正義サイドの名前をほとんど忘れたなんて言えない。
学校というのはとても面倒なものだ。
勉強というのは面倒であるし、友達付き合いも僕からしたらとても面倒くさいものになる。
まぁ友達付き合いと言っても、今の僕から滲み出る気持ち悪い雰囲気のせいで友達なんて1人もいないのだが。
さて、なのはたちが通う私立聖祥大附属小学校にはかなりの数の転生者が入学している。
神は666人の転生者がこの世界に転生したと言っていた。
たが入学式に見た限り、この学校にその全員が入学しているとは思えない。
見た感じ半分にも満たない程度だろうか。
さすがの神も666人もの人間をこの 街に押し込むのは無理だったのだろう。
そういう意味だと、この街で生を受けた転生者はかなりラッキーな部類に入ると思う。
原作に介入したい奴は他の地域で生まれた奴に比べてスタートダッシュが出来るし、何より小さい頃からなのは達と仲良くなれるかもしれない。
ただ入学してからもう1ヶ月。
既に転生者たちの中では力関係が既に決まりつつあった。
全5クラスある内、なのはやアリサ、すずかの原作組がいるのは1組。
ちなみに僕は5組であり、その1組にいる4人の転生者が今まで見てきた転生者の中でも別格に強い能力を持っていた。
僕は奪い盗った能力の1つを発動させる。
名前がついていなかったその能力に分かりやすいように名前を付けるとしたら、僕は観察眼と命名しよう。
その名の通りただ観察するだけのこの能力。
僕はその能力を発動させたまま、休み時間で賑わうクラスを抜けるとなのは達がいる1組へと向かう。
すこし怪しいが、1組の教室の扉からそろりと中の様子を伺う。
声は聞こえずらいが、今はとりあえず見るだけで済むのでこれで十分だろう。
するとそこには、異彩を放つ転生者の中でも特に目立つ4人の転生者の姿があった。
まず1人目はまだ幼いなのはの隣に座り、にこやかに会話をする黒髪を目にかかるくらいに伸ばし、鋭い目をした男の子が神崎零。
特にアニメのキャラの見た目をしている訳ではないが、確実に他のモブ転生者とは違う圧迫感のようなものを感じる。
そして何よりも、観察眼を通して見る彼のプロフィールが問題だった。
観察眼、それは見た対象の簡単なプロフィールを視覚化して見ることが出来る能力。
ただのモブ転生者にこの能力を発動させた場合、名前や能力まで丸裸にするのだが、何故か神崎零な対しては名前と「No.」しか分からない。
神崎 零 No.001
見えるのはこれだけだ。
名前にあるNo.は恐らく僕たちが神に転生させられた順番だろう。
鏡に写った自分を観察眼で見たとき、僕の名前の横にはNo.666と出たから間違いないと思うし。
そんな神崎零となのはが楽しそうに話をしていると、全く空気を読まず1人の男の子が会話に割って入って行った。
銀髪に赤と金のオッドアイ、イケメンと言うには整い過ぎた顔立ちの男の子はそのままなのはに抱きつこうとする。
スキンシップと言うには行きすぎた行為だったが、抱きつく寸前に銀髪の首根っこを後ろから引っ張り阻止するまた別の男の子がいた。
群青色の髪を短く切り揃えた男の子はやはりカッコいいが、どちらかと言うと優しい雰囲気を感じさせる顔立ちだ。
能力を使用したまま、2人も観察眼で見る。
するとやはり神崎零と同じく名前とNo.だけのプロフィールが見えるだけだった。
神条 トオル No.111
神廼 正樹 No.222
銀髪オッドアイの男の子が神条トオル。
群青色の髪をした男の子が、神廼正樹。
神条トオルは神廼正樹に何か文句を言っているようだが、見た目上はふざけあっているだけで友好的な関係のように見える。
そして最後に、そんなやり取りをしている男子の様子を呆れながらアリサとすずか、そして燃えるように赤い髪をした女の子が近づいていく。
神火 優菜 No.333
神火優菜の見た目は完全に原作「灼眼のシャナ」のヒロインである、シャナをそのまま幼くしたような容姿をしていた。
7人は楽しそうに話をしており、その姿を遠巻きにモブ転生者が羨ましそうに眺めるというのが1組の日常のようだ。
僕はエリートが嫌いだ。
この球磨川禊というキャラクター的にも、そして俺の前世の因縁的にも……だ。
それに癪だが神のいう通りにするなら、彼らをどうにかしないと面白くも何ともないだろう。
それに4人の転生者のナンバー……。
もし僕の持っている他人の能力を奪う能力が神の気まぐれではなく、No.666の特典として与えられたのだとしたら。
同じくゾロ目の彼らや、神崎零のNo.001にも規格外の能力が与えられていると考えるべきか。
ふふ、楽しくなってきた。
とりあえず今はまだ戦争をする時期ではない。
この街以外にいる転生者から能力を奪い盗り、そして力を蓄える。
仲間も必要になるかもしれない。
なぁに、時間はたっぷりある。
動くのは3年後、原作が始まるその日から。
ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、僕はその日を夢に見ながら教室を後にした。
――悪役サイドと正義サイドの戦争開始まであと3年