日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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今回暴力的な面が濃く表れていますのでご注意を。


黒服の憂鬱

十分ほどだろうか、仲慎ましく俺らは会話を交える。

礼儀作法は大人顔負けのものではあったが、まだ少女の面持ちは隠し切れずに時折可愛らしい仕草を見せる。それに俺は笑みを零す。

彼女がはっとして若干頬を膨らませるが愛らしいものである。

 

「ほうほう、にしてもうちの西住流の長女と年齢が同じとはな」

「確か西住まほさんでしたっけ」

「そうだ。しかしよくわかるな、そこまで有名ではないはずだが」

「ふふっ、同じ戦車道を嗜む身ですので当然」

「貴殿もやっていたのか、戦車道」

「乙女が武道をしてはいけなくて?」

「別に何でも」

 

 

……見事にこれまでに会った女子は皆戦車道を嗜んでいたりとかなり戦車道は普及しているのだな。砲撃の中、自身の戦車を駆けて行動するとは、かなり肝っ玉が据わった人物ではないとできない。よくもまあこんな歳で勇ましく闘えるのかが不思議だと思う。別に愛国心も強制も無いはずなのに。

 

「で、戦車道はどうだい。何か得られるモノは在ったかね?」

「まだ戦車道に努めた時間は短いため何も得られてはいませんが、必ずや意味を見出してみせます」

「いい覚悟だ」

 

流石はいい所のご令嬢、上品な言葉がつらつらと出るなんてお恐れ入った。戦車道に向けての抱負もよし、きちんと未来を見据えているのは素晴らしいことだ。もっとも俺が言えた口ではないがな。

 

「にしても戦車道、というのは何をするのだ? 俺は西住流の元で剣道の講師をしてたからそういうのには疎いのでな、教えてはくれないか?」

 

実際のところ、俺は戦車道についてはよく知らない。ただ砲で撃ちあって勝敗を決めるのは知っているのだが……。てかそういうことなら沖縄戦で嫌というほど味わったからな、うん。

凛は暫くの間黙ってはいたが、すぐに言葉が発せられ、俺に説明をする。

 

「やはりチームの協力や各々の隊員に合った役職で試合を優勢な方へと傾けるといったものです。仮にも戦車道は大戦時の兵器を用いたとしても、それはどこの団体競技も一緒、団結なくして勝利は得れずですからね」

「その通り、仲間が居ないと大変だからな。俺も味わった」

 

仲間が居るのと居ないのとではかなり状況は変わるもので、戦場では行動範囲が広がったり孤独感を無くせるからだ。もっとも俺の小隊や師団はほぼ全滅してしまったが。

……まあ戦争中ならば仕方がないのだと見切りを付けなくてはな。

 

「それはどういうことでしょうか、伍長さん」

「そうだな、一応訊くが暴力的な答えになるが大丈夫か?」

「ある程度のことなら」

「では話そう、俺は元軍隊上がりだ。戦場で戦闘をした経験もある」

 

そう俺が淡々と口を開くと彼女はバツが悪いような顔を浮かべてしまう。俺の前職で察したのだろう、彼女からは後悔と自責の念が即わかるほどににじみ出ていた。

……歳相応の女子、それもご令嬢ときた。まあこれは残酷な内容だから致し方がない。

俺はこれ以上詳細を話すの打ち止めにしようと、区切りを付けるように口を閉ざした。

しかし、ここで驚くことが起きたのだった。

 

「もう少しお話を聞かせることはできませんでしょうか?」

 

それは俺が詳細を話すことを再開するように促したのである。

これには一瞬呆気に取られながら彼女の顔を覗くと、瞳には己の知らない現実からは目を背けてはならないといった明確な意思が映されていた。

これを中断したままにするのはこちらが無礼だと感じた俺はまた詳細を話しだす。

 

 

「激しい艦砲射撃の中、俺の分隊は何とか生き残ることができた。だけど物量で押してくる敵に最新鋭の火器が対応するも押し切られてしまい、俺らは沿岸から内地へと撤退してしまったのだ」

「そんなことが……」

「そして内地では必死の防衛戦が行われ何万の死者が出た。日に日に俺の分隊は銃弾や食料が消耗、これに比例して分隊員は一人、また一人と命を落とした。」

 

駄目だ。こういうことを話すとどうしても熱が入ってしまう。もう何処に向ければいいのかわからない怒りや何にも出来なかった自責の念がこみ上げてくる。

俺は煙草をベランダの欄干に擦りつけて少しでも怒りを発散しようとした。だがそれだけでは怒りは抑えきれず、増していくばかりで今のところ解消することはない。

 

「……最終的には貴方だけが生き残ってしまったと」

「そうなってしまった。ちょうど俺が防衛していたのは島でな、全てが占領されてしまった時には師団も壊滅、いや全滅した」

「ならば投降(・・)すればよかったのでは?」

 

 

 

その言葉を聞いた途端、俺は強く地団駄を踏んだ。ビクリと彼女が驚く様子が見て取れ、多少怯えている。その言葉は地雷その物で、無意識ながらも自身を激しく激高させてしまった。

 

「捕虜になったら辱めを受ける、誰しもが思っていた。捕虜になった途端に劣悪な収容所に入れられ、僅かな食料しか与えられずに理不尽な暴力や厳しい労働をさせられると教えこまれたのだ! 軍人以前の問題として、人間の威厳が失うのなら俺は潔く死を選ぶ!」

「そ、そんなことは」

「……すまないな、熱くなり過ぎた。だが、どうしても俺らはこのような理由で投降することが出来ないまま時だけが進んでいったのだ。そして自身でさらに投降が出来ないことを占領後に俺はした」

「それは一体……」

「便衣兵、つまりはゲリラ兵として」

「!?」

 

戦車道ではゲリラ戦術という方法があるため、その存在意義は知っている。だけど俺が話した本物の戦争では意味合いは大きく変わる。戦車道においてゲリラ戦は森林や市街地での奇襲で敵車輛を再起不能にさせること。

一方で歩兵の場合、国際条約によって民間人の殺害は条約違反になることを逆手に取り、軍人が民間人を装い奇襲を掛けるという卑怯極まりない戦術である。

 

「占領後、俺は何度も何度も仕掛け続けた。主に夜行うことで顔の識別を困難にして」

「……つかぬことをお訊きしますが、貴方は人を殺したことが?」

 

その質問を聞かれた途端、眉間にしわが寄る。どうするべきか、彼女も薄々は察していることだろう、俺が人を殺傷していたことなどは。だがそれを肯定したらどうなるのだろうか、西住流は人殺しを雇っているとして評価は下がるかもしれない。

 

そんなこと俺にはできない、できるはずがないのだ。

捨て犬同然であった俺を拾い、雇ってくださった西住しほ殿には恩義がある。それを仇で返すことは許されない。彼女は真相を知りたがっているがその問いには答えられない、ここは立ち去り有耶無耶にするのが一番だと踏んだ。

手に持った煙草をベランダ外に指で弾き捨て、凛の横を通り過ぎる。彼女は慌てた様子で羽織っていたスーツを脱いで俺に提示した。

 

「こ、このスーツは」

「……貴様にやる。別に捨てても構わない、好きにしろ」

「でも!!」

「要らぬと言っているだろう!」

 

ついつい溜まっていた鬱憤や憤怒を吐き曝してしまった。

静かな夜に響き渡る怒声は彼女を恐縮させるのには十分すぎるほどのモノで彼女はそれ以降口を閉ざしてしまう。

それでも俺の感情は苛まれるばかりで止むことを知らない、扉を開けた際に「すまない」と呟きベランダから後にした。独りで勝手に話し始めたくせに勝手に逆上するなど言語道断だ。どうせ謝るのなら最初から言わなければよかったた後悔する一方であった。

 

 

「しほ殿、ただいま戻りましたよ」

「あら、もう社交場が終わるまで休んでもよかったのですよ」

「それでは面目が立ちません故」

 

広い会場でしほ殿を捜索して何とか見つけ出すことができた。会場は広かったために時間が掛かったが見つけ出せてよかったと安堵した。

 

「それに俺が居ないときに痴漢や暴行を受けたら堪りませんよ」

「そうね、だけどスーツはどこにいったのかしら?」

「……あ、あはは。どうやら俺ワインと煙草で汚してしまいまして、申し訳ないです」

 

嘘だ。

嘘を吐き捨てながら偽りの笑みを浮かべて冗談を言う。彼女に怒鳴り散らした挙句にスーツを差し出したという情けない真実をひたむきに隠し通そうとした。

スーツを脱いでいるため上半身ワイシャツの姿だがそこまでの違和感はないだろう。

 

彼女は目を細めてジッとこちらの顔を近づけてくる。眼力に圧倒されやや後ろへと後退するも、それを妨げるかのようにヒールで足を踏みつけた。

一通り凝視し終えた彼女はため息を吐きながら俺に対して言う。

 

「貴方、顔が酷く醜いわよ」

「…はい?」

「貴方が今話したスーツを無くした理由に関することは嘘、何らかの理由があったと私は踏みます」

「……」

 

恐ろしいほどの観察眼である。必死の演技がこうも易々と見透かされるとなるとかなりくるものがある。

まだ観察結果報告は終えてはおらず、彼女は言葉を紡いでいく。

 

「それと貴方、他者から見ればかなり怖いですよ。雰囲気に殺気や怒気がいり混じっていますが」

「……やはり西住流に隠し事は通じないですよね」

「当たり前でしょう、私の従者なんですから」

 

彼女はさも当然のことだと示すように、やれやれと息を吐く。俺のことを色眼鏡で見ることもなければ差別することもない彼女に凛に関する出来事や人を殺めていた過去を話そうか考えていた。

 

けど俺は話せなかった。別に彼女に強要されてといったことはなく、自発的に話すことは可能だ。

だけど、先程同様に事実を知れば接し方が変わるかもしれないということを恐れていた。俺の経歴を知れないのに何も聴取することもなく受け入れてくれたしほ殿やまほとみほを失うのが怖くて仕方がなかった。

 

「やはり、貴女は立派なお方だ」

 

醜い顔ながらも笑みを作り、彼女に笑いかける。彼女の心の寛大さを改めて体験し評価を改める一方、彼女の誠意に対し全てを曝すことができずにいた俺は曇天の心をさらに曇らせていた。

 

 

辛い、戦場に還りたい、もう一度だけ死にたい

 

 

このような負の感情が心の奥底で芽生かせ、つるを伸ばしていく。

その時、会場のの煌めく照明がやけに眩しく感じられ、逆に野外へとすぐさま飛び出していきたい一心であった。

 




ダージリンを不憫な扱いをして許してお兄さん!
何でもしますから!

それと伍長の過去を聞いた人物は現状ダージリンだけです。
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