日本兵 in the ガルパンworld!! 作:渡邊ユンカース
皆さんありがとうございます!
久しぶりだな天国で仕事に勤しむ兵士諸君
お前らが俺のことを想ったらきっと嫉妬や妬みが多いだろう、何故なら放浪旅が多いからな。
けど今は違う。
現在俺は、俗に言う引きこもりというモノではなく立派な社会人として働いており、バイトではない正式な職である。
その職業は学園艦の用務員だ。
この学園艦は大きく、緯度だかの関係でよく雪が降る。四季は常に冬らしい。
特産品のリンゴを食べてみると甘くて美味い。現代の技術というのは素晴らしいものである。
そうだ、まほは中学二年生になってみほが中学一年生になったぞ。
「……寒いな」
北風か海風かはわからないが吹雪いて俺の身を冷やす。広大な校庭には雪が積もり一面銀世界の世界である。積雪はくるぶし程度で支給されたブーツを履いているものも、表面を貫通して冷気が入る。靴下を二重に履いてなんとかという具合だ。
俺は寒さに身を震わしながら枝切りハサミで植木を整える。枝は音をたてて切り取られ、地面に落ちる。
何故俺が西住家から離れえたか、それは至極簡単なもので産休していた本来の講師が帰ってきたからだ。元々俺の契約は講師の不在時の担当、つまりは仕事を果たしたのだ。
そんな俺を西住家に置いておいても食い扶持を減らす厄介者なので自分から出て行った。幾ら給料を貰ったところで定職に就けなければ減り続ける一方。
だからすぐに定職に就きたかった俺は用務員になった方がいいと判断を下した。
最初に履歴書を提出しただけで早期採用されたのだが、こんな過酷な環境下に置いては
納得しざるおえない。
年中雪は降り、極寒の寒さが身を襲って交通の便もさしてよくない。それに学園艦に不適切な存在は要らないということで風俗もない。
けど、このぐらいの環境下であれば大和魂で乗り切れる。精神論で補足できる範疇だ。
「ぶぇっくしょい!!」
寒さからか盛大な音をたててくしゃみをする。この学園艦はプラウダ学校といってソ連、いやロシアを模倣した学校だ。
だけどここまで環境下を合わせる必要はないと思うがな。俺は東北出身だから多少は寒さには強いはずだが、濡れたタオルを振るとたちまちの内に凍り、凍ったゴーヤで釘が打てる程に寒いのはきつい。巨大かつ強靭な大和魂が日に日に摩耗している気がする。
「お腹空いた……」
植木の手入れをしてから早二時間、ちょうど昼食を知らせる鐘が鳴り響く。
グダグダと寒さに震えながら作業をこなしてると妙に長く感じる。早く仕事を終わらせて用務員室で暖房という文明の利器でだらしなく過ごしたかった。
しかし冷気で手が思ったように動かない、手早く終わらせようとハサミに力を込めようとするがそれにも苦戦した。
腹の虫はここぞとばかりに待っていたと腹を鳴らす。
学校の食堂は教員や関係者は使えるようになっているものも、視線が刺さるばかりで安心して食えないのだ。
なら用務員室で食えばいいと言及されるが、生憎カップ麺のストックが切れていた。
ちなみにだが、俺の居住地は学校内の用務員室。そこには簡単な台所はあるが一口コンロでちいさな流し台のみで碌な料理が作れたものではない。
煙草は深夜帯だと室内で吸ってもバレないが、昼間に吸ったら怒られてしまった。
「……今日は飯抜きか」
今回ばかりは仕方がない、と俺は見切りを付けて唯一許された喫煙所へと足を進める。
足が積雪に埋もれて転倒をしたり滑らせたりして前に一歩一歩進む。
道中気まぐれとして、雪遊びに興じる女子生徒に挨拶を掛けてみる。
「こんにちは」
「こ、こんにちは……」
「ど、どうも」
こんな風な感じである。まあ異性ということで警戒されていたりするのだろう、何せ前の用務員さんは高齢の女性だったという。
プラウダ学校は女子高でもあるためか男性に対して免疫が弱い。こんな反応をされるので尚更食堂には赴けないのだ。
支給された上着に大量の雪がこびりつきながらも、喫煙所に到着した。
喫煙所近くの自動販売機にて缶コーヒーを購入して、雪で埋もれたベンチを発見した。
立ちながら吸いつつもコーヒーを飲むのは面倒なので手で雪を払い、席に着いて内ポケットから煙草とライターを取り出す。
防水機能を備えた上着だったが煙草を濡らすのは非常に嫌だったため内側にしまっており、取り出す際に冷気が身体を通り抜けて思わず身震いする。
煙草を安物のライターで点火させ口に挟む、手袋を着用しながらライターを使うのは手間がかかるがこれ以上冷えたくなかったので、そこは気合いで解決した。
精神論は重要だとわかるな。
「あぁ、身に染みる……」
口から紫煙を吐きだしながら片手に持った缶コーヒーを啜る。無糖で甘みは存在しないのだが、身体を温めるのには十分であり、もう暫時休憩を続けていたいと無意識に思ってしまった。
煙草を吸うことで幾分か猶予が生まれたのか、今日は鍋焼きうどんにしようと夕飯の献立を決め始めていた。
だが煙草を二本吸っていた時、突如として猛吹雪が襲いかかる。
屋外の喫煙所にはかなり厳しい条件下であり、視界が劣悪なものとなり五メートル先すらも見えない。一寸先は闇といった表現ではなく、一寸先は白というのが正しいだろう。
マズい、マズいぞ。こんな寒さには敵わない、さっさと室内に退避するに限る。
俺は周辺の屋根のあった建物はと記憶を巡る。
すると先程缶コーヒーを買った自販機はベンチがあり、屋根が取り付けられていたことを思い出した。
まだ吸い始めた二本目の煙草を咥えながら、うろ覚えの道をゆっくりとした歩調で戻っていく。
横から吹雪く中俺は歩き、倍以上を遭難した挙句にようやく辿り着いた。
こんな厳しい環境ではもう野外に生徒が居ないと考えていたが、案外そうではなく小さな少女が佇んでいた。
彼女は恐らく吹雪きが和らぐのを待っているのだろう、天候が回復するのを腕を組みながら足で一定のリズムを保ちながらに小刻みに踏んでいた。
「ひっ!?」
距離が近づくに連れて彼女側も俺を視認できたようだ。
しかし何かに驚嘆する声に俺は苦笑いをせざるおえない、きっと彼女から見れば俺は雪男のようにも想えたのだろう。
「邪魔するぞ」
屋根が雪から守ってくれる範囲に辿り着き、彼女とは距離を置く。
あんな反応をされたらこうした方が彼女のためにもなるだろう、最後の一服をして空になった缶コーヒーに押し込んだ。
自販機に内蔵された電子時計を確認すると一二時半、もう四十分後に授業が再開されるだろうと呑気に考えていた。
……これで手入れをしなくてもいい口実ができた。
「ねえ、何でアンタ笑ってるの?」
「あっ?」
堕落した一面が露出してしまったようだ。言いふらされてしまったら失墜するのだが、何故か寒さからかは知らないが嘘が出てこない。
黙っているのも相手に失礼だと考え、俺は内訳を話す。
「植木の手入れをしなくてもいいからだ」
「……だらしないわね」
「外を見れば一目瞭然、吹雪いたせいで雪は積もりっぱなしだ。お前らが下校する前に雪掻きをするのにはかなりの時間が掛かるからな」
「へぇー、カチューシャたちのためにね」
「まあそういうことだ。てかカチューシャと言うのか、お前」
「そうよ、何か文句でも」
「特に」
かなり高圧的な態度を取る少女で身体との言動に合っていない。
……いやむしろ合っているのかもしれない、我がままばかり言う幼子としては。
彼女の態度を少し、みほにもやってやってくれ。常にオドオドしているから割とよくなるのかもしれない。
だけどみほの奴、以外に怖い一面があったりするからなぁ……
「それでアンタの名前は、他人の名前を知ったら自分も名乗り返すのが普通でしょ」
「それは理にかなっている。では名乗ろう、俺の名前は伍長、名字も名前もない」
「何よそれ、馬鹿にしているの?」
「会ったばかりのカチューシャを馬鹿にするとでも? ちょいとした出来事にて記憶喪失になった、ただそれだけだ」
「そうなの、珍しいわね」
彼女はつまらなさそうに返答をする。過去について掘り下げられないのはありがたい。
にしても、珍しいか。天国に行けばたくさん珍しいものが見れるのだが、亡国の軍人やら十人十色だからな。
ローマ兵とかが走って何処かへ向かう様子を俺は窓枠から見たことがある。古めかしい装備で走るが内容としては書類についてなのだから滑稽にもほどがある。
「なあ寒くはないか?」
「寒いに決まっているわ」
短いスカートを履いていて見るからに寒そうでいたたまれない。
俺は財布を取り出して二百円を出して彼女に渡そうとする。
「何よこれ」
「寒そうだからこれで好きな飲み物買え」
「ふ、ふーんこのカチューシャに媚びを売ろうっての?」
こうへそを曲げた返答なのだが、手に握られた硬貨が欲しくてうずうずとしている。
煮干しを目の前に出された猫のようだ。
案外可愛げがあるなと感じつつも、軽い弁明の一つを返すことにした。
「とんでもない、俺はただ寒そうだからという理由でお前に渡すだけであって、偽善とか恩を売るという感情は微塵もない」
「そ、それなら貰っておくわ! 感謝なさい!」
彼女は嬉しさ籠った言いぐさで硬貨を受け取り、即座に自販機に投入した。どうやら買いたいものは決まっていたらしく、右下の温かいココアを選択した。
ガゴン、と選ばれたココアが発展した文明から誕生した機械のお化けにより吐きだされる。
温かいココアの蓋を開け、この寒さで冷えた手を温めるかのように両手で掴む。
どうやら猫舌の彼女はココアを飲むために息を吹いてからココアを口にする。
「ふぅ、温まるわ」
「あともう一つ理由があってな」
「何よ」
彼女はさも幸せそうな顔つきでココアを堪能していた。その様子を眺めているだけで俺の心は満ちて、別の意味で温かく感じ、口元から笑みが再度零れる。
そして、実はカチューシャにお金をあげた理由としては二つあり、最後の一つを話し始める。
「お前のような幼子を見ると、何かこう庇護欲が生まれてだな。甘やかしたい気持ちが浮上してだな……」
「はあっ!? カチューシャはもう中学二年生よ! 子供扱いしないでちょうだい!」
「あっはっは! 背伸びしたって俺にとってガキ当然だ」
「私は子供じゃないわよ!」
どうやら俺に指摘されてか彼女はムキになっているようだ。実際、彼女は二年生だったという事実に驚きを覚えたが、まあ四月から学年が上がるわけだから同じだ。
煙草をこの娘の前で吸うのは大人としてだらしないので我慢することにした。俺だって非常識なことはしない、受動喫煙で肺を病んでは相手に迷惑だからな。
「さて、少しは回復したか」
「そうね、これなら遭難しなくて済むわ」
駄弁っているうちに猛吹雪は衰え、ただの吹雪となった。視野も十メートルなら確認できる。
このぐらいなら自力で戻れると嬉しさを覚える反面、校庭の歩道の雪掻きをしなくては怠慢さを抱いた。
白いため息を吐いて、俺はのそのそと冬眠明けの熊のように屋根の範囲内から出る。
雪が深い、これは骨が折れるな。下手すればぎっくり腰になるやも知れん。
俺は途方にもない作業にも感じて苦笑いをする。彼女から見ればまた笑っていると思うだろうが、今回は意味合いが違うのだ。
「じゃあな、用務員は仕事をこなすこととしよう」
「……また会えるよね」
「はっ、弱々しい態度だな。まあ会えるさ、適当に散策してくれれば俺は居るさ」
「わかったわ! カチューシャとの約束、大事にしなさい!」
「了解した」
軍人でもない彼女に遊び半分に軽い敬礼をする。
彼女は立場的に偉くなったと感じたのか、踏ん反りがえっていて、今にも後ろ向きに転倒しないかが危惧された。
そういうことは万に一つのことなので俺は気にせずに去る。
けれど万に一つという偶然は意外にも俺の方へ飛来した。
自販機の所から百メートル離れた校舎に入ろうとした時、三階の屋根から落下してきた雪の塊が俺の頭を捉えて、見事に必中した。
強烈な外部からの一撃は俺の意識を飛ばすのには十分過ぎるもので、膝から崩れ落ちることとなった。