地下九階の映写室   作:輪音

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【オリジナル】

◎『怪力系村娘になりました』の続編です
◎とっても強い主人公は、村の女の子たちにとって憧れの存在です



怪力系村娘になりました~夜襲篇

 

 

 

三回殴っただけで、山賊の斥候役は村への襲撃計画をあっさり吐いた。

もう一回殴って情報を確実にしようと思ったら、村長から止められた。

こそこそかぎまわっていた怪しい男を蹴り倒して村長の家まで引きずっていっただけなのだが、男衆は何故か皆おそれおののいている。

女衆と弟妹に子供たちは、わたしを褒め称えてくれているというのに。

理不尽だ。

 

ちょっくら全員捕縛してくると言って出掛けようとしたら、傭兵のおっさんに止められた。

彼は我がカッツェン村専属で呑んだくれの元騎士様だ。

酒で身を持ち崩したのだが、それすらネタにして奢らせたり笑わせたりしている。

かなりの剣の使い手だが、一度悪酔いしていたところをどついたらなんだか時々警戒されるようになった。

少し反省している。

辺境伯の兵隊たちにも泣いて止められた。

彼らは一様に若く、錬度が低く、現在進行形で傭兵のおっさんと共に鍛えている真っ最中だ。

あんまし嘆かわしいことを訓練の合間に言っていたので「それでも●ンコ付いてんのか、てめえら!」と叫んだら、その後は大体ゆうことを聞くようになってくれた。

なんだか青ざめてさえ見えるが、気のせいだろう。

彼らは夜になるからよろしくないと言うのだ。

夜になるからいいんじゃないか。

夜戦に夜襲に釣り野伏せ。

狩りは夜に行ってこそだ。

夜行性の動物の方がとても厄介。

剣はダメだ。

三人も斬れば、血と脂で斬れなくなる。

折れたり曲がったり反ったりするしな。

よく刃こぼれするし、何振ダメにしたことか。

先日など、鍛冶屋の爺さんから説教されてしまった。

やっぱり、棍棒か槌だな。

バールのようなものがあってもいいのだけど、それは贅沢な願望か。

 

二〇人くらいならなんとかなる、と言ったら男衆が泣きそうな顔でわたしを見た。

ナニを斬っちまえば、こっちのもんだよ。

そう言ったら、連中真っ青な顔になった。

ちっとヤワすぎんだろ、この村の男衆は。

ガキ大将もちょいワル親爺も真っ青だぞ。

もっと、こう、図太く悪くやらないとな。

 

 

結局、夜中に山賊を襲撃に行った。

傭兵のおっさんや兵隊たちが、ひいひい言いながらついてくる。

夜の獣道を走る走る走る走る走る。

特殊能力のお陰で照明不要なのだ。

胸当ては革製のものを付けてある。

わたしが以前仕留めた熊の革だぜ。

山賊の拠点は村外れの洞窟だった。

たまに野宿する時に使って、村長から使用禁止を言い渡された場所だ。

ここなら構造がわかる。

行き止まりがあって、逃げ場は無い。

くくく。

殲滅だ。

おっさんたちが辿り着いた頃には、手頃な石を何個も拾っていた。

本来はかまどを作る時などに使うのだが、今はお手頃な武器にょ。

松明(たいまつ)を消させた。

さあ、夜襲の時間が到来した。

よし、ヤるか。

石を投擲する。

見張りの二人の頭に直撃した。

ものも言わずに倒れ伏す二人。

よしよし。

順調だべ。

そいつらを縄で縛って、手近な木に逆さ吊りしておく。

兵隊たちが何故かそれを見て震えている。

やだなあ、彼らはまだ死んでいないのに。

薪や枯れ枝を洞窟出入り口に並べ、火を付ける。

煙が出てきた。

何事だあっ! と怒鳴りながら出てきた男をおっさんが一刀のもとに気絶させる。

ひゅー、ヤるじゃん。

なんだなんだと出てくる連中に、無言でひのきの棒を見舞った。

わざわざ松明を点けてくれるとは、飛んで火に入る夏の虫だね。

やっぱ、喧嘩のときはこれだよな。

打撃系武器をぶんぶん振り回した。

兵隊たちも山賊たちに飛びかかる。

あっさりと全滅させた。

二〇人程倒した。

お宝はなかった。

曇った銀貨にちびた銅貨、酸っぱい酒にかちこちのパンに干からびた肉。

そんなんばっかしだ。

囚われの娘も姫騎士もいなかった。

ショボいな。

元傭兵隊か?

それにしては弱かったな。

こいつらの装備はわたしが引き継ごう。

 

丁度よい荷車があったので、これを貰うことにした。

持ち帰って、魔改造しよう。

松明の火で確認した限りでは、賞金首はいないようだ。

頭領らしき男が誰なのか、今のところ確認は出来ない。

ま、ほぼ全員下っ端でしょ。

たぶん。

荷車に意識不明の山賊たちを積んで、村へ凱旋する。

ちゃんと歩かないと引きずっていくぞ、と動ける奴らに言ったら笑われたので文字通り引きずってゆく。

程なく悲鳴が上がった。

ヤワだなあ。

傭兵のおっさんと兵士たちがまるでおそろしいものを見るかのように、わたしを見つめている気がする。

うん、気のせいだね。

 

 

戦利品は傭兵のおっさんとほぼ山分けし、兵士たちにはコケモモの果実酒や麦酒や腸詰めや馬鈴薯の蒸したやつなどを振る舞った。

伯爵様への報告書をむにゃむにゃしてもらうべく、彼らの耳元で適当にそれっぽいことを囁き歩いた。

 

ぼろぼろの武具や防具などは改修するか鋳潰すかで、行商人に売り払おう。

少しでも村を豊かにするべく、邁進進撃ナリヨ。

 

 

 

村へ帰って数日経つと捕らえた山賊たちから妙に慕われ、姐さん呼ばわりされるようになった。

処分は村長の判断に任せるとの伯爵様からの書状が届き、村長はわたしに山賊たちの処分を丸投げしてきた。

山賊たちへどうしたいか訊ねると、わたしの子分になるという。

そういう訳で、新しく二〇人弱の舎弟が出来た。

労働力を入手したぞ!

 

 

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