この世界の技術なら、きっと珍兵器も輝けるはずだ。そうだろう?束博士!! 作:菊池 徳野
オリムラの事をイチカと呼ぶようになって数日、クラスでは二三言葉を交わし、昼を食堂で一緒に取る。そんな世間一般でいうところの友人関係を築くようになった。
それだけに、先程の出来事はイチカ達にとって衝撃的だったらしい。
――すまない、今日は先約があるんだ。
昼食の誘いを断ったときのイチカの顔は見ものだった。隣に居た箒やオルコットも淑女らしさを投げ捨てていたので、それだけ予想外だったのだろう。
友達がいない身ではあるが少しばかり心外だった。
「それで…って話聞いてるの?」
勿論聞いているとも。イチカに灸を据えるついでに周囲に力を見せつけるのだろう?
スマートとは言えないがあいつは一度痛い目を見るべきだろうし、何より今回ばかりはリンの気持ちの整理が優先されて然るべきだろう。
「あんたって堅苦しい話し方の癖に話分かるわよね」
客観的に見て思うところが有っただけだよ。それに私のIS開発の試験運用に手伝ってもらうんだから親身にもなる。
む、うどんも旨いがこのザル蕎麦もいいな。
「まぁ、あんたがそう言うならそれでいいわよ。早速今日から付き合ってくれるんでしょう?」
ひょんな事からイチカの仕出かした約束忘れ騒動の顛末を聞いたときには正直頭を抱えたくなった。女性を侍らせていたからそれがイチカの甲斐性なのだと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。
これは早急に教育が必要とリンに協力することを約束したのだが、他所のクラスに手を貸すことの隠れ蓑として試験運用予定のISのスパーリングをしてもらうことにした。一石二鳥の作戦である。
当然早い方が良いからと今日からリンの(イチカをボコる)肩慣らしを始めようと思っていたので本人が乗り気でよかった。
「なら放課後ISのハンガーまで行くからそこで待ち合わせて演習場まではそこから行きましょ」
気づけばリンは食器を下げようとしており、手元のザルも何も乗っていない状態だったのでさっさと食堂を去るとする。
「にしても。あんたどんだけ悪目立ちしたのよ、ご飯食べてる間ずっと周りから見られてたわよ?」
それはたぶんリンと二人で食事していたからだと思うが…それを自分で認めることは友達いない宣言をしていることと大差ないのでリンには適当に誤魔化しておく。
技術革新の申し子とか呼ばれているらしいからそれが原因ではないか、と。
「ふぅん?」
相手がここに来てから日が浅くて良かった。
それにしても色々と噂が飛び交っているのは本当なので、ここは一つ新たな話題を提供してより混沌とした評価を得たいところである。
そう思っていたのだけどなぁ。
「細かいこと気にしないの!それに、誰でもいいからISの試運転の実験台が欲しいって言ったのはあんたでしょうが!」
プライベートチャンネルから聞こえてくるリンの言葉に気のない返事を返すが、やはりやる気が出ない。
あのあとハンガーで運用予定のISを見せたのだが、人型でもないし搭乗者いないしイチカ相手の訓練にならないというクレームを受けたので、泣く泣くラフレシア計画くん1号ことフライングパンケーキをお蔵入りにすることとなった。
「その代わりに色んな装備試してもいいって言ってるじゃない」
使っていなかった小型の兵器も多かったから、丁度いいと言えば丁度いい機会なのだが、やはり外装から何から全てを試すつもりだった身としては少し物足りない気持ちになる。
それに、こいつを出すのはもう少しこう…凝った演出と共に出したかった。
「グダグダ言わないの!にしてもあんたのIS変わってるわね。第三世代?」
汎用人型工作用IS『玉兎』。
空を翔け月まで手を伸ばす兎をモチーフにしたISだ。具体的な数値等は今は置いておくが、機動力を重視したISで私の処女作であり、一応は第三世代のISである。
ISコア以外の全てを自ら手掛け、パーツも自前のデザインからフルスクラッチした真の意味での愛機、相棒と言える機体である。
「へぇ、兎がモデルなんだ。そう言われると装飾とかそれっぽいし、可愛いISね」
見た目に反して使う装備は凶悪なものばかりだが、今回は一体型以外は全て新規開発した装備ばかりなのでどうなるかは開発した当時の自分の
「それじゃあ、そろそろ始めるわよ」
両の手に抱えるように展開したガトリング砲で軽く牽制射撃を行うが、見えているのか余裕で躱されてしまう。リンの視界を遮る様に弾をばら撒いてみるが、あまり効果はない。大して速度が変わらない所を見るに、近接戦が得意なのだろう。
リンは良い動体視力を持っている。更に何かの武術をしているからか体捌きもイチカのそれとは比べ物にならないほどである。
弾切れを起こしたのを目敏く察してリンが突貫してくる。リロードの隙を突いた初歩的だが確実な選択に思わず舌を巻く。
ただ、それは通常戦闘であればの話である。
何かを躱そうとしたのか偶々か、リンが何かにはじかれた様に凄い勢いで吹き飛び、それに遅れて肩が外れたかと思うほどの衝撃が玉兎を襲うが、衝撃のレベルは想定の範囲内である。
それにしても今まで飛ばしていた
一撃で仕留めるつもりだったんだがな。
「今の何よ!?死んだかと思ったんだけど!?」
マスドライバー式超長距離射撃兵装『V3 パリ』。
名とは裏腹にドイツ謹製の超長距離射撃武器パリ砲とロンドン砲のアレンジ。技術屋に米国面を併せ持ったとんでも兵器1号だ。
「マスドライバー!?音速越えてるじゃない!」
だから避けられるとは思ってなかったと言っただろう。予測可能回避不可能の一撃必殺が売りだったんだが…残念だ。
『V3 パリ』はその最大初速を確保する為に大量の薬莢を順次点火していく為、排出する空薬莢を弾丸として射出する機構を有しており一見大型のガトリング砲を彷彿とさせる形状をしている。
そしてその見掛けを盾にエネルギーチャージ終了と同時に、前方に向けてその砲塔ごと釘撃ち機の様に第一宇宙速度を越えた鉄塊を射出する一発限りの決め技なのだが、リンには通用しなかったようだ。
「決め技を最初に撃つんじゃないわよ…」
ご尤もな意見だ。
まぁ、ネタ武器にセオリーを説くのはナンセンスだろうから次に行くとしようか。
「あんたのIS開発にテスターがいない理由がよく分かったわ」
その言葉は誠に遺憾であるが、リンにとっても有意義な訓練となるだろう?それともギブアップかね?
「上等!!」
良い反応で大変嬉しい限りだ。このまま私の自己満足に付き合っていただこう!
尚、30秒後にオリムラ先生から演習場のバリアを超高速の物体が破壊して飛んで行ったことについて呼び出しを食らって今日の訓練はおじゃんになってしまった事を報告しておく。
次回『無人機vs鉄人28号』