日本兵 in the ガルパンworld!! 作:渡邊ユンカース
忠告として今回結構ご都合ですみません。
拝啓、天国の軍人諸君
最近手紙を出さなかったことについてのお咎めは無しとしよう、謎の道化師と雨天の際に遭遇して長期戦を繰り広げたのだ。嘘みたいなことだが事実、信じろ。
俺は現在、学園艦と呼ばれる艦船に乗り込んでいる。
以前にも説明したが艦船全体が大きく、街が構成されており、娯楽などは豊富で街全体が栄えている。
しかし此処は仮にも学園の所有物、風俗など生徒に悪影響を及ぼす施設は存在しない。規則で厳しく取り締められているからだ。ちなみに酒などの接待をする施設はあるが、それは規則にやや反するモノだ。……まあ人間だから仕方がないことなのだろう。
この学園艦はイタリア兵の産まれ故郷であるイタリアそのものであり、街並みは観光本とそっくりそのままに造られていた。
そして目的は、美味いモノを食いにやってきたのだ。
ではお前らの代わりに存分に楽しむとしよう、さらばだ。
「ほう、とても明るい街だな」
陸王を走らせながら街を見渡すと洋風の建物が並び、イタリアの国旗が海風にはためいている。通り過ぎる生徒は白地のシャツにどんぐりの頭のような帽子を被っている。
服装や言動を見るからにまほの学園とは違い、明るく自由な学校であると窺える。
そして面白いことに、此処では煙草の他に葉巻もコンビニで販売しているのだ。
それと同時にワインが酒類の場所の大半を占め、ビールや日本酒が心狭いをしている風にも思えた。流石はイタリア風の学校である。
だが、流石にこんな真昼間から酒を飲むわけにもいかない。陸王を運転しているため飲酒運転は法律で禁止されている。元より俺は故意以外で人を殺したくはない、最もそれがまほと同世代の子供なら尚更である。
「むっ、鐘の音か」
街を散策していると不意に鐘が艦全体に響き渡り、鐘の音に驚いた海鳥が一斉に飛び立つ、何の鐘かと辺りを見渡すと、洋風の時計が設置されており、自国を確認すると丁度十二時を指し示していた。そろそろ昼食の頃合いで鐘はそれを伝えたのだろう。
外食はミカと一緒に飯屋に行ったきりであり、殆どがコンビニで賄っていた。たまには外食をするのもいいだろう、人間息抜きが必要であるからな。
陸王を指定の駐車場所に停めて、街を歩きだす。昼時とあってか女学生が喜々として店に走りこんだりベンチで昼食を取っている姿が見受けられる。さて、飯は何を食うべきだろうか、いかんせん俺はこういう飯については疎いのだがな。こういうことになるのならイタリア兵に事前に料理について聞けばよかった。
ふらりふらりと放浪しているとトマトの香ばしい匂いが鼻をくすぐり、脳に電流が走り抜ける。
……あぁ、猛烈に美味そうな匂いがするな、嗅いだだけで涎が垂れてしまうほどだ。…よし決めた、ここで飯を食うことにしよう。きっと当たりの店に違いない、だって俺の感覚がそう言っているのだから。
俺は匂いに誘われて、店へと赴いた。
「ほう、此処が匂いの出所だな」
行きついた先は、なぽりたんと呼ばれる料理を販売している店であった。厨房ではみほと同じ年齢の黒髪の女子、まほと同じ年齢で髪型が掘削機の先端のような髪型の女子がせっせと接客や料理を受け持っている。しかし、その子供二人で受け持っており、心なしか顔に疲労の色が見えていた。
それでも彼女らは次から次へと来る客に対応をし続ける。
列に並んで十分、ようやく俺の注文となった。
「はいご注文は何に致しましょう」
「……そうだな、この店のおすすめはないのか?」
「勿論ありますよ。この特製鉄板ナポリタンはどうでしょうか」
メニュー本をぺらりと開き、カウンター越しから数ある料理から一つの画像を提示してこちらに見せてきた。その商品は写真を見るだけでわかるほどに美味そうなモノである。店員が勧めてきたモノに外れはない、これを注文するとしよう。
「ほう、なかなか美味そうだ。ではこれを頼む」
「わかりました! ペパロニ、ナポリタン一つ注文!」
「はいよー!」
鋭利な髪型の少女は厨房で調理している黒髪の女子に頼んだ料理を伝えると、厨房内から包丁で食材を切る音が聴こえ始めた。それにしても俺の後ろには誰もいない、少しばかり雑談しても許されるだろう。
「ここは禁煙か?」
「そうですね、此処はうちの生徒も来ますので」
「うちの生徒か、もしかしてアンツィオの生徒なのか」
「まあそうですね」
「にしても何故働く? 勉学に励まないでいいのか?」
「実はこれ部活動の部費稼ぎでして」
「部費稼ぎだと?」
聞き慣れぬ言葉に疑問を持つ俺、彼女はその内訳を話し始める。
「うちの学校は別に貧乏って訳じゃないんですがね、ちょいと部費が少ないのでこうやって幾つかの部は店を切り盛りして部費稼ぎという訳ですよ」
「大変な世の中だな」
「まあそうなんですよ、しかも私は戦車道の生徒でして多額のお金が必要となるわけで……」
自虐風に笑う彼女、しかしあることに気づいた俺はそれに食いついた。
「戦車道をしているのか」
「はい、けど一回一回練習するにあたってお金の消費が激しくて……」
「実は俺の親戚、というか知り合いがやっていてな、そういう事情もあるとはな」
「へぇー、ご知り合いも戦車道をしているのですか」
「そうだ。そいつの妹と一緒に剣道を指導した経験があってな、一度戦車の試合を見せて貰ったことがある」
「いつか私らと戦うことがあるかもしれないですね」
「そうだな」
彼女は知らなかった。その姉妹というのが西住姉妹だったということを。
そんなことはいざ知れず、注文した料理が出来たらしく、湯気をモクモクとたかすなぽりたんがカウンターに運ばれ、料理の料金をカウンターに置く。
「うむ、予想通り美味そうじゃないか」
「そりゃあーそうっすよ、何せアンツィオ伝統の鉄板ナポリタンなんですから!」
料理を俺に運び終えると、身長が足りないのか台を使って黒髪の少女がひょっこりと飛び出した。
「なら尚更美味いな、ところでこの小さいほうは何歳だ」
「確か十二歳でまだ小学生っす!」
「自分の歳を忘れかけるな。で、お嬢さんは」
「私は中一ですが」
「まんま俺が教えた姉妹と年齢が同じだな。ところでまだ幼い二人で店を運営しているのか、部ならば何人もいるだろうに」
「あー! 子供扱いしないでほしいっす! そしてあたしはボランティアっすよ!」
本来部活動というのものは部員が何人も存在しているはずだがこんな少人数で店を切り盛りしているのかが謎だからだ。
それを聞いた鋭利な髪型の彼女は暗い顔をしながらうつむきながら口を開いた。
「実は私ら資金難のためか本来禁止されている接待業に手を出した生徒が何人もいまして、規則に則り退学処分を受けた生徒の過半数が戦車道の生徒でして……」
「なるほど要するに人手不足というわけだ」
「はい、できれば来年までには部員が揃うと思うのですが……」
「……何人ほどいる」
「私含めて十人です」
「ちなみにその小さいのは部員に入るのか?」
「いえ、ただの助けとして来てくれるだけですので」
「けどあたしはドゥーチェの助けとなれば何処までも行きます!」
「戦車は何輌だ」
「先月の練習で完全に壊れたのを含めないと僅か五輌です」
「……なるほど、かなり危機的な状況だな」
「…はい、けど練習試合は出来なくともせめて練習はしたいのでこうやって部費を稼いでいる訳ですね」
彼女は無理矢理に笑顔を作り笑いかける。
その笑顔には哀愁漂うもので見るも堪えない、その姿に俺は握りこぶしを作りながら強く噛みしめた。そしてその笑顔を見た瞬間に唐突に怒りがこみ上げてきた。決して彼女が悪いわけではない、そして退学を受けた生徒も悪いわけではないが、苛立ちが心の底から湧いてきたのだ。
……汚い笑顔だ、酷く虫唾が走る。
「そしていつか、いつかまた戦車道を行えるように私らは頑張って稼が」
「もういい」
「えっ?」
彼女が言い終わる前に俺がその言葉を切り、諦めを促すようなことを吐き捨てる。必死に耐えようと我慢していた感情が溢れでてしまったのだ。それに呆気に取られた彼女は素っ頓狂な声を漏らす。
俺は最大限の苛立ちを抑制しながら言葉を紡ぎ始める。
「もう無理に資金を稼ごうとするのを辞めろ」
「な、何で!?」
「あまりにもお前らが見るに堪えない。それにあれだ、背負い込んだモノがデカすぎる」
「けどそれじゃあ!」
「いくら何でも大量の弾を消費し、無数の部品を取り換える競技だ。たかが小さな個人経営に等しい料理店が一生懸命稼いだとしても、すぐに浪費するに決まっているだろう」
「……ふざけるな」
「何?」
「ふざけるなと言っているんだ!」
彼女の怒声は辺りの人の目を集める。チラリとペパロニと呼ばれる少女を見ると彼女の声に驚いて思わず涙を浮かべてしまっている。
怒りを覚えた彼女はカウンター越しから拳を振るうと拳は見事胸を捉えた。しかし彼女の拳の威力は低いものでそんなには痛くはなかった。
「ど、ドゥーチェ…」
「お前に、お前に何がわかると言うのだ! 戦車道のために尽くして退学した先輩、それに同期がどんな想いを残して去ったのかを理解できるのか!!」
「理解だと?そんなの嫌というほどわかりきっている」
「なら何故そんなことをぼやいた!」
「決まっているだろう」
「
「はっ? 何を言い出す」
「少し待て、今から電話を掛ける」
長くカウンターに居ては迷惑だろうと思った俺はカウンターから立ち去ることにした。注文した料理を片手で運びつつも、もう一つの手であるところに電話を繋げる。
丁度よく俺が空いていた席に料理を運び終えると電話が繋がった。
『久しぶりですね、伍長』
「久しぶりですしほ殿」
そう、俺が繋げた先は西住流の家元である西住しほ殿である。久しぶりの連絡で微少ながらも声色が上がっていたようにも感じた。
「開口一番に何ですが頼み事があります」
『……話してください』
「はい、しほ殿は確か戦車道委員会で委員として努めていましたよね」
『そうですがそれが?』
「その、とある学園の援助についてお願い申し上げます」
俺の思惑を彼女に伝える。彼女は少し間を置いてから口を開き出す。しかしその際、通話越しからでもわかるように圧が掛けられていた。
『……その学校は?』
「アンツィオ学園です」
『イタリアを模範とした学園ですね、確かに戦車道はありましたが何故です?』
「事情はそちらで詳しく調べてもらえばわかります。ですが、かなり深刻な問題です」
『……わかりました。一度調べてから委員会で話し合ってみることにします』
「俺の我が儘に付き合ってくださり感謝しきれません」
よし、取りあえず一手は打った。これでどうにかなればいいのだが。……いやどうにかなるはずだ。西住流は戦車道の名家、日本での認知度は少なからず低くはない。おそらくは委員会に置いて重石的存在、権力は絶大だ。
『しかし何故アンツィオ学園の話題が』
「今いるのがアンツィオ学園の学園艦だからですよ、そこで困っている戦車道の生徒を助けるために」
『……そういや、いつになったら貴方はこちらに顔を出してくれるのですか?』
「ははっ、いつか顔を出しますよ」
『わかりました。みほと共に楽しみに待っています』
「了解しました。では」
会話が終わり電話の終了ボタンを押す。そしめ彼女らの店へゆっくり歩み寄る。その間、俺に彼女の突き刺さるような視線に耐えつつも歩みを止めずに向かう。
「喜べ、一か月もすれば楽になれるぞ」
「……どういうことだ」
警戒しながら彼女は俺に訊く。確かにそう思われるのを仕方がないことだ。
「言ったろう、俺はお前らを救えるとな」
「……そんなこと信用できるか」
「ならこれを使うといい」
懐から通帳を取り出し、カウンターに堂々と見せつけるように置く。ペパロニが恐る恐る通帳を開くと大きい目をさらに見開いてドゥチーチェと呼ばれた彼女に見せつける。
「に、二百万もあるっすよ!?」
「……その金をどうする気だ。まさか売春する気か!」
「はっ、今のお前らに興味はない。ただ単純にお前らにくれてやるだけだ」
「はあっ!?」
「それを担保にすればいい、約束は守る男でな」
「ほ、本気で言っているのか!?」
「そうだ」
「ど、ドゥーチェ! これさえあれば三か月は楽勝ですよ!」
「だ、だがな……」
「ついでの担保だ。此処で無給で働かせろ」
「また唐突に何を!?」
「さっき言っただろ」
「お前らを救いに来たと」
たまたまやってきた街で働くのは慣れたことだ。
俺は人を護るために全力を振るう、それが
本作で登場しないであろう某ピエロの設定が地味に主人公の伏線となっております。
そして主人公の発言も伏線の一つです。
そして最後雑ぅ!!