~結芽錯綜記~   作:ひろつかさ(旧・白寅Ⅰ号)

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第二十五話「出撃」

 15、

 

 

 富士樹海の深い闇の中に白木の小さな社が建ち、その扉を開けた赤い髪をおさげに結んだ少女は、二本の宝剣を侍らせて階下の赤い輝きたちを見下ろした。

「ご苦労だ、今宵ついに儀式は完成される。邪魔者は確実に来るのだろうが我は一切関知しない」

「はい、ヲノツチ様、下々の相手は我々の仕事であり、本望であるゆえ」

 赤い光の中からゴーグルをつけた有群が進み出てきた。

「人はすでに新たなる段階に踏み出している。私の願いは既に達せられました。なればこそ、感謝を込めてこの一万二百体の人工荒魂の軍団をヲノツチ様に献じます」

「ほう、呪いを打ち出すのもいるのか、期待通りだ」

 体は宙に浮かび上がり、彼女は八千剣を手にその切っ先を富士の山頂へ向けた。

「さぁ、はじめよう『復讐』を!」

 

────────────────────────

 

 薫は鎌倉本部講堂に終結している全刀使を終結させた。

 まず遊撃隊の真希小隊、寿々花小隊、紗耶香小隊、新設の姫和小隊、これにミルヤを隊長とした調査隊を入れた四個小隊をまとめた一個中隊が主力となる。

 バックアップに本部警備隊二個小隊、鎌府女学園一個中隊、美濃関学園一個中隊、綾小路武芸学舎一個中隊、平城学館一個中隊、長船女学園一個中隊。警視庁対荒魂機動隊一個中隊、自衛隊中央即応連隊からレンジャー隊、防衛省第五特殊作戦班一個小隊。関東、甲府、東海地区の管理局支部の回収班および医療・補給班が後方兵站を維持、他の刀使は通常ローテーションでの任務遂行を厳命。

 マイクを手にした薫は隊員たちの顔を見回し、話し始めた。

「ここに集められたのは刀使の中の最精鋭中の最精鋭だ! 対災厄要請で出動してくれた中央即応連隊レンジャー隊には感謝に堪えない! 俺たちはこれからタギツヒメと同レベルの大災厄に立ち向かう! だが今の俺たちは違う! 二つの大災厄を三世代に渉って耐え抜き! 勝利してきた最強の世代だ! 家族のため、親しい人のため、仲間たちのため、そしてこの世界を生きる次の世代のために! 俺たちは必ず勝つ! いくぞお前ら! 特祭隊総出撃だ!」

 講堂中で木霊する奮起の叫びを聞き、薫は鼻息を荒らげた。

 

 目標は富士樹海、そしてヲノツチのいる富士山火口。

 各員が次々と乗車していく間、可奈美は薫を呼び止めた。

「可奈美、お前は来ちゃいかんだろ」

「でも、きっと役に立てるから、お願い」

「んーどうしようかねね」

 尋ねたねねはしばらく考えて、可奈美の目をじっと覗き込んだ。

「ねー! ねねねねっー!」

「おうそうか、じゃあ可奈美には遊撃中隊本部ねねのお守り役に任じる。行こうぜ」

「ありがとう!」

 可奈美の頭に飛び移ったねねは真希たちがあるものを持っているのに気付いた。

「薫隊長」

「お前らどうしたんだ」

 真希は赤に金色の五箇伝バッチのつけられたベレー帽を手渡した。

「さっき真庭副指令から」

 真希、寿々花、紗耶香はベレーを被り、最後に薫がベレーを被った。

「うん、みんなカッコいい」

「紗耶香もだぞ、似合ってるじゃねぇか。さてと」

 感慨深そうに四人と一匹の顔を見回し、大きく頷いた。

「行こうぜ!」

 

────────────────────────

 

「じゃあかなねぇはお留守番か」

 ねねをいじくりまわしながら結芽は可奈美に尋ねた。

「それで終わればいいけど、なんとなく悪い予感がするの」

「当たりそう! 気を付けよ!」

「ねぇ~」

 ここは富士山青木ヶ原樹海のリゾート地にあるスキー場のレストラン。オフシーズンだがオーナーの好意で現場の本部施設となっている。

 刀使たちは小隊単位、GPSで各コースを正確に探索、敵発見次第通報の作戦で進行していた。

 その証言者として家弓花梨がおおよその位置を感覚で示した。彼女はヲノツチからの導きで社に辿り着いていた。その位置を裏付けるようにレンジャー連隊の指揮官が以前に朽ち果てた祠の存在を示し、探索ルートが確定する。

 各小隊に自衛隊のレンジャー連隊隊員が付いて行動している。

「荒魂が現れました! 西のF班が矢吹型に遭遇したそうです」

「ん~いっぱいいるやつか、虎の子だが結芽行ってくれ」

「諒解、西F班の救援に向かいます」

「頼む」

 よろめくねねを可奈美の肩に乗せてやると、結芽は黒い和風のS装備に防刃使用の羽織を着せられた。

「私が改良したS装備更改です! 対御刀を想定した防刃装備に加え、ノロと人体の親和性を個人に合わせて調整することで、装備持続時間を丸一日に延ばすことに成功させた傑作です。燕さんのおかげですよ~」

 エミリーはスマホで一通り写真を撮ると、御刀を結芽へと手渡した。

「実戦データーを楽しみにしてます!」

「はい、はーい、行ってきます」

 写シを張り、結芽は西側へと一気に飛んでいった。

 だが薫は机の上に置きっぱなしにされた携帯に気が付いた。

「あいつGPS端末忘れやがった。梢、無線でバックアップ! 通信機のマーカーが使えるからそれで誘導」

「はい!」

「あと隣区域のE班の玉城に状況を知らせて警戒させろ」

「やってます!」

 その携帯を可奈美へと渡した。

「後で渡してやってくれ」

「はーい薫隊長!」

「ねねーっ!」

 

 ほぼ中央を進むC班は富士スバルライン道に差し掛かり、そこで一人の男性が立っているのに気がついた。

「そこの方ーっ、避難指示が出ているんですよーっ!」

「知っているかね? 生み出したら、それを消費せねばならないのだよ」

 有群の顔に気が付いたエレンは急いで下がるように指示した。

 反対側から六角の顔を持った荒魂が突進し、三人を吹き飛ばした。

「構えてください! 応戦しまース! 丸山さんは三人をお願いします!」

「まだこれだけではない」

 有群の後方を打突面獣と一隊となった矢吹荒魂がふもとに向かって突進していく。

 その数は一千をくだらない。

「これは……クレイジーでーす……本部こちらC班!」

 応答した播めぐみはすぐに進路をモニタリング、隣D班も確認し迎撃を求めてきた。

「このルートだと間違いなく本部狙いですね。エレンさんは千は間違いないと言っているのでここは壊滅しますね」

「やれやれ……各班長に伝えてくれ……中隊本部班は出撃する。指揮は……」

「私がやる。待たせたな薫」

「せんせ……いや、おばさん」

「わざわざ訂正せんでいいんだ!」

 真庭紗南はすぐさま状況をめぐみから説明され、指揮に入ると宣言した。

 薫は隊員をまとめて先に前線へ向かわせると、可奈美にねねを任せるといった。

「実はな、ねねは可奈美が切り札だから置いてくなって言ったんだ」

「え、でも今の私は」

「ねね、可奈美を頼んだ!」

「ねっ!」

 そういうと祢々切丸の鞘を打ち払い、前線へと飛び込んでいった。

 

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