疲れた
メンタルにクリティカルなヤツを何度も食らった
それでも最後まで聞く事が出来た私を自分で褒めてやりたい
しかし叢雲の話はホントなのか判断しかねている
曰く、貴方の初期艦が起きないのは個体の問題が表面化したからで修復の失敗ではない
何だよ、問題ってのは
曰く、改修で起こしても再発するし、再発の間隔も短くなっていく、いつかは修復中に崩壊する
は、なにをいってるんだおまえは
曰く、私は既に貴方の初期艦から妖精さんを譲られている、貴方の初期艦で私を改修する事で技量も継げる
改修で技量が継げるなんて、聞いた事がない
曰く、そうして欲しいと貴方の初期艦に頼まれた
いつだよ、それ
曰く、この鎮守府に初期艦が多く来るのは貴方の初期艦が自身を継ぐ存在を呼んでいたから
はい?なんですかそれは
その場で叢雲を問い詰めようと何度思ったか
その度に叢雲を問い詰めるよりも、妖精さんと話をした方が現実的だと自分に言い聞かせ聞き役に徹したのだが、疲れた
伝え終えた叢雲が心配そうにこちらを見てきたから取り敢えず頭を撫でておいた
「お疲れだな、首尾はどうだ」
声の方を見れば隊長がいた
「……そちらはどうなんです」
そういえばここは自衛隊側の自販機コーナーだった、普段は鎮守府側のを使ってるからなんで隊長がここにいるのか疑問に思ってしまった、向こうにすればおまえがなんでここにいる状態だな
「役目はだいたい終わった、後は上の話になる」
「上、ですか」
「そう、上だ」
それ以上話す事もなく缶コーヒー飲み干して執務室へ行く、執務を事務艦に任せっきりだ
執務室に向かいながら思い返す
「貴方の初期艦は身体的には起きていないけど、なにも見えない訳でも、なにも聞こえない訳でもない、自身に出来ることを出来る限りやろうとしている、だから、褒めてあげて」
どういう意味なんだ
「貴方の初期艦を使って私を改修する時、少しだけ貴方の初期艦と話が出来ると思う、何を話すか、何を聞くのか、よく考えて」
だから、それは、どういう事なんだよ
叢雲の話を思い返すと考えがまとまらない、どうすりゃいいんだよ、何が出来るんだ、私は
「おかえりなさい、司令官」
執務室に入ると事務艦がそう言ってくれた
「あ、ああ、ただいま、ってすまない、執務を任せっきりにしてしまった」
「いえ、それが事務艦の本分ですから」
「そうか」
あの量の執務を押しつけられて文句が出て来ないのか、まあ、その為の事務艦だというのはその通りなんだが
「ですが、事務艦では処理権限の無い執務が多数あります、司令官の決裁をお待ちしている所ですよ」
「……そうか」
やっぱり事務艦は、事務艦だった
「司令官はどうしていたかな」
「かなり参ってますね、死にそうな顔してましたよ」
「うーん、こんな所でそこまで追い込まれてしまうのか、提督といえど民間人、仕方ないのかな」
「助け船はださないんですか」
「それを出す役割を負っているのは、こんな年寄りではないよ」
「……そうですか」
執務を切りの良い所で切り上げて今日は終わりにする、事務艦も上がらせた
今夜は妖精さんと話をしないと、このまま寝たら夢魔に憑かれそうだし、先送りしていい話でもない
妖精さんの巣(工廠)に着く、妖精さんは謎のナマモノ、煮ても焼いても喰えないという点ではゲテモノかな
「来たか」
意外なヤツがいた
「長門、なにしてる、こんな所で」
「立ち会わせてもらおう」
「?何に」
「あの初期艦の話を確かめに来たのだろう」
「何故それを、知っている」
「寝ていたら、ウチの初期艦に叩き起こされた、司令官を一人にするとはおまえはそれでも戦艦かと、物凄い理不尽な理屈でな」
「理不尽過ぎるだろ、その理屈は」
「まったくだ、さて行こうか」
「ああ」
理不尽は妖精さんの十八番だ、それにあいつもそうだったな
'やっと来たよ''遅過ぎ''やる気が感じられない''こんな司令官で大丈夫か''ダメみたい''ダメじゃない'
言いたい放題じゃねーか、しかも結構ヒドイ
「なにやら賑やかそうなのは分かるが、何と言っているんだ」
「……知らない方が幸せになれる」
建造艦の長門は妖精さんは見えても声までは聞こえない、建造で初期艦は出てこない、何故かは知らん
黙って首を振りつつ用件を促してきた
「長門が連れてきた初期艦の言っていた事は何処まで本当なんだ」
'叢雲うそつかない''全部ホント''妖精はウソつかない''私達が''叢雲に教えた''全部知ってる事'
マジですか、そうですか、って納得出来るか!
「わからないと言っていただろ」
'あの時はわからなった''妖精は日々精進''いつまでも''同じだと思ったか''これだから''ニンゲンは''庇護対象''その為に''艦娘がいる''私達だけでは''届かない''人間に'
「あの時って定期的に検診してただろ」
'定期的''検診''あの時''どのとき''このとき''いまどき''どきどき''バクバク'ーーーーーーー
おい、短過ぎんだろ、こうなると戻せないんだよ、しばらく置かないと
「ん、終わりか」
「ループに入ってしまった、話し方というか話の誘導方法をどうにか仕立てないと長話は出来ないな」
「そうなのか、あの初期艦はここに来てからずっと妖精さんと仲良く話していた様だが」
そんなに不思議そうにされても、妖精さんと会話出来ると言っても初期艦は日常会話でこっちは片言だ、只でさえ飽き性の妖精さんが何方と話したいか、話し相手を選ぶ選択権が妖精さんにある以上どうにもならない
「また来る、今度はもう少し長く話したいな」
妖精さんの巣から出ると長門が聞いてきた
「まったく聞こえない私が言うのもなんだが、提督が言う妖精さんの話がループに入る、というのはどういう事なんだ」
珍しいな、妖精さんの質問なんて
「そのままだ、同じ事を繰り返すだけになる」
「所謂壊れたレコード状態なのか」
「……そんな感じだ」
良くそんな例えを知ってるな、建造艦のうえ鍛錬と出撃で世間話とかには疎いと思ったらそうでも無いのかな
「確かなのか、それは」
ん、ヤケに食いついて来るな、なんだろう
「確かめた事がある、あの時は二時間ああだった」
「いつの事だ」
いつって、え、あれ、似たような遣り取りさっきしなかったか
あっ、待て、そういう事か、日々精進、ね
「昔も昔、だな、今は違うのかもしれない、もう一度行くか」
「長い夜になりそうだ」
妖精さんの巣へ、再挑戦だ