地下九階の映写室   作:輪音

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【原作:Fate/stay night】

◎数人の方から読みたいとの話を受け、試しに書いてみました
◎冬木市は関西説を採用
◎戦闘無しの平和な世界
◎まったり進行




士郎はそしてまた料理を作る

 

 

 

蒸し暑い今日この頃。

藤ねえから滅茶苦茶貰った素麺を茹でて、昼飯にしようと思う。

組へのお中元で矢鱈と貰ったらしいが、消費しきれないらしい。

ついでに水羊羹やら焼菓子やらも無茶苦茶貰う。

それらは程なく、腹ぺこ英霊たちの胃袋に収まってしまったが。

素麺をいりこ出汁の茄子入りツユでいただく。

茹で玉子と裏庭の畑で採れたトマトを添えて。

大量に茹でた麺が残ったらにゅうめんにでもしようかと思っていたら、うちの居候どもがわしわしと食べ尽くした。

藤ねえが食後のとろんとした目付きで、晩は揚げ物がいいなあと世迷い言を呟いた。

汗だくになるじゃないかと言ったら、それがいいんじゃないと即座に言い返される。

ふふ、汗だくの士郎かあ、と藤ねえが呟いた。

目の光が怪しい。

一緒にお風呂に入りましょ、と言われるが昔とは違うぞと切り返した。

中学生の頃までは一緒に仲よく入ったじゃない、とからから笑われる。

無知だった俺は、当時全幅の信頼を置いていた藤ねえに風呂場やベッドでいろいろされたのだ。

アレがそういう意味だなんて、まったく知らなかった。

なんてやさしいお姉ちゃんなんだろうと、そのようにさえ思い込んでいたのだ。

無知ってこわい。

突然、セイバーがむぎゅっと抱きついてきた。

暑い暑い暑い、と言ったらもっと暑くしてあげましょうかと言われる。

やめろよ、俺の俺がトランスフォームするじゃないか。

女の子のにおいと弾力でいろいろヤバい。

藤ねえはニヤニヤしながら見つめている。

そう言えば炭酸煎餅がありましたよね、とセイバーが言い出した。

家に居着いている英霊たちからの、ギラギラとした視線を感じる。

藤ねえはタイガー化していた。

即座に白旗を上げよう。

抵抗は無意味だ。

取っておきの、有馬温泉の炭酸煎餅割れたやつをひとつ提供する。

あそこで唯一手焼きという店の焼菓子だ。

嗚呼、無惨に食い散らかされてゆくなあ。

あっという間に、炭酸煎餅は無くなった。

致し方無いので、コーンフレーク状の炭酸煎餅の袋も手渡す。

それは低温殺菌牛乳と共に、呆気なく彼らの胃袋へ直行した。

この食いしん坊どもめ!

 

桜と遠坂にメールで相談し、助力を願う。

ライダーも手伝ってくれることになった。

ありがたい。

実にありがたい。

手製のフィナンシェとマドレーヌの詰め合わせを報酬として、プロンビエールの密約は成された。

 

 

ぶつぶつと文句の多いアーチャーを確保し、仕込みに取り掛かった。

何故だか市民プールへ一緒に行くことを約束させられる。なんでさ。

 

藤ねえとセイバーとランサーとギルガメッシュから飯を催促されたので、取り敢えず手製のどんぐりクッキーとバウムクーヘンと水羊羹とわらび餅を彼らに手渡し、アーチャーと共に夕飯を作る。

餡ことバターと食パンも英霊たちに手渡しておいた。

適当に食べてくれ。

 

我が衞宮家の食卓はいつも賑やかだ。

食卓以外も居候が賑やかにしている。

食費に困っていたら、ギルガメッシュがこれでも使えと革袋にみっしり詰まった金貨を手渡してくれた。

なんていい奴なんだ。

手分けして金貨を日本の通貨へと変えるべくあちこちの店へ持ってゆくと、かなりの金額になったので嬉しい。

お礼に堂島ロールと蓬莱の豚まんと地元和菓子屋の詰め合わせを沢山あげたら、「ふん、別にあのようなはした金など大したことは無い。」と言われた。

「ありがとう。」と言ったら、顔を赤くしていた。

案外、ウブなんだな。

いそいそと仕舞い込んでいたので、喜んでくれたのだろうと思う。

岡山県倉敷市の大原美術館へ一緒に行くことを、約束させられた。

あれ?

なんだか既視感が……。

 

今夜は、コロッケとミンチカツと餃子と肉団子と鯵の刺身とアジフライが中心。

肉じゃがや筑前煮も作ろう。

余ったら冷蔵庫で保存する。

……保存出来たらいいなあ。

ちなみに鯵(アジ)は今朝、ランサーの兄貴が大量に釣ってきた分だ。

流石、ケルトの英雄。

釣果(ちょうか)は充分だぜ。

切った頭は一夜干しの分と一緒に干しといて、後で汁物の出汁にでも使おう。

ワンタンスープも一緒に作る。

自家製の腸詰めやザワークラウトは、ドイツから来たイリヤも喜んでくれる味わいに仕上がっている。

イリヤは風呂に入っているといつも乱入してくるし、毎晩俺のベッドに潜り込んできたりもするおしゃまな女の子だ。

逃げようとしたら、バーサーカーが先回りして俺を逃がさないようになっている。

悪戯っ子だなあと思っていたら、何故か桜とセイバーから怒られた。

 

忙しい、忙しい。

バタバタと働く。

慎二がげらげら笑っていたので、罰ゲーム的に買い出しへ行かせる。

何故か涙目になっていたが、容赦などしない。

貸し一だからな衞宮! 今度映画を一緒に観ようぜ! と叫んで慎二は出掛けた。

 

いただきものの猪肉はキャスターが程よく魔術とやらで熟成させてくれたし、彼女の部下のアサシンが上手く斬り刻んでくれた。

彼は畑仕事も上手いので、庭の畑を任せてある。

馬鈴薯と玉葱は特売の時に沢山買っておいたから、貯蔵量は充分なのだ。

アーチャーの包丁捌きによって、肉の塊がどんどん挽き肉になってゆく。

あれ?

こいつ、弓兵じゃなかったっけ?

……ま、いっか。

時折皮肉を言われるし殺気も感じるけれど案外いい奴だ、アーチャーは。

でも、俺の尻を時々じっと見つめている。

なんでさ。

 

ちえちゃんとこのホルモンとタレも入手出来た。

大阪まで買い出しに行ってくれた遠坂に感謝を。

今夜は庭でホルモン焼き祭だ!

桜は桜でライダーと一緒に現在間桐の家で鶏の唐揚げを下拵えし、ちらし寿司と三笠(どら焼きとも言う)を作っている最中だとか。

広島檸檬とかぼすとすだちと手製のマヨネーズも、持ってきてくれる手筈となっている。

あいつの手料理は楽しみだ。

ちなみに遠坂は、自宅にてサンドウィッチとパウンドケーキを大量に作っているらしい。

そちらも楽しみにしている。

 

 

食後はジブリ作品の観賞会だ。

どれを観るかで、現在英霊たちの間で激しい舌戦が繰り広げられている。

どれを観ることになるのか、今から不安と楽しみで胸がいっぱいである。

一体、どの作品を見せられるのだろうか?

 

 

明日は、関西国際空港へ母さんを迎えに行かなければならない。

ドイツからやって来るのだ。

イリヤも楽しみにしている。

俺の作る飯が口に合うといいな。

義理の母さんだし若すぎる気もするが、それでも俺の、俺たちの母さんだ。

 

そして、夕食が始まる頃愉悦神父が激辛麻婆豆腐を大量に持ってきた。

勿論、ありがたくむしゃむしゃいただく。

辛い。

でも、旨い。

嗚呼。

こうした、おいしい日々が続くといいな。

 

 

 

ここは兵庫県冬木市。

海の幸豊富な、関西圏の小都市。

腹ぺこ英霊の集う街。

 

 

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