この世界の技術なら、きっと珍兵器も輝けるはずだ。そうだろう?束博士!! 作:菊池 徳野
そしてムーンだなんだと玉兎の要素もありますがZZは関係ありません。…あれぇ?
追記
セシリアを立たせっぱなしで放っておいた事に気づいたため、適当な席に座らせる描写を追加しました。大きな変化はありません。
オルコッ党の皆様、申し訳ありませんでした。
セシリア・オルコットには越えなければならない壁がある。
父母を亡くし家を守るため、国の名を背負いながらも決して弱さを見せずに生きてきた。時に敵を作ってしまうこともあったが、それも己の気高さを守るために仕方のないことだった。他の事に気を取られていられる程、余裕のある人生ではなかったと言い換えてもよい。
しかし、その想いが変わってしまったのは何故だっただろうか。男であるからと下に見て、肩書きがないからと侮るようになったのはいつからだったろうか。
IS学園でクラス代表を決める為に試合をしたあの日、無様に膝を着いて何もできずに己の肩書きに泥を塗った日に自分の行いを見つめ直させてくれた男の人。彼がオルコットの人生を知っていたとは思えない。十中八九、彼はあの時戦ったのは自己満足の為だと答えること事は予想に難くない。しかしそれでも、セシリアに気高い生き方を思い出させてくれた彼に、恩義を感じている事に違いはない。
「キャラさん!私、貴男にお話がありますの!」
それ故に自分が彼の眼中に無いと言われるような事があると、じっとしてはいられないのだ。
いつになく気だるげな姿からは常の明るさは見られず、疲れが至るところから感じられ、突然押し掛けた事を少し後悔した。
「…声を荒げずとも聞こえているよオルコット。いつもの英国淑女の仮面はどうした、あれは余所行き用か?」
軽口を叩く程度には気力があるようで、少しだけホッとした。何故か知らないが、彼は私を背伸びした子供の様に扱う事があるが淑女たらんとするのは貴族の当然の務めである。腹は立つが、彼の指摘も間違いではないので少しだけトーンを落として言葉を続ける。
ちらりと手元を見れば反省文の原稿用紙が置いてあり、どうやらまた実験をして織斑先生に怒られたのだろう。テンションが低いのはそれが原因か。
「仮面ではございませんし、今は関係ない事ですわ」
しかし、だからといって引き下がるわけにはいかない。知り合って日が浅いとはいえ、友誼を結んだ間柄である。少しくらい言わせてもらわねば。
「玉兎は突発的な模擬戦の為に仕方なく出しただけで私だってお披露目は不本意だった。意図して君に黙っていたわけでもないし、あの時の君との試合を軽く見ていたわけではない。ハボクックだって私の本気の一端だ」
これで納得してくれたか?と言って視線が手元に戻ってしまう。
確かに彼の言葉は的を射ており、実にその通りなのだが、そうではない。合っているからと、なら今度からは気を付けてね、で済まされることではないのである。理論の話ではなく感情の問題なのだ。
「はぁ…もう結構です。私も急に押しかけてしまってすみませんでした」
とは言えここで更に声を荒げていては彼の言葉通りになってしまうので、引き下がる他ない。時たま彼は私の思考を全て先読みした上で言葉を選んでいるのではないかと考えてしまうときがある。今回も追い返す為に軽口を言っていたのだろうか。だとしたら少し悲しい。
「まぁ、適当な所に座ってくれ。飲み物くらいは出そう」
人の顔色を見ているのかいないのか、こういう優しさを時々見せるのは本当にズルい。
そして案外彼は紅茶を淹れるのが上手い。最近は特に餌付けされているような気分になる。こういうのを胃袋を掴まれるというのだろうか、女性として少し複雑である。今度何かしら作って差し入れでもしようかしら。
「それで、どう思った?」
「そうですわね…やはり想定される被害を考えると実用的では無いと思いますわ。威力は申し分ないですけれど掛かるコストを考えると、とても実用的とは思えません」
彼の言葉にほとんど反射的に言葉を返す。直前に考えていたことを置いておいて返事をする様になった辺り、馴れたものだ。
初めて模擬戦をした日、私の謝罪の言葉を遮ってISの感想を聞いてきた時からずっと、彼は私に自分の開発した作品の感想を聞いてくるようになった。理由はいまだに不明だが、今のところこの問答が終わる様子はない。
「そうか。他にはないか?」
「え?えっと、特には」
そしていつも更に何か無かったかを尋ねてくるのだが、私には彼が望んでいる回答が分からず、そこで話が終わってしまう。
「そうか…分かった」
こうして少し彼が落ち込むのもいつも通り。落ち込みたいのはこちらなのだが、しかし今日はこれで話を切り上げるつもりは更々ないので、少しでも話を繋いでいく。
「それにしても、兎型のISというのは随分と可愛らしい見た目ですわね。あれもキャラさんのデザインですの?」
私が御披露目に呼ばれなかった件のIS。まさか無人機の襲撃の際に見ることになるとは思っていなかったが、話題に挙げると何人かに既に見たことがあると言われてしまい、つい抑えきれずこちらに来たわけですが、今は置いておきましょう。
兎をモチーフにしたという割に頭部のそれ以外に兎らしい要素が見られない、しかし私の知るISの中では一番ISらしくない、何というか丸いパーツが目立つ姿をしたIS。その丸みを帯びた姿からは、白色というのも相まって確かな愛らしさが感じられた。
「ん、まぁな。私が兵器開発に目覚める前の作品だ」
やはり思い入れが強いのだろう。少し誇らしげな様子でスペックやフルスクラッチをした事を話している。
やはり落ち込んでいるよりもこちらの方が彼らしい。
「私としてはあちらの方が分かりやすくて好みですわ。この前のラーテも素敵だと思いますけど」
彼の話に相槌を打ちながらそう溢す。
何かに特化しているというのはどの作品もそうだけれど、あれだけ外見から分かるというのはいっそ清々しくていいと思う。それにラーテの様に大きいと、ブルーティアーズとは別の意味で動かすのに苦労しそうでIS操縦者として惹かれる物がある。
「そうか!なるほど、オルコットはラーテが好みか。そうだな、私だって色々染まっているのに出身国で決めつけるのは早計だった」
何が彼の琴線に触れたのかは知らないが、落ち込んでいたのも何処へやら。というか、普段よりもテンションが高い様に見える程饒舌になっているのを理解できない辺り、私が彼の事を理解するにはもうしばらく時間が掛かるだろう。
「ところでキャラさん、そろそろ私も名前で呼んでいただきたいのですが」
とはいえ、さっさと本来の目的を告げねばならない。ISの御披露目に呼ばれなかったことの愚痴など前振りにすぎないのだ。
やはりというか何というか、突然の言葉に彼の動きが止まる。顔には『予想外』と書かれており、分かりやすく動揺している。本当にこういう所は分かりやすくていいのだが。
「…いいのか?あまり女性を気安く呼ぶものではないと聞いたのだが」
普段の奇抜な行動に反して、本人は大変古風な考え方をしている。以前お姉さんからの躾の影響だと言っていたが、IS学園に来たからと言ってそうそう変わるものではないらしい。
「良い顔をしない方もおりますが、流石に友人からファミリーネームで呼ばれるのはむず痒いですわ」
現に一夏さんや箒さんは名前で呼ばれていますし、聞いた話だと件の中国の代表候補生は名前で呼んでいるらしいですし。
ならば私だって呼ばれてもいいでしょう?
「そうか。なら、これからもよろしく頼む。セシリア」
セシリア・オルコットにとって、彼は恋愛対象ではない。そして恐らく今後も恋慕の感情を抱くことはないのだろうと漠然とした思いがある。
「はい。よろしくお願いします」
しかし彼の照れたような笑顔を見る事を、彼に友人と言われる事を、嬉しいと感じる自分がいることをセシリアはあまり自覚していない。
そして彼がセシリアに友人と思われていた事を今日初めて知ったということは、誰にも分からない方が幸せな話である。
主人公の名前を出すタイミングを逃していたので補足とセシリアとの関係を少し掘り下げました。
恋愛要素が入ってくるかは分かりませんが取り敢えずセシリアヒロインはないです。
明日より10日程実家に戻りますので、更新頻度が落ちます。ご容赦下さいませ。