この世界の技術なら、きっと珍兵器も輝けるはずだ。そうだろう?束博士!!   作:菊池 徳野

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発想は悪くないと思うんだ。


氷山空母ハボクック

映画の中で見た近未来がそこにある。

空中に浮かんだホログラムのディスプレイにキーボード。機械を並列につなぐようなスパコンなど前時代だと言わんばかりに目の前では魔法のような科学をさも当然とひけらかす白衣の女性はISの調整をしているのだと言う。

つまらなさそうに言うその言葉がこの世界では当然のことをしているのだ、と言っているようで心が躍った。

世界はつまらなくなんかない。夢物語は妄言なんかじゃない。

 

「なぁ博士」

 

――俺に科学を教えてくれないか?

 

そう言った俺に向けた視線が、少し楽しそうに見えたのはおそらく間違っていなかった筈だ。

 

 

 

 

周囲が騒がしくしているのを物ともせず目の前に浮かぶキーボードを叩く。

魔法使い(てんさい)の弟子になった俺は、彼女のように科学を隠す事無く使い潰す方法を身に着けた。それを周りは奇妙なものを見るように見てくるのが不快ではあるが、気にするほどでもないとこの数日で学んだ。

 

ポチポチと退屈な入力作業をしているとオリムラ先生から声をかけられた。

どうしました、先生?オリムラのISが届かないから先に私が出ろと?いや、構いませんが。

 

キーボードを叩いているとはいえ別にISの調整を行っているわけではないから先に試合するくらいなら構わない。

いや、ISの調整だと言えばそうなのだが、こいつ(・・・)は今から使う奴ではなく設計段階のプロトタイプのパターン構築作業だから今じゃなくてもよいのである。

そういうわけでさくっと了承したのでIS学園に来てから初の戦闘である。

 

 

『ISを展開しないまま出てくるなんて、貴方何を考えていますの?』

 

先ほどまで緊張感に沸いていた試合場は困惑するかのようにざわめきが大きくなる。

試合相手である自称イギリス淑女までわざわざオープンチャンネルでこちらに注意喚起をしてくる始末である。

これでは束博士が世界を詰まらないと言うのも分からなくはない。とはいえ、前例のないことだし仕方のないことかもしれない。

これはほら、馬鹿には見えないISという奴だよ。なーんて。

 

『馬鹿馬鹿しい。ハイパーセンサーには何も映ってませんわよ?光学迷彩というわけでも無さそうですし、もう試合は始まっているのですから笑えない冗談はおよしなさいな』

 

うーん、馬鹿馬鹿しいとまで言われてしまったか。これはある程度のものなら凌いでくれる優れものなのだがね。

 

『しつこいですわよ』

 

取り付く島もないとはこのことだろうか。悲しいけれどこれが世界という奴らしい。

どうやらこのまま先攻をいただけそうなのでどちらがふざけているのか分からせるとしよう。

 

――全軍、突撃だ。

 

すっ、と手をブロンド娘に突き出すように前に出すと、耳が痛くなるほどの破裂音とともに目の前の三世代機が体勢を崩した。

うむ、見事着弾である。

 

『えっ!?何が…これは、氷?』

 

声の主は慌ててはいるが、体勢を整えて距離を取った。それに攻撃の正体も気づいたようだからIS乗りとして優秀ではあるのだろう。

だが実に惜しい。今のは攻めつつ引くべきだ。もう一度攻撃が飛んできてもよいように、追撃がないように…あぁ、やはり所詮彼女もただの代表候補生(ルーキー)でしかないのだろう。もう少し戦えるかと思ったのだが。

しかしそうなると残った目的は世界に実力を示すことだが、そうなると今度はあまり時間はかけたくないところだな。

さぁさぁ、避けるか受けるか、選びたまえよルーキー君。

 

『ブルーティアーズッ!!』

 

あぁ、やはりまだまだ小娘。戦の何たるかを分かっていない。

ビットが展開しきる前に撃ち落とす。スペアあっても次が出てこないように射出口は凍らせて、バーニアもついでに固めてしまおうか。

抵抗とばかりにビームが飛んでくるが目の前で四散する。

驚いているところ申し訳ないが、盾も無しに生身のまま出てくるはずがないだろう?おふざけじゃあないんだから。それに、驚くのはこれからだよ。

 

遠隔操作が可能なビットはたしかに恐るべき脅威だろう。死角からの一撃、時間差攻撃、敵の追い込み…だがそれは一人でやるものじゃあない。

高々両の手で足りる程度の数など戦争では役に立たん。

せめてこれ位は用意してもらいたいものだ。

 

周囲に散っていた蒸気が凝固して本来の形を取り戻していく。

ISと呼ぶにはそれはあからさまな兵器であった。光を受けてキラキラと光るその姿はある種幻想的で、会場からも息をのむ様子が見て取れる。

巨大な空母に会場全体を埋め尽くすほどの戦闘機。数の暴力とはこういうことを言うのである。

 

――第三世代IS、氷山空母ハボクック。君の祖国イギリスの生んだ失敗兵器だよ。

 

氷の空母に氷の戦闘機。分かりやすい人型にもできるがこれが一番整っているのだから仕方ない。

敵の前では両腕を組んでガイナ立ちをし、砲撃の際には腕を突き出す。必要ないものにこそ魅力というのは生まれるのだから。

だからまぁ、高い授業料だと思って蜂の巣になるといい。

 

それだけ言うとその場に背を向けてこちらの勝利を告げるブザーの音を遠くに聞く。一緒に悲鳴も聞こえてくるが音ほどは大変なことにはなっていないだろう。

できるだけ目立つ損傷は抑えたからこの後オリムラと戦うこともできるだろうし、実力を示すという私の目的は達成できたから代表だとかいうのは残る二人で決着を着けるといい。

 

しかし試作とはいえ強くなりすぎた。護衛としては満点なのだが、どうにも失敗兵器としては微妙である。

相棒自身はこれで良いと言いたげに光っているのでこれ以上は手を付けないが、少し惜しい。

 

まぁ、次は違う外装を作ればいいか。

あ、束博士?どうだったかな、俺のハボクック。次はノヴゴロド辺りを再現しようと思うんだけどさ…。

 




次回、オリムラ怒りの挑戦状。
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