日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

12 / 72
一番文字数多い気がする(小並)
それと不快に思われる背景や言葉があるので気を付けてください。


ワインと月

――――殺せ

 

辺り一面、闇で包まれ、僅かながらに月がその場を照らす。草の陰に隠れ、道を凝視できる位置に俺は居た。頭の中に殺意の混じった謎の声が聞こえ、それは次第に大きくなるにつれて脳内に響き渡っていく。

 

……あぁ、またか。

 

呆れながらも辺りを見渡すと、丁度よく目の前には二人の米兵が聴き慣れない英語で話しながら夜道を歩いていた。当然ライフルを所持しており、別段警戒をしながらではなく、ただ呑気に道を歩いていた。恐らくは歩哨であろう。

俺は腰に取り付けた軍刀を音を立てないよう注意しながら抜刀をし、いつでも飛び出せるように構える。刀身は遠目だと新品同然のようであるが、近くで視認するとしっかりと使い込まれていた。

 

殺せ、目の前の仇を殺せ―――

……わかっている。殺さなければならない

 

 

二人が俺が身を伏した場所を通り過ようとした。そしてついに俺はその場から勢いよく飛び出した。米兵たちは突如現れた俺に驚嘆の声をあげるも己のライフルを構えようとする。

 

だがそれは俺には意味をなさないものだ。

 

「What is it!?」

「天誅!!」

 

振り下ろした軍刀は首から胴部までを深く斬りつけた。重要な血管までも斬りつけられ、緑色の軍服を赤く赤く染め、首からはおびただしい程の血飛沫を上げていった。斬りつけられた相手は口から喀血し膝をついて絶命した。

 

「You fucker!!」

「死ねッ!!」

「Why!?」

 

ライフルが一発放たれるも斬りつけた米兵の死体を盾に防ぎ、そして死体を撃った米兵に押し付け、相手に死体を押し付けたことを体感で確認するとすぐさま軍刀で死体ごと相手を貫いた。手にはまだ温かい血液が濡らす。

 

「D、Damn it!!」

「ざまぁみろ、アメ公が」

 

貫かれた米兵は地面に伏すも匍匐前進で俺から逃れようとして、道に一本の血痕を書き綴っていく。だが俺はそこまで甘くもない、逃がそうという考えなど毛頭にも存在しない。

 

――――逃がすな殺してしまえ、仲間の仇だ。

わかってる。殺してしまえば仲間や巻きこまれた民間人が報われるのなら。

 

「Mon……」

「……早く死ねよ」

 

脳内に響く声に支配されつつも、苦痛で喘ぎ続ける米兵の横について、軍刀で彼の心臓を狙い突き刺した。直後、手を伸ばし痙攣しているのを視認した。だが慈悲という言葉は当の昔に消えており、まだ息のあると勘違いした俺は無残にも滅多刺しにした。血で地面が湿っていった。

 

「What happened!?」

「ちっ」

 

銃声を聴きつけた他の兵士が集まってきた。五人ほどではあるが今の装備では勝てる勝算が少ない、最低でも森林内で戦わなければ五分五分にはやり合えないだろう。俺はライフルを鹵獲、そのまま飛び出していった林の中へと身を翻して逃走を図る。

 

後ろからは俺を追って一人の米兵が追跡しており、拳銃を構えていた。恐らく林の中に入った際に出た音でバレたのだろう。拳銃を何発も放ちながら追いかけてくるので冷や汗を掻きながらも、追跡を巻き、さらには攻勢に転じようと考えていた。

 

しかし、木の根元に足を引っかけて転倒する。仰向けになった俺、その上から追跡者の米兵が拳銃を頭に突き付けながら跨る。

必死に抵抗をするが相手の方が体格は優れており、身体を反らそうとして動かしても寸毫も動かない。奴は復讐と憤怒に染まった目でこちらを睨み、拳銃の引き金を引こうとした。

 

―――殺してしまえ

そんなの当然だ。そしてそのうるさい口を閉じていろ。

 

「ふざけるんじゃねえぞ!!」

「What!?」

「この野郎この野郎!!」

 

太股に取りつけた銃剣で相手の横腹を何度も何度も刺し続ける。口からは鮮血が零れ、拳銃を落とし、横へと倒れこんだ。

 

「死ね!死ね!!」

「……」

 

相手は数回で絶命しているのにも関わらず、何度も何度もしつこいほどに刺していき、身体の全ての部位に銃剣を突き刺した。殺される一歩手前だったためこのような非人道的な行動に移れたのだろう。俺は息を荒々しくあげながらその場を急いで離れる。走り走り走り出し、脱兎のように逃げていく姿はあまりにも滑稽なモノであろう。

だが今はそれが最善の策、生きていればまた米兵を殺せるのだから。

 

隠れ家である洞穴にたどり着くと、ある紙に完成すれば正の文字になるように、三角書き足していく。紙に書かれた正の字は五個、それをまじまじと眺めた俺は狂気ともいえる優悦感を胸に抱いて寝床に入った。

廃墟から拝借したボロボロで粗末な煎餅布団であったが今の俺には十分豪華な品であった。眼を閉じると毎度殺傷した相手の顔が浮かぶ、それに一瞬罪悪感を抱くも無理やり忘れたように振りまい、浅い眠りについた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「―――起きろ」

 

あぁ、先程とは違う声、邪悪さや怒気を感じられないほど澄んだ綺麗な声だ。身体が揺さぶられるも地震ではない、当然、艦砲射撃や爆撃でもない平和なものだ。

 

「起きろと言っているんだ! 伍長!」

「……んぁ?」

 

寝ぼけ眼で声の主に顔を向ける。その先には採掘機のような髪型をした女子、アンチョビが俺を揺すっていた。どうやら俺は机に伏して寝ていていたようだ。椅子から立ち上がり、首や腰を回して骨を鳴らす。この骨を鳴らす音に少々彼女が驚いているようにも思えた。

 

「すまんなアンチョビ、ついつい日当たりがいいもので寝てしまった」

「まあ昼寝もいいものだが、そろそろ店の開店時間だ。さっさと準備をしろー!」

「わかっている」

 

先月の一件で俺が無償で働くこととなり、最初のうちは警戒心を丸出しで敬語交じりに敵意を見受けられたが一週間経過すると徐々に敵意が薄れ、今となっては敬語無しで話す仲になった。

彼女が所属している戦車道の屋台へと足を進めている最中、つい腰につけらてれた軍刀を確認しようと手で叩く。当然、そこには何も存在していないため、太股を叩いて終わった。彼女はその行動に懸念を抱いたのか、首を傾けながら尋ねてきた。

 

「なあ、どうしたんだいきなり太股を叩いて?」

「そうだな、ここが現実だと知るための確認だ」

「そうか、きっと現実が夢であると錯覚するほどに面白い夢だったのだろう」

「……俺が熱中することができた夢だったな」

 

乾いた笑みを彼女に向け、何事も悟らせないように振る舞う。一見、ごく普通のように見えたものも、眼は死に絶え、輝きは当然存在するはずがなかった。

 

 

 

「鉄板ナポリタン一つ!」

「はいよー!」

 

昼時になるとアンツィオの女子生徒で満員になる。客の注文を受け付けるのはアンチョビ、料理を調理するのはペパロニ、そして俺は料理を運ぶ係であった。

俺は両手に料理の載ったお盆を持ち、注文した客に料理を運ぶ。衣装は毎度恒例の西住家からスーツを運送してもらっている。ちなみにスーツの種類はケイの通ったサンダース校で開かれた文化祭で着たモノで運ぶたびに黄色の叫び声が響き渡り心地が良い。

 

……まあ俺って二枚目顔だから当然だな、大人らしく煙草も酒もイケる口だしな。

 

「おいアンチョビ、注文が入りっぱなしだな」

「本当にそうだ。伍長が来てからずっとこれだ」

「まっ、俺のお蔭だな。イケメンと呼ばれる顔立ちだからな」

「ぐぬぬ、自惚れているけど事実は事実だから何も言えない」

「そうだろうそうだろう、はっはっは!!」

「伍長、料理が出来たっす! さっさと運んでいくっす!!」

「了解した」

 

ペパロニから熱々のスパゲッティと名物のナポリタンを受け渡され、それを運び、忙しなく働いていく。無論それは彼女らも同等で誰一人とて楽をしている者は存在しなかった。汗を掻きながら各々真剣に己に課された仕事をやり遂げていった。

 

ようやく店が静かになったのは彼女らの授業が始まる五分前であった。

 

「閉店の準備は全て俺がやる。お前らはさっさと勉学に励んでこい」

「わかったっす!」

「頼んだぞ伍長!」

「任された」

 

二人は急いで各自の教室に駆けていく。その後ろ姿を見て俺は店の片づけに着手し、料理に使った台所や器具を洗浄し綺麗に直していった。使われなくなった野菜を透明で薄いラップと呼ばれる道具で包装をして冷蔵庫に入れようと扉を開ける。

その時、冷蔵庫から冷気と共に表れたぶどうジュースを視認すると俺はアンツィオ名物のワインを思い出す。

そういや俺、特産品のワイン飲んでなかったな。普段ビールや日本酒ばかり飲んでいたからたまにはワインを飲むか、月を肴として飲むのもいいかもしれない。

こうして俺は今夜の計画を立てた。

 

 

 

「あぁ、やはり美味いな。日本酒やビールとは違う美味さだ」

 

夜九時ほど、月は海上からでも綺麗に目視することができ、丁度満月の夜であった。満月であるため月光が辺りが少し明るく照らされ、街灯の光がやや薄くなっていた。

昼に接客用で背もたれ椅子に腰を掛け、丸机にワインの瓶とグラス、それに灰皿が置かれている。どうせ拭き直せばいいと脚を堂々と載せる。灰皿には煙草の吸殻が八本ほど置かれ、瓶の中身が半分以下に減っていた。これは俺がその場に長時間居ることを指し示すことだ。

 

「……我は官軍我敵は 天地容れざる朝敵ぞ敵の大將たる者は 古今無雙の英雄で之に從ふ兵は 共に慓悍决死の士――――」

 

俺は所詮ほろ酔い気分となって唐突に軍歌を口走る。その歌を傾聴する相手も誰もいない広場で独り虚しく敗戦国の亡霊が歌い出す。歌に合わせる同胞も居なければそれを聴く人も存在しない。歌えば歌うほど心が痛み、全てを歌い終えることができず、途中で切り止めた。

 

「ふっ、哀しいかな」

「……何がだ?」

 

自嘲風に独りごとを呟くと背後から聞き慣れた声が耳に届いた。煙草を片手に後ろを振り向くと、アンチョビが腰に手を当てながら訊いてくる。俺は一服すると彼女に向かって告げる。

 

「もう夜中だぞ。明日も学校であろう、帰路に着け」

 

敢えて俺は彼女の質問を無視して、逆に彼女に質問を呼びかけた。

もう時計の針は一周を終えて新たな日の時間を刻み始めている。それなのに彼女が夜の市街をうろつくとは何かあったのだろうか? 取りあえず家までは俺が付き添ってやるか。

 

「いいや、伍長を探していた」

「おいおい、俺はずっと此処にいたのだが」

「七時ぐらいには居なかっただろう」

「……確かに居なかったな」

 

実は七時から九時にかけ、俺は店でワインを選別するのに時間がかかり、結局購入したのが八時半ほどで、残りの三十分は玩具屋で戦車や拳銃の組み立て玩具を眺めていた。

昔のとはかなり違い、精密に部品が作られるようにできており、戦車道と呼ばれる競技があるこの世の中でこそ、軍艦よりも戦車の方が売り上げは良好だそうだ。悔しいな海軍さんよ。

 

「まあ事情はどうこうあったとして何故会いに来た?」

「……戦車道連盟による予算援助が認可されたからだ」

「本当か、それはめでたいな」

 

どうやらしほ殿に頼み込んだ案件が認可されたようだ、流石は西住流である。やはり権力は強いものであったな。しかしまあ、それをわざわざ伝えに俺に夜分遅くに会いに来たとは、律儀な奴だ。

 

「本当に伍長には頭が当たらないな、まったく」

「ふっ、俺の勝手な善意でやったものだ。気にするな」

「そんなことを言うな!」

 

耳元で大声で言われ、耳が一瞬麻痺した。しまったと言わんばかりの表情を浮かべながらも彼女は言葉を紡いでいった。

 

「最初私は伍長が持ち掛けたモノに対しふざけるなと怒りを飛ばしてしまった。本当に申し訳ない」

「謝るな、俺だって言い方が悪かったからな」

「それに予算援助のきっかけ、実は伍長が連盟に促してくれたのだろう?」

「否定はしない、だが感謝するのは俺が伝えた相手にしろ。電話すれば委員の名前を教えてくれるはずだ」

「だがそれに至るまでの筋道は伍長、貴方が作ってくれた」

 

そう言うと彼女は自らのシャツのボタンを一つずつ丁寧に外していく。情けなくも俺は何をしでかすかと身構えていた。

 

「だからな伍長。私には現状こういうことしか貴方にお礼することしかできない」

 

 

―――あぁ、わかった。そういうことか。

 

 

わ、私の身体で払おう(・・・・・・・・・)ッ!」

 

静寂が俺らを包み込んだ。トマト以上に赤面した彼女は露出した下着を露わにしてこちらを向いている。まだ中学生だが、それ以上の身体を有する彼女にそそるものが存在している。

俺は立ち上がり、視線を合わせながらも彼女の肩に手を置くと彼女はビクリと反応する様子を表した。勿論することは一つで……

 

 

 

 

 

「この馬鹿者がッ!!」

「うぎゃ!?」

 

彼女に向けて頭突きをかました。頭を押さえてしゃがみ込んだ彼女に向けて俺は弾丸のように言葉を飛ばす。

 

「何故こうも最近の若者は身体の大切さを知らぬのだ! 何が自らの身体を投げ出してお礼がしたいだと? 冗談もほどほどにしろこの阿保が!!」

「き、気に入らないのか?」

「そういう問題じゃないんだ! いいか、俺は貧相な身体よりも豊満な身体が大好きだ。ついでに言うとだなお前の身体に興奮はするっちゃするけどお前はまだガキだ。有無を言わさずガキだろう!」

「け、けど……」

「けどもへちまもあるか馬鹿者が! 端的に言うとだな、お前の身体には関心が無いんだよ、てか俺も捕まる!! ……それにお前は再度アンツィオの戦車道を苦しめる気か?」

 

彼女の脳裏に思い浮かぶのは売春行為の校則だ。もしもこのことが明るみに出たら予算援助は打ち切り、それに戦車道が潰れる可能性だって示唆されるのだ。そうなってしまったらペパロニが戦車道を受けれなくなったり、それ以前に他の仲間に苦労を掛けるからだ。急いで彼女はシャツを着直した。

 

「す、すすすまない!!」

「……気にするな、幸いにも誰にも見られてはいない」

「よ、よかったぁ…」

「ついでに俺捕まらずに済んでよかった」

 

彼女の思わずの行動に汗を拭う、彼女は上目使いで何をすればいいのかと視線で訴えかけてきた。それに対し俺は淡々とすべきことを告げる。

 

「予算援助を無駄にはしないためにも此処の学校を強豪校に匹敵するほどに強くする。これが今のお前らでも可能な恩返しだ」

「この学校を強く…」

「そうだ。諦めるなよアンチョビ、お前には俺に持ちえない能力が存在するんだ。お前が皆を引っ張る隊長となって皆を、この学校を強くしてしまえ」

 

俺はガシガシと彼女の頭を荒々しく撫でる。撫で終わると彼女はぐしゃぐしゃとなった髪型を手で直しつつも大きく頷いた。

 

「わかった。それが今の私にできることなら頑張るよ」

「その意気だアンチョビ、俺はお前に期待を賭けることとした。せいぜい半端に終わらせるようにはするな、偉大なるドゥーチェ(総統)

 

期待は持ち合わせるものではない、賭けるものだ。月は俺らを眺めながら微笑みかけているようにも思えた。

この世界は俺には住みづらい世界かもしれない。何故なら優しさで溢れかえっているのだから。

 




森の中での戦闘は罠を張り巡らしてランボーのように神出鬼没のゲリラ戦を繰り広げたりします。
英語に関しては天下のGoogle先生なのでお許しを
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。