本作は二次創作作品になります
原作:『葬送のフリーレン』
粗筋:フリーレンとアウラは突然、異世界のオカヤマに飛ばされた!
果たしてフリーレンは、絶品の白桃やマスカット・オブ・アレキサンドリアを入手出来るのか!?
それは戦闘中、唐突に起こった。
とてつもない魔法の力によって、非常に長い年月を生きてきたエルフの魔法使いが異世界へと飛ばされてしまったのだ。
●ーラロードのような光は溢れんばかりの強い輝きを放ち、周囲にいた魔法使いや戦士や悪魔の力を寄せ付けなかった。
そして、その光は現れた時のように突然消え去る。
元からそんな光などなかったかのように。
残された者たちはまた死闘を始めた。
定められた宿命のように。
死したる悪魔になにかが囁く。
ちょっと手伝ってくれないか、と。
否やを言う間もなく、虚無にいた美しき悪魔も実体を得て異世界へと飛ばされた。
まるで予定調和のように。
そして、魔法使いと大悪魔は中四国九州有数の巨大駅舎近くで再会する。
まるで歓迎するかのような夏の風が辺りに吹き、二人をやさしく包み込んだ。
少し涼しくなる。
しかしまだ暑い。
これからの時期としてはまだまだずんずん暑くなるのだけれど、異世界から来た彼女たちはまだそのことを知らない。
大悪魔は魔法使いに食ってかかった。
「ちょっと、フリーレン。ここは一体どこなのよ!」
「ここは異世界の大都会オカヤマだよ。」
「なんでそんなことを知っているのよ!」
「神様に教えてもらった。」
「は?」
「神様へのお土産にする果物を買わないといけないし、私の護衛としてアウラが一時的に復活した。」
「なにそれ? 私に一切利点が無いじゃない!」
「オカヤマ産の世界最高峰の果物が食べられるよ。」
「世界最高峰がなんなのよ、意味がわからないわ!」
「私は果物の品種改良とおいしい果物を食べることが趣味なんだよ。」
「えっ? ま、まさか、リーニエが好んで食べていたあの林檎は……。」
「そう、あれは私が開発した果物の品種改良魔法の『アマクナールク』を使った逸品のひとつだよ。」
「そうか! リュグナーが以前言っていたわ。人類の果物の品種改良に大きく貢献し、歴史上で最も多くの果物を魔改造した魔法使い……『白桃のフリーレン』!」
「おいしい果物を食べることは、とても大切。」
「私はあなたが嫌いよ。」
「そう。」
「魔法はそんなことのために使うものじゃないわ。」
「ここは暑いね。」
「人の話を聞きなさいよ!」
そういうことはあったが、二人はとりあえず和解に至った。
「確かに大きな建物はあるし、ニンゲンも沢山いるわね。で、なんで私たちはここにいる訳?」
「神様が白桃を食べたいなあと思っていたらしく、ここに飛ばされたんだよ。」
「神って欠食児童か! それと、私は死んだ筈なのにどうしてここにいるの?」
「仲間がいないとちょーっと厳しいかなかな、って思っていたらなんかいた。」
「なんかって、なによそれ。あなた、仲間がいたでしょ?」
「フェルンもシュタルクもここに来られなかった。なにか条件があるのかも。」
二人はいつの間にか、写真機やら携帯端末やらを構えた複数の男女に囲まれていた。
彼らからは敵意も魔力も感じないが、何故か魔法使いと大悪魔を熱く見つめている。
それは情熱。
または熱意。
内に秘めたるは熱烈歓迎のココロのボス。
そのうちの一人が声を出すと、それに応じるかのように他の面々も口を開き始めた。
「すみませーん! 目線をこっちにくださーい!」
「本格的ですね、アカウントを教えてください。」
「あなたたちはボクの推しです。取り敢えず一万円ずつどうぞ。」
「お二人とも美人ですね。同人誌即売会にも行かれるんですか?」
「尊い、尊い、尊い。なんと尊い! ありがたや、ありがたや。」
わらわらと集まった人々が熱心に彼女たちを撮影する。
それらはどこか少しはにかんでいるかのような部分もあって、図々しさの数歩手前で抑えられているかのようにも見えた。
有り余る欲望の抑制がよくきいていて、統制もとれている。
おそらく、有明の夏冬の地獄を何度も何度も体験した者たちだ。
面構えが違っていて当然だった。
二人にとってなにを言っているのかなにをしているのか少しもわからない者たちだらけだったが、適当な魔法使いと尊大な悪魔はそれらを難なく切り抜けてゆく。
そんな中、アウラはこっそりとフリーレンに話しかけた。
「ねえ、フリーレン。」
「なに、アウラ。」
「このニンゲンたちに『服従の天秤(アゼリューゼ)』を使ったら、簡単に目的の果物が手に入るんじゃない?」
「アウラ。」
「なに?」
「簡単に手に入らないからこそ、オカヤマの白桃やマスカット・オブ・アレキサンドリアはおいしく輝くんだよ。」
「なにそれ、わかんない。だって、支配した方が早いじゃない。」
「それじゃダメだと思う。おいしいものは自分で探さないと。勇者ヒンメルなら、そうするってことだよ。」
「ヒンメルはもういないじゃない。」
「ここにいるよ。」
フリーレンは、右の人差し指で自分自身の胸を指した。
アウラは戸惑いながら、それを見つめるしかなかった。
やがて即席の撮影会は終わった。
二人の類い稀な美しさと独特な雰囲気と本格的衣装を褒め称えたニンゲンの幾人から現地通貨をかなり貰い、彼女たちは果物売場を教えてもらうことにも成功していた。
「これでオカヤマの果物が買えるね。」
「ふん、くだらないわ。」
「じゃあ行くよ、アウラ。」
「ちょっと待ちなさいよ。」
中四国最大級の鐵道駅舎に入った二人は、自動階段を使って二階にある果物売場へと向かう。
「幾つもの商店が屋内にあるんだね。ええと……こっちだよ、アウラ。」
「仕方ないわね。」
すたすた歩くフリーレンになんとはなしに不安を覚え、アウラは話しかける。
「ねえ、フリーレン。」
「なに、アウラ。」
「本当にこっちなの?」
「大丈夫。『おいしい果物を見つける魔法』で探しているから。」
「変な魔法を知っているのね。」
「私は偉大な魔法使いだから。」
「誉めていないわよ。」
やがて、果物売場が見つかった。
物色し始めるフリーレン。
冷ややかに見つめるアウラ。
斯くして、二名は異世界における世界最高峰の果物のいくつかを無事に入手した。
夕暮れ迫る大都会オカヤマ。
その玄関たる巨大駅舎近く。
白桃やマスカット・オブ・アレキサンドリアを実に嬉しそうに食べるエルフの魔法使いがいた。
その一心不乱な姿に苦笑しつつ、魔族の大悪魔だった彼女はフリーレンへの敵対的感情を先程から持ち合わせていないことに戸惑う。
ま、いっか。
本来は死んでいたんだし。
諸行無常的に彼女は思う。
少し食べてみようかしら。
せっかくだし。
私にも報酬は必要よね。
アウラは白桃を口にした。
豊かな甘味と旨みが口内に広がってゆく。
へえ、おいしいじゃない。
彼女は、自分自身がフリーレンと同じような笑みを浮かべていることに気づかない。
異世界から来た二名を、一陣のやさしい風が撫でていった。