この世界の技術なら、きっと珍兵器も輝けるはずだ。そうだろう?束博士!!   作:菊池 徳野

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割りと椎茸栽培は難しい。


巨大戦車『P1500 モンスター』

拝啓。

今もどこかで世界に喧嘩を売っているであろう博士、それに付き従って社会の荒波に揉まれている姉さん、お元気ですか。

私はなれぬ環境に四苦八苦しながらも楽しい学園生活を送っております。博士の妹さんは聞いていた通り人の良いお嬢さんでしたし、織斑姉弟には公私共々お世話になっており友人関係も比較的良好です。

が、現在とある問題が浮上しております。

 

「キャラ!私とペアを組んでくれないか!」

 

件のラウラ・ボーデヴィッヒに何故か付きまとわれています。客観的に見て関わり合いになりたくない様な振る舞いをしたつもりだったのですが、何故彼女は寄ってきたのでしょうか。

それと、親しげにしているが貴様に名前呼びを許した覚えはない。

 

「それは失礼した。少しばかり気を急ぎすぎた」

 

そうか、ならそのまま回れ右して帰ってくれ。私は食事をするのに忙しいんだ。

いくらオリムラ先生から気にしてやってほしいと頼まれたとはいえ、近くで面倒を見続ける必要はない。

 

「そう邪険にしないでくれ。先日の件を謝罪に来たのだ」

 

流石に軍人というだけあって所作がキビキビとしている。つむじが見える程の礼など今まで受けたこと無いな。

 

…などと現実逃避をしている場合ではない。

 

「貴方には大変失礼なことをしてしまった。実力差も分からず貴方の誇りを汚すような発言をしてしまった事を許していただきたい。すまなかった」

 

ふむ、どうやら形だけの謝罪という訳では無いらしい。

 

ひとまず顔をあげてくれ。謝罪は受けとるからそのまま席に着け。周囲の視線が刺さってきて仕方がない。

 

「では失礼する。しかし、いいのか?正直友人に手を上げた以上、貴方に許されるとは思っていなかったのだが」

 

私も少しピリピリしていた部分もあったからな。家の玉兎を馬鹿にされたのは思うところがあるが、イチカ達に怪我は無かったから、大袈裟に怒りをぶつけるつもりはない。

 

「では、師匠。私とペアを組んで欲しいのだ!」

 

…食事中に下手な冗談はやめてくれるか。私はラーメンを鼻から出す趣味は無いんだ。せっかくおばさん達がおまけしてくれたのだから、美味しく食べるのが礼儀だろう。

 

「私は師匠のIS操縦技術に惚れたのだ。私が見たところ師匠のスタイルは近距離寄りのフリースタイル。私との相性も悪くないし、何よりAICを使っても互いに邪魔になりにくい」

 

話を聞け。

 

「それに私には教官の弟を排除するという目的がある。貴方には関係のない話だと十分承知の上だ。しかし、ここに来てまだ日の浅い私には背中を任せるだけの実力のある人間の宛が貴方しか居ないのだ」

 

純粋にISの技術について褒めてくれるのは嬉しい。

オリムラ先生から聞いてボーデヴィッヒとオリムラ姉弟の間にある大体の事情は理解しているし、私に話しに来た以上正当な方法でイチカを下すつもりというのは察しがつく。

だが、私にはボーデヴィッヒを助けるだけの理由がない。ましてや友人の障害となる人間の手助けとなれば尚更だ。

 

「それでも、無理を承知でお願いしたい。私に出来ることならば何でも。物によっては国に支援を頼むことも厭わない」

 

どうやっても折れるつもりはないのか?

 

「無い。」

 

…仕方ないか。

ならばタッグを組む条件として、最大限の譲歩としてボーデヴィッヒにはイチカと戦うまでの試合は全て私が言う様に動いてもらいたい。

私としても新規のIS技術をお披露目する機会というのは貴重だ。用意はしたが使えなかったでは意味がない。私のISは単一能力の関係上、様々な換装パーツを扱う。その全てを魅せる為にボーデヴィッヒにはサポートを頼みたい。それが条件だ。

 

「私は軍人だ。上官からの指示には従うさ」

 

ならば契約成立だ。もしも組み合わせの結果初戦で当たるような事があったとしても私は文句を言わない。

そしてボーデヴィッヒも途中でイチカが敗退したとしても勝利し続ける限り全力で取り組むことを約束としたい。

 

「ドイツ軍人の誇りにかけて。貴方が何故承諾してくれたのかは分からないが、私は貴方に最高の結果をもたらす事を約束しよう」

 

私は、ボーデヴィッヒの提案に乗った理由を、姉さんに頭を下げられているようで心が痛んだから。とは言わない。

 

――その何かを愚直に求める姿勢にいつかの自分を見たからだ。

 

そんな自分も誰かに救われたから。などというのはどうだろうか。

…束博士には口が裂けても言えないな。

 

 

 

 

「師匠、このISは何故飛ばないのに羽があるのですか?」

 

「師匠!今の技をもう一度見せて貰うことは出来ますか?レールカノンと合わせればきっと奇襲性能が上がると思います」

 

「私の部隊は黒ウサギ隊と呼ばれていましたから、師匠の機体と合わせて何かウサギの名を入れたチーム名で登録しましょう」

 

――師匠。師匠、師匠!

 

ラウラ(・・・)とツーマンセル用の訓練を始めて数日。かなり無茶のあるISでの訓練に文句のひとつも無く、ラウラは付いてきた。ちなみにイチカにはタッグを組むに当たって打倒オリムラを宣言してきた。イチカは「またかよ…」と言っていたが気にしてはならない。

 

今までのどの生徒よりも素直に指導を受け、スタミナもあり、向上心や好奇心もあって新鮮となれば、可愛がってしまうのも仕方がないと思うのだ。最初のレールカノン事件など今では可愛い癇癪とすら思えてしまう辺り、案外私は現金な人間らしい。

 

「ラウラ、プランB」

「了解!」

 

しかしそれだけでなく、私とラウラの相性も良かったようで、タッグでの試合も順調に運んでいた。

 

「我前に敵は無し!」

 

その言葉と共に敵へと突撃をかますラウラを確認して私は玉兎の瞬発力を活かし大きく跳躍、敵の視線の誘導と広範囲を目視する事でレンジに捉える。下では突撃したラウラがAIC誘導の受け皿として既にISを目標地点周辺に移動させているが、飽くまで中継地としての役割を担っているためその動きが精彩を欠くことはない。

AIC操作の全てを私が行うことでラウラの遊撃手としての役割を一切阻害しない代わりに、一時的に二人を相手するだけの集中力、敵を牽制しつつも有効範囲内に誘導するだけの戦略技術、その両立をできるパートナーがいるからこそ採用できる戦術である。

開幕であたった御相手には申し訳ないが、皆には私をフリーにすることが如何にマズイか理解していただくとしよう!!

 

――いきなりクライマックスだ!

 

慣性制御の極致を見るがいい。

ポカンと口を開けているところ悪いが、既にラウラは射程範囲からは撤退しているぞ?ルーキーだからと手加減してもらえると思うなかれ、いい経験になればいいがトラウマになっても恨むなよ。

 

カッと視界が白い光に包まれる。まるで会場を埋め尽くさんばかりのそれが収まる頃にはブザーが鳴り響いていた。どこかで経験した光景に、セシリアとの戦いを思い出させるがインパクトというのは何より大切なのだ。

現にほら、世界中のお偉方の視線は空中にぽっかりと空いた黒い穴に釘付けである。

 

――我ら『ミナラビ』に

「敗けは無し」

 

音声認識を済ませるとAIC干渉エリアが霧散する。それによって重力に引かれて落ちていく砲塔を回収しておくが、やはりと言うべきか瞬間的にバ火力を出したせいで砲身が焼き付いている。元々開幕で使う予定しか無かったので別にいいのだが、もしかしたら決戦時には使えるようになっているかもしれない。

 

殆どシミュレーション通りの結果に手応えを感じていると、控え室に戻る途中、不意にデュノアと目があった。

が、早々に反らされてしまった。やはりと言うべきか大層恐がられているらしい。データの盗難に際して少々灸を据えたのが効きすぎてしまったようだ。

親の指示とはいえ、私の技術の無断での軍事転用など許容できる話ではない。データで彼女の身の上は理解しているが、しかし所詮は他人事。ましてや今は敵同士となれば、仏心を出すのは無粋であろう。

 

「ラウラ、次の試合は予定通りプランAで行く」

「了解です」

 

悪いが大人げなく勝ちに行かせていただこう。

 

 

 

と、先程までは順調だったのだがなぁ。VTシステムとは予想できなかった、というよりもラウラを猫可愛がりした自分の招いた結果と思えば痛むのは折れた腕ではなく頭の方である。

 

全てが順調だった。

ISのお披露目だって上手くいっていた。消耗少なくイチカ達との勝負に持ち込めた。デュノアを無理矢理こちらに向かわせることで一対一の状況を作れた。

 

パタンと何かが倒れたような感覚だった。

初めにラウラが崩れた。VTシステムに気を取られて腕をやられた。デュノアが錯乱を起こす程追い込んでしまったことを理解していなかった。

坂道を転がり落ちる感覚というのはこういう事を言うらしい。

 

また邪魔をする。

俺が夢へと一歩進んだと思った傍から何かが、誰かが邪魔をする。皆が俺を嫌っている。

いい加減うんざりだ。

 

「……!?…。…!」

 

音が聞こえるが意味を理解できない。デュノアもいつの間にか何処にもいない。黒い靄ばかりが俺の視界を埋め尽くす。

…やり直し。

イチカがラウラを救うと言っている。デュノアは私がカウンターで弾き飛ばしたのだ。今は残ったエネルギーをイチカに回している。黒い靄がラウラを絡め取ろうと躍起になっている。

 

そうだ。助けなければならない。

私が助けなければ、ラウラが死んでしまう。

 

一撃の威力はイチカが出す。ならばあの機体を拘束し、少しでも削るのが私の役目である。

いくら機体の性能や技術が勝っていても、オリムラチフユに勝つことは私の技量では不可能である。どう頑張っても玉兎では早さが足りぬ、硬さが足りぬ。ならばやることはひとつである。

後は任せた、イチカ。

 

持ち前の瞬発力を活かして撹乱しつつ、ジャブ程度に近接攻撃を混ぜながらライフルの弾をばら撒いていく。当たれば御の字、外れても対処する間は少しでもラウラへの負担が減ることになる。

右、左、凪ぎ払い。狙いの技ではない。

玉兎に致命傷を与えるに十分な威力のそれをかわしながら、ただひたすらに待つ。じれったいと思いはするが、この焦りはラウラの命を奪いかねない。

 

上段袈裟斬り。

それに合わせるように防御行動を取り、絶対防御を解除する。バターの様に切られる右腕に、瞬間的にその半ばで刃に噛みつかせる。

使えぬ腕なら囮に使い、速さに劣るなら同じ土俵に引きずり下ろす。

絶対防御と掴んだ左腕に本体のエネルギーのほぼ全てを注ぎ込む。武器も技量も全て奪った。なら後は私とこいつの我慢比べである。

 

――『P1500 モンスター』ァ!!!!我前に敵は無し!!

 

ゆっくりと姿を現した巨大な砲塔。否、戦車である。

世界でも動けぬ戦車と有名な、ドイツのポルシェ博士の亡霊が産み出そうとした最高級の超巨大戦車。そのサイズはローラー作戦に紛れていても違和感無く、想定される威力は列車砲のそれに劣らない。

今回は試合のために出力調整をしてあるが、それでもまともに受ければ並のISで守り通せる物ではない。それが更に出力を上げた今ならば尚更である。

 

いきなりクライマックスだ、とは言ったがまさか本当に復活させる羽目になるとは思いもしなかった。そんな事を思い、少し笑えてくる。

残りはイチカが格好良く決めてくれるだろう。今回ばかりはイチカに一番いいところをくれてやる。

 

――アツクテシヌゼ。なんてな。

 




ミナライ(弟子)×ラビ(師匠)=ミナラビ

次回、『束博士って実はまだちゃんと出ていない』
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