この世界の技術なら、きっと珍兵器も輝けるはずだ。そうだろう?束博士!! 作:菊池 徳野
あの後、予定調和のようにオリムラは敗北し敗者に選ぶ権利はないと言わんばかりにクラス代表に祭り上げられ、オルコットは謝罪を機にクラスの一員として過ごすことができている。
当然私はあれから誰に止められることもなくIS開発に打ち込むことができるようになり、学園の人間に侮られるということは無くなった。至って平和な日常を謳歌している…筈だったのだが。
面倒なことにオリムラは不戦勝が気に入らないと言って模擬戦を行うことになってしまった。
はじめは断ったのだが、各所のお偉方から開発資材の提供と演習場の優先使用の許可を出す条件としてオリムラとの模擬戦、ひいてはサポートを要求されたので前者だけ許容した次第である。
資材提供は魅力的だったが学園で定められた量で我慢し、優先使用も断ることにした。これも束博士から『社会勉強だよー』と送り出された以上贔屓されての学園生活など邪道と考えたからであるが、こちらの対応にお偉方は冷や汗かいていたので恩を売ろうと思っていたのだろう。
浅はかなり。
それでも模擬戦を了承したのはこれからのお偉方の要請を断りやすくするための布石であるが効果があるかは分からない。
というか模擬戦でノヴゴロドを試そうと思ったのに空飛んだらフライングパンケーキにしかならずなんとまさかのお蔵入りとなってしまい、完全に私が模擬戦に出る利点が潰えてしまったためやる気が一切出ない。
ただまぁ…。
――あの空母凄かったな!キラキラ光ってて格好良かったぜ!
試合の後に興奮気味にこちらに言ってくるオリムラの意見は素直にうれしかったので、一度くらいは彼のわがままを聞くのは吝かではない。
姉さんの言っていた『情けは人の為ならず』という言葉を実践するのもよい機会だろう。これが何に代わるかは分からないが、自己満足は得られるだろうしどうなっても文句は言うまい。
それはともかく、ノヴゴロドがフライングパンケーキに化け、その後丸ノコのような形状になり脳波コントロール可能になったあたりで我に返った頃には模擬戦の前日であり、試合で何を使うかまだ決まっていないのだ。
正直、昔初めて作ったISのデータを引っ張り出してきてもよいのだがそれでは芸がないし何より私が気に入らない。
とはいえ少数だがギャラリーもいるので長く待たせてはおけない。
『なぁ、まだ準備できないのかー?』
それに先に出てウォームアップしておいてくれと言っていたのだが、しびれを切らしたらしくオリムラの声が聞こえてくる。
ISの調整の為だと言って時間稼ぎをしたのだが、そろそろ時間切れらしい。
仕方ないので
――すまない、待たせたな
『いや、構わないけどそのボビンケースみたいなのなんだ?』
――これは自走爆雷パンジャンドラム。また英国面からの紹介で申し訳ないがイギリスの失敗兵器だ。
『それもISなのか?』
――一応は。
『…変わってるんだな』
まぁ、爆雷というだけあって無人機なのだが、その形状と世界の物理法則から分かるようにこいつはまっすぐ走れないうえに場合によってはUターンをかます失敗兵器の王様である。無人故に正確な操作もままならず試験をするたびに失敗のレベルが酷くなるという珍兵器として有名である。
『えぇ…本当に戦えるのかそいつ』
戦えるともさ。耐久性に難ありだが、どうせ白式の必殺の一撃をまともに食らえば負けなのだからいっそこれ位のほうがいい。
まぁ、百聞は一見に如かずと言うしこちらから行かせてもらうとしよう。飛べ!パンジャン!
『って、浮くのかよ!』
空中に浮かんで車輪をパージし、パージした車輪と同じものを周囲に大量に展開して球形を作る。
なんかこれアニメで見たことあるなぁ、とは思うがまともな兵器として運用するにはこれ位しか思い浮かばなかったんだから仕方ない。それに技術革新のアイデアは二次元からというのは技術者の基本である。
手裏剣のように車輪を飛ばして攻め立てるが、オリムラは多少被弾しつつも致命傷は避けている。ふむ、
『くそっ、余裕そうにしやがって!』
まぁ、ラジコン操作してるだけだからな。乗ろうと思えば乗れるけど換装用のパッケージは置いてきたから今は無理なんだ。
とはいえ少しずつ速さに慣れてきたのか被弾数は確実に減り、こちらに攻め込むタイミングを窺っているのがよく分かる。初心者にしてはいい成長具合だ。
と、思えばシールドゲージが半分を切るかといったタイミングで仕掛けてきた。
ジリ貧になる前に決めに来たのはいい判断だな。
『褒められても嬉しくねぇよ!』
今までの回避を捨て、強化されたブレードで致命傷になりそうな攻撃を捌いての突貫。もしこれがまともな対人戦であれば動揺の一つもしただろうが、このくらい想定の範囲内である。
『貰ったぁ!!』
防壁として使っていた車輪をバターのように切り裂いてそのまま本体に攻撃を仕掛ける。
普通ならこれで決着、見事エネルギーを削りきったオリムラの勝利となるところだが、これは
オリムラ、君に教えておいてやろう。
――パンジャンドラムはISではない。爆弾だ。
オリムラがブレードを叩き込むと同時に凄まじい爆音が響く。
流石に絶対防御をぶち抜く量の爆薬は入れていないが半分以下、しかも能力でシールドをガリガリ削っていたオリムラには堪えただろう。少なくとも内部はかなり揺れただろうしどこかぶつけていてもおかしくない。
しかし、我ながら素晴らしい紅茶のキメ具合だな。流石勝率100%IS。
『卑怯過ぎるだろ!死ぬかと思ったわ!!』
おぉ、オリムラ。無事だったみたいで良かった。
『無事じゃねぇけど…で、これどっちが勝ちなんだ?』
恐らくパンジャンドラムが爆散したことに対するコメントなのだろうが、安心してくれ。パンジャンの本体はこのコントローラーだ。故に白式のシールドゲージがゼロな以上、私の勝利だよ。
何より、元々爆発する予定の
ズルいだなんだと聞こえてくるが私は初めから爆雷だと言っていたのだ。それに装備品の方が目立つだけでこれはあくまでISだしな。
『初心者相手にえげつねぇよ…』
知らんな。それに、本気で来いと言ったのはオリムラだろうに。
ほれ、満足したならこれからも頑張ってクラス代表に努めてくれ。今回の教訓は色んなところに気を配るべし、だ。
それだけ言ってさっさと演習場からおさらばする。
帰り際にオルコットから微妙な表情で見つめられたが、その文句は私ではなくあの世のネビル・シュートにでも言ってくれ。
私はあくまで失敗兵器を使えるように改造しただけなのだからな!
次回、『爆発オチなんてさいてー!』