この世界の技術なら、きっと珍兵器も輝けるはずだ。そうだろう?束博士!! 作:菊池 徳野
この話は二話連続投稿の二つ目です。読み飛ばしは御気を付けて。
折れた右腕を首から吊り下げながら、少し増えてきた人混みを縫う様に食堂へ足を進める。
道すがら、道行く生徒達の異様なものを見るような目が骨折した腕の存在を余計に意識させ…ない。変な物を見る目を向けられるのには慣れている。どちらかというと心配そうにこちらを見ている視線の方が違和感があるくらいに。
ちらりと視線を手繰れば、開発談義によく来る二年の先輩方のものに、一年の簪。ノホホンの姉も気にしてくれているらしい。感謝。
心の中でお礼を言って、知り合いには軽く手を振っておく。所詮、片手が使えないだけ。日常生活にもIS開発にも大して支障はきたさない。
「カラ、あんたもう大丈夫なの?腕以外にも怪我したって聞いたけど」
心配はありがたいがその辺は平気である。自己治癒能力がかなり高いおかげで殆ど治ったし、腕の方も音を立てるレベルで接ながってきているので完治も時間の問題である。
流石に昼までは療養するように言われたので重役出勤だが。
「一夏達から大丈夫だって聞いてたけど、元気そうで安心したわ。お昼行くなら一緒に行きましょ」
イチカ達にも無事を伝えるつもりだったので昼食の誘いは願ってもない。それにお礼参りにも行かねばならんしな。支障は無いと言っても、とはいえ不便であることには変わりない。
どうしたリン。私が怒っている?そんなわけないだろう。私は至って冷静だとも。あぁ、冷静だ。
既にオリムラ先生には話をつけてきた。先生のお願いを聞いて腕を折る羽目になったのだから今回の事は手出し無用、と。
それでも手心を加えるよう言われたが、別に喧嘩をしに行くつもりはない。知性ある生き物には対話が必要だと言いに来ただけさ。
食堂に着くや否や大きく息を吸い込む。
「デュノアは居るかぁー!!」
お、肩が跳ねた。そこにいるなシャルロット・デュノア。限度を無理矢理越えた今の大声のせいで少し頭がふらつくが、出来る限り大袈裟に歩いて近づいていく。
やぁ、イチカ。悪いが少しばかりデュノアを借りるぞ。大切な話がある。
オリムラ先生には許可を取っている。別に危害は加えないとも。
いつまでもそうやって震えさせておくのも可哀想だろう?こういうのはさっさと終わらせるのが互いのためになる。イチカだってギスギスした雰囲気のままは嫌だろう?
だから面貸せデュノア。屋上までエスコートしよう。
さて、私が怒っている理由は分かるかね?
何?もっとハッキリと。そう!君がパニックになった挙げ句、緊急時なのに私に向かってパイルバンカーをぶちかました事だ!
あれは仕方の無い事故だった、というには腹の虫がおさまらないわけだが…。
「ごめんなさい…!」
デュノア。君に権力と呼べるものが無いのは知っている。その言葉に想いが籠っていないとは言わない。
しかし頭を下げられただけで許せるのかと言われると…。
いいよ。許そう。
む、何故目を丸くしている。君にとっては良いことだろうに。
まさか本当に私が屋上まで来て何かするとおもっていたのか?ならばそれは間違いだ。君と私のこれからの学園生活を円滑に進めるための演技だよ。元々この道中が君への異種返しのつもりだったのだ。むしろ、しつこくして申し訳ないくらいだ。
「でも、いいの?腕だって折れてるのに」
構わんよ。不便であることには変わりないがどうしようもない訳ではない。それに脅しすぎた私の方にも非があったと言えなくもないからな。
幸い私の治癒能力は高い。今週中には骨も元通りくっつく。だから話はおしまいだ。
「うん。でも、ごめんなさい」
君は律儀だなデュノア。前にも言ったが、その人の良さはいつか自分の首を絞めるぞ。改めろとは言わないが自分を守れるようにはなった方がいい。
イチカがいつでも君の騎士であるとは限らないのだからね。
「気づいてたの?」
当然。一度イチカが君の身柄の保護を求めてきたときには何となく。あの時は既に君への脅しが終わっていたからどうにもやり難かったよ。
まさか、人を貶めようとした輩に手を差し伸べる人間はいないと思え、と啖呵を切っておいて僅か三時間だぞ?流石に気まずかったさ。
確かに私としても君の主観での話を聞かずデータでしか判断していなかったからな。流石に浅慮が過ぎた。
「それでも反省するべきは僕の方だよ。それにあの時は僕もどうしようかと思った。ちゃんと一夏には伝えてたんだけどね」
あれも中々に気持ちのいい奴である。話せば伝わる、正しいことはやるべきだと青臭い考えを持っている。当然いい意味でだが。
今にして思えば、あのときに突き放さずにせめて君と言葉を交わしておくべきだった。腕一本はいい授業料だ、勉強になった。
今更だが、少しばかり時間を貰っていいか?すぐに戻っても変だろうし、時間をかけた方が周りも多少納得するだろうから。
「勿論。良かったら色々教えて欲しいな」
よろしい。では学園での事と私の趣味の事、どちらがいい?何?両方?しょうがないなぁ。
セシリアと戦った事。英国面について。イチカの指導をしていること。リンは良い友人であること。破壊力と巨大化の魅力について。ラウラに懐かれたこと。珍兵器とは。皆が珍兵器を作れば世界平和が達成されるのでは。回って爆発すれば全てパンジャン。フランスの効率化重視は度が過ぎている。等々。
時間の都合で掻い摘んでしかはなせなかったが、それでも終始デュノアは笑って私の話を聞いていた。時に苦笑いすることもあったが概ね楽しんでもらえた様で何よりである。やはり女性は笑っていた方が良いものであるな。
デュノア。
「どうしたの?」
友達になろう。
私は君のおかげで学ぶことができた。友というのは互いを高め合える存在だと私は思う。それに友達は多い方がいい。良ければ次の機会にはシャルロットの話を聞かせてほしい。
…承諾は嬉しいがなぜ笑う。
む?キャラと呼んでくれ。私はこの名付け親のおらぬ自分の名前を存外気に入っているのだ。
私だけのオリジナルだからな。
実家から帰ったのでまたボチボチ投稿します。
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