【オリジナル】
おっさんは異世界転生し、少年となる
七難八苦を抜けた先もまた七難八苦の世界だった
悪役令嬢ぽい未亡人たちの再嫁ぎ先は子爵家七男
調教されつつあるかに見えるショタは幸せを掴めるのか
※冒頭の転生に関する認識を修正しました【二〇一八〇八一六】。
異世界とやらに転生したのを認識出来るようになってから、およそ三年になる。
蛇行し暴走する飲酒運転らしき高級車輌から通学中の児童たちを守ってこの世からオサラバした私は、ご立派な姿の神らしき存在によって現世とは異なる世界へと送り込まれる破目に陥った。
転生先は帝国とやらの辺境に位置する子爵領。
のんびりした家族は貴族というよりも農民に近い感じで、領民たちとの距離も近い。
それは好ましいと思える環境だが、だからこそ当家は子爵止まりなのかも知れない。
貴族にとっては政治闘争という名の権力争いが日常茶飯事で、それが上手く出来ない者たちはこぞって辺境に押し込められて裕福な商家よりも劣る暮らしを強いられる。
それが厭な者は権謀術数の限りを尽くし、あらゆる手を講じるのだ。
我がミュンヒシュタイン家はそうした争いから遠く、北方の寒き土地にて林檎や蕎麦やサトウカエデや砂糖大根や蜂蜜や馬鈴薯などと日々付き合っている。
つまり、子爵領はド田舎であるもののかなり裕福なのだった。
ひっそりと暮らしているが騎士隊は小規模ながらも精兵揃いだし、領兵隊の錬度も士気も高い。
娯楽が少ないためか、武術の鍛錬が好まれているためか。
近隣の村娘でさえ猟で熊を仕留めるのが普通というのは、ちょっとおかしい気がするけれども。
勿論、それは素手で行われるのでない。
毒の使いに長じているが故の成果だな。
政争が日常茶飯事ならば、処刑も割にあるということである。
そこで問題になるのが美人の処遇だ。
美しき貴族の姫君が次々死ぬのはこの世の大きな損失である、と六代前の賢帝が嘆いて『追放令』なるものを制定したとか。
どうやら、如何に美しくとも貴族の三女四女などが結婚するのに大変苦労する話は賢帝に届いていなかったらしい。
こうして、政治的に担ぎ上げられる可能性の低い女性は名を変え辺境へ追放すべしという法令が正式に制定された。
そういった『追放令』の影響は私のいる子爵領にもあり、実際例として父の第一夫人は某公爵家の六女なのだとか。
ちなみに第二夫人は某伯爵家の三女で、第三夫人は近隣の村から嫁いできた五女だ。
兄弟はばらばらの母から産まれたのだが、仲はとてもいい。
争い事を好まないからかも知れない。
ちなみに私の産みの母は第一夫人だ。
で、目下の問題は三年前に起きた大規模な政争によってこの地へ流れてきた未亡人たちである。
家督を継ぐのが決定している長男のエメリッヒは既に隣接する二つの男爵領からそれぞれ一人ずつの妻を迎えており、次男のオスカーは長兄の補佐役たることを選んだ。次兄は幼馴染みの侍女を一旦縁戚の男爵家の養女にして貰い、その後合法的に結婚した。
三男のウルリッヒはとっとと近隣の村で雑貨店の娘と結婚し、せっせと商売に励んでいる。時折、家に商売に来る程だ。
四男のコンラートと五男のカシナートは帝都へ赴き、近衛騎士隊へ入隊すべく日々鍛錬を行っているとか。
たまにこういった武闘派が産まれてくるそうで、三代前のご先祖様は一騎当千で万夫不当の化け物染みた戦闘狂だったそうな。
帝国最強の男で、戦場で亡くなったとか。
六男のミハエルは研究家気質らしく、帝室調査隊の一員として世界各地を巡る旅暮らし。
一三歳の私が宙ぶらりんてとこだ。
そして六人とも、美しき未亡人たちの受け入れを拒否した。
なんでやねんな。
彼女たちは合計四人。
彼女たちの夫は全員処刑台の露と消えており、彼女たちも貴族としては公式に存在しないこととなっている。
◎某公爵家八女。某商家主人の側妾(そくしょう)。
◎某侯爵家四女。某両替商主人の側妾。
◎某伯爵家七女。某酒屋経営者の側妾。
◎某男爵家三女。某料理店主人の側妾。
年齢は二〇歳前後から二〇代半ばまで。
いずれもすこぶる美人だが、全員の顔立ちが悪役令嬢ぽいのは難点かな。
気立てはいいのに。
第一印象などはあてにならないのに。
家庭的とは言い難い雰囲気なのがよくないと、兄たちは口を揃えて彼女たちを拒否する。
はからずも兄たちの女性の好みがわかってしまった。
という訳で、彼女たちは全員私がめとることになる。
なんでやねんな。
肉体的には既にご婦人を孕(はら)ませることが十分可能な状況になっていたし、私の婚姻を阻む要因は今のところ存在しない。
幼馴染みも婚約者もいない身。
七男だからな。
だが、だからこそ問題なのだ。
私の転生特典とやらは、絶倫。
どんな女性であろうとも、容易く陥落出来るという。
あかんがな。
欲しくもない特典だったのに、押し切られ押し付けられてしまった。
そして、この世でも押し付けられようとしている。
断ろうと思ったが、着の身着のままで逃げてきた彼女たちを受け入れる決定に一番賛成した身としては、将来的に彼女たちを妻にすることがその時点で決定していたのかも知れない。
両親や兄たちがなにやら連携していたっぽかったし、それを彼女たちは予め覚悟していたかにも思える。
今更だが。
自縄自縛というのだろう。
死んでも治らない癖だな。
婚姻が決まる前から侍女的位置というか世話役みたいな位置だった元令嬢の未亡人たちは、私の完全な世話役に変わったようだった。
割と自由人的な考え方をする当家流によって、朝体を拭いてもらうのも未亡人たちの役回りと化した。
お陰で私の暴れん坊は、毎朝彼女たちに観察されることになる。
以前は近所の村のおばちゃんが侍女だったので変形しなかったのだが、肉体が思春期の上に魅力的な女性たちが一糸まとわぬ私の体を丁寧過ぎる程拭いてくれるのだ。
これで変形しない訳が無い。
彼女たちが変形に対する救済処置を提案してくれたが、最初の内は丁寧に断っていた。
婚約が決定してからは、妻が夫の苦しみを取り除くのは当然だと何故か鼻息荒く四人が伝えてきたので承諾せざるを得なかった。
うふふ、と嬉しそうに笑う彼女たちを見ながらなんとなくモヤモヤした気分になる。
そして、それは毎朝の定例行事となった。