日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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社交ダンスってカッコいいですよね、踊れないけど。
感想乞食なので感想待ってます。


社交場の黒服

いつもなら此処は至って普通の国道、もしくは何処かしらの店か風俗店。

しかし、このような場所に居る、もしくは出向く際にこのビッシリと決まったスーツを着用するだろうか。

 

答えは否、断じて否である。

俺みたいな男が常日頃からスーツを着用するように見えるだろうか、平常時は何度も仕立てた軍服である。糸が解れた帽子を常に被ってはいるが今回居る場所では着脱している。此処が何処かまるで見当つかないであろう、それもそのはず、今日はとある依頼でこの場に居合わせたのだ。

 

 

だだっ広い室内に部屋の一辺には料理人が和食、洋食、中華を調理しているのが簡単に確認でき、俺のよりもお値打ちモノのスーツを決めた参加者がワインを片手に会場を転々と移動している者が殆ど。それに真紅のドレスにこれまた高級そうな首飾りや指輪を着けた淑女が何人もいる。

 

ちなみに俺の好みの女性がちらほらと居るので目移りが止まらない、何ともまあ過激な衣装だこと、後で夜のお誘いをしてみようかなと思い巡らす。

そうなれば親交を深めるかだな、どういう話題が受けがいいのか模索する必要がある。

 

「……聞いているのかしら伍長」

「あぁ、俺はあの女性を狙ってますね。何しろあのクビレに大きな胸、さらには骨盤もいい。あれは安産型に違いない、今夜どうか勧誘するのも悪くはない」

「……」

「…申し訳ないしほ殿、今後は控えるので足をヒールで踏まないでほしい」

 

ついつい本音が漏れ、それがしほ殿に聞こえてしまったらしい。しほ殿は俺の足をぐりぐりと他の参加者にバレないようにヒールで踏む、これが地味に痛い。革靴を履いてはいるが痛いものは痛いのだ。まるで錐で穴を開けられているかのようだ。

……まあ俺が悪いわけだが。

補足だが、彼女の服装は紺色のドレスで清楚で思わず胸が高鳴ってしまった。

 

 

「貴方は何故こういう下劣な発想に至るわけですか、元軍人なら弁えなさい」

「すみません」

 

ぐうの音が出ない程の正論である。

確かに俺の行いで西住流に泥を塗る行為は避けなければならない、善処しよう。

 

「で、どうして俺が不釣り合いの場所に?」

「メールのやり取りを忘れてしまったのですか」

「……思い出しました」

 

しほ殿から出る威圧感によって無理やりその記憶が強引に思い出された。

 

「確か一週間前にしほ殿から電文が来て、社交場の護衛を任されたのですよね」

「そうです」

「ですが何故護衛を? 今のご時世、銃弾が飛び交うやら暗殺の心配は少ないはず」

「護衛も人の価値を決める装飾品の一つです。仮に痩せていかにも軟弱そうな護衛だったら主人のイメージは悪くなります」

「なるほど、だから元軍人かつ実践経験がある俺を護衛に」

「はい、つまるところそうなりますね」

 

はぁ、社交場というものは護衛も人の価値を決める一つの装飾品と見られるわけか、面倒くさい世界である。それなら主人の方をに鍛えれば護衛要らずで価値も大きく変わるのではないだろうか? だけど一つだけ腑に落ちないのがある。

 

「だが何故俺を護衛に? 戦車道における大御所の一つと名高い西住流、その門下生から選出すればよかったのでは?」

「そうですね、簡単に言えば戦車道の男女比です」

「……男女比、そういや男ほぼいませんよね」

「だからです」

 

現在、戦車道における男女比は男が一割も満たずに全てが女という。本来、戦車道というのは乙女の嗜みで考案された武道であり、男子が乗ると戦争を想像させるからという理由で世間から冷たく見られていた。

ちなみに男子で歩兵道という科目も提案されたが同じ理由で却下された。残念である。

 

「にしても俺、礼儀作法とか無知ですよ。ワインの飲み方や食器の使い方とかかなり」

「別にそれは気にしなくても構いません」

「人の価値を決める装飾品なら気にしなくてはいけないのでは?」

「誰も貴方を凝視する方はそんなには居ないでしょうし」

「……あくまで装飾品扱いですか。宝石を着けた指輪も一瞬見て終わりですからね」

 

あまり気にせずのんびりとしほ殿にくっ付けばいいわけだ。美味しい料理や酒を堪能できる仕事なんてなかなかお目に掛かれない、まったく禁煙じゃなければかなり最高だけどな。

ニコチン中毒者である俺は早々に煙草を欲していた。外さえ出れば喫煙可能だが彼女の許可なしに動いてはならない、悶々とした気持ちで社交場の従者からワインを受け取り、口にする。

 

「美味い、流石高級ワインだ、安物とは違う」

「もしよければこちらの料理はどうでしょう」

「おぉ、これまた美味だ!」

 

今度はおぼんに載っている手のひらサイズの料理を進めてきた。俺はその一つを受け取り口に入れる。これも美味で大人げもなくはしゃいでいた。こんな経験ないのだから仕方がないのである。

 

「……これ仕事ですよ、羽目を外さないでくださいね」

「わ、わかってますよ」

「かなりの政治会の大御所や同じ戦車道の派閥、さらには大企業の社長もいるわけで舐められたらいけませんよ」

 

会場を見渡すと著名人やテレビでよく見かける議員に大臣の姿が確認できた。とても豪華な社交場には理由があったのか。であれば名目は何だろうか、日本を良くしていこうの会か?

 

「了解!」

「そんな煌めく瞳で言われても……」

「ちなみに舐められたらどうしましょう」

「そんなの牽制しあえばいいでしょう、そういうの慣れてはいないのかしら」

「口よりも手が出ますので……」

「暴力は私に許可を得るか万が一の時にですからね」

「流石に自制はできます」

 

 

かくして、俺としほ殿が参加する社交場が開幕した。

音楽は西洋風で気乗りはしなかったが、料理を楽しみつつ彼女の警護に当たっていた。

俺は不慣れな空間で彼女が動く度に、初めて親を認知した雛のようにあどけなく追従する。彼女はもっと慣れた感じで歩けと注意されるも今度は油を指していないからくりのようになった。これにはしほ殿も呆れ顔でため息を吐いた。

 

しほ殿が相手と会話をする中、俺は相手の護衛に当たった人物を観察してどう闘えば勝てるのかを考えていた。もしも相手がワインを目潰しに用いた際の対処法、ナイフを取り出して彼女を刺そうとした時の対処法、もしくは拳銃を取り出してきた時の対処法などである。

あまりに俺は相手を凝視を続けるとしほ殿から小突かれれしまった。

 

「伍長、あまり相手を睨まないでください」

「しかし相手がどう動き襲って来たらという想定を考えるために観察していただけです」

「だとしてもです」

「……そうですか」

「あとで自由時間を与えますのでそれまで堪えてください」

「了解」

 

暇なのかと察知した彼女は俺に自由時間を与えてくれた。二人の会話を聞いてどういう話題なのかを考えていたが、学の浅い俺には意味がわからなかった。内容はかーぼんという素材が何やら戦車道の運動着が何ちゃらというものである。

 

 

 

こうして一時間半が経過した。

やっと俺は自由時間を得られ、会場を散策していた。女性を口説くにも今は駄目、それにワインを大量に飲みほろ酔いになるのも禁止された。まあ当然のことだろう。

することとなったら一つで、誰も居ないベランダに出て、懐から煙草を一本とライターで火を灯す。

喫煙すると肺に紫煙が入り込み、暫く分のニコチンを摂取できた。こうも短時間で吸えなくなると厳しいのだと実感しつつ、ベランダに出る際に得たワインを口にした。

左手にはワイン、右手には煙草と最高(最悪)の組み合わせで自由時間を堪能していた。

 

二つとも中毒者を生むほどの快楽を得られるモノは絶対的な幸福を見出してくれる。ツラい状況下に置かれていてもこの二つはそれを忘れさせてくれる。いつだろうか、ここまで酒と煙草に浸ったのは。ふと夜風が吹き、半ば整えた前髪をふわりと揺らした。

 

「月が綺麗だ」

 

空を見上げると満月とまではいかないが満ち欠けた月がこちらを覗く、それにワインを掲げて照合させる。月光に照らされた朱の液体は妖艶な雰囲気を醸し出す。

煙草が二本目に突入したその時、今まで室内の明かりで輝いたガラス張りの扉が、人型の影を作りながら音を立てて開いた。

 

中からは金髪で純白のドレスを着飾った少女の姿が、彼女の金髪は月光に反射して絹のように煌めかしい。この慣れない幻想的な光景に咥えていた煙草を落としかけそうになる。

歳は今までに会った彼女らと同年代だろう。それにしてもご苦労なことだ、そろそろ早春を迎える時期で今の格好でも肌寒いのに半袖とはな。

 

「?」

「そこのお嬢さん」

 

何処かの令嬢かはわからないが助ける分には越したことはない、俺は羽織っていたジャケットを脱ぎ、彼女に投げる。一瞬何をされたかわからない少女は受け止めきれずに顔を隠すようにジャケットが覆いかぶさる。もごもごと慌てふためく姿が滑稽である。

やっとのことでジャケットを顔から外すと戸惑いを隠し切れずに言葉を連ね始めた。

 

「これは一体?」

「ジャケットだ、寒いから羽織っておけ。室内に戻る時だけそれを返してくれればいい、そのドレスとは合わないしな」

「そうではなく、何故このような行動を?」

「決まってるだろう、寒そうだからだ」

「……それは恩を売る行為でしたらすぐさまお返しいたします」

「待てよ、そんなに大人みたいな態度をするな。子供のうちは存分に甘えろ」

「ですが……」

「言っておくがこれは押し売り行為でもない。ただ寒そうだから、それだけだ」

 

二本目の煙草を吸いながら俺は口角を上げる。彼女はそれを善意だと認めたのかジャケットを羽織る、心なしか顔から寒さが和らいだようにも思えた。

まったく、服装やらで身なりを整えるのはいいが体調の管理を怠るとは一流とは言えない。俺の持論ではあるが、本当の紳士や淑女というものはこういう面をしっかりと把握していると思うが。

 

「かなり慣れているのですね」

「そうか、こちとら初めての社交場なのでな。社交界の右も左もわからない新米さ」

「ふふっ、奇遇ですね。私もです」

「じゃあ新米同士仲良くしようではないか」

「では淑女の見習いらしく私から名乗らせてもらいます」

 

すると彼女は両端のドレスの裾を摘み上げ、頭を垂れる。前にイギリス兵から教えてもらった欧米風の挨拶だ。

 

「私の名前は田尻 凛。グロリアーナ女学院の中等部の生徒でございます」

「ではこちらもそちら風で返させてもらおう」

 

俺はイギリス兵に嫌々教えられた礼儀作法を実践するとしよう、煙草を右指に挟み込むと

こちらもお辞儀をするように屈み、右腕をやや曲げる。イギリス兵からはお辞儀の角度にしつこく言及されたが功を奏した。俺の名称を口にする。

 

「私の名前は伍長、今思い出せる限りの正真正銘の名称でございます。今後これを名称としてください」

「何か事故でも?」

「それがわかりません、しかし気軽に伍長と呼んでください」

 

 

月夜に照らされたベランダに淑女見習いと風変わりな男が礼儀を重ねる。純粋で美しい姫と凶暴性を秘めた獣、対比もいいところである。

だが、どちらも社交界に不慣れという共通点を持ちえた同士でもあった。

 




伍長は書いていて楽しい、ちなみに天国ではイギリス兵の厳しい礼儀作法教室が不定期で開かれ、イタリア兵が常に参加して弱音を吐いています。


https://twitter.com/?lang=ja

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