ーーーー は地の文の視点が変わる目印です。
ピピピッ、ピピピッ、ピピッーバンッ!
側にある時計のアラームを強引に切ってしまう。現在、〇六〇〇(マルロクマルマル)。ここラバウルでの初めての朝を迎えた。
布団を押し入れに仕舞い、洗面台に行き洗顔・髭剃り。支給された防暑衣に袖を通す。ラバウルは4月でも30度を超える。二種軍装では暑すぎる。大淀に、ここでは二種軍装を着ないことを言うとひどく驚かれた。他の提督は~、とか、提督とは~、とか言っていたがそこは無視する。下は長ズボンであるが、これは短パンが嫌いなためである。
〇六二〇に仮眠室兼執務室を出る。この鎮守府の建物は執務棟、寄宿棟、出撃棟にそれぞれ分かれており、執務棟に執務室と艦隊司令部、寄宿棟に艦娘達の部屋と食堂、出撃棟にドックと工廠がある。執務棟と寄宿棟の間に警備隊詰所が、寄宿棟と出撃棟の間に訓練場が独立して設置されている。鎮守府全体の大きさとしては東京ドーム2個分くらいか。
寄宿棟に入ってすぐ左が食堂だ。覗いてみると整列した艦娘達の話声が聞こえてくる。
「新しい司令官ってどんなひとだろう?」
「優しい人だといいなぁ~」
「どんな方であろうとこの朝潮、一生着いていきます!」
一生、という言葉にズキリ、と胸が痛む。意を決して中に入る。するとあれだけの喧騒が途端に静まった。
食堂には壇が設置されており、壇に向かって4基×3列の計12基の艦娘が並んでいた。正面から向かって左側に大淀と猪俣さん、警備隊の男が、右側に非戦闘員の艦娘ー明石、間宮が立っていた。大淀がアイコンタクトをして、僕は壇上に立つ。
「敬礼!」大淀の一声で僕を除く全員が右手を顔の上に翳した。昨日まで一刑務官だった猪俣さんが敬礼の動作を完全に身に着けていたのに驚く。慌てて僕も礼を返す。
「これから、提督のラバウル基地第684鎮守府着任式を行います。提督、着任挨拶をお願いします。」一呼吸つく。
「えーと、長ったらしい挨拶を嫌いなので手短に。この度、ここ第684鎮守府に着任した、日本国海軍少佐の津崎守だ。この鎮守府は、各鎮守府や内地への資源輸送拠点として新たに設置された。資源を嗤う者は資源に泣く。共にこのラバウルの地で戦おう。以上。」任期が一年間であることは隠しておく。壇上に立ったまま、警備隊と艦娘達の自己紹介が続く。
「海軍警備隊の猪俣淳だ。君たち艦娘について私はよく知らないので、色々と教えてほしい。よろしく。」
「同じく海軍警備隊の榊亮介だ。俺は提督殿と艦娘の間に何もないことを願ってますよ。」
猪俣さんによると、榊は海軍省の職員であるが、今回海外留学の名目でここに赴任してきたのだという。行く行くは事務次官になるのだろうか。
現時点で着任している艦娘は、
軽巡洋艦
阿武隈、大淀、夕張
駆逐艦
睦月型:文月、三日月
吹雪型:白雪、磯波
初春型:若葉
白露型:時雨
朝潮型:朝潮、霞
陽炎型:雪風、浜風
明石(工作艦)、間宮(給糧艦)である。このうち明石と間宮、大淀は鎮守府専属であるため実際に出撃できる艦娘は残りの12基である。一応水雷戦隊を二つ組んで出撃できるので上々といったところか。
「着任したばかりで君たちには申し訳ないが、これから鎮守府周辺の哨戒を行う。第一艦隊はニューハノーバー島方面へ、第二艦隊はムルア島方面へ出撃し、深海棲艦の航行状況及び資源採取地点の確認を行うこと。編成は、第一艦隊旗艦阿武隈、文月、若葉、朝潮、霞、浜風。第二艦隊旗艦夕張、三日月、白雪、磯波、時雨、雪風。阿武隈、夕張、朝潮、白雪は伝達事項があるので待機。それ以外の者は朝食後、各自出撃準備に移れ。現在〇六三〇。〇八〇〇に出撃とする。以上、解散。」
「随分とせっかちな提督だね。」
「雪風はいつでも出撃できます!」艦娘たちは朝食用のお盆を取りに行く。
残った艦娘4基に向けて、僕は呼びかける。
「今回君たちには、鎮守府近海のデータを可能な限り集めてもらいたい。」
「気温、湿度、風向、風速、海面水温、海水の濃さ、鳥類の数、深海棲艦の進行方向etc...を1km航行毎に計測、って、いくらデータ収集が得意といってもこれは多すぎますよぉ!!」夕張は訴える。
「私的には全然OKじゃありません・・・」とは阿武隈の弁。
「司令官、これから行うのは近海の哨戒ではないのですか?」と白雪。
「確かに、今回の主な目的は鎮守府近辺の哨戒だ。だが、それとは別に君たちには近海の情報を可能な限り集めてほしい。この情報は、今後私たちにとって必要不可欠なものだ。情報は絶対に裏切らない。頼む。」私は頭を下げる。夕張、阿武隈、白雪はどこか納得しない顔。しかし朝潮は、
「お任せください!この朝潮、全力で情報収集任務を完遂させます!」と敬礼を返してくれる。素直な娘は好きだ。
「「「了解しました。提督(司令官)。」」」後の艦娘も敬礼を返す。
「ありがとう。白雪と朝潮は旗艦のサポートを頼む。伝達は以上だ。ご飯を食べよう。」
艦娘たちと間宮が作った朝食を頂く。ご飯、味噌汁、鮭の塩焼き、卵焼き、ほうれん草のお浸し。どれも非常に旨かった。温かい朝食を食べたのは何年振りだろうか。
〇八〇〇。
「軽巡洋艦夕張、出撃よ!」
「阿武隈、出撃します!」第一艦隊と第二艦隊が出撃する。
「着任してすぐに艦隊編成、出撃とは随分手慣れているな。提督。」猪俣さんが言う。
「編成自体は昨日から考えてましたから。それに、
僕に遺された時間は少ない。時は待ってくれない。」ソロモン海の水平線を横目に、固く拳を握りしめる。
「今更ですけど敬語使っていいですか?」
「提督がそうしたいなら敬語で構わんよ。」
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一四〇〇。津崎提督が着任して10日が経ちました。艦娘の運用・指揮は新人提督と思えないほど適切かつ的確です。また食事の時間には業務を止めて食堂で艦娘たちと談笑するなど、コミュニケーションもバッチリです。只問題なのは・・・
執務室のドアをノックする。「軽巡洋艦、大淀です。」「入れ。」「失礼します。」ドアを開ける。
国境(執務棟)の長いトンネル(通路)を抜けると雪国(書類にまみれた執務室(と提督))だった。
「あっ、大淀、今日の任務の書類書き終わって机に置いておいたから、確認よろしく。」
「何ですかこれ」
(続く)
次回が説明回(になりそう)なので、ここで止めときます。
お盆休み明けまでには更新したい。
誤字脱字ございましたらご指摘宜しくお願い致します。