地下九階の映写室   作:輪音

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【オリジナル作品】
通り魔に殺され異世界転移し、呆気なく殺されて元の世界へ帰ってきた少年はたゆんたゆんなお姉さんに勧誘されて悪の秘密結社の戦闘員になりました。



初級戦闘員、参戦す

 

 

俺、田井中志郎。

都内の高校に通う、冴えない少年だ。

高校一年生のまっさらな童貞。

昨日、主砲の封印が解かれた。

子作り出来る能力が得られた。

でも、使う対象が存在しない。

顔の作りはあまりよろしくなく、背丈も高いとは言えない。

主砲は立派なのが、もしかしたら唯一の取り柄かも知れぬ。

 

放課後に都内某駅の中でうだうだしていたら変なおっさんが暴れている場面に遭遇し、びっくりして固まっている内に刺されて気づいたら異世界転移していた。

おっさんの凶刃からは避ける間もなかったが、あんな野郎はとっとと捕まったらいいなと思った。

絶倫の能力をよくわからない存在から与えられた俺の出現場所はくさい盗賊どもが暴れているカオス空間で、馬車に乗っていた人々共々あっさり刺されて殺された。

なんたる間抜け!

だが、実際、抵抗する間もなかった。

ほんとにこわいと動けなくなるんだ。

こんなに短時間で二度も殺された人間はなかなかいないだろう。

田井中志郎は二度死ぬ。

なんてな。

 

その俺は、二度目の復活を元の世界の都内某駅で迎えた。

……ここ、元の世界だよな?

辺りを見渡す。

違いはないみたいだ。

あの通り魔はどこへ消えたんだ?

騒ぎなど起こっていない。

怒った人も見当たらない。

平穏無事なこの都内某駅。

倒れている人などいないし、血痕も存在していない。

嗚呼、平和って素敵だぜ。

腕時計を見ると、時間は数分しか経っていなかった。

邯鄲(かんたん)の夢、のようだ。

トイレの個室に入って腹の傷を探すが、二箇所共存在しなかった。

まるで、なにも起こらなかったみたいに。

……ま、いっか。

トイレから出て、さて誰もいないマンションに帰ろうかと思った。

あの寒々しい場所へと。

すると。

 

「ねえ、キミ。お姉さんとお話しナイ?」

 

振り向くと美人のお姉さんがいた。

思わずボーッとなってしまう程だ。

しかも、たゆんたゆんが標準装備。

なんて凶悪無比な武器なんだろう!

これは、美人局(つつもたせ)か?

昔脂ぎった担任が延々と語ってくれたけど、その知識が今役立つかも知れない。

 

「すぐ働けるアルバイトの話なんダケド、ドウかな?」

 

うっ、少しぐらつく。

たゆんたゆんが迫ってくる。

揺れる揺れる俺の心も揺れるのじゃ。

腕を組まれた。

しまった!

これではもう逃げられない!

 

「ね、ね、ちょっとだけダカラ。」

 

長い髪のきれいなお姉さんに無抵抗のまま連れられ、俺は駅周辺にある建物の二階にある喫茶店へ入った。

彼女はカミラ松代という名前で、日本人とルーマニア人のハーフなのだそうだ。

 

カミラさんの説明によると、彼女は悪の秘密結社の幹部をしているという。

現在東京と神奈川で『京浜地区活性化計画』を推進中だそうで、東京都側が悪の秘密結社を担当し、神奈川県側が正義の味方を担当しているのだとか。

担当者たちはノリノリなんだってさ。

これは下町の工場に仕事を与え、基本的な力を取り戻させる試みだ。

工業、縫製、などなど。

ふーん。

お姉さんによると後一人勧誘出来たらノルマ達成で、今日中に報告すると査定がよくなるらしい。

ふーん。

彼女は鞄から薬瓶を取り出し、机の上に置いた。

●イアグラみたいな青い錠剤がみっしりと入っている。

 

「この薬は現在開発中のナノマシンでネ、第三世代のモノだから副作用を心配しなくていいノヨ。」

「はあ。」

 

第一世代と第二世代の副作用って、どんなものだったんだ?

副作用が無いって本当か?

 

「毎日一日一錠を夕食時に呑んで欲しいノヨ。」

「えええ。」

「一錠に付き、五〇〇〇円出ルワヨ。」

「やりましょう。」

 

お金は大切です。

とても大切です。

 

「あなた、現金ネ。」

「現金で貰えるんですか?」

「その方がいいなら、そうするワヨ。」

「そうしてください、お願いします。」

「契約成立ネ。細かい打合せをしまショウカ。」

 

俺はこの場で採用が決定され、初級戦闘員に決まった。

丁度二〇人目なので、二〇号と呼ばれることになった。

 

「私たちは『交戦規定』に従い、死者が出ないように戦うノヨ。」

「殺さないんですね。」

「別に殺人をしたい訳じゃナイシ、それを防ぐためのナノマシンでもあるワ。過剰な殺意が心に溢れてきたら、失神するように出来ているノヨ。」

「なるほど。」

「『敵』は横濱戦隊ヨコマハン。」

「……は?」

「言いたいことはわかるワ。みんなそうだモノ。でも、お偉いさんが決定しちゃったカラ、それに従うしかないノヨ。」

 

神奈川県の担当者はなにを考えている?

 

「それで、俺たちの結社の名前はなんですか?」

「私たちの秘密結社はファンマン。」

「はあ。」

 

東京都の担当者……。

 

「微妙な顔になるのはわかるワヨ。」

「ええ、まあ、そうですね。」

「現場に出るト、一回五〇〇〇円。」

「ほう。」

「ちなみに六時間拘束で、残業代もちゃんと出るワヨ。」

「悪くないすね。」

「交通費は別途支給、お弁当も出るワ。神奈川で戦ったら、シウマイ弁当が出るノヨ!」

 

そっか、カミラさんはシウマイ弁当が好きなのか。

 

国の産業活性化計画ではある程度の裁量権があるらしく、特別にカミラさんのみの判断で採用が即決された。

彼女は相手を見て、悪人かどうかが一瞬でわかる人らしい。

悪の秘密結社なのに悪人を採用しないとはこれ如何に。

 

本物の悪人だったら、即時に処分されたりして……いやいやまさか……。

 

 

 

 

今日は初級戦闘員としての初陣。

幹部のカミラさんと怪人役のトニーさん、戦闘員のまとめ役で中級戦闘員の梅さんに同僚のヒャッハーな初級戦闘員が八人。

俺を入れて総勢一〇人が今回の作戦担当員だ。

戦闘員なのに素手とはこれ如何に。

今回の初級戦闘員は全員が高校生。

みんなカミラさんにナンパされたのだ。

このおっぱい好きどもめ!

俺も好きだ! 大好きだ!

ナインちゃんも大好きだ!

あーっ、彼女が欲しいぜ!

 

横濱戦隊は揃いのヘルメットと戦闘服に身を包み、それぞれ長い台詞を噛みながら述べていた。

男三人、女二人か。

野郎はどっちでもいい。

後ろからやれば、やれるだろたぶん。

アーッ! じゃねえぞ!

なんだか男三人を熱心に見つめている奴もいるが、気のせいだ。

気のせいに違いない。

黄色い女の子がアスリート系で、桃色の女の子はゆるふわお菓子系か。

トニーさんによると、あの長口上はいわゆるお約束だとか。

毎回やってんのかよ。

 

やがて、戦闘が始まった。

 

黄色い女の子を止めろと指示されて抱きついたら、激しく抵抗された。

だって、殴ったり蹴ったりなんて運動神経の無い俺には無理だかんな。

幾ら強化服を着ていようと、ナノマシンで運動神経が底上げされていても、無理なものは無理だってばよ!

粉記事辞意……間違えた、子泣き爺アタックしか選択肢がねえんだよ!

野郎には絶対やらねえけどな!

引き締まった体がよくしなる。

お胸様を触ってはならぬぞえ!

彼女の間断なき動きが俺の一部の機能を活性化させ、サンライジングさせていた。

ヤバい、ヤバい、ヤバい。

あ、なんかとっても……。

このままじゃ、俺…………。

段々と興奮してきて、なんだか頭がボーッとしてくる。

女の子がはあはあ言うので、それがとてもエロかった。

あ…………もうダメだ。

うっ、となって脱力した際に拘束からすり抜けられる。

怒ったらしい彼女から顎に一発喰らい、俺は失神した。

 

ナノマシンによって意識を取り戻したらしい俺は、仲間たちに囲まれていた。

今回の戦闘は終了したようだ。

みんなやられた模様。

これもお約束なのか?

全員が俺を見ながら、うわあ、という顔をしている。

うん、わかる。

パンツを早く洗わなきゃな。

これはいわゆる不可抗力だ。

なので、そう申し立てることにした。

 

「不可抗力なんです。」

 

みんなが生温かい目を俺に向けてくる。

梅さんが言った。

 

「若いねえ。うらやましいくらいだ。」

 

途端、周囲は笑いに包まれる。

 

 

帰りのハイエースの中。

カミラさんから、女の子に酷いことをしないようにと説教されてしまった。

隣でたゆんたゆんしているので、これはある意味ご褒美なのかも知れない。

 

機能で活かしきれないものもあるが、ま、考えすぎずになんとかやるかな。

 

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