初期の艦これ   作:弱箔

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91 撃退できた

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

大本営所属艦:高雄/愛宕

 

 

第二波の飛翔体来襲はどうにか鎮守府への被害を出す事なく撃退できた

それというのも鎮守府上空まで到達した飛翔体が攻撃らしい攻撃をしてこなかったから

所属艦娘の対空砲火で幾つかは撃墜した、それに飛翔体は被弾しても飛べる限り海へ向かって行ったことも被害が出なかった要因だ

 

然し乍ら事態は楽観できる状況には至っていない

 

軽空母達の言い分では今回の飛翔体が鎮守府上空に到達した事で攻撃目標が定められた可能性が高く、次はそこを狙われる確率が高いそうだ

駆逐艦達が弾幕を形成して重要区画への進入を防ぐのに躍起になった事で返って進入路を確定させてしまったと推定され、さらに進入して来た飛翔体は鎮守府上空を飛び回った後引き返して行っている

 

それはその進入路の先にある鎮守府施設が狙われる可能性を思わせるもので、対空砲火への対応も含め、攻撃態勢を整えた第三波が来ると予測される

戦貴棲姫が言っていたように連携を欠いてはいるが、艦隊行動、任務部隊としての行動はシッカリとやっている様子が判る

 

「第二陣が出発しました、妖精さん等を纏めた初期艦達も同乗しています、残留の鎮守府所属艦娘は工廠組と軽空母達、司令部要員、海上で対空戦を実施中の摩耶、木曾、阿武隈、後は長門、大和、初春、加古、神通、合わせて二十二名、未だ残っている妖精さんも居ますが加古と神通に載る予定です」

 

高雄がスラスラと報告してくれている

 

「後、私と叢雲を入れて二十四か、自衛隊と政府関係者の退避は始まっているな?」

 

「食堂での三者協議は場所を変えて継続との事です、一組の初期艦、漣、電、保険要員の白露、筑摩の四名はそちらと共に行動中です」

 

「戦貴棲姫もな、よくも承諾したもんだ、政府の方々は余程良い提案をしたらしい」

 

「鎮守府内に残留している自衛隊は鎮守府派遣隊と憲兵隊です」

 

愛宕の報告に驚き応答が遅れた

 

「……派遣隊の方達、残ってるの?」

 

「憲兵隊と共に離脱予定だそうです」

 

それを聞いてホッとする司令官

 

「司令官は移籍組をどうされるおつもりですか?」

 

そんな司令官に高雄から質問が来た

 

「憲兵隊には話してみるが、こちらに打てる手は無い」

 

 

 

 

鎮守府-憲兵隊詰所

鎮守府:司令官

自衛隊_憲兵隊:憲兵1/憲兵2

 

 

「移籍組か」

 

司令官から話を持ち込まれた憲兵達は一斉に難しい顔を作った

 

「このままでは置いて行かざるを得ない、憲兵隊でどうにか出来ないだろうか」

 

司令官も無理筋を捻じ込まない様に言葉を選ばなくてはいけない

憲兵達にヘソを曲げられたら本当に移籍組を置いていくことになるのだから

 

「……言わんとする所は解るが、元々憲兵隊にはそういった装備は割り当てられていない、駐留が前提だからな、何人いるんだ?」

 

憲兵の一人が難しい顔をしたまま何らかの手段を思いついたらしく実現性を思案してくれている様子を見せる

 

「五十六名、それと知っているとは思うが、全員艤装は持っていない、自衛隊車両に乗せても問題にはならない筈だ」

 

憲兵が前向きな対応をしてくれると言うのなら司令官としてはそれに賭けるしかない

 

「それについては知ってる、その為に司令官は所属艦娘を米軍車両に乗せたのだろう、しかし自衛隊が協力を拒否するとは考えていなかった、そういう事だな?」

 

状況確認の積りで他意はないのだろうが、答え難いことを聞いて来た

 

「……あまり言及してしまうと、問題になりかねないので、勘弁してください」

 

「まあそこはいい、かなりの分乗になってしまうが、そこは大丈夫か?」

 

憲兵にも他意は無かった様で直ぐに本題に戻った

 

「あー、姉妹艦は出来るだけ同乗させてもらいたいのだが……」

 

分乗、そう聞いてこの憲兵がどんな手段を思いついたのか察しがついたが、同時に問題も思い当たった

 

「そこは保証できない、そこを譲れないというのなら、お手上げだ」

 

どうやらそこの問題解決はこちらでやるしか無さそうだ

 

「艦娘達をどうにか説得してみます、手があるというのならお願いしたい」

 

「わかった、こっちも何とか説得してみる」

移籍組の移動手段の確保という難題に憲兵達と司令官の労力が割かれるが、説得に費やせる時間は余り無い

 

 

 

 

鎮守府-旅客船(移籍組宿舎)

鎮守府:司令官

大本営所属艦:赤城(移籍組代表)/伊勢(移籍組代表)

 

 

憲兵隊詰所からそのまま移籍組に話を通しに港に向かった

旅客船内には以前五十鈴等と入ったことがあり、真っ直ぐに移籍組代表等に会い話を始める

 

取り敢えずは黙って聞いていた移籍組代表等の片方が話が終わると同時に疑問を口にした

 

「分乗?自衛隊が車両を出してくれるのですか?」

 

「これから憲兵が当該部隊の説得に向かってくれるそうだ、ただそれが成ったとしても纏まった数で乗り合わせる訳にはいかない、無理を言って便乗させて貰うのに乗車段階で揉めたく無い、そこで移籍組には選んでもらいたい、このまま残留するのか、大人しく自衛隊車両に乗せて貰うのかを」

 

これを聞いたもう片方が明から様に嫌な顔をした

 

「……何その選択、要するにここで何も出来ずに死ぬのを待つか、死んだ方がマシなくらい我慢して自衛隊車両に乗るかって事?どっちもイヤなんだけど」

 

「そういう揉め事を乗車段階で起こすなといってる」

 

出て来た文句に即答したら嫌な顔が困った顔に変わったんだが、どういうことなんだ?

 

「私は構いませんよ、空母艦娘は便乗させてもらいます」

 

「……多分、軽巡の子達は便乗するだろうね」

 

「他の巡洋艦の方達も我慢する方を選ぶと思いますよ」

 

「山城を、どうやって説得すれば良い?」

 

二人いる移籍組代表、その相方を縋る様に凝視めながら発せられた言葉だった

 

「扶桑さんがいれば、説得の必要もないんですが……」

 

ここに来てもう一人の移籍組代表まで困った顔になった

 

「その扶桑はここにはいない、あたしがやる……の?」

 

「龍驤がいれば、説得出来たかも知れませんが、出撃してしまっていますし、困りましたね」

 

移籍組代表が揃って困った顔になり、そのまま話が滞りそうになってしまった

司令官としては話を進めないと移籍組を置いて行く事になる、それを回避する為に口を挟んだ

 

「他にも幾つかの艦種がいたと思うが、そっちは?」

 

「秋津洲さんはまだ鎮守府にいるんですよね」

 

話が戻せた、移籍組代表が一人でなくて良かった

 

「いる、最終便に乗る事になってる」

 

「少しこちらへ貸していただけますか、秋津洲さんから説得してもらいます」

 

 

 

 

鎮守府-鎮守府陸側包囲網

自衛隊_普通科:連隊長

自衛隊_憲兵隊:憲兵1

 

 

鎮守府司令官から持ち込まれた話をどうにかする為に憲兵達は鎮守府周辺道路を封鎖している陸自と接触していた

 

「……なんで俺の隊で艦娘を乗せなきゃならんの?ウチは旅客業務はやってないんだが?」

 

話を聞いた連隊長は見るからに機嫌が悪い

 

「非武装の民間人の避難に協力を求められている」

 

説得を試みる憲兵達

 

「非武装の、民間人?艦娘が、か?」

 

連隊長は先の件で憲兵隊からの要請に関わると如何なるのかを良く学んだらしい

 

「艦娘は軍人や軍属ではないし、法規上は外国籍の民間人扱いなのは知っているだろう」

 

「……そういう理屈、上の方に通るのか?」

 

連隊長は陸自の士官、憲兵隊も陸自の組織ではあるが指揮系統が違う

そもそも憲兵隊自体が新設された部署で陸自内部での扱いが定まっていない

 

「憲兵隊で通す、その上の方から許可自体は出ているんだ、どこかでその許可が通らなくなっているだけだから難しい話ではないと分かるだろう」

 

「あー、上って一番上か、方面隊の上の方にはどうなんだ?鎮守府派遣隊の二の舞は御免だが?」

 

鎮守府派遣隊に纏わる一連の動きは自衛隊士官なら嫌でも聞こえて来るし無視出来る様な生易しい内容でもない

 

「憲兵総監を始め老提督、自衛隊OBによる隊内の意思確認は既に終わっている、問題にならない」

 

「問題にならないのなら、何故一番上の許可が方面隊で止まる?そこが重要なんだが、憲兵隊で対応してくれんの?」

 

「可能な限り……」

 

言い掛けた憲兵を連隊長が遮った

 

「話にならん!無茶をいうのならお前等の隊長を連れてこい!!」

 

 

 

 

鎮守府-正面海域

鎮守府所属艦:摩耶/阿武隈/木曾(防空艦隊)

 

 

「自衛隊から連絡が来た、聞きたいか?」

 

哨戒中に木曾が話し出した

 

「……第三波の大群が来たって話だろ、勿体つけんなよ」

 

第二波を防ぎ切れなかった摩耶の機嫌は良いものでは無い

 

「第二波の倍の数が来てるそうだ、更にずっと後方ではあるが雲海クラスの飛翔体の大群がいるとも言って来た」

 

「雲海クラス?すまん、雲海クラスの飛翔体の大群ってなんだ?」

 

木曾の言い分に理解が追い付かず素で聞き返した

 

「千以上の距離でも目視で見つけられる程の大群だ、雲海クラスとはよく言ったもんだ」

 

答える木曾自身も言っていて実感が持てない様で呆れ振りが口調にも出てしまっている

それを素直に言葉通りに解釈した摩耶はビックリ眼だ

 

「……その距離でも目視で見つけられる大群って、どんだけいるんだよ?!」

 

「自衛隊でも総数は算出不能だそうだ」

 

摩耶の驚きにも淡々と応じる木曾

 

「……そんなの相手に、対空戦、やるのかよ……」

 

いくら対空戦に特化した兵装と言えども限度はある

そんな無限に近い数の飛翔体を相手に戦闘行動を取る未来図に表情を暗くする摩耶

 

「その前に鎮守府を放棄すると思います、第二陣を大本営に送り届けた米軍車両が戻ってくる方が早い、筈ですから」

 

そんな摩耶に阿武隈が勤めて明るく声をかける

 

「そういう事、兎も角、今来てる第三波は相手にしなきゃならん」

 

さすがにこの場で戦意喪失されたら困る木曾も阿武隈の尻馬に乗って口調を軽くした

軽巡二人の口調に気が付いた重巡は慌てて沈んだ口調を元に戻した

 

「第二波でさえ手数が足りなかったんだぞ、その倍ならお手上げじゃねーか!」

 

「心配すんなって、今回の防空戦には長門が加わる、戦艦の主砲は凄いぞ」

 

重巡が無理矢理にでも調子を戻しに掛かったのを見て取った軽巡二人

その様子に多少なりとも安心したのか普段の雰囲気になっている

 

「……今までも大和が加わってなかったか?」

 

摩耶としては聞いている話の整合が取れなかったらしく疑問を口にした

 

「あー、大和は今主砲が使えない、副砲と機銃だけでの参加だ、資材が残っていれば主砲の修復を、する、かな?」

 

「なんだよ、その主砲が使えないって?」

 

摩耶が司令部要員として鎮守府運営に参加したのは包囲網が完成された後、船で大人しくしているしかなかった状況下の事情には明るくない

 

「アレ、押し寄せて来たのを押し戻すのに砲身命数を使い切った、その後資材不足で修復出来てない」

 

アレと言って包囲網の深海棲艦の大群が示された

 

その大群に視線を向けて感想が呟かれる

 

「あの数を、主砲の火力で押し戻た?砲身命数と引き換えとは言え、出来るのか、そんなこと……艦娘になっても戦艦は戦艦か、巡洋艦とは違うんだな」

 

 

 

 

鎮守府-工廠(第一工廠)

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:長門

 

 

諸用で工廠に来ている司令官は長門を伴い要件を済ませて行く

それ等が終わると長門から提案があった

 

「提督、資材を使い切るのなら大和の主砲砲身を交換出来ないか?」

 

大和は対空戦に参加しているが、主砲は手付かずのままだ

 

「資材は駆逐艦達に出来るだけ積ませた、残ってるのは僅かだ、砲身だけとはいえ大和の主砲砲身の交換は難しい、ウチでは大和型の建造歴がないから」

 

長門の提案は分かるのだが、実施は出来ない

 

「建造歴が無いから私の様に交換とはいかないのか」

 

「そういう事だ、普通に修復しないと」

 

大和を普通に修復、残存資材量と現状を鑑みれば無理と判断せざるを得ない

 

「ならば、私の主砲を積ませるというのは?」

 

別口の提案が出て来た、それは考えなかった訳ではないが感情論的な反論が来そうでこれまで口にしなかった事案だ

今の状況で長門からの提案なら其処を回避出来る……のか?

 

「……大和が承諾するか?」

 

どうにも戦艦があの巨砲を手離す図が湧かなかった、下手にゴネられてもそれはそれで困るし

 

「私の主砲なら予備があるしこのまま置いておくよりは大和に使って貰いたい、使わなければ資材に戻す予定なのだから」

 

長門にはこちらが懸念している様な考えは全く無いらしい、撃てない主砲より撃てる主砲を積ませて戦艦としての戦力に数えたいのだろう

もし上手くいけば戦力強化には成る

長門の提案に乗って下手を打ったら事態を収集出来るのか?

 

「整備交換用の予備は二機しかないが、もう一基造るのか?」

 

予備と言ってはいるが実際の所は妖精さん達の教材 (オモチャ) だ、長門が叢雲の特訓を受けた際に使い倒し不具合を抱え過ぎて廃棄する筈だった代物だ

研究用に欲しいと妖精さんが駄々を捏ねてきたから残しているが全てが実用に耐えられる訳でもない

実用に耐えない装備の保有は非推奨な上に監査があれば突っ込み所となるので名目上は交換用として辻褄を合わせている

 

「そこは資材残量と大和に相談だな」

 

 

 

 

鎮守府-敷地内_対空戦闘配置点

鎮守府:司令官

鎮守府所属艦:大和

鎮守府所属艦:駆逐艦複数

 

 

取り敢えず大和に説明はした

説明や説得は長門にやらせようとしたのだが、逃げられた

私の主観的見解ではそうなっている

 

「……長門さんの主砲、ですか?」

 

怪訝な表情を見せる大和、工廠にアレだけ出入りしている大和にはあの主砲が普段どう扱われているのか見聞きしただろう事実には触れずに話を進める

 

「大和には小振りだろうが、戦艦の主砲には違いないし、次の対空戦には数があった方が良い、工廠の飾りにしておくよりは大和に積んで迎撃火力の足しにしたい」

 

「……その場合、今積んでいる主砲は、どうなりますか?」

 

色々考えている様子は見て取れる、聞きたい事は山程あっただろうに大和は自身の降ろした装備の扱いが一番気になるらしい

 

「鎮守府の放棄は決まっている、置いては行けない、資材に戻して補給の足しにすることになる」

 

「載せ換えなければ長門さんの主砲が、資材に戻される、そういう事ですか」

 

大和にも判っていた筈、敢えて確認を取ったのだろう

 

「そうなる、あの第三波を凌いだ後、残っている全員で大本営に向かう予定だ、いくら米軍車両といっても飛翔体の飛来してる最中にこちらを拾いには来ないからな」

 

 

 

 

鎮守府-工廠(第一工廠)

鎮守府:司令官

鎮守府:工廠妖精さん

 

 

大和の了承を受け長門の提案は即時実行された

大和から降ろされた装備は資材に戻す為に妖精さん等に預けられている

そんな状況の中で工廠の一角が賑わっている様子があった

 

「……なにを、してるの?」

 

その様子に近付いて見た所、思わず声を掛けてしまった

 

'三基の巨砲''二基を分解''構造を理解'

'二基''資材にした''残りの一基''整備'

 

なにらや物凄く楽しそうに返答して来るので言葉に詰まりかけた

 

「……つまり、大和の主砲が一基使える様になった?二基分の資材を使って?」

 

えっと?なんだって?そんな事は頼んでないんだが?ってか出来るんかいソレ

 

'短時間での構造理解と資材化''即座に再生させた'

 

'戦艦の主砲は良い'

 

'大きいほど良いモノだ'

 

あー、なんか見てはいけない顔をしてますねこの妖精は、他の妖精さんも普段は見せない表情を浮かべてるし

 

「……ソウデスネ、ってもう直ぐこの鎮守府を放棄する事になる、誰かに乗せてもらうんだぞ、置いていくつもりはないからな」

 

少しその場の空気に飲まれかけたけど戻ってこれた、この空気感では注意喚起した方が良いと考え言っておく

 

'わかっている''ここに置いていかれるのは''面白くなさそうだ'

 

返答はとても冷静だった

 

 

 

 

鎮守府-正面海域

鎮守府所属艦:摩耶/阿武隈/木曾(防空艦隊)

 

 

「今度は高度を取ってるな、まさかあのまま水平爆撃する気か?」

 

第二波での対空射撃を受けてそれを避けるように高高度で進入して来る飛翔体

 

「その辺は軽空母達が接触すればぶら下げてるモノで分かるだろう」

 

高過ぎて対水上艦用の装備での迎撃は実効性に疑問しかないが、黙って見ている訳にもいかない

 

「アレって編隊組んで飛んでる?もしそうなら隊長機を優先するけど」

 

先頭の飛翔体に集弾させた方が良いのか、群れている飛翔体を散らした方が良いのか

 

「アイツラの飛翔体がどういう理屈で飛んでるのかなんて、誰も知らないだろうよ」

 

迎撃の手段やら方針は色々考えられるが、実効性に疑問符の付く状況下では派手な行動で存在を主張し、飛翔体が目標に到達するよりこちらに攻撃を向けて来るのを期待するしかなかった

 

 

 

 

鎮守府-工廠(第一工廠)

鎮守府所属艦:加古/長門/大和/神通/初春

 

 

防空艦隊から間接砲撃に必要な情報が届けられた

 

「大和は初春の指示に従って砲撃、私が左翼、大和が右翼から接近してくる飛翔体を迎撃する」

 

「中央は摩耶達がなんとかしろって事かよ、どの道防ぎ切れないが?」

 

何しろ残留している艦娘自体が減っている

 

「残った艦娘でも対空戦を実施する、なんとかするしかない」

 

「こっちの主砲は勿論、副砲も機銃も当てるのは難しいんだが?」

 

長門の言い分に文句しか出て来ない加古

 

「言っても始まりません、やるしかありません」

 

いつも通りハラを括り過ぎている神通

 

 

 

 

鎮守府-敷地内_対空戦闘配置点_起点

鎮守府所属艦:加古/神通

 

 

対空迎撃が行われ飛来する飛翔体の数は減らせたが、相手の作戦行動を中止に追い込む迄には至らなかった

 

鎮守府上空にはそれなりの数の飛翔体が到達した、どういう意図なのかわからないが高度を落とさないまま上空を旋回している

 

「戦艦の主砲と雖も対空火器としては不向きって事だよな」

 

「そうは思いません、対空迎撃用の砲弾を使用したと言っていましたし、数も減らしています、無傷のままで進入されるよりはマシな状況になっています」

 

「軽空母達の艦載機も頑張ってはいるが、数の差はどうにもなんないな」

 

「見る限りでは降下する様な動きを見せる集団に優先的に攻撃を仕掛けてますね」

 

「お陰で飛翔体の方は高度を下げられない、様にも見えるが、どうなんだろうな」

 

 

 

 

鎮守府-敷地内_対空戦闘配置点_右翼

鎮守府所属艦:大和/初春

 

 

現地観測による砲撃目標の座標は正確だった

戦艦主砲での迎撃戦もほぼ予定通りの戦果を挙げた

しかし絶対数としての戦果としては物足りない

 

「むー、外から向かってくる飛翔体は減ったが、上空旋回中の飛翔体をどうにかせねばならんな」

 

頭上高くを飛び回る飛翔体を見つめる初春

 

「時限信管の起爆時間を調整すれば撃墜出来ると思います、撃ちましょう」

 

未だ散発的に進入して来る飛翔体、その座標は随時更新されその度に砲撃を続ける大和

 

「いや、大和は外から接近してくる飛翔体に集中するのじゃ、大和よ、第三砲塔の制御を貰うぞ」

 

長門の予備砲塔は二機、大和の装備可能な砲塔数は三機

 

「……はい?」

 

初春の言っている意味がわからない大和

 

「第三砲塔を妾が御してアレを落とす」

 

その第三砲塔には三個いち整備された大和の主兵装が積まれていた

 

「……えっと?初春さんは駆逐艦、制御するとは?」

 

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

大本営所属艦:高雄/愛宕

 

 

上空旋回中の飛翔体の中で特大の火球が生じた

 

「……初春か、無茶をする」

 

遅れて来る轟音を聞きながら感想を漏らす司令官

 

「この砲撃は大和の主砲では?」

 

その感想に疑問を持つ愛宕

 

「駆逐艦の主砲ではないですよ?!どう見ても戦艦の主砲です!」

 

高雄も同様だ

 

「……あの子、演習とはいえこの砲撃に向かっていったのか、怖いモノ知らずにも程があるわ」

 

轟音を聞きつけて窓からその音源となった上空を見ながら呟く叢雲(旧名)

 

「司令官!飛翔体が一斉に降下を開始、軽空母達の迎撃が間に合わないと警告が!!」

 

どこかからの通信で警告を受けた高雄が慌てている模様

 

「それは大変だ、こっちに来ないことを願おう」

 

 

 

 

鎮守府-旅客船(移籍組宿舎)

大本営所属艦:瑞鶴

 

 

「あーもうなんなの!何事なの!!」

 

鎮守府上空に発生した特大の火球、それが発する轟音に耐えかねた移籍組の一人が甲板に出て周囲を見回していた

 

「って、なにこの状況!思いっきり攻め込まれてるじゃない!!」

 

そう見て取った移籍組の一人は赤城からの指示も忘れて行動に出た

 

 

 

 

鎮守府-執務室

鎮守府:司令官/叢雲(旧名)

大本営所属艦:高雄/愛宕

 

 

「えっ?!作業船から艦載機が出現している?」

 

対空戦闘中の誰かから問い合わせがあったのか、高雄が戸惑いと驚きの声を上げた

 

「なにそれ?移籍組に艦載機運用可能な空母艦娘がいるのか?」

 

司令官としては全く予測していない状況の発生に疑問を投げる

 

「あっ!急上昇していきます、降下してくる飛翔体を迎撃する様です」

 

高雄の驚きの声で窓際まで見に行った愛宕からもその様子が見えた

 

「誰が発艦してるの?移籍組に戦闘行動可能な艦娘はいない筈だろう?」

 

司令官としては投げた疑問への返答が欲しい所

 

「瑞鶴です、いま赤城から通信が入りました、いま艦載機を発艦させたのは瑞鶴だそうです」

 

漸くその返答が来た、がそれはそれとして別の疑問というか問題も出て来る

 

「こちらが受け取った資料には何も記載がないんだが、どういうことだ?」

 

「赤城から船内の資材使用許可を求めています」

 

続けて通信中の高雄から返信内容を問われる

 

「こちらの最終便に赤城と瑞鶴は同乗して事情説明をする様に、移籍組は伊勢に任せることになるが、反論は無しにしてもらう、船内の資材使用は許可不要、元々移籍組が使う資材だ、そちらで方を付けてくれ」

 

色々言いたい事はあるが、現状は戦闘行動の最中、優先順位を間違えてはいけない

 

 

 

 

鎮守府-工廠

鎮守府所属艦:鳳翔/祥鳳/隼鷹

 

 

「……あの艦載機、瑞鶴、さん?」

 

突然何処かから飛来した友軍機、機体のシンボルを読み取った鳳翔

 

「瑞鶴?」

 

想定外の名に疑問調の祥鳳

 

「あー、そういえば瑞鶴って大本営で修復したんだっけ、確かそれに続く修復が上手くいかなくて原因調査中だった様な……」

 

その名から思い出した関連事項をなんとなく思い返す隼鷹

 

「その話ならききました、瑞鶴は修復が完了したのかどうか確認が取れず艤装、兵装共に使用を止められていた筈ですが……」

 

隼鷹の言葉に聞いていた話を思い出した祥鳳

これは援軍が来たと喜んで良い状況なのか?

 

 

 

 

防衛省施設-小会議室(大本営司令長官室_臨時)

大本営:司令長官(老提督)

???:老兵

 

 

自衛隊の退避と共に鎮守府を後にした

続報としては未だ戦闘中、詳細は不明

 

それはそれとしても退避先で一部屋借り受けられたのは幸いだ

公の場で公言する様な話ばかりではない、密談と迄は行かずとも内緒話が出来る部屋は必要だ

 

「……面倒事を、抱えることに、なってしまったか」

 

「一人で抱えることもあるまい、及ばずながら手を貸そう」

 

「これまでの悪行を思えばこの程度で済んでいる事を感謝しなければな」

 

「悪行と言うほどの事もあるまい、老提督の行いが悪行なら私など妖精さんを国外に連れ出し無茶をさせた張本人だ、アレがなければアイツラはアメリカに来なかった」

 

「艦娘の拡散は止められない、艦娘の有用性と汎用度は最早誰もが知る所となった、歯止めは当事者の倫理観と良心に委ねられる、形としての女性ではなく性別としての女性、それを獲得した艦娘を人がどう扱うか、その総てを妖精さんは知る事になる」

 

「知り得た結果は人と関わりを持つ意義なり利益なりを判断する材料され、その結論は妖精さんの総意に委ねられる、人の身では異議も唱えられん」

 

「言葉より行動、口先で綺麗事を並べるか、行動を以って関わる範例を示すか、艦娘部隊上部機関在籍者はソレに気が付いている、誰が唱えたのかまでは分からなかったが、誰かが、それを上部機関に認識させていた」

 

「認識しているにも関わらず、艦娘に対する扱いに変更はない、彼らには全て司令官の責任という事で話が着いた様だ」

 

「……そんな話を妖精さんに知られるのか、妖精さんを引き留められる提督の存在価値は天井知らずに上がる事だろう」

 

「彼らはそれで良しとしてしまった、上部機関の決定は我々でも覆せない、出来る所から出来る事を少しづつでも続けて行くしかないだろう」

 

 

 

 

 

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