この世界の技術なら、きっと珍兵器も輝けるはずだ。そうだろう?束博士!! 作:菊池 徳野
簪ファンの方々には申し訳ないがこれで許してください!サブカル好きという設定なので、好き勝手しました!楽しかったです。
「すまんなノホホン、簪。男を部屋に匿うなど迷惑だろうに」
そう言って笑う彼の姿からは疲れの色が濃く見える。全力で逃走している所を本音と二人で引っ張りこんだのだから息が上がっていても仕方ないだろう。
本音は呑気にお菓子を勧めているし、あまり気にしていないみたいだ。いや、私も別に構わないのだけれど。
それにしても彼が焦っている姿など見たこと無かったような気がするが、何があったのだろう?
「イチカのとばっちりだ。今回は軒並み怒らせたので逃げ場が無かった」
「研究所は~?」
「リンに押さえられた」
具体的な部分は分からないがまた彼の仕業らしい。騒がしいのが苦手な身としては迷惑な話である。
とはいえ彼も追われるということは何かしらやってしまったのだろうか。女性が怒ることで不可抗力のもの…覗き?
「一応私も謝るべきとは思うのだが、何か詫びの品を用意しておくべきだろうか?」
まぁ、もし覗きなのだとしたら程度にもよるが、謝る必要はあるだろう。
だけど故意じゃなく、更には他人のとばっちりで不可抗力なのだとしたらそこまで大袈裟なお詫びは必要ないとは思う。
「では菓子でも作ろう。イチカが捕まれば研究室の警備も薄くなるだろう。二人へのお礼も考えないとな」
「じゃあ、私へのお礼はそのお菓子でいいや」
たまに本音は本能のままに生きているのではないかと思うときがある。しかしこれでいて甘える相手を選んでいる辺り私よりもコミュ力は上…これ以上考えるのはやめておこう。
しかしお礼か。
別に私たちは特別何かをしたわけではないので無くてもいい。それどころか私のIS作りに協力してもらっている事を考えれば私の方から何か渡すべきなのだ。彼が自分の趣味だからと気にしていないみたいなので、何となくお返しをしそびれているが。
タイミングを見て何か返したい所である。
「ふむ。では二人にはこの髪留めをプレゼントしよう」
うんうん、と一人で頭を抱えていると彼の中で結論が出たらしい。マイペースだな。
しかし髪留めとは…失礼な話だが、もっと突飛な物が出てくると思っていただけに、可愛らしい贈り物に少々驚きが禁じ得ない。
「簡単な物理障壁を張れる装置だ。君らの音声とキーワードを登録しておけばいつでも使える御役立ちグッズだ」
やっぱりな。
声には出さないが内心納得である。ちらりと本音の方を見遣ればおんなじような顔をしていたので思うところは同じだったらしい。あ、こっち見た。
「ここ最近、巨大さや大味なところを重視した発明ばかりしていたからな。このままでは手先が鈍ると思ってな。それに小型化だってロマンだろう?」
正直最近のロボット工学に喧嘩売ってる作品の方が好みなのだが、彼の言うことも一理ある。所謂こんなこともあろうかと!という意表を突いたものが作りたかったという事だろう。わかる。
しかし、この間ちらっと見た鉄人なんてとても良かったと思う。非合理だとかそういうのを全て粉砕するだけのインパクトがあった。多くを守るために作られているという辺り、正義の味方というものを分かっている。そしてラジコン操作もできる辺り渋い。
脱線した。
今の口ぶりからして小型の装置を他にも作ったことがあるのだろうか。気になる。
「奥歯に加速装置擬きを仕込んでいる」
…本当に彼は斜め上の存在である。
これはアレだろうか、試験管ベイビー時代に改造手術でも受けたのだろうか?サイボーグ?それともライダー?
もしや!篠ノ之博士に…?
「薬物による作用で脳内麻薬をだな…」
すごく残念である。私の中にあったサイボーグキャラ像がヤク中に早変わりである。
薬剤の効果で一時的にリミッターをはずすとか非人道がすぎる。いや、自分にしかしたこと無いと言われても何の免罪符にもなってない。というか他にする気があったのだとしたらこれからの付き合い方を考えている所である。
せめてもっと平和な作品は無いのか。
「後は…この指輪とか」
首から下げられたそれは人によっては婚約指輪と邪推しそうな代物である。ISに乗っているときも下げていたからただの指輪ではないと思っていたが、やはり発明品の一つらしい。もしやISの操作を補助するインターフェースやAIだろうか。
常々彼のISを動かす速度は神掛かっていると思っていたのだ。ハボクックから作られる大量のビットもマルチタスクという言葉では説明しきれないし。
「バイタルチェック機能や通信機能他を積んだ大掛かりなGPSだ」
【悲報】指輪、迷子札だった。
IS操作の補助装置とか無いのだろうか。
「その辺は生まれが生まれだからな。必要ないものは作ってない」
つまりそういうことなのだろう。サイボーグで無いだけマシだったと言っているが、正直どんな顔をすればいいか…。
「通信ってことはおんなじ指輪、誰かにあげたの?」
「この指輪は博士と姉さんも着けている。家族のお揃いだ」
ナイス、本音。
まぁ、家族の無事を確認する品であるならばそれはそれで素敵な発明だろうと思う。そして先程の自分の感想に罪悪感が凄い。穏やかな彼の顔を見ているだけに余計に。
「では、二人とも世話になった。リンの反応が離れていった今がチャンスなので私は行く、お菓子を楽しみにしていてくれ」
言うが早いか、私が一人で自己嫌悪に陥っている間に彼が居なくなっていた。ドアの閉まる音が今聞こえた辺り、噂の光学迷彩を使ったようだ。
本当に掴めない人である。
「ねぇねぇ、かんちゃんかんちゃん」
どうしたの本音、嬉しそうに髪留め持って。
「キャラランはプレイボーイだね!」
…うん、そうだね。
照れ臭いが男の子からの贈り物なんて初めてなのだし、大切に使わせて貰うとしよう。
数時間後、彼は約束通りお菓子を持ってきた。
何故か腕に縄の跡を着け、1ホール丸々のカロリー控えめのチョコレートタルトを持って。
曰く、謝罪する相手が居なくなった。
とのことだが、何らかの手違いで彼が怒る事態になったのだと私は察した。本音はタルトを一口食べて、彼を神か何かのように崇めていた。
本当によく分からない人である。
ここでワンクッションおいて本編です。
多分シリアスになる…かな?二話か三話構成の予定なので少し遅れるかもしれません。
あと、別に簪のこれは恋愛要素とかではないです。書くとしても本編完結させてからのつもりです。需要次第ですが。