高雄、状況が完全にこっちの手を離れている

不味い事態なんだが、どうしようか考えを巡らせてみる

 

「……ちょっと待て、なら、今護衛隊と救助隊の周辺観測はどうなっている、龍驤は護衛隊の周辺観測も担っていただろう、艦隊からの観測だけで資材採掘地に向かっているのか?」

 

取り敢えず本来の任務がどうなっているのか聞いた

 

「そちらは航空巡洋艦が担っています、水上機ですが艦隊の周辺観測、警戒態勢構築に問題はありません」

 

「……最上型の三番艦だったか、四番艦は護衛隊と合流しているのだったな」

 

「その二隻で十機以上の水上機を運用出来ます、問題はありません」

 

「それで?龍驤が追尾中の偵察機を南鳥島に着陸させたいと、現状報告を」

 

護衛隊の広域探索には支障は無いらしいと判断、問題の龍驤の要請を詳しく聞き直す

 

「追尾中の偵察機は南鳥島の北側の海域に到達しています、離脱船舶はこの海域で所属不明の艦船と接触、偵察機による観測を継続中です」

 

「……それを、自衛隊に言って、協力要請しろと、無茶振りもイイ所だ、艦娘部隊の鎮守府司令官を何だと思ってるんだ?こっちは名目上民間組織だぞ?国際機関が展開する組織だと云うだけの、軍事組織じゃないんだ、担当海域外の活動は本来不可だと分かってるのか?」

 

「協力が得られなければ龍驤は偵察機を使い捨てる他ありません」

 

こんな所だけはキッパリ言い切る高雄、少し考えて質問を変えて見た

 

「……観測を止めるという選択を無視している理由は?」

 

「……そこまでは報告されていません」

 

詰めが甘いんだよ、如何してそこを詰めないのか、不思議でならない

もしかして権兵衛さんの指摘した通りに艤装が無いと重巡と雖もこうなってしまうモノなのだろうか

艦娘にとっては半身となる艤装だ、影響が無いと断じる方が不自然なのかも知れない

 

 

 

鎮守府-港_旅客船(移籍組官舎)_五十鈴私室

鎮守府:司令官

大本営:司令長官(老提督)

大本営所属艦:五十鈴

 

 

老提督はこちらへの説明の後、自身の秘書艦である五十鈴と今後の展開に付いて意見を纏める為に五十鈴を訪ねていた

 

「南鳥島の自衛隊?」

 

こちらの話を聞き終えた老提督が疑問調で聞いて来た

 

「協力要請を出して、受託される可能性はありますか?」

 

「理由に因るだろう、国防や民間活動の保全に関わる事象なら受託の可能性はある」

 

「……」

 

「理由が曖昧なのかね」

 

「曖昧というか外洋で活動中の軽空母の独自行動、こちらからの指示ではないので中断させるか、継続させるかの判断も付けかねています」

 

変に理屈を捏ね様にも時間がなさ過ぎた、この場合はぶっちゃけるしかない

 

「龍驤ね、龍驤の判断なら中断させるより継続させた方が良い」

 

独自行動と聞いた五十鈴が即答して来た

 

「私の秘書艦はこう言っているが、司令官に異論は?」

 

「異論も何も判断材料がありません、この協力要請自体龍驤の行動を補佐するというより事後処理の延期を目的としたものと思われるので、独自行動に対しての判断だけで言うのなら継続と言うことになります」

 

「事後処理の延期?」

 

「偵察機を南鳥島に着陸させたいとの要請です、航続距離の問題でしょう」

 

「……龍驤の偵察機は何処を観測してるの?」

 

流石に五十鈴でも龍驤の行動に疑問符が付いた様子

 

「報告では現在南鳥島の北側の海域に展開中だと」

 

「この鎮守府の担当海域からは随分と離れているね」

 

「……」

 

老提督の突っ込みに返す言葉が無い

 

「そんな所に何をしに行ってるの?龍驤が無駄に展開させてるとは思わないけど」

 

龍驤が無闇に理由も無くそんな遠くまで偵察機を飛ばす訳がない、そう思っていてもその理由が考え付かない五十鈴

 

「……先の救助要請に関連があると思われる船舶の追尾中との事です、その途上で所属不明の艦船との接触を確認したとも報告して来ています」

 

「……自衛隊の領分ではないかな、それは」

 

老提督からは龍驤の行動を肯定的に捉えた様子は見られない

 

「艦娘部隊の活動範囲からは離れるかもしれません、しかし救助要請を発したと思われる船舶が要救助者を放置して海域を離れた、これは救助隊が観測しています、その結果として海保に緊急出動が掛かった訳ですから」

 

「……それも海保の領分ではないかな、艦娘部隊としてこれ以上の関与は難しいのではないのかな」

 

完全否定こそして来ないが老提督は明らかにこちらの話に否定的だ

 

「……では、全て見なかったことにしろと、三猿に徹しろと、老提督はお考えか?」

 

「司令官は今、重要な交渉の最中ではないのかな、鎮守府を包囲しているモノとの交渉中に自衛隊や海上保安庁の管轄する事象に関わっていられる余力があるのかね、私はそう思わないが」

 

「司令官の考えは分からないではないけど、現状で余力があると対外的に示す事は得策とは言い難い、そんな余力を上部機関が放って置くと思う?」

 

「……」

 

龍驤の行動に疑問符が付いた五十鈴までも自衛隊へ要請を出すリスクを持ち出して来た

 

「……司令官には伝えていないけど、大本営から艦娘の建造指示が出てる、今は秘書艦権限で拒否してる、大本営の運営を代行している監察官達には其々の都合があり、それを押し通す気でいる、上部機関の後押しもある、鎮守府司令官だけで抗うのは、無理筋なのでは?」

 

こちらに来ていない話、おそらく五十鈴の言う通りに秘書艦という立場を活用しているのだろう事は察しが付いた

それは分かったが来ていない話に疑問があったから聞いてみる

 

「建造指示?」

 

「大規模増設計画に伴い佐伯司令官以外の司令官は鎮守府の移動が下令されて、実行された、結果既存の鎮守府が空き家になってそこに日本以外の司令官が着任してる、これは大規模増設計画の承認条件の一つ」

 

「空き家になった鎮守府には艦娘は勿論妖精さんも居ないのでは?」

 

「その通り、だから手っ取り早く艦娘を配置しろって事ね」

 

来ていない話はだいたい分かった、それに関連する事案を知っておかないと後々面倒な事に成りそうな気配を感じ、質問を重ねる

 

「……それで建造指示、なら、その指示は他の鎮守府にも?」

 

「いえ、ここだけ」

 

アッサリ言ってくる五十鈴、艦娘の配置を要求しているのに他の鎮守府にはそれが行っていないという

 

「……何故?」

 

意味も意図も分からず思った事がそのまま口から出てしまった

 

「……色々推測は出来る、けど、どれも意味はない、要は貴方の、佐伯司令官の鎮守府で建造された艦娘が欲しいって事でしょうね」

 

「……建造艦なら何処でも同じでは?」

 

「所謂験担ぎかな、なんとか理解出来るのは、それ以外は聞くだけ無駄」

 

「……司令官に因って建造艦の何かが変わるとでも?そんな馬鹿な話になってると?」

 

呆れてモノも言えないとはこういう場合に使うのだろうとか、どうでもいい事が頭の中に浮かんだ

 

「他の国の司令官達は資料でしか艦娘を知らない、これから手探りで艦娘の取り扱いを習得して行く事になる、良い教材が欲しいのでしょう」

 

「……大規模増設計画に伴い、艦娘の建造に関わる仕様変更が実施されましたが、伝わっていないんですか?」

 

「その報告は受けている、説明困難と言う理由で大本営内で留まっているよ」

 

五十鈴に代わり老提督から返答があった

 

「……」

 

つまり、何が如何なっているんだ?事情も状況も理解が追いつかない、分かっている事は龍驤の要請を却下しなければならない、それだけだ

 

「司令官が隠し事をしているのではない、それは私を含め監察官等も承知している、司令官に不利に働く事は無い、もしそういう事例があるならこちらで対処しよう」

 

 

 

鎮守府-工廠(第三工廠)

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:秋津洲

 

 

正直気が重い、然しそれを理由に投げ出すことも出来ない

取り敢えずは護衛隊との接触を図らないといけない事から秋津洲に声をかけた

 

「秋津洲、龍驤との接触出来るか?」

 

「大艇ちゃんなら鎮守府への帰投中、護衛隊との接触は無理かも」

 

「鳳翔の飛行隊はまだ飛んでいるのか?」

 

「龍驤から補給を受けたとは言ってたかも、現状の運用は直接聞いた方が良いかも」

 

 

 

鎮守府-工廠(第二工廠)

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:鳳翔/祥鳳

 

 

隼鷹の姿が見えないが、そこを詮索している余裕は無かった

 

「龍驤との接触ですか、どんな要件でしょう」

 

こちらの話を聞いて鳳翔から質問が来た

 

「龍驤から自衛隊への協力要請を依頼されたが、無理筋だ、要請は出せない、直ちに偵察機を戻す様に伝えて貰いたい」

 

「……偵察機を使い捨てろと?」

 

鳳翔の眉間にシワが寄っている、どう見ても龍驤の要請を拒否する判断に不満があると丸分かりだ

 

「そうならない様に戻せと言っている」

 

「もう手遅れです、引き返し不能点を過ぎてしまっています、協力要請が履行されない限り偵察機を使い捨てる事になります」

 

祥鳳からも意見があった

 

「……なんだってそんな運用を、そこまでしろとは言っていないつもりだが」

 

「確かに司令官はその様には命じていません、龍驤の私情が入った行動なのですから、ただ、その私情には私も賛同します」

 

「……私情に賛同?指揮下の艦娘が私情で勝手に動いても司令官は容認し追認しろと?司令官職は艦娘の管理は職務の内ではあるが保護者では無い、無条件でそんな事を求められても拒否せざるを得無いが」

 

「確かに司令官には関わりの無い私情でしょう、ですが、あの海戦に参加した私達には無視出来ない私情です、どうか、協力していただけませんか」

 

眉間はそのままに口調だけは穏やかな鳳翔

 

「あの海戦、というと例の大規模海戦か?移籍組が参加したという」

 

「そうです、あの海戦の後、漂流している艦娘を鹵獲している何処かの艦艇がいる事が報告されています、自衛隊に回収された艦娘は日本に戻されましたが、それ以外は鹵獲され、現在も未帰還のままです」

 

「……戦没扱いにならず未だ未帰還者として登録されているのはそれが理由だと?」

 

「そうです、この点は日本政府にも何らかの思惑が重なった様でこちらの主張が通りました、日本政府内にも理解を示す政治家や官僚が居る筈です、協力要請を出しては頂けませんか」

 

食い下がる鳳翔だが、要請を出せない事は確定事項、鎮守府司令官の権限を超えている事案だ

 

「……こう言ってはなんだが、その鹵獲されたといってる艦娘達は、その後どうなったか、伝わっていないのか」

 

言いたくは無かったが、言わずには済まない状況と見て話を進める

 

「……司令官はご存知なのですか?」

 

考える様な間はあった、その間に何を考えたのか、それでも鳳翔は聞いて来た

 

「自己解体、扱いに多大な不備があった様で、例外なく解体してる、それで新たなサンプル採集が実施された、それが先程の救助要請、尤も深海棲艦の接近で目的を放棄した様だが」

 

「自己解体、あの海戦に参加した艦娘は全てドロップ艦、なのに自己解体、したというのですか?」

 

驚きの表情に変わる鳳翔、おかげで眉間のシワが消えてくれた

 

「そう聞いている、私が直接聞いて回った訳ではないが」

 

「……妖精さん、妖精さんから、そう聞いたのですか?」

 

「直接聞いた訳ではない、間接的にそう言ってきた」

 

「なんて事、建造直後の艦娘なら兎も角ドロップ艦の自己解体だなんて、益々龍驤の私情に賛同します、このまま済ませるなど出来ません」

 

怒ってる、間違いなく怒ってる、どうしようかと思ってみたが状況は何も変わっていない、結論も変えるだけの理由は鎮守府司令官には無い

 

「ソレを押し進められると、私が困るんだが、そのケリは老提督に任せては貰えないか」

 

「……」

 

言葉も無く、複雑な顔をする鳳翔

 

「移籍組というかあの海戦に参加した艦娘達には老提督に良い感情の持ち合わせは無いのだろうが、正直な所、ソレは私の手に余る、やってくれると言ってるんだ、任せては貰えないか」

 

重ねて鎮守府司令官の権限を超えている事を示し、老提督に委ねる様に促す

 

「……ソレを龍驤に伝えろと?」

 

不満はあるが、話は理解した、そんな感じの鳳翔

理解した以上行動に移す事が求められる、鳳翔は鎮守府所属艦なのだから

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)_周辺海域

鎮守府所属艦:龍驤

桜智鎮守府所属艦:鈴谷

~鳳翔⇄艦戦⇄龍驤~

鎮守府-工廠

鎮守府所属艦:鳳翔

 

 

鳳翔からの通信に耳を傾けていた龍驤がその様子を一変させた

 

「……もういっぺんゆうてみぃや」

 

「行動中止、偵察機を戻しなさい、以後は行動計画通りに護衛隊の目となる様に」

 

「帰って来られへんのもおるんやが?」

 

「諦めなさい、許可もなく引き返し不能点より進出させた運用者の責任です」

 

「コラ、司令官に何をいわれたんや、鳳翔ともあろうモンが少しくらいの脅しなんぞに屈するわけあらへん、何があったっちゅうねん」

 

鳳翔の言い分に納得行かない龍驤

 

「……大本営司令長官たる老提督が事態収拾に動くそうです、一介の鎮守府司令官では手出し出来ない、そこに手出しは勿論口出しでも、事態を悪化させる以外の効果は無い、そうです」

 

「……クソッタレが、まーた、あの老提督かい」

 

老提督と聞いて龍驤の機嫌はとても悪くなった模様

 

 

 

外洋-資材採掘場(無人島)_周辺海域

鎮守府所属艦:龍驤

桜智鎮守府所属艦:鈴谷

 

 

龍驤の様子を恐る怖る見ていた鈴谷はタイミングを見計らって声をかけた

 

「どうしたの?何を言って来た?」

 

「……偵察機を使い捨てろ、そういうこっちゃ」

 

不機嫌を隠しもせず吐き捨てる龍驤

 

「航続距離的には着陸予定地点まで行けるんじゃないの?」

 

ここは敢えて踏み込む場面と読んだ鈴谷は話を続ける

 

「行けるが、着陸許可が出ん、勝手に着陸したら、ウチの司令官がアッチコッチから袋叩きされるネタになってまう、着陸を強行したら司令官に詰め腹切らせなあかんくなってまうやろ、次の司令官が今の司令官よりマシとは思われへんしな」

 

司令官を不利な状況に追い込まない様に艦載機を放棄する、龍驤はそう言っている

元重巡で航空巡洋艦になっている鈴谷でも艦載機の放棄という決断などしたくはない

鈴谷は少し考えて妙案を思いついた

 

「……緊急事態を宣言して緊急着陸を要請したら?偵察機だから無線機積んでるでしょ?」

 

龍驤には予想外の提案が出て来た、思わず不機嫌だった事も忘れるほどの予想外な提案だった

 

「……そんなん、可能なんか?」

 

「艦戦みたいに武装してると分からないけど、非武装の偵察機なら理屈上は違法にならないハズ、細かい所は着陸させてから何とでもなるんじゃない?」

 

「……使い捨てるよりはマシやな」

 

龍驤は鈴谷の提案に乗る事にした、そうと決めれば事はサッサと済ませた方が良い

 

 

 

 

 

 






場所-殆ど鎮守府の何処か、断りの無い鎮守府表記の場合は佐伯司令官の鎮守府
所属:登場人物/登場艦娘 等

~近距離無線~は通話、交信 等

上記の書き方が基本となっています、同じ所属が複数行になっている場合は行動単位




大本営所属初期艦〔一号(漣.電.吹雪.五月雨)、一組(漣.電)、二組(吹雪.叢雲.漣.電.五月雨)〕

移籍組〔修復待ちの高練度艦娘、以前の大規模海戦の帰還艦娘〕

司令部要員〔高雄.愛宕.摩耶.妙高.那智.足柄.三隈〕




鎮守府所属初期艦〔鎮守府配置の初期艦(叢雲)、三組(吹雪.叢雲.漣.電.五月雨)〕

工廠組〔明石、夕張、北上、秋津洲〕

護衛隊〔以前の大規模海戦の帰還艦娘、長良を始め帰還後に原隊の大本営に戻らなかった艦娘達、(長良.名取.球磨.多摩.雪風.天津風.羽黒.鳥海.衣笠)、広域探索役として龍驤が加わっている〕



上記の初期艦の所在
・二組の初期艦は大本営に、老提督から長期休暇を取らされるも老提督の補佐に勝手に着いている
・他は舞台となっている鎮守府(佐伯司令官の鎮守府)に所属、出向、立ち寄りなどで滞在中



艦娘について
・鎮守府の大規模増設計画に伴い、初期艦達が配置する艦娘の問題解決手段として艦娘の複製(正確には妖精さんの増殖)手法を確立、作製(建造)に至っている
・本編中では複製艦娘達は新規格の艦娘と呼ばれている
・この新規格の艦娘は新規設計の第三工廠、或はそれに準じる工廠にて作製可
・初期艦も複製可能となり増設計画に拠って増設された鎮守府に配置され、留守番中




・工廠に陣取る軽空母達、鳳翔、祥鳳、隼鷹
・工廠防衛を指示されている



・他所の鎮守府所属艦娘達(桜智鎮守府所属艦)
・白露型十、航空巡洋艦三
・包囲網を通って鎮守府に来たのは利根、白露、村雨、夕立、五月雨、涼風
・時雨は同名艦が居ると聞いて残留
・改白露型三隻は内輪の事情により残留
・春雨は他所の資材採掘地に興味深々で残留を希望
・最上型三番艦、四番艦は護衛隊の周辺探索に協力する為に残留




鎮守府間の合同作戦
・老提督(大本営司令長官)からの依頼が起点、大本営から許可を得ている作戦行動
・大本営内で引き籠もり状態だった帰還艦娘達を修復し現役に復帰させる
・引き籠もり状態だった帰還艦娘達は艤装を喪失している為、現役復帰には再艤装が必要
・帰還艦娘の修復(再艤装)には相応量の資材を要する
・必要となる資材の採掘と備蓄、運搬を稼働中の全ての鎮守府で行う協力体制を構築済み
・現状は実行中ではあるが、諸般の事情により事実上の停止状態


鎮守府大増設計画
・老提督から再度の無茶振り、但し佐伯司令官は他所の司令官にこの無茶振りを直には伝えていない
・この無茶振り自体は広範囲な噂話として知れ渡っている
・他所の鎮守府では資材供給以外に実行可能な行程として関われる箇所がない
・前述の理由もあり合同作戦をそのまま延長して諸般の厄介事を回避する腹積もり
(合同作戦の際に色々あった、特に二箇所の鎮守府で運用方針の違いが発露し所属艦娘数を減らしている)
・他所の司令官達からは何の質問も問い合わせも佐伯司令官に寄せられていない
・鎮守府の設置自体は大本営所属艦で実行、配置する初期艦、工廠妖精さんは第三工廠で複製を作製
・現状は実行中ではあるが、諸般の問題が起こって事実上の停止状態


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。